表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

べアリーナの登場

昼前最後のコークス王国の歴史の時間にはテストがあった。

転校してきたばかりにもかかわらず上位三位を取ったメテオライトと私、そして樹夜は注目を浴びてしまった。ちなみにミリーも樹夜と同点で三位だった。

学食に移動しながら話をする。

「メテオライト姫はコークス王国の歴史まで勉強していたのですか?」

テストは難しかった。樹夜でさえ一問間違えたと言っていたのだから。

私とコークスの歴史をロベリアの受験勉強の際に習得してある。

だが、メテオライトは?

「はい。小さい頃はコークス王国の歴史を覚えたと先生が報告すると母がわたくしのことを笑顔で褒めてくださったのです。コークス王国の情報を提供できる人も重宝しておりましたし、幼かったわたくしは母はコークス王国が好きなのだと思い込んでおりましたのですから頑張って覚えることが出来たのです」

ルビー・ラ・カーフィスはコークスの国王そこまで執着していたのか?異母妹がにくかったからか?

娘に他国の歴史を学ばせるほどに?


きっと、メテオライトの情報を当てにしているのだろう。

「それでも満点とは素晴らしいと思います。わたくし、満点は取れませんでしたもの」

ミリーが言う。

「わたくしは全て覚えねばならなかったから覚えたに過ぎません。」

メテオライトの過去は母に優しくされた記憶が少ないはずだ。なのに何故ルビー・ラ・カーフィスが憎くないのだろう。

私だったらきっと耐えきれないだろう。

「重要なテストとはいえあそこまで細かいとは思いませんでしたね。歴代の国王の名前、戦争の名前まではいいとして、顔の特徴とかいります!?」

「うふふふふふ 緋彩ったらっ!名前が同じ人物もいるのですから仕方がないのでしょう。日雲王国ではどうなっているのですか?」

私は正直に答えた。


「日雲の歴史は少ないですよ。まだ建国して僅かですから。ですからその分他国の歴史も学びます。ここ最近はコークス王国が主ですね。でも顔の特徴は受験にも出なかったですよ?教えられていないのですもの」

そういうと二人は驚いた顔をした。



「日雲王国では他国の歴史も学ぶのですかっ!?」

「まぁっ!顔の特徴は教えられていないのですかっ!?」

そんなに驚くことでもないだろうに。


そんな話をしているうちに目的地に着いた。

王族用の席につくと、食事が回転寿司のようなレールに乗って運ばれてきてメテオライトは驚いていた。

「学校とは、このような席で食事をするのですか?」

と聞かれたので、答える。

「学校にもよりますね。コークス王国はこのようなテーブルを使うらしいですよ。そうでしょう?ミリー」

「えぇ。そうですよ。三角は珍しいですか?」

私はそんなに驚くことでもないと思ったのだがメテオライトには新鮮らしい。

「お恥ずかしながら食事の時には長方形のテーブルを使ったことしかなかったのです。」

国が違うと常識も違う。

日本では当たり前だったことだ。まあ、日本でも宙に浮いた三角のテーブルなんてなかったけれど。

「基本的にカトラリーは同じなので大丈夫ですよ」

コークス王国の食事では箸を使わないのと主食がお米では無いことに少しガッカリしたくらいで、とても美味しい。

日雲王国ではお米はあったし、日本っぽい食べ物もあったけど見た目重視だったもんね。

今日のお昼は、煮込みハンバーグとトマトのサラダ、コンソメスープとフランスパンに似たパンだった。

話に夢中になって食べる時間が少なかったのは自業自得だろう。


八時間目までの授業が終わり、転校してくるまで習ったぶんの補講をして帰り支度をした。

もちろんメテオライトもだ。

ミリーは待っていてくれた。

高等部の学生寮までは少し離れているので歩く時も話しながらだ。

一日でよくここまで仲良くなれたものだ。

中等部の学生寮の渡り廊下に目を向けた時、アデル様に似た少女を見つけた。




一目でわかった。 べアリーナだ……。




「べアリーナ様っ!」

「っ!?」

べアリーナは、険しい顔でこちらを向いた。

私を見て、警戒した顔を少し弛め言った。

「そちらは緋彩姫様、ミリー姫様ですね?とすると、カーフィスのメテオライト姫様でしょうか?」

「知っているのですか?」

べアリーナの情報を少し舐めていたようだ。ほぼ見つからないメテオライトの情報も持っているのではないだろうか。

「勿論、存じ上げております」

二人も驚いているようだった。

「何か私に御用でしょうか」

「個人的に聞きたいことがございます。夕食の後、御時間頂けますか?」

「分かりました。緋彩姫様、私は一貴族ですので王族から予定を聞かれれば承諾するしかないのですよ?それで、どこでお待ちすればよろしいのですか?」

そうだった。身分は私が上だからべアリーナからは断れないんだ。

「申し訳ありません。考え至らず。講堂の神の間の前にある自習室はいかがでしょうか」

ここなら二人きりで話せる。そこで、おずおずとメテオライトが私の肩を叩いた。

「緋彩姫。わたくし達は先に部屋へ行っていてもよろしいですか?話の邪魔をするつもりは無いので…」

この2人の存在……忘れてた。

「えぇ。ごめんなさい。先に行っていてくださいませ」

「来たばかりの緋彩姫様はご存知ないのかもしれませんが中等部生は夜に講堂へはいるのは禁止なのです。ローレンス公爵家の借りている客室はいかがでしょうか」

「良いと思います。どこにあるのですか?」

「ここは高等部の寮と中等部の寮の渡り廊下で、ここから大浴場へ向かって行く途中に奉納祭の時などに王族が使う晩餐室の棟があるのですが、そこの隣りの棟がお客様を泊める客室棟です。今は一階しか開放されていないので、一階の部屋を使わせていただくのです」

「使うことが出来るのですか?」

「私の家が借りている部屋なら」

「分かりました。夕食後に伺いますわ」

夕食へ向かう前に二人に謝っておかなければ。

話をすぐ切り上げたからか二人はそれほど離れてはいなかった。

「メテオライト姫、ミリー!」

「緋彩姫、お話は終わりましたか?」

「随分早かったのですね」

「ごめんなさい」

べアリーナに浮かれて放ったらかしにしてしまった。

「大丈夫です、気にしないでくださいませ」

「緋彩は、悪気があった訳では無いのですから」

「ありがとう」


夕食を終えた私達は一旦別行動をとる。

ミリーとメテオライトは大浴場へ向かう。そして私はべアリーナと話に行く。

既に話は通っていたのかすんなり部屋に通された。

「お待ちしておりました。緋彩姫様」

べアリーナは既に部屋で待っていた。部屋は格の高い人でも泊まれるようにか家具も良いものが置いてあった。机の上には紅茶とクッキーの用意もしてあった。

「どうぞ」

べアリーナは茶と菓子を勧めた。

「ありがとうございます、べアリーナ様」

「私の方が身分は下ですので呼び捨てで構いません」

様を付けてしまうのはアデル様の妹だからか?

無意識だった。

「では、べアリーナと呼ばせていただきますわ。時間も無いので早速本題に入りましょう」

聞きたいことは沢山ある。全てを聞くことは出来ないだろう。

「べアリーナはアデル様の味方なのですか?」

これはべアリーナだけでもアデル様の味方であって欲しいとの私の願いだ。

「どういう意味ですか?」

「そのままの意味です」

はぐらかした?

「難しいですね。私も母とは敵……なのでしょう。その点では仲間ともいえますが、全面的な味方という訳ではありません」

「ローレンス公爵夫人は、国を滅ぼそうとしている人に手を貸しているのはご存知ですか?」

べアリーナは知っている筈だ。ローレンス公爵夫人、ルビー・ラ・カーフィス、シータークェ、シメーズィ。そしてべアリーナの同母の兄弟達。

この世界に対する謀反を。知っている。

「……存じております」

長い沈黙の末、やっと答えた。やはり、知っていた。

「そうですか。では、もうひとつ聞きます。何故草玉、魔力、神力はひとつしか持つ事ができないのですか?」

聞いた瞬間べアリーナは眉をしかめた。

「何を言っているのですか?ひとつしか持てないなどと誰が決めたのです!?」

「ですが……」

「日雲王国ではそれを学ばないのですね。私が極秘で手に入れた帝国の資料には乗っていました。全てを知る国はないようですが」

「教えていただけませんか?」

「対価は?日雲王国の秘密など教えていただけるのであれば〝力〟に関する情報は提供致します」

秘密など、姫である私には教えられるわけがない。でも………

「秘密では無いのですが、日雲王国の王宮には、絶対に光らないとされている緑と白と黒に輝く水晶が三つ連なっている像があるのです。これを私は光らせたことがあります」

「もしや、緋彩姫様は………三玉の剣では?」

「みぎょくのつるぎ?」

「この水晶に触れてみてください」

と、べアリーナは首に掛けていた小さな水晶を差し出した。それに触れると………光ったのだ。

「やはり、三玉の剣なのですね。でしたら私の持つ〝力〟については提供致します」

何故か説明してくれる気になったらしい。

「日雲王国では草玉、コークス王国では神力、そして一部で魔力。力は実はこれだけではありません。カーフィス国では火玉ですが、火玉は髪の色が赤に近いほど強いという特性を持っています。」

「では、メテオライト姫は?」

「火玉は持っていないのでは?もしくは他に比べて弱いのか。ルビー・ラ・カーフィス様は真っ赤な髪ですから、火玉を持っているはずです。もしかしたら水玉と言う可能性もありますね。メテオライト姫はいくつかの〝力〟を使いこなすかもしれません。それも、三玉の剣である緋彩姫よりも多い力を」

初めて聞く話ばかりだ。火玉、水玉。いくつかの〝力〟を持つことが出来るなど知らなかった。

「他にも〝力〟はあるはずですが、全てを知ることは出来ていません」

そこで、すっかり冷たくなってしまった紅茶を飲んだ。


「ありがとうございました。べアリーナ。このことはくれぐれも内密にしてくださいませ」

一応、敵側に情報が流れなければいいのだが。念には念を入れる。

「承知致しました。ご武運をお祈りしております」

「まあ、何をするか分かってしまわれましたか?」

「さあ、どうでしょうか」

べアリーナは賢すぎるのだ。勉強だけを頑張った私とは違う。本物の天才だ。メテオライトもミリーも樹夜も。きっとずっと適わない。

そうして私は部屋をあとにした。


一人で大浴場へ行く気にはなれず、部屋のシャワーを浴びた。

明後日から二日間は休日だ。ミリーの部屋で女子会、お泊まり会をするのだ。

明日、メテオライトも誘ってみようと決めてふかふかのベットに身を投げ出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ