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コークス王国~麗しき貴人アデル~

「日雲王国から参りました、王女の樹夜と申します。以後、お見知りおきを」

樹夜の洗練された挨拶の後に私が続くのは比べられそうで嫌だった。覚悟を決めて笑顔で口を開く。

「同じく、日雲王国ロベリア女子学園から参りました王女の緋彩と申します。よろしくお願い致します。」

言い終えてお辞儀をした瞬間皆が拍手をしてくれた。

その後も異国とはいえ私たちは王族だからいじめられたりすることは無かった。

元は同じ国であった為、言語も同じなので会話は出来る。

授業が終わると、席に来て話しかけてくる令嬢がいた。

「緋彩さん、今日の放課後、空いていますか?わたくし、貴方と仲良くなれそうな気がしますの。」

金色に輝く髪と深い青い目。そして整った顔立ちの女の子、それは一人しかいない。

「確か、ミリー姫でしたよね?」

「覚えていてくださったのですか?嬉しいです」

「こんなに綺麗な方、覚えて当然ですわ」

ヒロインなだけあって笑うととても可愛らしい。

確かこの姫は聖女枠で出てきたはずだ。

ゲーム版でも小説版でも。

ゲームでは魔王を退治したあとたくさんのイケメンキャラとの恋愛が始まる。自分で好きなキャラクターを選んで進んでいくスタイルのゲームだ。

小説版では私の兄である第一皇子の妃候補として日雲王国に来るものの既に皇子はカズラという女を妃にしていて、その後出会った令息と結ばれるハッピーエンドだ。第一皇子と結婚できなくても落ち込まない。というか、そんなに好きでもなかったからという設定らしい。

でも、魔王覚醒イベントが起きるのは父王が死んだ後。それは回避したい。


「本当に行っていただけるのですか?え?緋彩さん?」

「あっ!はい」

いかん。聞いてなかった。

「あの、具合でも悪いのですか?でしたら無理はしなくても……」

「いえいえ、行きますっ!」

「では、これから行きますわよ」

行き先わからないけどまあいっか。


「あの、ここどこですか?ミリー姫」

ミリー姫はきょとんと首を傾げて言った。

「ここは礼拝殿ですけれども何か?」

「!?」

って私の推しキャラ、アデル・ローレンス様がいらっしゃる所じゃないですか!ローレンス公爵の息子にして管理官でもあるあの方に会えると?

確かアデル様は1番攻略が難しいとされていたキャラで、ミリー姫と結ばれるルートはなかったはず。続編の「トキメキ✩コークス王国(美少女戦士と麗しき貴人達)」だかなんだか言うゲームで攻略対象になっていたのだが、何故か付き合うまでは行かない。どうやってもアデルを落とせないと、このゲームは人気がなくなってしまったのだ。

何故美女にもなびかないのかと言えば、身分によってくる女に傷つけられたからだ。そして自分のことを好きでいてくれる女を傷つけないようにするため。(あとから小説でこじつけたような設定で)いくらこじつけでも多くのファンは涙した悲しい出来事があった。

アデル様の母君は、身分が低かった為に正妻に虐められて心労で死んだ。

アデル様は正妻である義母の子供たちと争いをしたくなかった為家を出た。

家を出て出家しても形だけで、結婚は許されているので言い寄ってくる人は多かった。

公爵家へ来た縁談は全て正妻の子供達に回され、何度も毒を盛られた。

被害は友人にも及び、最後は親友のリーフィアまで死んだ。

彼は23歳にして苦労人なのである。


「これはこれはミリー姫様ではありませんか」

「お久しぶりです。アデル様」

「そちらは?」

やっとこっちを向いてくれた。尊い。かっこいい。細身で服の上からではわからないが鍛えた体つきなのはゲームで見たので知っている。

銀に近い金色の髪の毛、エメラルドグリーンの瞳、健康的な白い肌。

素敵です。

「ひうっ!私は、緋彩と申します。」

緊張して挨拶ができない。

「緋彩さん、緊張しすぎよ」

ミリーはポンポンと背中を軽く叩く。

私は深呼吸して心を落ち着かせた。

「緋彩さんは日雲王国の王女様ですの。」

ミリーがアデル様に説明する。

「そうでしたか。わたしは此処の管理を任されております、アデル・ローレンスと申します。」

これこそが運命の出会い。生きててよかった。





そこで私の意識は途切れた。

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