アリスと三玉の剣
目を開けると、ロベリア学園の正門前だった。
「あらあら、緋彩ちゃんじゃなぁい。久しぶりねぇ、何故あなたがここにいるのかしらぁ?」
アリスがいた。
シータークェの娘。カズラ様から聞いてはいたけれど、まさか転移先にいるとは思わなかった。
ミリーがコソッと「だれ、あの人」と囁いてきた。
私は二人に聞こえるように「シータークェの娘のアリス様です、一応私の叔母に当たる人です」と答えた。
「やっぱり、お父様が仰った通りだわぁ、禁忌をおかすだなんて、男子を産めないナメコオネエサマや約立たずのカズラにそーっくりねぇ」
言いながら何かを投げてきた。
すかさず体のまわりに障壁を作る。2人も同様に作った。
アリスは力が少ないが、シータークェから何かを渡されている可能性が高いから油断はできない。
メティがあらかじめ用意しておいた神力の蔓でアリスを捕縛する。1人目は簡単に終わった。
もちろん逃げ出せないように〝力〟も吸い取っておくのを忘れない。とても小さな黒い玉になった。
急がなければ、間に合わない。王の命と兄上の命、少なくとも王族の男子は皆助からなくなってしまう。
宮殿の門番に「シータークェは来たか」と尋ねる。「先程おはいりになられました」
「何故入れたのだ!王のお命を危険に晒すおつもりかっ!」つい叫んでしまった。
ミリーに頬をパンっと叩かれた「早く行く方が先、怒るよりも助けることを優先しなさい!」
そうだ、早く助けないと。シータークェを倒さないと。
「すまなかった」と、言い捨てて走る。
メティは、予定通りに利華姫を探してもらう。
私は母上とカズラ様と合流する。ミリーは、ここに残された魔力の痕跡を辿っているようだ。
地図を渡すと、指さしたのは王の宮だった。
ミリーには、カズラ様を呼びに行ってもらう。二人に兄上の命を守って貰うのだ。
父上が危ない!
母上とカズラ様に力を魔具に込めてテレパシーを送る。これはあまり使えないのだが仕方がない。
(どうか無事でいてください、父上)
王の宮の庭は、土埃が舞い、酷い惨状だった。
「父上っ!」
父上とシータークェがこちらを見た。
「「緋彩!」」
敵か味方か分からないのだろう。
「父上っ!助けに参りましたぁーーーーーー!」言いながら三玉の剣を振るう。草玉と神力、魔力を剣に供給しながら戦うのは難しい。
こんなときだけど思い出したのは、三玉の剣というのは、魔具等を使わずに自分の〝力〟だけで剣を出せる人のこと、というべアリーナの言葉だ。
剣を持ち運ぶのは大変だから剣が出せて良かった。
力を魔力しか持たずそれすら磨かず、龍の加護も持たぬシータークェに、神力と蓮の女神のお力に勝つことは出来ない。
剣で背中を切った……はずだった。視界からシータークェは消え、一瞬後、父上が血を流し崩れ落ちた。
「父上ーーーーーっ!」