結婚編5
「れみちゃん、まきちゃん、ありがとう。」
「いいのよ。あやね。」
「そうそう。あやねのおうち訪問出来ちゃったしね。」
「うん…」
「それでね、ちょっと買い物付きあって欲しいのよ。あやね、この後予定ないでしょ。」
「うん。もちろんいいよ。」
「じゃ行きましょう。」
3人は近くにある大きなショッピングモールへ入って行った。
そしてその中の1つの店に入って行く。
「あやね~。今日はあやねのものを見繕うわよ。」
「えっ、私の物っ?」
「そうよ。さぁ~旦那はどんなのが好みかしらねぇ~」
「え…えぇぇ…ちょっと…あの…」
「あやね、自信がないなら、自信をつければいいのよ。」
「え、でも…これって…」
「あやねは自分の魅力をわからなさすぎよ。こんなに素敵な女性なのに…」
「あやね、旦那が戻ってきたら、その日の夜はこれよ、これっ!これを着て旦那をウッフンしなさい。いつもあやねは旦那に振り回されてばっかりなんだからね。」
「え…振り回すって…私はそんなこと思ったことないよ…」
「…あやね…」
「征爾さんが…気持ちよく過ごしてもらえるのなら…楽しく過ごしてもらえるのならそれでいいの。それが一番嬉しいの…」
「…あやねは…旦那が喜んでくれるんだったらいいんだね。」
「うん、そうだよ。」
「それなら決定よ!」
「え…」
「うん、間違いないね!」
「え、まきちゃんまで…」
「これは、間違いなく旦那は喜ぶね。」
「え…そうなの?でも…私じゃ似合わないと…」
「似合わないことはないっ!あやねにピッタリのもの、かつ旦那が狂喜乱舞で喜ぶものを私達が見繕います。わかった、あやね?」
「え…あの…」
「あやねは、旦那のことが好きなんでしょ?旦那のためになにかしたいっていっつも思っているんでしょ?」
「…うん…征爾さんが喜んでくれることが…一番…何よりも嬉しい…」
「ほ~らね。これ、ダーリン絶対喜ぶから。」
「ほ、本当に?」
「そうよ、500%間違いなし。」
「そ、そうなんだ…でも…これ…ちょっと恥ずかしい…」
「あやね…おそらくなんだけどね…旦那、おっそろしく凄まじく仕事しているよ。愛しのあやねと離れている時間を伸ばさなきゃいけないくらい仕事が大変なんだよ。」
「あ…」
「できれば伸びるんじゃなくて、早く切り上げて戻ってきたかったんだよ、きっと。それが戻れないってことは、どれだけ大変なんだろうね。」
「…そ…っか…私…自分が寂しくて…それしか考えてなかったから…」
「ね、あやね。ダーリンは間違いなく、今、血眼になって仕事を終わらせるために奔走してるよ。それでとってもお疲れだと思う。早く愛しのあやねに会いたいって思っているよ。だからね、これは頑張っている旦那へのご褒美。」
「征爾さんへの?」
「そうよ。あやね自身がダーリンへのご褒美よっ!これ以外のものは無いっつうの。」
「そ、そうなの…?」
「「そうよ!!!」」
「あの寝室を見たら一発よ。」
「え…」
「あやね、とにかく、ダーリンが戻った日に、これを着て、ウッフンしなさい。必ずダーリンと仲良しになるし、あやねも自信を取り戻すわよ。」
「う…は…恥ずかしいけど…二人がそういうのなら…」
「「報告、楽しみにしているからね!」」
しかし、それから1週間経っても征爾は戻ってこなかった。
「ちょっと、一体どういうことなの…」
「わか…らないの…」
「あやね…」
この学期最後のレポートを提出すると、絢音は真っ青な顔をしながら玲美と真紀に、征爾がまだ戻ってきていないことを報告した。
「…せっかく…れみちゃんと、まきちゃんが…選んでくれたのに…ごめん…ね…」
「そんなのはどうでもいいのっ。それよりもあやね、真っ青じゃないの。それにまた痩せたでしょ?ねぇ、医務室じゃだめだよ。病院へ行こう?あ、旦那の実家の病院は?」
「あ…それは…ちょっと…」
「なんで、だってあやね、真っ青だよ。」
「だめ…私が行ったら、迷惑…かけちゃう…」
「あやね…」
「じゃ…あやねの家に戻ろう。家の近くの病院で点滴打ってもらったほうがいいよ。まずいよ、あやね。私ら医学生だけど、まだまだ一人前には程遠いけど、それでもあやねの体調がまずいっていうのはわかるよ。」
「そっか…ごめん…ね…心配させ…ちゃって…」
「あやね…本当は話すのもきついんでしょ?ここまで来るのだって…」
「でも…レポート…ちゃんと出したかったから…征爾さんと約束したし…」
「あやね…」
「あのさ、私もレポート出してきちゃうよ。今持ってきてるから。それで家まで一緒に行くよ。そこから病院にも付き添うから、だから帰ろう。」
「うん、私も付き添うよ。」
「れみちゃん、まきちゃん…」
「まき、私まず自分のレポート出してきちゃうよ。そしたら交代であんた自分の分を提出してきて。あんたも持ってるでしょ、提出レポート。その間順番にあやねをみていようよ。」
「うん、そうしよう。まず出してきちゃって。」
玲美が走ってレポートを提出しに行ったようだ。
「まきちゃん…大丈夫…私…一人で帰るから…大丈夫…」
「え…ちょっと…あやね?…大丈夫?」
「うん。大丈夫だから…」
「え…あれ…ちょっと…あやね…熱あるんじゃないの?」
「まきー、行ってきたよ。」
「れみ、あやね、熱あるっぽい。」
「え!」
「急いでレポート出してきちゃう。」
「わかった。ここで待ってるから。」
「あやね?熱…ヤダ…ホントだ…あやね、だいじょうぶ?」
「え…私…熱…あるの?」
「自覚症状もないのか…ちょっとまずいな…」
玲美は真紀を待って、二人で付き添ってあやねを実家へ送ることにした。病院にもできるなら付き添うつもりだ。
やはり絢音は途中から熱が上がってきたようで、少し苦しそうにしている。
なんとか歩いてはいるものの、足元がフラフラしており、支えていないと危なっかしい。
ようやく最寄り駅まで到着すると、タクシーに乗り、あやねの実家に向かった。
家には運良く母親がおり、事情を説明して急いで近くの病院に車で連れて行ってもらうことになった。もちろん玲美も真紀も一緒に付き添っている。
その後絢音は検査室に連れて行かれ、検査を受ける事になった。
「ごめんなさいね、お二人に付き添っていただいて。」
「いえ、いいんです。あやね…だいじょうぶですか?随分無理をしているみたいで。」
「そうなのよ…食事も全然食べてないみたいだし…」
「痩せちゃったなって思ったんですけど…食べてないんですか?」
「えぇ、夕食をね、用意しておいたの。はじめは食べていたと思ったのよ。」
「思った?」
「えぇ。食器をきれいに片付けてたから、食べ終わって片付けていたのかと思ったの。」
「食べて…なかったんですか?」
「多分…無意識だったんだと思うけど…一口だけ手を付けたら、全部処分したみたい。」
「え…」
「でも…絢音はそれを自覚していないのよ…」
「…それって、まずいんじゃ…」
「えぇ。それで、今日病院に連れて行こうと思っていたの。1週間以上前からずっとそう言っていたんだけれど…どうしてもレポートを出しに行くって言って、きかなかったから、大学から戻ってきたら今日は無理矢理にでも病院に連れて行こうって思っていたの。だから二人に来てもらって本当に助かったわ。」
「そんなことになってたなんて…」
「征爾さんもお仕事で大変なようだから…でも絢音がこんな状態で…」
「そう…ですよね…でも…だ…樫村さんから連絡がないって…」
「そうなのよ…どうも今大変な状況らしくて…こちらには時々絢音の様子を確認するための連絡を頂いているの。ちょっとね…大変みたいで…絢音を巻き込みたくないっておっしゃってて…」
「え、巻き込む?」
「ほら…征爾さん…ハンサムじゃない?向こうの、とても偉い方…社長令嬢だったかしら…に迫られて困っていたらしいのよ…」
「え……」
「ちょうど昨夜、ようやくなんとかなったから、これから出国しますって、空港から連絡をいただいたの。帰国したらすぐ絢音を迎えに来ますっておっしゃっていたんだけれど…絢音に下手に伝えるとこじれちゃいそうで…征爾さんからも…できれば何も伝えないでほしいって言われていたから、直接会って征爾さんから話をしてもらった方がいいと思っていたのよ。あやねがこういう状態だから、私も主人も言わないでいたほうがいいって思っていたんだけど…あやねがこんなに追い詰められるなんて…」
「そう…だったんですね…」
「私達も、絢音が心配するようなことは無いって思っていましたけど、やっぱりそうですよね。」
「私達、先週マンションにお伺いしたんです。お水やりのお手伝いをするために。」
「あぁ、絢音が言っていたわね。いつも良くしていただいているんでしょ。ありがとう。」
「それでですね…あのお部屋を見ちゃったら、だ…樫村さんの溺愛っぷりがすごくて…」
「あら、わかったの?」
「もちろんですよ。樫村さん、絢音さんを溺愛ですよね。」
「そうなのよ。ちょっと親の私もびっくりなのよ。征爾さんってハンサムだし、お仕事も優秀で、そんな人が絢音をってね。もちろん絢音はかわいいわよ。でもほら、なんて言うの…絢音は普通の女の子で、雑誌やテレビに出てくるような人たちではないでしょ。でも征爾さんはどちらかと言うと、そちら側の人みたい系でしょ?」
「おばさんも…イケメン好きですか?」
「それはもちろん、普通よりも、かっこいいほうがいいわよ。征爾さんがね、絢音と交際をしたいって言ったとき、イケメンの息子ができるかもって、ちょっと舞い上がっちゃったわよ。」
「そりゃ…そうですよね…」
「あら、検査が終わったみたいね。」
3人は医師に呼ばれ、部屋に入るがそこに絢音はいなかった。
「あれ…絢音は…」
「ご家族の方ですか?」
「あ、私が絢音の母です。」
「では、ご家族の方だけお願いします。」
「あ、おばさん、私達、さっきの待合室で待っていますね。」
絢音の母親は診察室に話を聞きに入っていった。
「ねぇ、まき…さっきの話…」
「うん、やっぱりあの旦那があやねを捨てるなんてあるはずないと思ったのよ。」
「そうよね。でも…何…その社長令嬢って…」
「うん。私もびっくりした…何その話って…」
「でもさー…あやねの旦那だったらありえるよね…」
「まぁねー。」
「だってさ、うちの学科でも居たじゃない?無駄に勘違いしている女。それであやねに攻撃してきたりとかあったしさ。」
「うん。あった、あった。」
「旦那、相当辛辣だったよね。」
「うん。旦那ってさ、あやね以外には全く無関心だよね。」
「そう、そう。」
「なんか、あの二人って不思議じゃない?」
「不思議って?」
「なんだろう…持っている雰囲気っていうのかな?なんかちょっと私らとは違うような…」
「あやねが?」
「うん。」
「旦那も?」
「うん。」
「あやねの周りって…なんかこう…癒やしの空気みたいのがあるのよ。」
「あぁ、それは私も感じる。あやねの人柄だなって思ってたんだけど。」
「うん。まぁ、そうかもなんだけど…」
「それに旦那?」
「そう、旦那ってさ…人間離れしているっていうか…」
「まぁ、あれだけの美形だからねぇ…」
「そっちじゃなくて、雰囲気よ、オーラよ。」
「え、なにそれ?」
「なんかこう…魔王的なオーラよ…威圧感とか…人間ぽくないよね…」
「あー…それ、なんかわかる気がするわー」
「あやね、早く良くなるといいね。」
「そうだね。はやくうちらの癒やしの姫が戻ってほしいよね。」
「うん…」




