傷の手当て
ふーん
私たちは、まずは男達を片付けてからフィーナさんの傷の手当てをするために一路、ハウグストさんの家までフィーナさんを抱えて戻る。
村の中心を通るときは、お昼時でみんな家の中にあり、誰にも会わずに家に着くことができた。
家についてから、まずは、フィーナさんを夫婦の寝室に連れて行き、ベッドに横にする。
「レッド!食器棚の中に傷薬が入っていたはずだから、持ってきてくれ!それと、水瓶に溜まってる水を鍋に入れて持ってきてくれ!アリシア……じゃなくて、ルーナは、タンスの中から布を取り出してくれ!」
「わかった!傷薬が足りないようならうちからも持ってくる!」
「布ね!わかったわ!」
私とレッドはハウグストさんに言われたものを取りに行く。
「フィーナ、ちょっと傷を確認するぞ」
「そこまで傷は深くないと思うけど……」
フィーナはそう言うが、一応、念のために確認する。
傷は、手と足に10箇所程、両頬に2箇所ずつ、お腹に5箇所ほど。フィーナの言う通り、どの傷も針で縫うほどの傷はなかった。
「ふぅ……よかった!傷はそこまで深くないな!さすがはフィーナだ!少し血を流しすぎて貧血を起こしただけだな!」
ハウグストは、フィーナの傷を確認すると思ったよりも浅かったことに安堵する。
「私を誰だと思ってるのよ!レッドと朝の鍛錬を始める前は、ハウグストの相手は、私がやってたんだからね!」
「そうだったな!がはははは!それに、昔から5人の中でも俺たち男を相手に勝ってたようなもんだもんな!」
「そうよ!まだまだ、そこらへんの男になんか遅れは取らないわよ!それに、可愛い娘ができたばかりなのに死ぬわけにいかないわ!」
レッドと私が頼まれたものを取ってくると、
「確かにな!いい娘ができたもんだ!はははは!」
「ええ!私たちには勿体無いくらいよ!ふふふふふ」
フィーナさんとハウグストさんが笑い合っていた。
「おう!レッド!ルーナ!ありがとうな!」
ハウグストさんは私たちから布や薬を受け取ると、「フィーナの傷は、どれも騒ぐほどのことはなかったからあとは俺がやっとくから休んで待っていてくれ」
そう言い、寝室のドアを閉める。
私とレッドは、寝室を後にして、寝室横にあるリビング兼ダイニングの椅子に腰掛ける。
私が腰掛けると、レッドがコップに水を入れて持ってきてくれる。
「はい」
「ありがとう」
私にコップを渡した後、レッドは私の向かいに座る。
「……」
「……」
何を話したらいいかわからない。3人は許してくれたが、嘘をついていた事実は変わらない……アリシアと名乗っていた時のように気軽に話しかけるのも違うような気がする……
私が、レッドになんて話しかけたら良いかわからずにいると……
「さっきのこと気にしてるの?なら、そんなことは気にせずに今まで通りに普通に話しかけてかけてくれていいよ。僕は、全然気にしてないから。どちらかと言うと、せっかく仲良くなったのに、急によそよそしくされる方がショックだよ」と言ってくれる。
「いいの?許してくれたけど、私はあなたを騙していたのよ」
「僕たちを巻き込まないように嘘をついただけでしょ?なら、気にしなくていいよ!僕たちを思ってしたことなんだから」
「あ…あり、がとう」
私は、嬉しくて涙が止まらなかった。自身の正体を明かしたときに、今までの家族のような暖かな関係ではいられなくなると思ったから……本当は、3人とは今までのように話したりしたかったから……本当によかった……
なんて、自分勝手なんだろうと思うが、嬉しくて涙が止まらない。
「そうだぜ!許したんだから、もう気にすんな!」
寝室のドアを開けて、ハウグストさんが出てくる。
「は…い…ありかとう…ござい…ます…」
寝室のドアは開け放たれており、フィーナさんがベッドで上体を起こした状態で、「そうよ!嘘をついているのはあなただけじゃないんだからね!私なんていくつついていると思ってるの!嘘をついているのは貴方だけじゃないのよ!だから、気にしなくていいの!わかった?女は、男を騙してなんぼなんだから気にしない!」
ああ……私は、なんて幸せなんだろう
「さて、その話はもう終わり!今度は、アリシアちゃん……じゃなくて、ルーナちゃんが、なぜ黒装束達に追われているのか、貴方のいうその政争とやらはなんなのか、教えてくれるかしら?」
「はい。全てを話します」
それから、私たち3人は、フィーナさんの近くに椅子を持って行く。
全員が腰掛けたのを確認して、私は、隠していたことを全て話す……
つづく……
ほーん