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ミリー視点~わたくしの過去~

此処はわたくしの暮らすコークス王国、わたくしの……家族。



国王ラス・ベアトリーチェ・ラ・コークス

第一王妃マリア・ド・ナージェ

正一品側室ラバー・ド・ニック

正一品側室ソフィー・ラ・アレン


長男ハンス・ベアトリーチェ・ラ・コークス王子


長女アリア・ベアトリーチェ・ラ・コークス



次女サーシャ・ベアトリーチェ・ラ・コークス


三女ローズ・ベアトリーチェ・ラ・コークス


四女ミリー・コークス・ド・ニック(側室ラバー・ド・ニックの娘 )


五女エメラルダ・ベアトリーチェ・ラ・コークス


次男リオン・ベアトリーチェ・ラ・コークス王子


六女ジョセフィーヌ・ベアトリーチェ・ラ・コークス王女


三男ジョセファ・ベアトリーチェ・ラ・コークス(ジョセフィーヌと双子)


七女アンヌ・ド・コークス(元侍女ライリーの娘 )


八女サラ・コークス・ド・アレン(側室ソフィー・ラ・アレンの娘 )





サラの下にお披露目の儀を終えていない姫が六人いる。




この国の名前の決まり

コークス王国の正妃の子は、名前・ベアトリーチェ・ラ・コークスという名前になる。

側室の子は、名前・コークス・ド・名字となる。王子は例外とする。

正妃以外の女から生まれた王女は、名前・ド・コークスとする。

コークス王国の王族の証であるコークスは、直系の王族のみに与えられる。



名前に「ド」が入っているのは側室の子であるということ。正妃であるマリア王妃も、隣国の王の側室の娘だ。



コークス王国の王女リアこと国王の長女のアリア・ベアトリーチェ・ラ・コークスは、絶望していた。

父親のラス・ベアトリーチェ・ラ・コークスが、連れ去られたのだ。

よりによって隣国の魔女と呼ばれている女王ルビー・ラ・カーフィスに。

ルビーは、リアの母の姉だ。叔母にあたる。

そして、魔力を持っている。

ルビーは前王妃の娘で、マリアは側室の娘だった。跡を継いだものの、未だに独身で、欲深いことで有名だ。

身分差別が激しく、マリアを見下していた。

ルビーは、ラスが好きだったらしい。

なのに自分より身分の低い妹が嫁いだから、許せなかったようで何度も誘拐しようとしていた。

今までは、全て失敗に終わったものの、諦めていなかった。

十六年もの間に何度も母妃を暗殺しようと人を送ってきたことか、そばで見てきたリアは、どれほど辛かったか。

狙いを変えたのだな、魔女。

父上は、私が絶対に救い出してみせる。


「母上、失礼致します。」

母は、ベッドのところで泣いていた。傍にはティアもいる。

「リア?」

顔を上げると、私の名を呼んだ。

「母上、わたくしが父上を助けに行ってまいります。兄上が行って何かあったらこの国は終わってしまいます。行かせてください。お願いします、母上」

母上は、驚いた顔で言った。

「危ないわ。お姉さまを怒らせたらただじゃ済まないの。お願い、危険な事はしないで。リアは女の子なのよ。」

「私が死んでもサーシャがいます。でも、兄上は一人しかいないのです。第二王子はまだ小さいから…」

母はふぅ、と息を吐いて言った。

「ダメ、と言っても行くのでしょう。」

「はい」

母上は、凛とした王妃の顔になった。

「ならば止めません。必ず、生きて帰って来なさい。」

「母上、ありがとうございます。では、明日には出発できるようにしておきます。」

言った瞬間、リアは部屋を飛び出した。

リアが出ていったあとマリアは、メイドに

「サーシャを呼んでくれ」

と頼んだ。

「かしこまりました」

さすがは訓練されたメイド。

王が誘拐されても動じない。

というか、慣れてしまったのだろう。王妃の暗殺未遂が多すぎて。

色々な手を使って殺そうとしていたから。


しばらくするとコンコンとドアがノックされて

「母上、失礼致します。サーシャです」

サーシャが入ってきた。

「サーシャ、リアがラス様を助けに行くそうです。誰かが王女の公務をしなければなりません。やってくれますか?無理だと言うならばローズか、ミリー姫に頼みます。二人とも女帝学の勉強は始まっているはずですから。」

「やります。母上」

しっかりした意志を持っているサーシャは、王女としての仕事をこなしてくれるだろう。

「では、日雲王国の王子花雲様の即位式についての仕事を任せます。代々王女の仕事ですから、ローズ達と協力しなさい。即位式に出席できるのは14の年以上の王女で、婚姻できる年齢であること。」

サーシャは、十四歳から結婚できる我が国では婚姻できる年齢だ。

ローズとミリー姫も。

三人の中の誰かが即位式に行く事になる。

「母上、即位式という事は、王子様の妃も選ぶと?」

サーシャは賢い。

一の情報で十を得る。

「我が国から嫁ぐのかは分かりませんが、即位式、妃選びの儀に出るのはしきたりなのです。リアはもし帰って来ても婚約者がいるからサーシャか、ミリー姫かローズしかいないので、三人で決めてくださいませ。」

王子がいる国の王女が他国に嫁ぐのは王女の務めである。

「話し合ってまいります。では、失礼致します」

サーシャが去っていった。もう、嫁ぐことの出来る歳なのだな…。


ローズとミリーの学習部屋に行き

「ローズ、ミリーこれから私の部屋へ来てくれるか?大事な話がある」

というと、

「「はい、サーシャ姉上様」」

返事も教育されている。

この国では身分や歳が下の相手に使う言葉と目上の人に使う言葉が厳しく使い分けられている。

ただし、自分の部屋の中では自由な口調となることが許される。

サーシャの部屋は瑠璃宮の二階にある。

サーシャは、薄紫色のソファーを指さして

「二人とも、そこに座ってまってて」

と言った。

ローズとミリーは「失礼致します」

と、言った。

茶を入れて持っていくと、

「ローズ、ミリー、二人に話があるのです。アリアお姉様が父上を助けに行くそうなのです。ですから、王女の仕事は私達がやるようにと仰られました。近々日雲王国の王子の即位式があります。もしかしたら妃になるかもしれない。でも、誰かが行かなければならないと聞いています。どうしますか?」

二人はポカンとした顔で聞いていたが、理解したのか考え始めた。

先に口を開いたのはミリーだった。

「サーシャお姉様、お姉様は、行きたいのですか?」

「正直言うと、行きたくはないよ。でも、二人が嫌なら私が行く。」

「ローズは?」

ミリーが聞いた。

「私…行きたくない。」

そう言って俯いた。

「分かった。じゃあ、ミリーはどうなの?」

「私、行きたいです。私は外国に行ったことがないし、結婚するとも限らない。それに、この国にいると、側室の子って貴族の跡継ぎともなかなか結婚できないから。」

そう言って笑った。

「無理してない?いいんだよ?行きたくなくても誰も責めないよ」

「ミリー、どうして?」

ローズは戸惑っていた。

「ローズは、好きな人いるでしょ。身分は同じでも正が付く王女なんだから結婚できるはずだよ。私は好きな人とかいないしね。」

シーンとした空気を終わらせるかのように部屋がノックされた。

「失礼します。サーシャお姉様ぁー」

「エメ?ジョセフィーヌとリオンも?どうしたの?」

言うが早いが室内に入ってきた。

「お母様が王室会だって言ってました。」

「みんなしゅーごーだって」

と、口々に言う。

「どこで?」

「あっ、ローズお姉様。会議堂の五階のオートロックの部屋だって言っていました。」

「あの、私もですか?」

「ミリー姉様?そうです。王女と王子全員だと聞きました話し合える歳の人は。」


会議堂は、遠い。

通路を通って行くだけで時間がかかる。

王女の腕輪についている宝石はオートロックを解除できるようになっている。

中に入ると、マリア王妃が上座に、ラバー妃とソフィー妃はその左右にある椅子に座っていた。

ハンス、リオン、ジョセファは、その反対側に座っていた。

そして、アリア、サーシャ、ローズが王子達の右隣に座り、ミリーが左隣に着席した。

一番下の妹エメラルダはまだ幼いと判断されたようで、この場にはいない。

「皆の者、知っているとは思うが、我が国の王が、連れ去られた。長女アリアと騎士団が救出に向かうこととなった。敵はルビー・ラ・カーフィス。魔女だ。王を殺すことは無いはずだが長期戦に備え、ハンス王子は臣下とともに公務をせよ。」

「謹んでお受け致します。王妃様」

装飾の剣を掲げ跪いて、礼をした。

「アリア王女は、明日の朝ここを発て。必ず王を助けるのだ。」

「謹んで、お受け致します。必ず、ご期待に添える様に致します。」

貴族の礼をした。

「ミリー・コークス・ド・ニック王女」

ミリーはフルネームだな、と思った。

「はい」

やや緊張した声で返事をする。

「日雲王国の王子花雲様の即位式、選后式に、向かえ。そしてコークス王国の繁栄を」

「謹んでお受け致します。ご期待に添える様努力致します。」

力強く答えたミリーを見てラバー妃は

「ミリー……どうして…」

と、小さく呟いていた。

「では、王女諸君は解散とする」

「「「お先に失礼致します」」」


ラバー妃が突然叫んだ。

「何故、サーシャ姫もローズ姫もいるのにミリーを日雲王国に?納得できません。考え直してください王妃」

「ミリー姫が行きたいと言ったのだ。」

驚愕の表情で

「嘘よ…どうして?ミリー」

と呟いて会議堂を出て行った。


「ミリー」

「お母様」

ミリーは振り返って笑顔を見せた。

「ラバー妃様、ご機嫌麗しゅう」

「ミリー、納得できません。なんで貴方が日雲王国に?命令されたの?行きたくないならいいのよ?」

「お母様、そんなに必死に言わなくても、私が行きたいって言ったんですよ?それに、お母様にはサリーがいます。婚姻で一族を助けるのは私が出来ます。跡継ぎの王子と結婚のチャンスがあるなんて側室の娘である私には幸せです。」

「でも………」

「もう決めたんです。リア姉様も危険に飛び込むのに私が何もしないのは嫌なんです。」

「日雲王国にはメイドも連れて行けないのに?」

「はい」

「分かったわ。お願いだから帰ってきて」

「出来れば」

ラバー妃は会議堂に戻って行った。


やり取りを聞いて

「ミリー、ごめんね」

ローズはしゅんとした。

「ローズは悪くないわ。大好きよ。それに、結婚するって決まったわけじゃないでしょ。」

「日雲の即位式に行った姫は毎回側室になってるじゃない」

ミリーはくすくす笑った。

「私はローズほど美しくないもの、大丈夫よ。それに、王子ってかっこいいんでしょ。会えるのが楽しみ」

「前向きで羨ましいわ、ミリー。私、初恋が忘れられないもの。」

と、寂しそうに言った。

「明日の朝がアリアお姉様の出発で、夕方がミリーの出発だって。」

サーシャが言った。

「父上いなくても、あんま変わんないねー。」

「ローズ、声に出して言ったら誰が聞いてるかわからないでしょ!」

「あっ、やば」

三人してキョロキョロ辺りを見回す。

運良く誰もいなかった。

「あー、良かったー。告げ口とかやばいもんね。」


その頃、会議堂では

「ハンス王子、縁談が来ていますよ。日雲王国の王女と、雲雀王国の王女、帝国の皇女と、各国の貴族の娘、後、我が国からは宰相の娘と王の妹の娘が縁談を持ってきています。正妻はなるべく貴族になさい。あとは任せます。もう十八なのだから早くお決めなさい。」

「わかりました。母上」

ハンス王子の顔は、暗かった。


ハンスは城の外の公園で父が重宝している大臣の娘クリスティーヌと話していた。

「なあクリス、僕の正妻になってくれないか?」

そう尋ねた。

「ハンス王子様の妃は、美しくて賢い人がなるべきです。それに、わたくしではきっと他の妻に嫉妬してしまいます。ごめんなさい。」

「クリスは賢いし美しいよ。僕はクリスが来てくれるならクリスだけしか妻は持たないから。」

「王子が産まれなかったら側室を持たなければならないのですよ。私は王子の事が好きです。だからこそ妻にはなれません。」

悲しそうに答えた。

「僕はクリスを諦めないから。」

クリスは振り返って笑顔で言った。

「では、父上に縁談の申請をしてくださいな。そうすれば私は王子様の物です。」


「クリスティーヌ!王子様から申請を受けたぞ!でかした。なんとしても結婚まで漕ぎ着けるのだ。」

「はい、父上」


次の日

「では、行ってまいります」

リアの出発日だ。

「行ってらっしゃいませ、どうかお気を付けて」

「仕事は頼んだぞ!」

振り返らずに言って出発した。

誰よりも強い姉は、父を助けて帰ると信じて疑わなかった。




これが私、ミリーが見た尊敬する姉を最後に見た姿だった。


私は、姉の記憶がある。


姉に貰ったお守りに触れた時、私に記憶が流れ込んできた。


そうして、悟った。




リア姉上は、もうどこにもいないのだと。

いなくなってしまったのだと。








なんで、この夢を見たのだろう。

あの時一言「行かないで」と、言えば良かったのだろうか?

無理やり飲み込んだその言葉を言って、行かせないことは出来たのだろうか?


姉上は、死んでしまった。もう……会うことが出来ないのだ。


その一週間後にはサーシャが、そして三日後にエメラルダが死んだ。

憔悴しきった王宮を襲ったのはそれだけではなかった。ソフィー妃とサラの母娘が襲撃に遭い、命を落とした。


度重なる襲撃に、民は聖女を求めた。


私が持つ記憶は、神力を持っていたリア姉上とサーシャ姉上のもの、そして私自身の記憶。


どうやら、私が聖女になるしか皆が生きる道はないらしい。


神は残酷だ。



礼拝堂のアデル様のところに相談に行くと、神の御心を聞くように言われた。

神は、「異世界からの転生者ヒイロを遣わす」と仰った。


数年後、高校生になったわたくしは、留学してきたヒイロと出会うことになる。

それはまた、ずっとあとのお話。

今回は、コークス王国の王女ミリーの過去のお話でした。

更新遅くなってすみません。

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