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似本平安鬼  作者: ユナ
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酒天童子


頭を覆ったまま動かない行成に、酒天童子は諭すように言葉を重なる。


「君はかつては陰陽師だった。

それは事実だ。

でも、今は違うだろう?」


「違う、俺は…陰陽師だからここに」


大蜘蛛退治に来た。

陰陽師じゃなかったら何のためにここにある。


「否、君は私と再びあいまみえ、跪く為にここにある。

大江山に帰ろう、----行成」


帰る。大江山。

酒天。仕える。


倒すべき怪異に対して、本来はあり得るはずのない思考が行成を支配する。

それがあの日の敗北の代償。

かろうじて逃れた宿命。

あの日、逃れられたのは呪が全身に行き渡る前だったのと、酒天の気紛れだった。


次は無かった。

行成は自分ではもう逃れられない。

思考が酒天に反する意思を阻害する。

酒天のことを想うだけでフワフワし、地に足が付かないのだ。


「酒天、さま…俺は」


行成はユラユラと立ち上がる。

酒天の深紅の瞳に惹かれるように、行成が一歩踏み出した、その時。

誰かが行成の手を引いた。


「ダメです、行成さま」


「?」


行成は自身の式、綾香を視界に入れはしたものの、認識しているとは思えなかった。

ただふわりとほほ笑むだけ。

綾香は咄嗟の判断で行成に手刀を入れ、気絶させる。


「あまり行成を痛めつけるのは感心しないよ?」


「どの口が言うの!あんたが行成さまに幻術か何か掛けたんでしょ」


「行成は私の物だよ?」


「!?行成さまが怪異のものの訳ないでしょ!」


酒天は物わかりの悪い子どもにでも相対するように困った笑みをうかべた。


「君も式。立派な怪異だろうにね。

まぁいいや。

また迎えにくるって伝えてね」


酒天は小瓶を手に持ち、地面に振りかける。

すると、たちまち周囲は砂埃に覆われた。

このまま酒天を視界の悪い状況で、行成を抱えたまま追うのは危険である。

綾香は行成を背負い、銀の果実を懐にしまって霊道を脱出した。


後日、目を覚ました行成とともに桂山を再び訪れることになるのだが、霊道はすでになく、ただのさびれた村の跡だけが残っていた。
















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