13-5
ヤ「透明化、便利です!」
見えない敵ってそれだけで対処できないからな。
イ「・・・憑依温存した。多分、もっと強い敵が出る。」
レ「怖いこと言うなよ。」
イルナの憑依は複数あるが、どれか一つ使うだけで精神力を消耗するので温存で正解だろう。
ケ「あたちも久しぶりに暴れて見たくなるぜ!」
ケルベロちゃんはシュッシュとシャドーボクシングをしているが、それだけで近くの草が切裂かれて飛び散る。
レ「万が一、悪魔が出たら頼むわ。」
オ「じゃあ、俺が相手してやろう。」
声のした方を見ると、ヤギの角と蝙蝠の翼の生えた人体模型の様な悪魔が浮いていた。弥生は鑑定をかける。
オリヴィエ(悪魔):HP3000万、MP2300万、攻撃力300万、防御力250万、素早さ400万、魔力250万、スキル:???
ケルベロちゃんも鑑定しているようだ。
ケ「ちっ、ルバート並みの悪魔か。」
オ「俺をあんな兵卒長と一緒にするな。俺は大天使だぞ?」
俺達が知っているルバートは、アヌビスより弱い悪魔だったからな。
ケ「元大天使だろ? どうやって入り込んだ? 今はあたちすら入り込む隙の無い結界が張ってあるはずだが?」
オ「はっ、ずいぶん前からルバートが入り込んでいるのに、俺が今入り込んだと思っているのか?」
ケ「結界を張る前に入り込んでいやがったか。」
ヤ「あの人、思ったより親切に答えてくれますね。」
レ「ああ、見た目が人体模型のくせにな。」
オ「雑魚は黙ってな。」
オリヴィエは右手に闇の剣を生み出すと、弥生に投げたようだ。弥生に2499600。弥生に闇の剣が刺さり、弥生がコアになるまで攻撃に気づけなかった。それを見たイルナは「憑依!」と唱え、アヌビスを憑依させた。
イ「おのれ、よくも弥生を!闇の球!」
イルナは闇の球をオリヴィエに飛ばすが、ダメージは0だ。
ケ「手を出すな! さっさと逃げろ!」
ケルベロちゃんはそう言うが、オリヴィエは逃がす気は無いようだ。
オ「逃がすわけが無いだろう、衝撃拳。」
オリヴィエの右手の先が消えたように見えた。イルナに2965000ダメージ。次の瞬間イルナは吹き飛ばされてコアになった。
ア「イルナ! くそぅ!」
憑依が解けて分裂体に戻ったアヌビスは、オリヴィエに魔法を唱えようとした。すると、オリヴィエの目が光る。
ケ「やめろ!」
ケルベロちゃんが制止するより先に、アヌビスは石化した。宙に浮いていたアヌビスは、石化によって浮力を失い、落下と同時に衝撃で砕け散ってコアになった。
オ「人間は殲滅だ。闇の球。」
オリヴィエは俺に闇の球を飛ばすが、ケルベロちゃんが間に入って受ける。ケルベロに1191000ダメージ。ケルベロちゃんを中心に、クレーターが出来、砂ぼこりが立つ。その中から、ケルベロちゃんが飛び出てくる。そして、コアを3つ俺に渡した。
ケ「ちゃんと持ってろ。しばらくしたらラヴィ様が来られるはずだ。」
オ「衝撃拳。」
オリヴィエの右手が消えたと思ったら、ケルベロちゃんが右手で防いだ。ケルベロに444000ダメージ。そこからは、俺の目には見えないが、ケルベロちゃんとオリヴィエが格闘戦をしているようだ。お互い100万ダメージくらいずつ与えているようだが、自己回復の方が早いのか、決着はつかないようだ。
ラ「待たせたわね。ケルベロ、時間稼ぎはもういいわよ。」
いつの間にか、ラヴィ様が到着していた。ケルベロちゃんはオリヴィエから離れると、ラヴィ様の側に来る。
オ「高ランクの女神だと!! 転移!」
オリヴィエはラヴィ様を鑑定したのか、負けを悟ると転移する。しかし、結界があるため転移できなかったようだ。
ラ「ふぅ、頑丈な結界も考え物ね。私も転移出来ないのだから。」
そういうと、ラヴィ様はオリヴィエに近づいて行く。
オ「く、くるな!」
ラ「何か言い残すことはあるかしら?」
オ「我ら悪魔に栄光あれ!」
そう言うオリヴィエに、ラヴィ様が何かをしたらしい。オリヴィエに597500000ダメージ。ケルベロちゃんとの戦闘に時間がかかっていたのが嘘の様に、オリヴィエはあっさりと真っ黒なコアになった。それを拾ってアイテムボックスに入れたラヴィ様は、俺から弥生とイルナのコアを取る。
ラ「殺されたくなかったら、目をつぶっていなさい。」
俺は目をつぶる。
ヤ「はれ? ここは?」
イ「・・・蘇生・・した?」
弥生とイルナの声がしたが、おそらく全裸なのだろう。俺は理性を総動員して目をぎゅっとつぶる。
ラ「もう目を開けて良ですよ。」
俺はそっと目を開けると、いつもの弥生とイルナが居た。
レ「よかった・・・。」
俺はへたり込むと、アヌビスのコアをまだ持っていたことに気づいた。俺はアヌビスを復元する。
ア「むむっ、敵はどこじゃ!」
ラ「もう倒したわよ。」
アヌビスは弥生たちと違って復元だし、神装備だから服は着たままだ。アヌビスはそれでもキョロキョロと辺りを見渡し、敵が居ないことを確認してからしゃがみこんだ。今回はさすがにこれ以上探索する気力も無く、帰ることにした。
帰る途中、どこからかまたエキドナが出てきて「敵だ!敵だ!」と攻撃しようとしたが、一緒に居たラヴィ様に睨まれると、ビクリとしてまた逃げて行った。何がしたいのだろうか。ラヴィ様の護衛の甲斐もあって無事ダンジョンからビジネスホテルに戻ることが出来た。
弥生は部屋でぼけーっとしている。
レ「どうしたんだ?」
ヤ「コアになるってあんな感じなんですね。」
弥生がしみじみと語る。弥生は普段から余り攻撃も受けないため、死をほとんど感じていなかったみたいだ。アヌビス、イルナに関しては一回死んでいたこともあるので、そこまでではないみたいだ。
俺の最初はどうだったろうか?考えてみたが、普通に朝起きた様な感じだった気がする。
レ「俺は正直、あまり気にならないな。」
ヤ「あれは、まるで虫を殺すような目でした。殺気なんて無く、ただ邪魔だからと・・・。」
弥生はそう言うと、両手で肩を抱く。体に痛みは無いが、心に痛みが残ったようだ。
ヤ「今日は、もう寝ますね。」
そう言って弥生は着替えに部屋に戻った。こってり絞られて疲れたのか、ぐったりとしたワルキューレが戻ってきた時には、弥生はすでに寝ようとしていた。
レ「戻ってきて早々に悪いが、闇の壁を張ってくれないか?」
ワ「ああ、分かった。源殿・・・いや、なんでもない。」
ワルキューレは何か言いたそうだったが、言うのをやめると、壁を張る。
イ「・・・私も一緒に寝る。」
イルナも気を利かせて弥生と一緒に寝るようだ。
ア「じゃあ、我も一緒に寝るのだ!」
いつの間に飯を食ったのか、ほっぺたにハチミツを付けたアヌビスも着替えに行った。
レ「アヌビス、ちゃんと歯磨きはしろよ。」
ア「わかっているのじゃ!」
まあ、虫歯にはならないと思うが、どうなるかは分からないからな。
ヤ「ありがとう、イルナちゃん、アヌビスちゃん。」
壁の向こうから、弥生の声が聞こえてきた。俺は小部屋でビールと枝豆で一杯やると、明日の事について考えた。
俺は風呂に入って歯磨きをすると、布団に入って眠った。




