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お姫様になりました!

転生系の小説初心者です。

「ほら、私って高貴な生まれだから勉強しなくてもいいんだよ」

そう言い続けて数年。今は誰も話しかけてくれなくなった。

もう、死ぬんだ。誰も助けてくれなくて、苦しいよ。

私の人生短かったな。


私の名前は上野松茸。

女の子にマツタケって名前はありえないでしょ。

いつからか私は自分を高貴な人だと信じ込むことで自分を守ってた。

あれは一年前の出来事。

「上野!お前だけ宿題提出出来てないぞ」

「せんせー、私高貴な生まれだからやらなくていいんです」

「何言ってるんだ。出さなきゃダメに決まってるだろ、高貴な生まれなら尚更」

先生は心底呆れた顔で注意した。

振り返ってみれば私は提出物も出さず授業も真面目に受けず、良くない生徒だった。

だからいじめられて逃げて池に落ちたりするんだ。


そして今に至るまで勉強は全くしていない。

なんでこんな話をしているのかと言うと、まあ、いわゆる現実逃避だ。

私は死んだはずなのに、神を名乗る男が目の前にいたら現実逃避もするだろう。

「お前は我々の手違いにより死んでしまった。だが、まだ魂は若い。異世界でやり直しなさい」

キラキラ輝くローブを羽織った神は言った。

「え?ちょっとまってよ!何?転生って奴?」

「案ずるな、記憶は残しておくからのぅ」

えぇーーーー

体が黒い塊に吸い込まれていく。

そこで意識が途切れた。


「まあ、起きたのね。緋彩」

どうやらここでの名前はヒイロと言うらしい。

意外と日本っぽい名前でマツタケよりは遥かに良い。

「何だ、また女か。女は真珠だけで十分であろう。」

明らかにこの世界での私のお母さん落ち込んでるじゃん。

まさかこのじじいが父親!?

ヤダヤダ!

母さんには気持ちが通じたのか、

「この方は貴方のおじい様ですよ」

と、言った。悲しくて涙が出てくる。前はこれくらいじゃ泣かなかったのに

「次は王子を産むように!」

と吐き捨てるように言って出ていった。

「……お父様…申し訳ございませんでした」

あーあ、馬鹿なのか?あの爺さん。お母さん泣いちゃったじゃん。

あの爺さんからこんなに可愛い娘ができるなんてよっぽど奥さん綺麗だったんだろうね。

労うより先に貶して次は頑張れって鬼かよ。

その時ドアが開いて若い男の人が入ってきた。

渾名を付けるならイケメンさんって感じの人。

泣いているお母さんを見て、

「どうしたのだ?どこか痛むのか?宝寿よ」

「いえ、何でもございません。陛下」

素早く涙を拭い、答えた。

「なんでもなくて涙は出ないだろう」

イケメンさんは心配そうに宝寿さんの背中をなでた。

イケメンさん、陛下なんだ。道理で偉そうな訳だ。

「もしや神家西先本家の老人が来たのか?その様子だと父親か?」

何やら難しい顔をして考え込む陛下。

「陛下はなんでもお分かりになるのですね。ただ、男を産めと、言われただけにございます。」

薄く微笑んで寂しげに言った。

この時、私はこの国で親孝行をしようと決めた。

その後幼少期に大変なあれこれを経て、遂に超難関高校に入学することとなる。





水色のワンピースに赤いリボンそしてリボンを留める金色のバッヂ。

これが私が通う学校の制服だ。

産まれて無事に育つのはほとんど女だからだいたい女子校で、たったひとつだけ国中の男児が学ぶ学舎がある。

広い後宮を出て、学校に向かう。

基本的に贅沢は許されていないため、姫とは言えど徒歩か自転車で通う。

まあ、学校は大体の人が王族貴族だけど昔の本に書いてあるような平民差別も無く結構仲が良い。

日雲国立ロベリア女子学園。

トップの中のトップしか入れない学園。

入学試験は十五教科にも及び、全教科の点数と、面接の受け答えで決まる。

全てを兼ね備えた令嬢のみが入学できるのだ。

努力を怠り、勉学を励まなかったら入ることは出来ない。

全教科で90点以上を取ることで入学資格が与えられたりもする。

すぐ下の妹は、菫丘女学院に入学した。

なんで?と聞くと、制服が可愛いから、と答えた。

たしかに、紫色のスカートはふんわりと膨らんでいて可愛らしい。

この国で紫といえば王族の中でも男と、王子を産んだ母妃、王子と同母の姫のみに許された色で、唯一の例外が菫丘の制服というわけだ。

まあ、私は妹と違って責任がある。

転生して美少女になったからには親孝行をして、恋愛もする!

だから帝王学も学んだし、父王の補佐もしている。

羽緑姉上様や樹夜に決して劣らぬように。母上が決して責められぬように努力しなければならないのだ。

ロベリア女子学園は校則が厳しく、遅刻三回で停学、暴力やいじめで退学処分になる。

各教室のロボットがチェックしているので見つかったら処分を受けなくてはならない。

そんな事情もあって完璧な淑女が卒業できるようになっているのだ。

首席で卒業すれば従一品の位が貰える。

努力で道は開けると、平民皆知っているからこそ努力する。


ただ、私にも悩みがあった。

恋愛結婚に憧れていることは誰にも知られてはいけない。

私は神家西先の駒だから。

いずれは政略結婚させられる。


だから………あの方を好きになってはいけなかった。



宮廷で行われた舞踊を披露する会で出会わなければ、と何度思ったことか。


「どんなに嬉しいであろうか

あの方も私と同じ苦しみを

私に対して抱いてくだされば」

遠い遠い昔に読まれた恋の歌の意味。

私がただ1人慕う方が教えてくれた「恋」。

私が王女としてでなく、一人の女として彼と出会っていたら未来は変わっていたのだろうか。


「何を考えておるのだ?緋彩姫」

「申し訳ございません。おじい様」

「一族皆、そなたに期待しておるのだからな?粗相のないようにしろ」

「はい。もう行ってもよろしいですか?」

「くれぐれも樹夜姫に負けるでない」

「精進致します」

「行って良いぞ」

「お先に失礼致します」

謁見の間を出ると斜向かいの部屋から樹夜が出てくる所だった。

「緋彩?」

「樹夜姫」

「どうしてここに緋彩姫が?」

「また、おじい様が来たのよ。ほんと嫌になるわ」

声を潜めていても聞かれているかもしれないから中庭に移動する。

「私も、おじい様が来ていたわ。お変わりないようで安心したわ。」

「優しいおじい様で羨ましい。西先本家の老人って何故か東先を嫌ってるし、お母様には王子を産めとか言うし」

「まあ、でも色々あったらしいわよね」

樹夜は一瞬遠い目をした。

「でも、なんで東先本家ってそんなに西先を嫌ってないの?」

「おじい様が言うには、西先当主は王になれなかったからと言っておりましたけど、詳しくは知らないのよ。教えてくれなくて。まあ、東先は神に祈る仕事が多い分体内の草玉も多いからね。」

草玉とは、いわゆる魔力のようなもので、心が穢れた人や男には少なく、心が綺麗な女に多い物だ。

一定より少なくなると死ぬ。

基本的には減らないが、「神の加護を受けたものに害なした時、裁きがくだされる」という言い伝えの通り害なした時と、男しかかからない病、草玉減少病…私には覚えられない名前だったが。

それにかかると死ぬ。

男は、十二歳頃まで生きたら草玉減少病にかかることは無くなる。

だから十四歳から学校に通うのだ。


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