003 妖精の決意
11/4まで6話連投予定
11/1 18:00 プロローグ
11/2 00:00 001
11/2 18:00 002
11/3 00:00 003
11/3 18:00 004
11/4 00:00 005
貴己くんが出ていった後、わたしはしばらく放心したように食卓を眺めていました。
……出ていくときの貴己くんの顔、真っ赤でちょっと可愛かったかも。
本人には流石に言えないですけど。
ふふ、と笑みをこぼしつつ自分の頬に手を当ててみれば、びっくりするくらい熱くなっていました。
どうやらわたしも貴己くんのことは言えないようです。
「……どうしちゃったんだろ、わたし」
ホントに、どうしちゃったんだろう。
――――『わたしをこの部屋においてくれませんか』
「〜〜〜〜〜!!」
思い出して、恥ずかしさのあまり食卓に突っ伏して唸ってしまいます。
本当はもっと下手に出るつもりだったのに。
当然の話です。
だって、わたしはお願いする側で。
貴己くんには何のメリットもなくて、むしろ迷惑でしかないはず。
だからもっと言葉を尽くして、感情を込めて。
言い方は悪いかもしれないけど、彼を籠絡させるつもりでした。
でも、気づけばあんなにまっすぐ切り出していた。
受け入れてもらえたから良かったものの、突っぱねられてたらどうするつもりだったんだろう。
なんて、他人事みたいにさっきの自分を責めてみるけど……無理です。
椅子の上で膝を抱えれば、思わずため息が漏れ出ました。
「……無理ですよ、あんなの見ちゃったら」
全てを手放してしまったかのような、あの瞳。
――――『それで死んだらそれまでっていうか、それが自分の運命だったんだなぁって割り切るしか……』
思い出して、ぐ、と奥歯を噛みしめる。
あんな表情と返答、間違っても十八歳の少年がしていいものじゃない。
わたしが彼の年の頃なんて、周りの同級生は未来なんてその時考えればいいって楽観視しているか、その先を見据えて不安げになっているか、やりたいことがある子は使命を帯びたような顔つきをしていた。
もちろん『死にたい』って希死念慮に悩んでる子も、少数だけどいました。
でも、貴己くんみたいに『死んだら仕方ない』なんて後ろ向きに笑ってる子は一人もいなかった。
そもそも、あんなのは笑ってるなんて言わない。
貴己くんはとても良い子だと思います。
まだ触れ合った時間は本当に少ないけど、(自分で言うのも何だけど)初対面の怪しさ満載のわたしでも尊重してくれました。
それも、一人の女性として。
大人でもあそこまでできる人は多くありません。
だからこそ、余計に胸が苦しくなります。
あんなに人の良い彼が、なんであんな顔をしなくちゃいけないんだろう。
いったい何が彼をああさせたんだろう。
わたしにはわかりません。
きっと、まだ知る資格もありません。
けれど。
いいえ、
だからこそ、
寄り添いたいと思った。
『なんとかしてあげたい』なんて、おこがましいことは言わない。
ただ、崩れないように、隣で見守ってあげたい。
崩れそうになったら、そっと抱きしめて、形を保ってあげたい。
そう思ったんです。
連投はこれで最後になります。
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