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レ「これはずるにはならないのかな?」
メ「うんしょ、やっと繋がった!」
メィルはまるで貞〇が井戸から出てくる様に床から現れた。
メ「千里眼で見れないし、直接向かおうと転移したら3階に入れないし、エレベーターや階段も使えないし。仕方ないから、透過で向かったら異様に空間が長くなっててやっとのことで着きました・・。」
メィルは相当疲れたのか、床に這ったままだ。顔を上げてワルキューレを見ると、速攻で立ち上がってピンと背筋を伸ばした。
メ「ワ、ワルキューレ様!お疲れ様です!このようなところに何かご用ですか!」
メィルは90度お辞儀すると早口でそう言った。
ワ「そうかしこまらなくても良い。少し問題が起きてな、この者たちと同行する事になった。」
冷静をよそおっているが、ラヴィ様に対する態度をみるに、少しの問題じゃないだろうな。しばらくワルキューレとメィルで対話をしていたが、一旦区切りがついたみたいだったので、メィルに小声で話しかけた。
レ「なあ、メィル。ワルキューレって偉いのか?」
弥生が鑑定してると思うが、メィルに聞いてみる。
メ「ワルキューレ・さ・ま!だよ!7,8百年前に大きな活躍をしてあっという間に見習いから女神に昇神したエリートだよ!」
あれでエリートなのか。それにしても、女神になったばっかりで7百年前って、俺達と感覚が違いすぎるな・・。
ヤ「ちなみに、メィルちゃんはいつから見習いなんですか?」
弥生は素朴な疑問を聞いた。
メ「私?私は1500年くらい前からかな?偉い神様だと、こっちの宇宙誕生前とか、数十億年とかが当たり前みたいだし。」
思ったよりずいぶん長い間だな。どっちにしろ偉くなさそうだから呼び捨てのままでいいか。そして、メィルの声が大きかったのか、ワルキューレが会話に入ってきた。
ワ「私の事はワルキューレと呼んでくれていい。ところで、女神については知っているか?知らないのであれば、少し説明をしようか。」
レ「ぜひお願いします!」
俺達は強い人が偉いくらいにしか思っていなかったが、実際は逆で偉くなったら強くなるらしい。女神ランクは女神予備軍→見習い女神→女神Ⅴ→女神Ⅳ→女神Ⅲ→女神Ⅱ→女神Ⅰ→下級神→中級神→上級神→最上級神となっており、男は呼び方が男神となるだけで基本的に同じ。
女神予備軍は、一定の知能・能力を持つ個体が女神Ⅲ以上のランク者の推薦などで選定される。見習い女神は女神予備軍の中から一定の成果があった者が選定され、強さは予備軍も見習いも大して変わらないが、女神のランクは1つ上がるごとにステータスがおよそ10倍になるらしい。
ランクは見習い女神が試験をクリアしたらⅤ、評価が上がるとランクが上がり、能力によって1惑星~1太陽系レベルの星の管理を任される。管理する星に知的生命体が居ない場合は管理するための生命体を作ったりもする。
下級神は女神Ⅰのランク者が銀河系を管理できる能力があると認められれば昇神。
中級神は下級神が銀河団を管理できる能力があると認められれば昇神。
上級神は中級神が宇宙を管理できるようになると認められれば昇神。
最上級神は神の中で最高の能力を持つもので、管轄は全宇宙、全次元。現在ははじまる様が最上級神。
ワ「私は英雄を選定するのがうまくてな、女神の試験はすぐにクリアできた。」
メ「ですです!なので私たち見習い女神から見ると、ワルキューレ様は超エリートなんだよ!」
メィルは興奮気味に叫んでいる。それにしても気の長い話だ。
レ「誰でも神になれるのか?」
特に神になる気は無いが、なれるかどうかだけは聞いておきたい。
メ「場合に寄るけど、まず上位女神様に選ばれて、評価値が溜まればなれるよ?」
ワ「私も元人間だ。たまたま争いのある時代だったから評価を貯めやすかったが、普通は1000年くらいかかるな。」
ヤ「じゃあ、最低寿命が1000年以上無いと無理ですね・・。」
ワルキューレみたいに特例じゃない限り、俺達普通の人間じゃほぼ無理だな。
メ「でも、女神になってさえしまえば寿命ではほぼ死ななくなるよ!」
永遠の命は欲しい奴は欲しいのだろうが、俺は要らないな。そんなに寿命があっても星を見守るだけとか暇すぎる。
レ「で、結局メィルは何しに来たんだ?」
メ「さっきも言ったけど、千里眼で様子が見れなくなったから直接見に来たんだよ!逆に聞くけど何があったの?」
ワ「それについては今ここで話すことは出来ない。そろそろ昼食の時間だ、一旦戻らないか?」
ヤ「そうですね!お腹は空きましたし、食堂へ行きましょう!」
俺達はエレベーターに向かうと、メィルが不思議な顔で聞いてきた。
メ「見てない間にクリアしてたの?うーん、ずるの予感がするけど見てないし・・、今回はセーフで!」
一瞬ワルキューレににらまれたのが効いたのか、深く追求されずに今回は見逃されたようだ。
食堂に行くと、丁度キッチンからはじまる様が出てきた。
は「おう、ご苦労さん、今日はいい魚が入ってるぞ?寿司なんてどうじゃ?」
ワ「は、は、は、はじまる様!!??なぜこのような場所でそのようなことを!」
ワルキューレはひざまずくと、俺達にも「頭が高いぞ!」と言ってきた。確かに一番偉い神様らしいけど、俺達にとってはそれこそ雲の上すぎて実感がわかないし、別に上司ってわけでもないしなぁ。そういやメィルも全然かしこまらないな、あいつにとっては社長みたいなもんじゃないのか?
は「わっはっはっ。今は単なる料理長だ!それよりどうだ?寿司でいいのか?」
ヤ「いいですね!どんなネタが入ってますか?」
メ「私は大トロがいいです!あと、ウニとイクラ!」
俺は湯飲みに緑茶を入れると、人数分持ってきた。寿司にはやっぱりお茶だよな。ワルキューレはどう対応すればいいのか迷っているようだが、はじまる様がキッチンの奥に消えると、俺達と一緒の席に着いた。
四角テーブルで一辺に一人ずつ座る。醤油の準備や、ガリの準備などをしていると、はじまる様は寿司桶にいろいろなネタを詰めて持ってきてくれた。
は「お代わりはいくらでもあるから、好きなものを食べな!」
皆「いただきます!」
俺達は合掌すると元気よく食べ始めた。
メ「大トロいただき!」
ヤ「ヒラメ、マグロ!」
レ「俺はイカかなとりあえず。」
ワ「私も食べていいのだろうか?最高神様の手作り・・。」
ワルキューレは恐れ多いと感じているのか、なかなか手が出ないようだったが、改めて勧めると食べ始めた。
ワ「この玉子、うまい!」
ワルキューレってもしかしてワサビ苦手なのか?それとも遠慮しているのか?まあ、好きなものを食べろって言われたから別にいいか。
レ「ちょ、いつの間にかカッパ巻ばっかりじゃねーか!」
ヤ「まぁまぁ、注文すればいいじゃないですか。」
メ「そうだよお兄ちゃん、マスター、大トロお代わり!」
ヤ「あ、私はあなごをお願いします!」
は「はいよ、お待ちどう!」
メィルと弥生は遠慮なく注文し、ワルキューレはやはり遠慮してるのか、カッパ巻を食べていた。
皆「ごちそうさまでした!」
レ「いつも飯はうまいけど、今日の寿司は高級店なんかよりよっぽどうまいな!」
ヤ「そうですね!高級店は行ったことないですけど、回転ずしの100万倍おいしいです!」
レ「まあ、俺も接待くらいでしか行ったことないけどな!」
ヤ「私は回らないお寿司屋自体、誕生日くらいしか行ったこと無いです・・。」
ちょっと弥生がしょんぼりし始めたが、「今日の飯がうまかったからそれでいいじゃないか。」と言ったら「そうですね!」と機嫌を直したようだ。




