レジスタンス
よろしゅう
モンデル村から全力で走り2日。
僕たちは、サウスポートの街にいた。
サウスポートはカネロより少し見劣りするがそれでも王都に負けないほどの規模を誇る大きな街。
街の建物や道は、レンガで作られているため、赤い街として有名で、街の真ん中にあるIキロほどの大きな池にある噴水が1番の目玉となっている。
「街の中は平和ね……とても内部で争いが起こっているなんて嘘のようだわ」
「本当だな」
フィーナさんとハウグストは街の中で楽しそうに遊ぶ子供達、道端で話し込む人々を見て、悲しそうに話していた。
僕も心の中で街の光景を見て、「確かに」と思う。
そんなことを思っていると、ベスターさんが話していた酒場に到着する。
「ここがベスターさんの話していた酒場」
「確か、「アンナ」って人は、紫の髪が特徴的だって言ってたわね」
「そう言ってたな。店先では話してても埒があかねえし。中に入ろうぜ」
僕たちは酒場の中へと入る
扉を開けて中に入るとカウンターに紫色の髪をした女性が、開店の準備をしていた。
「お客さま。申し訳ありませんが、まだ開店前ですのでお引き取りください」
僕たちに気づいた彼女は丁寧に対応してくれる。
僕たちは急いでいたので、彼女の近くまで行き、ルーナの髪留めを見せる。
その髪留めを見た彼女は表情を一変。
「貴様!それをどこで手に入れた!」
どこから出したのか、短剣を鞘から抜き、僕たちに向ける。
「あなたがルーナの言っていた「アンナ」さんですか?」
僕は、単刀直入に尋ねる。
「なぜ、私の名前を?」
「ルーナから話は聞いていました。宰相が謀反を起こした夜にルーナを連れて逃げ、サウスポートに向かったが、着く直前に黒尽くめの男たちに追いつかれ、囮となってルーナとはぐれた」
「……」
あの夜のことを話すとアンナさんは黙り、ルーナの髪留めを眺める。
僕は構わず話を続ける。
「その後、ルーナは3日3晩走り続けたところで倒れてしまったそうです。そのとき着ていた服がこれです」
ルーナが倒れていた時に着ていた服を鞄から取り出す。
フィーナさんは、ルーナがまだアメリアと名乗っていた時に記憶を取り戻す要因になるかもしれないと、とっておいていたようで、村を出てくる時に持ってきてくれた。
「確かにあの夜に姫様がきていた服だ。この髪留めも姫様が国王陛下から誕生日の祝いの品としてもらったもの。それに、あの夜のことは宰相の手のものと私と姫様とレジスタンスの上層部しか知らない。お前たちが姫様となんらかの関係であることはわかった。話を続けてくれ」
アンナさんの言葉に頷くと、ルーナを見つけた時のこと、村でのこと、襲撃を受けてカネロの街に行ったこと、カネロの街でのこと、そして、連れ去られてしまったこと、何故僕たちがこの街に来たのかを話した。
「守りきれずに申し訳ありません!」
「いや。そこまで守っていただき感謝しかない。礼を言う。ありがとう。ただ、レジスタンスに入れるかどうかは話が別だ。レジスタンスは目立たないために少数精鋭で動く。それなりの実力がないと話にならない。だから、そのブラックベアを倒すほどの実力というのを見せてくれ」
アンナさんはそういうと、カウンター奥の酒瓶を引く。
すると、棚が横にスライドし、地下へと続く階段が現れた。
「さあ、こちらへ」
アンナさんの案内の元、階段を下っていくとそこは、30畳ほどの広さの部屋があった。
「ここは、サウスポートのレジスタンスの集会場となっている。ここで訓練をしたり、会議を行ったりしている。ここは外に音が響かないように特注で作られているから安心しろ。相手は私と、」
アンナさんは僕たちが入ってきた入り口の向かい側の壁に目を向ける。
すると、壁が開き、中から茶髪にハウグストに負けないほどの体躯の顔の整った男が出てきた。
「さすがアンナ。ばれてましたか。初めまして、私はレジスタンスの頭をしております。バウアーと申します。呼びずらいのでバウとお呼びください」
丁寧に挨拶してくれる。
「これはどうも。わたしはフィーナと申します」
「俺はハウグストだ!よろしくな!」
「僕はレッドと申します。よろしくお願いします」
「あ。これはご丁寧にどうも」
僕たちが挨拶していると。
「自己紹介はそんなところでいいな?」
「そんなことより。アンナ。レジスタンスメンバー以外をここに連れてくるのは禁止事項のはずですが?」
「ああ。そのことか。実はな……」
アンナさんは、先程俺たちから聞いた話をバウアーさんに説明してくれる。説明と同時に証拠の髪留めなども見せて。
「そうでしたか。姫様は連れ去られてしまったのですね。そして、あなたたちが今まで守ってくださっていたのですね。ありがとうございます」
本当に礼儀正しい人で何度も頭を下げられた。
「ですが、レジスタンスメンバーは、これ以上必要ありません。なので、どうしても姫様を助けたいと言うのなら、私を納得させるだけの実力を見せてください」
「私も同感だ。相手は私とこいつでするから、私たちを倒せないようなら帰ってもらう」
2人は殺気を放ちながら条件を告げる。
でも、そんなことを言われても僕たちの気持ちは変わらない!
「「「お願いします!!!」」」
僕たちは、迷わずに試験を受ける。
「わかりました。では、そちらの女性、フィーナ殿はアンナが相手をします。後の男性方は私が相手をします。では、初めは、フィーナ殿とアンナお願いします」
バウアーさんの言葉に頷いた2人は、部屋の真ん中へと向かいお互いに構える。
「武器が必要なら貸すが?」
「お気遣いありがとう。でも、私は素手が1番だから♪」
「そうか。ならこちらから行くぞ!」
アンナさんは上段に構えた剣をフィーナさんに向かって振り下ろす。
その太刀筋は速く、黒尽くめの男たちが束になっても相手にならないと言うのが見ただけでわかる。
だが、フィーナさんは、動じることなく振り下ろされる剣を避け、横から剣を殴り折ってしまう。
「勝負アリだな。強いなフィーナ殿!」
「あなたも相当強いわよ♪」
と、お互いを称え合うアンナさんとフィーナさん。
「文句のつけようがないな。では、次はレッド君と私の番だな」
「よろしくお願いします」
今度は、僕とバウアーさんが戦う。
「では、行くぞ!」
バウアーさんは僕が構える前に、突進してくる。
まあ、僕に構えなんてないから、関係ないんだけど…
バウアーさんの突進が迫り、僕に当たりそうになるところで、僕はブラックベアを投げ飛ばした時のようにバウアーさんの攻撃の呼吸に合わせて動き、投げ飛ばす。
バウアーさんは空中で体勢を立て直すが、その前にバウアーさんに近づき、バウアーさんの顎を狙って拳を振う。
バウアーさんは、その攻撃を受けて倒れる。
「な!あのバウアーを一瞬で倒してしまうとは!」
アンナさんは驚く。
「まあ、当然ね」
「当然だな」
うんうんと頷くとフィーナさんたち。
しばらくして、バウアーさんが起き上がり、「驚きました!とてつもない強さだ!」
と、レッドを誉めて讃える。
「ああ。それと、ハウグスト殿は試験はいりませんよね。見ればわかります。この中で1番強いのはあなただ」
「お!わかるか!そうなんだよ!」
「ははははは!わかりますとも!」
こうして僕たちは無事試験を突破して、レジスタンスのメンバーになれた。