表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/19

魔王爆誕

高等部一年の秋



戦う準備で忙しい期間はあっという間にすぎた。備えあれば憂いなしと言うけど正直、備えても憂いが残ってる。


精霊の加護を得るための月夜舞いの日は間近に迫っている。私は歌いながら舞うのが苦手だ。この前、中庭で夜遅くまで練習していたのをメティに見られた。メティも練習していたらしく、一緒に練習することにした。


メティの動きは無駄がない。流石英才教育を受けただけある。ミリーは参加しない。否、参加出来ない。ミリーにとってこの国で加護を得ることは禁忌だからだ。母国での加護の取得は魂が……、命が削られてしまう。


ただ力が強いだけなら加護の儀式を受けても大丈夫なのだが、記憶の精霊の干渉を受けたミリーには母国の神々の加護は毒となる。


兄の即位式を思い出した。日雲において〝即位式〟は、王になることではない。成人した王子が正式に〝天子〟の位、即ち王と同位になることを言う。紛らわしいな。絶対バグだって。

兄は昔から精霊の加護と龍の加護があった。とても、強いのだ。幼少期、男は女に比べて死に易い。それは力が強いからとも言われている。これは日雲にいては知ることがなかったであろう情報だ。男は死に易いが、例外もある。それが兄のように龍の加護を受けていること。成人まで龍の加護を受けていなければ〝天子〟にはなれない。シータークェがその例だ。


ミリーは側室から産まれた姫だから王位を継がぬように力が封印されていたはず。龍の加護は王子になければ女でも龍の加護を持つ者が王位継承権上位だ。


力が強いならば力の反発も強い。だから、1番力が強い母国で加護の儀式を受けてはならない。

何十もの精霊と龍と神。



ゲームではオープニングに月の下で舞うミリーが写っていたから、他の国で舞ったんだと思う。


日雲に聖なる眼を持つ姫が出た。鳳凰の名を授かり、鳳凰公主になった。これは前々から聞いていたことだ。樹夜の同母の妹の事だからだ。視覚を失わずに聖眼を得た例は他にないことで、鳳凰公主は王子と同等の位を得ることになった。




遡ること数ヶ月前

夜遅くに部屋をノックされた。

部屋の中から見てみると、樹夜だった。

樹夜を中に入れると、樹夜は泣いていた。

樹夜は弟の〝力〟が減っている、と言った。〝草玉〟ではなく、〝力〟が減っている……と。

樹夜も貴族学校に通っているうちに分かったのだろう。草玉が〝力〟の一つに過ぎないこと、何者かが〝力〟の情報が国内に回らないようにしていたこと。

「利華が聖眼を発現したの。時期が悪くて、利華が王子を呪ったのでは無いかって、シータークェ様とシメーズィ様は王に抗議していたわ。このままでは利華は……」

「聖なる眼。聖眼(セント・アイズ)……!?利華姫の視力は無くなったの?」

今までの術者達は聖眼を使うことが出来るようになると、少なくとも片目の視力は無くなっていた。

「いいえ、目は見えているそうよ。あの子はあまり感情を見せない子だから隠しているのではと心配だったのだけど見えているし、衰えてもいないと診断されたの」

前例がないこと…それでは、疑われるはずだ。普通、聖なる眼等の術を発現させたら〝鳳〟か〝凰〟の名字を与えられる。一部とはいえ仮にも王族に疑われているのならまだ与えられていないのだろう。

何か忘れているような……………………あっ!

「利華姫って鳳の名を持ってるよね!?」

「うん。浄化の力を持ってるからね」才能があるからとはいえ、王女がこんなに良い待遇を受けていたらシータークェ達も焦るだろう。凰の名を与える儀式が行われればシータークェ達西先は弱体化、東先は強化することはわかり切ったこと。でも、反対意見を出したことで先延ばしにできるのは長くて数ヶ月だろう。


その期間に意味が?


日雲祭の準備?



剣舞!王子が剣を持って舞う日。聖獣達の日。日雲を護る神獣の力が弱まる。

そこで事を起こしたらどうなる?公衆の面前で聖なる眼が使えなかったら?





王族であるシータークェは利華姫の能力を偽物だと糾弾する権利を持っている。


万人に利華姫が鳳凰の名に相応しくないと思わせることが出来れば、手腕によっては東先の衰退も可能だろう。




日雲祭までに戦いが始まれば私達は負ける。

準備が足りない。月夜に歌い、月夜に舞う儀式で加護を得なければ強い魔力を持つものと戦って勝ち目はない。魔王の力を相手にするなら尚更だ。


今、私はとても簡単なことに気がついた。

宝物(ほうもつ)も装備もスキルアップもないこの世界は私にとってゲームの世界でも、今の私(緋彩)にとっての現実世界。

現に世界は色々と変わっているのだから。

緋彩十七歳にしてやっと悟ったのであった。



一週間後に月夜舞を控えたある日。

「パステルカラーの~」

「緋彩姫ではありませんか、歌いながら歩くなどはしたないですわよ」

うげっ、ビビアンローゼ……最悪!鼻歌交じりに図書館から出てきたお前がそれ言うのかよ。

「ビビアンローゼ・リーン・オファニエル様ですよね?ワタクシは日雲王国からの留学生、緋彩と申します。ご気分を害されたのなら申し訳ございません」

「まあ、貴女が噂の……?月夜舞をするのでしょう?わたくし、身体が弱く体力もないので参加できないのですわ」

誰もそんなの聞いてないんだが?

「ビビアンローゼ様はゆったりとした舞踊が得意だと聞いておりわすわ。成績も優秀でいらっしゃりますし、素晴らしいと思いますわ」

ここが現実だと割り切ってから猫かぶるの疲れる。私この人、苦手だ。

「ビビアンローゼ様!一人で行動なさらないでくださいませっ!」ほら、側近置いてきてるし。可哀想じゃないか!王弟さんから罰を受けるの側近だよ?

「おほほ、わたくしもうすぐ国に帰還するんですの。では、緋彩姫に蓮の女神の加護がありますように祈っておりますわ」

帰還するんだー、へー。興味無いんだけど?蓮の女神の加護を得た人今まで数名しかいないのに私が貰えるわけないだろ!嫌味か?

「それでは、失礼致します。緋彩様」

側近さんの方がまともな人じゃない?



次の日、負の魔力を爆発させて魔王が誕生した。祖国の皆で奴の魔力を抑え込んでいるそうだ。一刻も早く助けに行かなくては。


ついに月夜舞は明日に迫った。

月が出れば、だが。

加護を得たら直ぐに戦いが始まる。一部の人達はもう戦っているのだから。

次回、月夜舞から日雲での戦いがあります。

更新遅めですみません((。´・ω・)。´_ _))


ブックマーク&ポイントお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ