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婚約編1

「あやね~~」


「あ、れみちゃん!」


「今日はこれで終わり?」


「うん。今日の講義は全部終わったよ。」


「そっか。この後はいつものように?」


「図書館に行って課題を調べちゃおうと思ってるの。」


「それで…お迎えの時間まで勉強するわけね。」


「え…うん…えへへ…」


「はいはい。…今日も旦那が迎えに来るわけね。」


「え…旦那って…まだ、そういうわけじゃ…」


「いやもう、あれは旦那でしょう!」


「えっと…」


「毎日毎日…全く…」


「そうだよね…征爾さん、仕事で忙しいのに毎日迎えに来てもらっちゃって、本当に申し訳な」


「そうじゃない!」


「え…」


「あいつね…いや、あんたのダーリンね、あやねを迎えに来るついでに、周りの男に威嚇しまくってるわよ。」


「えーーー、そんなことないよ。」


「……あのねぇ…」


「だってれみちゃん、私だよ?所詮、わたしだよ?れみちゃんみたいに特別美人ってわけでもないし、まきちゃんみたいに、モデルさん並みにすっごくスタイルがいいってわけでもないんだよ?なんで威嚇する必要があるの?それに…どっちかって言うと、私が威嚇したいよ…征爾さんが迎えに来てくれるたびに、他の女子からの視線が痛いんだよね…まぁ…私が征爾さんと釣り合っていないからって言うのはわかるんだけどさ…」


「…あやね、少なくともあんたの旦那はそんなことほんの少っしも思ってないよ。あれは本気で威嚇しているよ。」


「えーそうなのかな…」


「…って言うかさ…あんたに向ける時だけは、あんたの旦那、完全に表情変わるからね。あんたが見てないときの旦那の目ははっきり言って怖いよ。だってあれ、暗殺者の目だよ…」


「えーまたまた~~~。」


「まぁそうだよね…もともと…あやねってばチョー鈍いし、それにあの絶対零度の目を見ることは無いんだもんね…」


「征爾さん、そんな怖い人じゃないけどな…」


「あやねにだけは絶対の王子様だよね。」


「え…王子様って…恥ずかしぃ…」


「あー、もうほんと…こういうところが可愛いんだよねぇ…」


「え、なに、れみちゃん?」


「いやいや、何でもない。で…まだ旦那が迎えに来るまで時間があるんでしょ?私も課題やっておきたいから、図書館じゃなくて学内のカフェでやらない?」


「あ、いいよ。一緒に調べよう。」


二人はカフェで課題に取り組み始めた。各々パソコンを出し、調べたり課題を進めたりしながらもおしゃべりは止まらない。


「それで…もうすぐクリスマスじゃない?あんたのダーリンはいろいろばっちり考えてるんでしょ?」


「それはよくわからないな。征爾さん、年末は忙しいと思うから、あまり無理して欲しくないんだよね…」


「あやね、クリスマスなのよ!全世界の独り身の女子が恋人と過ごしたいと憧れている日よ!!!あやねには何かクリスマスの希望とか、恋人と過ごす夢とかないの?」


「えー…ウー…あんまり…ないかな…そうだなー…あっ!」


「なに?」


「美味しいケーキが食べたい!やっぱりクリスマスって言ったらケーキだよねぇ~。この時期、ちょっとお高いけどスペシャルクリスマスケーキってあるよね…それが食べたいなぁ…」


「…ケーキって…全く…他には?」


「他?うーん…」


「欲しい物とかないの?」


「特にない。」


「だって、あんたのダーリン、クリスマスにきっと何かくれるんでしょ?」


「それはわからないけど…」


「ダーリン社会人なんでしょ?カバンの一つでもおねだりすれば?」


「カバン?なんで?どこで使うの?…あ、そうだ!それだったら台車が欲しいかも!」


「は…、台車?なんで?」


「ちょっとね、家のハーブ園を大改造したいんだよね…。今の時期は寒いから、植え替えとか、他の種類を植えてみるとか、土の入れ替えとかしたくて、それで、前から台車あったらいいなって思ってたんだよね…台車だったら…そうだな~~~…大きさとか…」


「あやね…それって全然ときめかないよね…」


「ときめかない?なにが?」


「台車にときめきなんてないでしょうがっ!」


「そう言われても…」


「…全く…あんたのダーリンは台車女のどこが良くてあんなに溺愛するんだか…あやねが可愛いのはわかるけど、あそこまで溺愛束縛粘着、それも全部マックス…っていうか振り切って非常識レベルでしょ、そんな人、他に見たことないわ。あんたのダーリン、めちゃめちゃイケメンだけど、私は絶対無理だわ。」


「うん、そうなんだよね。征爾さんめちゃめちゃかっこよくて…すっごい素敵で…なんで私のこと好きになってくれたのか、いまだに不思議。やっぱりさ…私は普通だから、征爾さん、いつか他の魅力的な人に惹かれちゃったりするのかな、って…時々不安になったり…」


「…あやね…あんた、旦那にめちゃめちゃ束縛されてんの、気づいてないの?」


「束縛?なんで?」


「……にぶい…鈍い…鈍すぎるわよっ!!!」


「え…?」


「あんた、この1年さ、ほぼ毎日旦那が迎えに来てるじゃないのっ!!!それが束縛じゃなくて何なのよっ!!!」


「え…だって、迎えに来てくれてるだけだよ?特にあれダメこれダメって言われてるわけじゃないし、友達とご飯食べて帰る時もあるし…」


「それだって、食事の後やっぱり迎えに来るじゃない。この間なんか、一緒に食べることになったじゃないのっ!!!」


「あ、そうだったっけ…」


「結局食事代を出してもらったから、文句は言えないけどさ…あの高級レストランがただ飯になったからそこは感謝よ。でも、でもよ、私達にまであやねの様子を根掘り葉掘り延々と聞き出して、あれは最早尋問よ、尋問!男の影がないか常に確認しているって、異常よ、異常!!!大学にいる間のあやねの様子をものすっごく細かく聞きたがるし、お昼に何を食べたのかとか、おやつに何を買ってるか、いつ食べるのかどれくらい食べるのか、他にも何かなかったか、挙句の果てに、トイレに行く回数まで聞いてくるのよ!その上、同じクラスの男性の数だけじゃなくて、全部の講義の男女比を聞き出して、どうやってガードするとか、この授業はこの辺りの席に座るように指定をするとか…、あやねには自分以外に目を向けさせたくないって真顔で言ってくるし、おかしいでしょ!!!」


「え…おかしい…の?」


「おかしいわよっ!」


「…私だって…征爾さんが好きなものって知りたいし…普段職場では何をしているのかなって思うし…」


「普通は思うだけよ!せいぜい本人に今日はどうだった、って聞く程度でしょ。でもあんたの旦那、根掘り葉掘り、覚えてるだけ全部言え!って話を迫ってきたじゃない。」


「え、そうだっけ?」


「……ねぇ…あやねは窮屈じゃないの?」


「きゅうくつ?」


「あんな、超絶束縛にものすごい嫉妬の塊で、溺愛を通り越して、もはや強烈なストーカーでしょ!」


「うーん…そうなのかな…でも別に嫌だとか思わないし…」


「…あやねだからか…あんた…超絶にぶいもんね…うん…もういいわ…あんたがそれで特に困っていたり、不満がないんだったら…それはお互いが平和ってことで…もういいわ…」


「え、あ、れみちゃん、ごめんね…。もしかして、心配してくれてた?」


「…取り越し苦労だったわ…あんたが平気なら別にそれでいいのよ…」


「…うん。私は全然平気だよ?」


「そう?それなら…いいわ…これ以上はもうつっこまないでおくわ。」


「うん…なんか…いろいろごめんね。」


「いや…大丈夫よ。あやねが幸せならそれでいいし…」


「アヤ」


「うぉっぅ!」


「征爾さん!」


「な、なんでここに旦那が…」


「あぁ、真山さんだっけ?いつも絢音のことありがとう。旦那…フフフ、いいね、それ。」


「………」


「あの、征爾さん、どうしてここにいるってわかったの?私、図書館って連絡しちゃったし、後で征爾さんに連絡入れないと、って思ってたんだけど。」


「あぁ、仕事が早く終わったんだ。だからすぐ迎えに来た。早くアヤに会いたかったしね。」


「え…あ……う…ん…私…も…」


「アヤ…俺に早く会えてうれしい?顔赤いよ。あぁ、可愛いなぁ…」


「…うわぁ…」


「ん、何かな?」


「いえ…仲良さそうで…」


「そう?絢音は可愛いからね。」


「ハイハイ…。え…あれ…そういえば…なんで絢音がここにいるってわかったんですか?」


「え、あぁ、それはスマホがあるでしょ。」


「スマホ…って…GPS!」


「そうだよ。絢音が何かに巻き込まれたりしたら不安だからね。常にどこにいるのか把握しているから大丈夫なんだよ。」


「あ、そうだった。だから征爾さん、ここにいるってわかったんだ。良かった、征爾さんを待たせたりしなくて済んで。」


「良かった?良かったの??絢音、それは良かったことなの?」


「うん。だって、私ちょっと方向音痴なところがあって、時々迷子になっちゃうんだよね…。この間、植物園の中でいろいろ気になるもの見てたら、征爾さんとはぐれちゃって…。」


「うん、あの時はちょっと焦ったよ。トイレから戻ったら絢音がいなかったから。まぁすぐ見つけ出したけどね。」


「そうなの。あの時はごめんなさい。」


「いいんだよ、アヤ。アヤは植物大好きだからね。つい夢中になって見ちゃったんでしょ。」


「うん…。気づいたら征爾さんいなくて…ちょっと焦っちゃったところで征爾さんが来てくれて…嬉しかった…王子様が見つけてくれたかと…思っちゃった…」


「フフフ、アヤ、俺が王子様?」


「…う…うん…」


「ほんっと、可愛いなぁ…」


「いや、あの…だから…征爾さんに私のいるところを把握してもらうのって凄い助かるから…私も安心だし…その…知っててもらえて嬉しいし…だから…」


「…あやね…それって…もはや洗脳…」


「ん?何か言ったかな、真山さん。」


鋭い視線が征爾から、れみに飛んできた。


「…イエ…ナンデモゴザイマセン…」


「そう、それならいいんだ。」


「…ステキナカップルデスネ…トッテモオニアイデス…」


「そう、やっぱり真山さんもそう思ってくれるんだ。」


「ハイ・・・モノスッゴク、ピッタリ………、絶対のカップルですっ!!!」


「え…れみちゃん…そ、そうかな…すごく嬉しいかも…」


「アヤ、ほらね、絢音以外に俺にぴったりな恋人はいないんだからね。自信をもっていいんだよ。」


「う…うん…」


「あぁ…不安そうな絢音も可愛いなぁ…」


征爾がねっとりと絢音を見つめている。そう、ねっとりと、だ。


「あ、私、そろそろ行くわ。ほら、旦那の仕事が早かったんだから、この後二人でデートでもしたらいいんじゃない?課題はまだ期限まで余裕があるし。」


「で、でーと…」


デートと言われ、絢音の頬がほんのりとピンク色になる。


「あ、そうしよう、アヤ。真山さん、ありがとう。これからも絢音のことよろしくね。」


「はいはい。」


「れみちゃん、ありがとう。また明日ね!」


絢音と征爾は手を繋いで帰っていった。おそらく征爾の車が止めてある駐車場に向かったのだろうが…。


「うっわぁ~~~~。怖い怖い……、って言うか…恐ろしいわ…あやね、ご愁傷様…」


れみは征爾の恐ろしさを思い出すとフルっと身震いをしたが、まったくそれに気づいていない絢音のことを凄いと思いながらも、二人が幸せならまぁいいか、と課題を進めるために図書館へ向かった。



征爾の暴走が…段々と表面化…

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