あなたは一人ではありません
次に私が帰るときには、デュエプレにニンジャ・ストライクが来てますように......
カウンターバイケンは使ってて楽しかったなぁ
学校のグラウンドみたいな、何もない広い空間が良かったと今更ながら思う。プレイヤーが武器にできないような大きく重たいオブジェクトを軽々と引っこ抜いて操る相手にとって、信号だの道路標識だのガードレールだのが溢れてるスクランブル交差点なんて、もはやただの武器庫じゃねーか。
赤信号たる俺に信号機で殴りかかってくるとはこの不敬者が。スイングの仕方が死神が大鎌を振ってるようでちょっとカッコいいなお前。
「こうもリーチが長いと近づきにくいな……」
俺と茶管が近接戦を仕掛けているせいか、サイコキネシストの攻撃が大きなオブジェクトを砲弾にするのではなく振り回すものへとスイッチした。避けること自体は難しくはないが、それは今が信号機を振り回すというほぼ線の攻撃だからだ。もしこれが自動車や巨大看板のような面の攻撃になるとしたら、攻撃はおろか回避も難しくなる。
俺と茶管で攻めかかりヘイトを管理し、きーちゃんにはサイコキネシスで矢を叩き落とされないように死角からの攻撃に集中してもらう。つまりは何の変哲もない基本に忠実な戦法をとって攻略の糸口を探るしかないのが現状だ。
「きーちゃん、あと何本!?」
「矢は残り六本です!それが終わると壊れかけのフライパンに逆戻りですね!」
いざとなれば俺の刀を一振り渡すけど、出来ればその六本が尽きる前には倒したい。広い攻撃範囲を持つ敵を前に全員が近接戦になってしまえば、三人同時落ちという目も当てられない事態になりかねない。
棒切れの様に軽々と扱われる信号機の迫力たるや、同じ茶管が持っている槍がつまようじに見えてしまう。長くて重いものを振り回す敵って、満足な遠距離武器がない今だとめちゃくちゃ面倒だな!
とか思ってたら信号機砲か!それもパターンB!
このオブジェクト砲も超能力操作だからな、単純に真っ直ぐ飛んでくるだけじゃなくて、自分の周りをぐるぐる回転させる軌道もあるんだ。これをやられるとしばらく近づけないからどうしようもない。もしも遠距離武器が潤沢なら一斉放火のチャンスなんだけどなぁ。
「そろそろ終わるな、行くぜ!……ん?今の……ってまた俺かよクソがぁ!って無敵がないとメッチャ痛ぇ!!」
茶管、二回目の拘束攻撃を喰らうの巻。もう無敵は切っちゃってるからな、さっさと助けてやらないと危ない。乱戦の中でいきなり出してくる拘束技って、だいたいよからぬ結果になるもんだ。
きーちゃんが素早く放った矢が敵の肩口に命中。続いて俺も接近からの二連斬り!ヘイヘイヘーイ、茶管にかまけてばかりで他がお留守なんじゃなーい?
追加の矢がもう一本突き刺さったところでサイコキネシストは茶管を解放、きーちゃんの方を向くと同時にガードレールを引っこ抜いた。まあ、弓矢を使ってるからと言ってRPGみたいに防御力が低いとかいう訳じゃないし、多少はね?
「大丈夫か?」
「オウ、サンキューな……。そうだ、二回捕まって分かったことがある。アイツ、プレイヤーを捕まえる時にゃ目が赤く光るみてぇだ。それが見えたらとりあえず全力回避だな」
これはグッドニュース!危険な行動の前兆が分かったのはありがたい、いくらか不意の事故が減らせるようになるな。そういうことなら、全力で横っ飛びしたりする時に受け身が取りにくいし、二刀流はやめようか。大太刀は納刀して小太刀を右手に持ち替えよう。
「た、助けてくださぁぁい!弓を持ってると、これっ!めっちゃ避けづらいんですよっ!!」
そっか、きーちゃんの弓って茶管の槍よりちょっと長いし、そりゃ回避もしづらいってもんだ。耐久力もそんなにないだろうから防御に使うこともできないしな。
それにしても、ギャーギャー言いながらも避け続けてるのはさすがだ。ジャンル違いとはいえ、鉄風雷火が吹きすさぶ戦場でトッププレイヤーをやっているのは伊達じゃない。
でもこれ以上悠長にしてたらさすがにヤバそうだ、とりあえず助けに行こうか。
「クリーンヒットが入らねぇからダメージが通らねぇな!」
「ジリ貧ですね……」
このラウンドが始まってから三分の一が過ぎようとしているけど、会心の一撃というものが中々でない。相手の攻撃範囲と見た目の威力に、どうしても二の足を踏んでしまう。
きーちゃんの弓矢も先ほど残弾が尽きてしまい、納刀していた大太刀を貸して三人で近接戦を挑まざるを得なくなってしまった。茶管が見つけた目が赤く光るという予備動作のおかげで直接捕まることは無くなったものの、事故死を恐れる俺たちは敵の攻撃を避け続ける大縄跳び状態を強いられている。
何か状況を打開する手段はないのか。……いや、絶対にある。モニター越しかフルダイブかの違いはあれど、根本的なゲームの攻略方法に違いはない。要はどれだけ相手のことを知っているかだ。
思い出せ、今までの相手の行動を。どんな攻撃をしていた?行動の規則性は?ダメージを通せた時はどんな状況だった?
「……一度には一つのオブジェクトしか操れず、それも視界の中のものだけ。そして一番ダメージが入っていたのは……茶管が捕まってた時だ」
そうだ、あの時が最高の攻撃タイミングだった。一つのオブジェクトしか動かせないから捕まってるやつ以外は完全フリーだし、サイコキネシスト自体も派手な動きをせずに茶管を締め上げているだけだった。
おそらくあの攻撃は確殺行動だ。猶予時間までに捕まったプレイヤーを助け出さないと、問答無用で小テスト送りにされるタイプの攻撃。だからこそ俺たちは必死で逃げ回っていたけれど、本当はそこを狙うべきだったんだ。
ピンチはチャンスとはよくいったものだけど、その逆もまた然り。俺たちは危険を避けるあまり、自分たちで最大の攻撃の機会を潰し続けていたんだな。そりゃなかなか攻撃も通らないわけだ。
「なんだ?何かするつもりなんか、赤いの!?」
「とりあえずはアイツの攻撃がおさまったら、だな」
長い刀の様に振り抜かれたガードレールをバックステップで避け、頭狙いの突きをリンボーダンスで避け、足元狙いの攻撃はバク転でスルー!
はっはっは、現実の身体じゃなかったらどんな無茶でも結構何とかなる!『失敗したらケガするよな……』と『失敗したら死ぬんだよォォォ!!』では覚悟のキマり方が違うんだなぁ!
「ヘイトは俺に向いている。目が赤く光ったら俺が捕まるから、その隙に全力攻撃。もう一つやりたいことがあるけど、それは生きて帰れたらやる」
「それなら私が「赤く光った、攻撃を頼む」あっ……」
きーちゃんが言いたそうにしてたけどとりあえず保留だ、まずはこの作戦が上手く行けるかどうか確かめてからだな。
小太刀を納刀して、できる限り近づいて……よっしゃ、ばっちこー痛だだだだだだ!!思ってたより痛いし苦しい!これを自分から受けに行かないとダメって、ランダムマッチングとかだったら揉めるんじゃないかんごごごご!!
「ロ、ロープロープ……無理無理ムリムリ、ギバップ!ギバァップ!いやむしろタオルぅぅ!」
「セコンドは今モンスタートレイン中で不在だ、もうちっと我慢しろや!……ほらよ、解放だ!」
ホントに予想以上の苦痛だった……。なんていうか、握り締められてるっていうよりは猛烈なベアハッグをかけられているような、そんな感じ。ギリギリミシミシと骨格が鈍い悲鳴を上げ続けて、いつかボキョっとやられる未来が見えたわ。
おおそうだ、もう一個やりたいことがあったんだっけ。みんなの集中攻撃で相手が怯んでいる今こそ、千載一遇のチャンス!!
まずは渾身のドロップ・キック!そして無様にもうつ伏せに転がった相手の両足を左右の脇に抱え……そのまま思いっきり身体を反らさせ、相手の頭部に体重をかけて座る!!
「必殺、逆エビ固め……!」
知名度抜群で簡単にかけられるプロレス技の一つだが、ここまでバッチリ極まってしまえばよっぽどの体格差や筋力差がない限り自力では抜けれまい。
足を固めて移動を封じ、土ペロさせた状態で頭を抑えつけることにより視界を潰す。本当に視界の中にある物しか操作できないのならめでたくフィニッシュだけど、どうだ!?
じたばたと尻の下でもがくサイコキネシスト。もしもこの状態で超能力を使えるのなら、俺を浮かすなりなんなりで反撃をしてくるはずだが、その気配はなくただ惨めに手をばたつかせるだけだ。
つまり、俺たちの勝利確定。
ふ、ふは、ふはははは!サイコキネシスト、破れたりぃ!
「完璧だ……そう、これぞ完封ってやつだな」
「完封はいいんだけどよぉ、逆エビ極められてて抵抗ができないやつを死ぬまで刺すっつーのも、なんだかねぇ……」
言わんとしていることは痛いほど分かるけど、まあほら、とりあえずは勝てたんだしOKってことで。
ドスドスと茶管が適当に槍で突き回す感触を尻の下に感じながら、万が一もないように力を緩めずホールドを続けていると、きーちゃんが俺と目線が合うようにそばにしゃがんだ……ちょっと寂しそうな表情を浮かべて。
「……あーさん、こういう一歩間違えれば即死系の挑戦をする時はちゃんとメンバーを決めましょう。この三人の中で一番所持スコアが少ないのは、さっき歴史資料館を開けた私です。もしあーさんが死んでたら、テスト内容によってはものすごいロスになってましたよ?」
「は、はい」
女子高生にリスク管理について説教される二十歳の大学生。いっそ笑える構図だけど、きーちゃんの真剣な声色の前ではそんな気にはならない。なってはいけない。
「一人だったら、こういうイチかバチかをやらなきゃいけない場面もあるでしょう。それをあーさんが躊躇わず行動に移せるのは、ゲームプレイヤーとして凄いことだと思います。……でも、もう少し相談をしてください。協力プレイなのに独断専行されたら、寂しいです......」
成功したからOK、じゃない。きーちゃんが言うように、仮に俺があそこで死んでいたらどうなっていただろうか?
大量のスコアの喪失、戦力の低下、視界を奪えばいいのではないかというアイデアの抱え落ち。これらは少し話し合えば、所持スコアが少ない人が囮になる、武装を攻撃手に預ける、情報共有の上でさらなるアイデアを募る、といったことができたはずだ。
俺がやったことはチームプレイじゃなかった。ただ自分一人で納得して、突っ走った後の尻拭いを仲間に押しつけただけだ。これでどうして、仲間と一緒に戦ってると言えるのか。
「……ごめん」
「あ、いえ、怒ってるわけじゃなくてですね……その、あーさんは本当に長い間いろんなゲームをソロプレイしてたんですから、そのやり方をすぐに変えるのは難しいと思うんです。私もソロの対人戦ばかりやってるのでよくわかります。だからこそ気づいたことは指摘しあえたら、もっと楽しくマルチプレイができるんじゃないかなって......そう思っただけなんです」
自分で思う以上に暗い雰囲気になってしまったのか、きーちゃんが慌ててフォローを入れてくれるのがますます情けない。
頼りないやつでごめんな、面倒をかけてすまない。なにより言葉不足で申し訳ない……。
ッパァン!!
「いってぇ!!」
いきなり背中に衝撃と痛みが!
え、何?マジで何?敵襲?敵襲か!?いやいやいや俺の隣にはきーちゃんもいるし、茶管だってほらそこに……ってお前か、お前なのか!?
「おうおうおう、赤いのも黄色いのも、やっとボスを倒したってぇのにシケた面ぁしてんじゃねぇぞ!」
その言葉にハッとなって確かめてみると、本当だ、尻の下に敷いていたサイコキネシストの身体から力がすっかり抜けている。きーちゃんと俺が話してる間にとどめを刺し終わったのか。
「ウジウジすんな、悪かったこたぁ次に直しゃいいじゃねぇか!まだゲームは続くし、なんなら何度でもやり直せるのがゲームのいいとこなんだぜ、ゲーマーならそんくらい知ってんだろ?」
ガハハと豪快に笑う我らがアニキの姿に、ネガティブな気持ちが吹き飛ばされる。背中はこれフレンドリーファイアじゃないかってくらい痛いけど、言ってることは間違ってない。
「......そっか、そうだな。よし、次はもっとうまくやるよ。よろしく頼む、きーちゃん」
「はい、こちらこそ。よろしくお願いしますね、あーさん!」
逆エビ固めを解いて、二人立ち上がって握手を交わす。
うん、いつまでもソロプレイヤー根性のままじゃあいけないよな。せっかくこうして一緒に遊べる友達ができたんだから、もっとマルチプレイのことを知っていかないと。
「おいおいさっそく仲間外れかぁ?おいちゃん悲しいねぇ……っとそうだ。サイコキネシストを倒したら電話してくれって、青いのが言ってなかったか?」
すっかり忘れてた、そういえば青はまだザコトレインの真っ最中じゃん。早く合流してやらないとな。端末からコールコール……ブルマンっと。
……?……??……あれ?
「どうしたんですか?」
「出ない。もしかしたら相当切羽詰まっているのかも」
だとしたらこっちから迎えに行ってやらないと。インターフェースから開ける全体マップなら、プレイヤーの誰がどこにいるかが分かるはずだ。
えーっと……あるぇ?プレイヤーを示す点が三つしかないぞ?これはつまり……そういうことですな?
「あれだけカッコ良く引き受けといて死んでんじゃねーよ......」
おいおい青さんよ、あんたどこで死んだんだ?どこまでザコを引き連れて行っちゃったんだ?
このラウンド、絶対にまたザコのキャリーオーバーするわ……。
めっちゃ真面目な話をして深く反省もしているけど、その間ずっと逆エビ固めを極めている主人公。
シリアスをしたいのかギャグをしたいのか、はっきりさせないとこうなります。
次回でこの章は終わります。キング・クリムゾンするのでご注意を。




