第14笑【子豚の丸焼きはいかが?】
「つまんねーなあ…」
ピエロ君がいなくなってから、大将はこの場の笑いを持て余していた。場の笑いを上手くコントロールできていない。
とっておきのいじられ役の居なくなった空間は寂しいものだ。だが、ピエロマスターはそれを許さない。
「あたしっやっりまーーすっ!」
笑顔でブー子がそれに割り込む。
「じゃあ、ブー子、こっち来て」
相方(といってもあのオツボネ様だ)がブー子を招きよせる。
だが、ノリノリの言葉とは裏腹に、その顔に生気は無く、焦点の合わない瞳でシニカルな笑みを湛えている。
「やっぱり…心まで完全に壊れちゃたのね…」
私のそんな呟きもよそに、オツボネ様は淡々と、いつもの作業をあたりまえにこなすように、ブー子をいじってゆく。
「つめたいっ」
「それに変なにおい…これってもしかして…」
「そのトーリっ!」
言う様、相方はブー子の頭に向かって火の付いたマッチを投げ入れる。
そして、かけられた液体はウォッカだった。
「ぶひひひひいいいーーー!」
頭を派手に燃やすブー子。
そのブー子を
「まっる焼き」
「まっる焼き」
「まっる焼き」
クラス中の大合唱が包んでいく。
「異様だ…」
私の吐き気は止まらない。
ピエロ君の頑張りはなんだったの…?
何も変わっちゃいなかった。ピエロ君があんなことになっても、このクラスの笑いの構造自体は何も変わっちゃいない。むしろ悪化している。
吐き気を抑えて、私は女子トイレに駆け込む。便器に盛大に吐きフラフラになって個室を出る。目に涙を溜めて、哀しみを抑え切れずに呟く。
「どうして…とうしてなのよ!ピエロ君の今までの頑張りはいったいなんだったの…」
「なめんなっ!」
そんな弱みを真っ向から否定する言葉が響く。気付けば頭をチリチリにしたブー子がトイレの入口に立っていた。そして私の胸ぐらを掴みながら恫喝するように言葉を吐く。
「いいか!いじられ役は、みんな、みんな、舞台袖で泣いているんだ!……人知れず、人知れずなあ!」
殺されるかと思った…そう思った。
それほどまでにブー子の瞳は私を射殺してもまだ足りないといわんばかりの怒りを宿していた
そしてどこからか聞こえる声
「やっぱりな…『笑い』は容赦ねえ…次の獲物を求める…思ったとおりだ…ハーッハッハッハアーーー!」
その声はどこかピエロ君に似ている気がした。
いじられ役は消耗品扱いだ!その大将の考えは私を怒りと憎しみに染めた。ピエロ君が脱落したら今度はブー子が消耗品として使い潰されていく。そして賛辞を受けるのはいっつも大将達いじる方、いじられ役は報われない。だから許せない!!!あいつらはいじられ役の『替え』が効くとおもっている。その根性をたたきなおしてやる!!
私は怒りを新たにした。




