第二話「邪魔をしないで、お姉ちゃん!」
「今日は、竹鶴さんから『一緒に勉強しよう』と誘われまして……」
律儀なことに、高橋くんは、姉に対して「何しに来たのか」を説明している。
こういう部分は彼の素敵なところだと思うし、私も気に入っているが……。今日に限っては、少し厄介だった。
「あら! それなら、リビングのテーブルを使うといいわ。ちーちゃんの部屋だと、一人用の勉強机しかないもの」
「でも、僕と竹鶴さんでリビングを占拠したら、ご迷惑なのでは……?」
「大丈夫よ。父さんも母さんも夜まで帰ってこないし、私は私で、自分の部屋にいるつもりだから」
「ああ、それでしたら……。ありがとうございます」
また高橋くんは、ぺこりと頭を下げる。
私も彼に合わせて、微笑んでみせるが……。
内心では「これでは計画が丸つぶれ!」と嘆いていた。
もちろん「一緒に勉強しよう」は口実ではなく、本当に勉強するつもりもあった。だが、それだけではないのだ。恋人らしくイチャイチャしよう、という気持ちがあるからこそ招いたわけだし、そのために私の部屋へ連れ込むつもりだった。狭い机で肩寄せ合って勉強するのも、恋人同士ならば困ることはなく、むしろ楽しいはず、と考えたのだ。
私と高橋くんが付き合い始めたことは、既に姉も承知している。ならば私の乙女心だって理解しているだろうに……。
こちらに向かってニコッとする姉に対して。
心の中で私は「邪魔をしないで、お姉ちゃん!」と叫んでしまうのだった。




