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ルーナとレッド  作者: さくしゃ
25/26

ぶち壊す

 私は、王城の自室にて本を読んでいた。


 「……」


 私が静かに本を読んでいると、コンコンとドアがノックされる。


 「……」


 特に応答はしない。なぜなら、この部屋にノックして入ってくる人物は決まっているからだ。


 「ルーナ様。入りますぞ」


 全身を金色の派手な服に身を包み、その華やかなお腹を揺らしながら入ってきたのは、この国の宰相を務めるアルダ・サイ。


 「ふっふっふっ。今日もお美しいですね。その美しさは私にこそよく似合う」


 毎回、まるで、装飾品でも見るかのように私のことを見てくる。


 「……」

 「おお。冷たいですな。まあ、そんな態度をとっていても現実は変わらぬがな。私たちの結婚の日取りが決まりました。1ヶ月後の国王陛下生誕祭で行われます。すでに国中に触れ回っています。そうすれば晴れてこの国は私のもの。その素晴らしき美貌は国王を飾る宝飾品としてふさわしい。あなたにピッタリの人生が歩めますな。では、」


 宰相はそれだけ言い残すと部屋をさっていく。


 「はぁ……」


 私は空を見上げて、カネロの街での日々を思い出す。


 あの連れ去られる直前にレッドと一緒に見た街の光景と彼の顔を思い出す。


 (ふふふ!あの顔は私に見惚れてたんじゃないかしら?……叶うことなら、あの時に戻ってこの気持ちを伝えたい……)


       **************


 「はぁはぁ!くるなぁ!俺たちはただ頼まれてギルドメンバーになってるだけだぁ!だから、命だけは!」

 「さようなら」


 黒ずくめの男が倒れる。


 「ちょっと!ハウグスト!やりすぎないでよ!」

 「おお!すまんな!こいつら人質をとって偉そうにしてやがったから、ついな!」

 「それもそうね。もっと懲らしめましょう。と言っても誰1人として生きてないけど」


 レッド達は、北に位置する街「ノースデニア」と言う街にいた。


 なぜこんなところにいるのかと言うと、レジスタンスの中でも突出して強い3人は一緒に組んで4人の大臣が治めるサウスポートを始めとした「ノースデニア」「アルテタ」「サース」の街の闇ギルドの拠点を潰して回っていた。


 現在潰した「ノースデニア」の闇ギルドの拠点が王都以外の最後の拠点となっていた。


 「これで王都以外は全部潰したね」

 「いよいよ。3日後だな!」

 「ええ!あんなふざけた結婚式はぶっ壊してあげましょう!」


 国王生誕祭まで後3日と迫っていた。


       *************


 「頭!ついに王都以外の闇ギルドが全て落とされました!」

 「ほう?そうか」

 「何でそんなに平気そうにしてられんですかい!宰相はもう終わりでしょう!手をひきましょう……」


 ドタ!っと男が血を流して倒れる。


 「うるせぇな!」


 頭と呼ばれる男は、カネロの街でレッドを倒し、ルーナをさらった「影」と呼ばれる伝説の暗殺者。


 「こんなの何の危機でもねぇよ!俺はなぁ!絶望する奴の顔を見るのが何よりも大好きなんだよ!ひっひっひっ。特にあの姫様はいい顔をする。レジスタンスには姫と一緒にいたガキもいるそうだしなぁ!明日の式には絶対に襲撃と同時に助けに来るだろうなぁ。姫様の前であのガキを殺したらあの姫様はどんな顔で絶望するのかなぁ。ああ!楽しみだなぁ。それと、とっくに実家が潰されてるってのにそんなことにも気づかない馬鹿の絶望した顔も見られるぞぉ!楽しみしかねぇなぁ!ギャハハハハ!」


 *************


 「いよいよ。明日だ!明日でこの国の全てが私のものに!」

 

 宰相アルダは自室で酒を飲み、愉悦に浸っていた。


 「はい。貴方様以外にこの国を収められるものなどおりませぬ」

 「国交大臣の言う通りです。前王など話にならないほどこの国は豊かな国となりましょう」

 

 そのアルダをさらに良い気分にさせる2人の男たち。


 2人はこの国の国交大臣と農林水担当大臣。


 ルーナの父である現国王を長年支えてきた2人の大臣は、宰相が国王になった暁には、2人を宰相として取り立ててやると言う条件で付き従っている。


 宰相になれば、大臣の時よりも権力を手にすることができる。


 そして、2人の狙いは宰相だけではなく、その先、王の椅子すらも狙っている。


 だが、今は、自身たちが宰相になれる喜びで満足していた。


 「フォッフォッフォ。明日が楽しみだ!俺が王になったら現国王は邪魔だから、死んでもらおう。どんな死に方が良いか?まあ、どちらにせよ。わしの人気を高める道具として死ねるなら本望だろうな」


 **********


 一方、その頃、国王生誕祭前日の深夜


 レジスタンスは王都の全ての闇ギルドを制圧した。


 「よし!王都の闇ギルドも片付いた!」

 「そうですね!これで城にも入り込めます」

 「ただ、「影」と思われる人物がいなかったのが気がかりだ」

 「宰相の元にいるのかもしれません。明日の救出作戦はさらに気を引き締めましょう」


 レジスタンスメンバーが話し合う傍らで、赤い髪の少年が1人星空を眺め、


 「ルーナ……」


 と、王女の名前を呟く。


 レッドは、あのカネロの町で見た最後の笑顔を思い出していた。そして、何もできなかった自分の不甲斐なさを。


 「……絶対に君を取り戻す!」


        ***********


 場所は変わり、王城の一室では、月に照らされたバルコニーで夜空を眺める王女の姿があった。


 瞳には涙が浮かんでいる。


 (あいたい……)


 王女は、1人の少年のことを考え、こみ上げてくる抑えられない気持ちに涙が止まらない。


 (もう一度だけ……ただ、もう一度だけ)


        ***********


 レジスタンスメンバーたちが、王都の闇ギルドを制圧した頃、高級な紳士服に普段はボサボサにしている髭と髪をきれいに整えたベスターは、手提げ鞄を携えた5人の男たちを従えて、ある家へと向かっていた。


 その家とは、宰相アルダの実家の商人協会会長のサイ家。


 レッドたちと別れた後、モンデル村に向かう前に手配していた都市国家連合の文官たちとアルテタの街で合流して、王都へと入っていた。


 サイ家の前に着くと、私兵と思われる人物が門の前で槍を持ち立っていた。


 「こんな夜に、何用だ?」


 ベスターたちに質問しながらも、しっかりと槍を構える。


 「私は、都市国家連合で理事をしているベスターという者だ。当主であるサイ殿に話がある。夜分に申し訳ないが、過給ゆえ」

 「その話を証明できる物はあるのか?」


 ベスターは、1枚の紙を見せる。


 それを見た私兵は、「失礼しました!案内するものをお呼びして参りますので少々お待ちください!」と家の中へと走っていく。


 「さすがは私兵とはいえ、協会会長の家のものだ。ちゃんと教育されているな」


 ベスターが見せた紙には、この者が都市国家連合の理事であると言う文と長しか使うことのできない印鑑が押されている。


 この世界で商人をしていて、この印鑑を知らぬものはいない。商人の販売販路を提供している大元が許可したときに証明書に押される印鑑と同じだからである。


 私兵が家のものにベスターたちのことを伝えると、慌ただしく灯りをつけ始め、当主のサイがベスターたちを出迎えるべく家から出てきた。


 「少々、お待たせしてしまい申し訳ありません。急なもので何もおもてなしできませんが、中へどうぞ」


 中へと招かれるベスターたち。


 だが、「結構。この場で済む用事ですので」


 ベスターが手を上げると、後ろに控えていた男たちが手提げ鞄から次々と書類を取り出す。


 ベスターはそれを受け取り「サイ」へと見せつける。


 「この書類は、これまで貴方が行ってきた犯罪の証拠と都市国家連合の理事として貴方を会長職から退き、後任として私、ベスターが会長を務めるようにと長より記された書類となっております。これは決定事項です!証拠の書類は後日、この国の王族に提出します。それと私以外に連合の者たちは貴方の犯罪行為を招致しておりますので私を消そうとしても無駄ですよ?」

 「な!」


 サイはその場に崩れ落ちた。



         **********


 ー国王生誕祭当日の明け方ー


 場所は、王城の地下牢の奥。外の光も届かない暗闇。


 そんな場所には、似合わない王冠を被った。歳の頃は50を迎えたばかりの美丈夫が囚人用のベッドに腰掛けていた。


 「すまない!ルーナ!」


 その男は、ルーナの父でアルメリア王国で国王を務める人物。


 男は何もできない自身に絶望していた。


 だが、そんな男を助け出すものが現れる。


 「国王様!」


 紫の髪が特徴的な女性。ルーナの護衛隊長のアンナだった。


 レジスタンスは闇ギルドを壊滅させた後にすぐに王城へと潜入し、王を救いたかった兵士たちの協力で王の居所を掴み、宰相らに気づかれないように地下牢へと侵入した。


 国王は、聞きなれた声とその髪の色で誰か理解する。


 「アンナか!無事であったのだな!よかった!」


 自分のことよりも他人のことばかり心配する国王らしい。


 「はい!この通りです!国王様!我々がきたと言うことは宰相側の戦力はもうありません!これから、国王生誕祭で宰相の悪事を民衆が見る前で白日の元に晒します!あの宰相のことです!追い詰められたら国王様を人質に取っていると主張するはずです。そうなったら民衆は怒り、城へと乗り込んでこようとするはず」

 

 国王はアンナの話を途中で静止する。


 「そこまでいえば良い。わかった。わしの無事な姿と民衆の怒りを鎮め、今回の沙汰を下せばよいのだな?」

 「はい」

 「うむ!任せよ!」


 それから、アンナは国王を地下牢から救出し、王城の書庫に隠された王族と護衛だけが知っている秘密の部屋へと隠れた。


         **********


 「只今より!国王生誕祭を開催する!」


 宰相が、広場に集まった民を見下ろせるバルコニーに現れ、宣言する。


 それからは、長い挨拶が終わると、結婚式が取り行われる事になった。


 「では、結婚式を始める!」


 宰相の宣言と共に純白のドレスに身を包んだルーナが現れる。


 その様子をバルコニーを見下ろせる場所にレッド、フィーナ、ハウグストはいた。


 「行ってこい!」

 「しっかり、取り戻して来てちょうだい!」


 僕は、ハウグストとフィーナさんに送り出され、宰相の元へと向かうルーナの脇へと現れ、彼女を抱き寄せる。

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