違和感の正体
今思えば、変だった。何故賢い姉上がシータークェの息子に嫁ぐ事を喜んでいたのだろう。
姉上は、王族としての責務以上に結婚に対する喜びを持っていたように見えた。思えば、シータークェが訪問に来た後姉は興奮しながら嫁げることが嬉しい、誇りだと言っていた。
私は、それも操られたが故だと信じたい。姉に幻想を抱きすぎている節はあるが、もし大好きな姉上があの男を好いていたのなら軽蔑してしまうかもしれない。
姉が亡くなった今となっては真実はもう分からない。
権力を追い求めたシータークェの最期は呆気ないものだった。龍の加護を持たぬが故王となることは許されなかった哀れな王族。王子として生まれたのだから家を興し傍系王族として王を支える家系となれば良かったのに。
カーフィス王国へ転移する。
「メティ、ここはどこでしょう」
「城の裏口です」
「姫様?」
裏口から出てきた貴族風の男が呟いた。
「ディー?」メティが問う。
「姫様!ここは危険ですお戻りください」
「メティ、あの方は?」
ミリーが訊ねた。
「わたくしの元側近で、母の側仕えの息子ですの。ディー、今城で何が起きているのです?」
「…姫様こちらの方々は?」
「私の友人です。城の事情を話しても構いません。何が起こっているのか教えてちょうだい」
男はメティの前に跪いて答えた
「女王陛下が他国の者を城に引き入れました。グローリー姫様の部屋の前には騎士が立っており、自分の意思で出ることは出来ない状況です。グローリー姫様の父君は、女王陛下に連れて行かれたあとどこにおられるのか分かりません」
メティの妹でミリーの異母妹にも当たる姫はグローリーというのか。女王は、罪を犯しすぎた。
他国の騎士を城に引き入れる事も、他国の王を誘拐する事も…。シータークェと手を組んだことも彼女の罪だ。
メテオライトは、何かを堪えるように目を固く瞑った後苦しげに言った。
「ディー…わたくしは、お母様を…罪人ルビー・ラ・カーフィスを捕らえます」