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似本平安鬼  作者: ユナ
2/5

崩壊





「あなたが石川行成さま、でございますね」


日常は急に壊れる。


「あぁ、そうだーーー、と言うまでもないと思うがな、慈姑」


帝の遣いとして現れた知人に、行成は眉を潜めた。

彼の名は慈姑。

神秘的だとか神々しいとか言われるぐらい美しい奴であるが、中身があれなのである。

要するに、イケメンは遠くから眺めるものという言葉が一番当てはまる男だ。


「ふふ…久しいな、行成。

相変わらず面白いモノを連れている」


慈姑は綾香と若葉を見やり、笑みを深めた。

行成は二人を背でかばう。


「ーー俺の式に何かするようなら、不動明王の炎で燃やす」


行成は苛立ちを滲ませて、慈姑を睨む。


「おっと、それは勘弁願おうか。

さて、本題だ」


「最初から本題に入っとけよ」


「仕方無いじゃないか。

君の怒りと、彼女たちの畏怖。

それが見たいという衝動がどうにも抑えられない」


「やっぱ燃やすか」


「友人をサクッと燃やさないでくれ。

それと、この本題が重要だ」


「ふーん、どんな内容だ」


慈姑が笑みが不気味につり上がる。

こういう笑みの慈姑は、いつにもまして録なことがないということを行成は知っていた。


慈姑の手が行成を掴む。

思いの外、強い力で引っ張られ、行成はバランスを崩す。


「「行成さま!!」」


綾香と若葉が行成を呼ぶが、当の行成は慈姑の胸の中に倒れ込む。


「何する!?」


行成はもがくが、体格差が大きく、慈姑はピクリともしない。


慈姑は行成の耳元に口を寄せ、愉悦に満ちた口調で、


「ーーー都に戻れ。それが勅命だ」


と言う。


行成は栗色の目を見開き、崩れ落ちた。










それから慈姑は綾香と若葉にボコボコにされたが、満足そうな表情で行成に説明だけして帰っていった。


曰く、平安京が鬼に襲撃されて、陰陽師がほぼ全滅した。


曰く、帝は地方の陰陽師に帰京命令を出した。


曰く、その勅命を断れば、待っているのは死。


曰く、その襲撃の主犯格の名は酒呑童子。



(酒呑…)



行成は喉から競り上がってくるモノを必死に吐き出す。


綾香と若葉が気遣ってくれたが、礼を言う余裕すら今の行成には無かった。









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