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ルーナとレッド  作者: さくしゃ
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流れ星

 「ルーナ」

 「……ぅ」

 「ルーナ」


 レッドの声が反響してやまびこのように何重にも聞こえる。


 「レッド?」

 「ルーナ!よかったぁ。」


 あれ?私、レッドの太ももで眠っている。さっきまで樹海にいなかったっけ?あれ?それに昼間だったような?


 「あれ?昼間だったよね?それに樹海にいたよね?」


 私は、レッドに尋ねながら、木々が広がる森の中ではなく、焚き火によって照らされた岩肌を見つめる。


 「そうだね。順を追って説明するよ」

 「うん。お願い」

 「まず、僕たちが樹海に入ってしばらくして左目に3本の傷がある大熊に襲われたってことは覚えている?」


 ……大熊……左目に3本の傷……!!


 「そうだった!レッドが大熊を倒した後に、私たちが立っていた地面がいきなり割れて、大きな穴に落ちたんだ」

 「うん。で、そのあと、空中でルーナを抱き抱えて、瓦礫を蹴って、崖につかまり、なんとかずるずる下って降りたんだ」

 「……さらっと言うけど、すごいことしてるわね」

 「いや!僕だって自分があんなことができるなんて思わなかったよ!なんだか、いつもよりも周りの動きがゆっくりに見えたって言うか、とにかく無事でよかった」

 「ふふふ。助けてくれてありがとう」

 「どういたしまして」

 「じゃあ、暗いのは私が気を失っている間に夜になってしまったから?」

 「そうだね。さっきまでは夕日で明るかったからね」

 

 そっか。なら、この大穴はそこまで深くないのだろうか?落ちる時に一瞬見た時は底が見えなくてゾッとしたけど。


 「夕日で明るかったってことは、そんなに深い穴ではないってこと?」

 「うーん?どうだろう?試してないけど、多分僕でも登りきれる高さには思えなかったから、崖を登るのは無理かな。それに」


 レッドは、私の左足を指でつつく。


 「つぅぅぅ!!」


 言葉にならないほどの痛みが全身を駆け巡る。


 「その反応は。ルーナの左足、完全に折れてるね」


 レッドは真面目で話す。


 「ちょっと!折れてるってわかっていたなら教えてくれてもいいんじゃないの!すごく痛かったんだけど!」

 「ごめんごめん。その反応を見るまでは確信が持てなかったんだって」


 もう!自覚すると左足がじんじんしてきたじゃない!


 「はい。湿布薬貼るね」


 レッドは私から離れると鞄から湿布薬を取り出して布に塗り、患部へと巻き付ける。


 「レッドの作る薬ってどれも効き目がすごいわね」

 「そう?」


 さっきまでじんじんして痛かった左足も、湿布薬を貼った途端に随分と痛みがマシになった。


 「足以外にはどこかに痛みはある?」

 「うーーん?特には感じないわね」

 「そっか。なら、ご飯を作るからちょっと待ってて」


 レッドは干し肉などを煮て、さっと、スープを作る。


 「うん!美味しい!」

 「よかった。塩が終わりそうだったから、しょっぱい干し肉を使ってみたんだ」

 「あ!それでいつもよりも優しい味になっているのね!参考になるわ」


 夕食を楽しんだ後は、お茶を飲んでまったりとする。


 「……」

 「……」


 他の人だと気を遣って何か話さなくちゃと焦るんだけど、レッドと一緒の時は全然そんなことないのよね。一緒にいるだけで心地いいのよね。


 「ルーナ!空を見て!」


 レッドのことを考えていたら、レッドが上を指差して話しかけてきた。レッドが嬉しそうににっこり笑いながら言うので空を見てみる。


 「……きれい」


 夜空には、雲ひとつなく緑や赤、黄色に輝く星々が一望できた。


 その星々の真ん中を、青く輝く星たちが絶え間なく流れていた。その光景は、言葉に表せないほどの綺麗さで思わず見入ってしまう。


 「昔、まだ僕の父さんが生きていた頃。ちょうど今夜のような流れ星がある夜だったかな?父さんが言ってたんだ。夜に輝く星々は亡くなった人たちが生きている大切な人たちに見守っているよって教えてくれているって」


 レッドは、夜空を見て、懐かしむようににっこり笑っていた。


 その笑顔を見た私も何故だか嬉しくなって笑みがこぼれた。


 「じゃあ、流れ星は?」

 「流れ星は、人々が願ったことを神様に届けてくれるものなんだってさ。だから、流れ星を見たら、願い事をすると叶うんだって」

 「素敵!じゃあ、いっぱいお願いしておかなくちゃ!」

 「ははは。神様もいっぱいお願いされて大変だ」

 「お父様が言っていたの。願った者勝ちだって。だから、いっぱいお願いするの」

 「そうだね。なら、僕もルーナの足がすぐに良くなるように願っておくよ」

 「頼んだわよ!」


 それから流れ星を見て、眠くなったところで私たちは眠りについた。


 次の日、目を覚ますと隣で寝ていたレッドの姿がなかった。


 「何かあったのかしら?」

 

 周囲を見渡すと、少し離れたところで岩などをどかしていた。


 私は、レッドに聞こえるように大きな声で、


 「おはよう!何かあったの?」


 と、聞いてみる。


 レッドは、「おはよう!」と返事をすると私の方へと戻ってきた。


 「何かあったの?」

 「周囲を探索してたらたまたま洞窟の入り口を見つけたんだ」

 「え?洞窟?」

 「うん。洞窟。それで洞窟の入り口が落石で塞がっていたからどかしてたんだ」

 「そうなのね?で、洞窟はどんな感じだったの?」

 「うーん。なんとも言えないけど、さっき試した時に崖が脆くて登れなかったんだ。ここにいても食料が尽きるのを待つだけだから進むしかないと思う」


 確かに。レッドでも登れなかった以上は、


 「そうね。じゃあ、」

 「うん。ご飯を食べたら、準備をして洞窟を進もう」

 「わかったわ。それとごめんなさい。怪我をして足を引っ張る形になってしまって」

 「全然大丈夫だよ。僕に任せて」

 「ありがとう」


 その後、朝食を食べた私たちは、洞窟の中を、松明の光を頼りに進んでいく。 

よろしゅう〜

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