下へ参ります(私は行きません)
リアルで色々ありましてビックリするほどモチベ下がってて投稿遅れました、申し訳ありません。
「これなんて逆無双ゲー?」
敵が!多くて!強い!
純粋にタフなエネミーが大挙して押し寄せるなんてゴリ押し戦法を取られるとなぁ、たった四人しかいない俺たちプレイヤーは対処の手が回らなくなって死んじゃうんだぞ!?
「このモードってプレイヤー側が弱いんだよねぇ。超能力のせいで戦えると錯覚するんだけど、実際のところは割と早い段階で質、量ともに敵側の方が優勢になるっていう」
確か15ラウンドあたりから全滅させるのが困難になるんだっけ?まだこれ7ラウンド目ですけどね!まだ折り返し地点一歩手前なのにこの忙しさってマジ?
「ああ、どうりで超能力の一覧を見た時に違和感を覚えたわけです。私の電撃もちゃーさんの無敵モードも、要するに立ち向かうんじゃなくて強行突破して逃げるためのものなんですね」
「のほほんと喋ってる場合かよ……行くぜ、【超昂燃素】!」
無敵モードを解禁した茶管が敵の群れに殴り込む。そして彼がとった行動とは、手近な一体をひっ掴まえての豪快なジャイアントスイング。
取り囲む黒服たちを黒服で薙ぎ倒し、勢いがついたところで放り投げては次の黒服を掴んでまた同じ流れを繰り返す。なるほど、敵がいる限り敵という武器は尽きないと、そういうことか。
俺たちも黙ってみているだけではない。茶管のアレは十秒も持たないごく短時間だからこそ許された能力、すぐに時間切れが来る。というか来た。
無敵が切れた茶管を援護するために看板が空を舞う。フライパンが人体を殴打する鈍い音を響かせ、体勢を崩した敵にナイフが突き立てられる。
ヤバいと思った時には迷わず超能力を発動。少なくとも抱え落ちするよりはマシだし、使用して場が悪化することはまずない。ほぼお一人様用の青を除き、俺ときーちゃんと茶管でリキャストタイムをカバーしあい、誰かが常に超能力を使用できるようにする。
「……なあ青。俺、超能力の持続時間を延ばすパーク持ってるんだけど、これハズレ?」
現地点の手ごろな武器が尽き始め、次の場所へと移動しながら経験者に聞いてみる。何度か使ってみて思ったのだが、このパークが役に立っているとは思えなくてしょうがない。
「あー……えっと、そうだねぇ、幻影軍隊ってデコイが生き残ろうがすぐに消えようが使用後十秒で再使用までのカウントダウンが始まるから、別に間違いじゃないと思うよ?延長された時間でデコイが遠くまで逃げれば、その分安全は確保されるわけだし」
なんやかんや擁護してくれたが「紙どころか空気抵抗くらいの耐久しかないデコイのためだけにパークを一枠割くのかって考えもあるけど」と最後に付け加えられた言葉がすべてを物語っていると俺は思う。
つまり、幻影軍隊は発動時のヘイト切りが最大の利点ってことなんだろう。囲まれていなければ陽動としても機能するんだろうけど、相手の数が少なかったらそのまま倒してしまえばいいんだし。
「次やる時は別の能力にしよう……それはともかく、そろそろいいんじゃないか?」
「……何が?」
お?しらばっくれる気かこいつ?俺だけじゃないぞ、きーちゃんも茶管も薄々気づいてるからな。
「あるんだろ、何か。お前は『エネミー全滅ができるのはせいぜい15ラウンドまで』って言ったんだからな」
それはつまり、15ラウンド前後までは敵を全滅させる手段があるということ。でなければ前ラウンドからのキャリーオーバーもあるとはいえ、7ラウンド目でこの忙しさはおかしい。
ステージギミックだかクソ強武器だか反則臭い裏技だかは知らないけど、それは確かにあるんだろう。
「そうだね……派手で手っ取り早い代わりに事故死のリスクがある方法だけど、やる?」
「俺は早く日本刀を振りたい。二人は?」
足を止めずにちらりと振り返りながら聞く。
マラソンしながら意見交換なんていう、脇腹大激痛不可避な事でも涼しい顔で出来ちゃうのがゲームの良いところです。
「とっととエリア広げてバイクで爆走してぇぞ、俺ぁ」
「ゲームに慣れたら序盤なんて稼ぎをしてナンボになりますからね。時短の技は知っておきたいです」
この手のゲームってラウンドを重ねても敵が強くなるだけでやること自体は変わらないから、システムに慣れるのが早いんだよな。だから、みんな早く先に進めたくなる気持ちが大きいんだ。
まあ、どのエリアをどのタイミングで解放するのか、強化はスコアをどれくらい稼いだら行うのか、この敵が出てきたらどのエリアで対処するのか、みたいなチャート作りが楽しいんだけどな。
「ハイリスクだけど、いいんだね?」
再確認してくる青に、三人そろって了承の意を示す。
ことわざには『虎穴に入らずんば虎子を得ず』とある。それなりのものを得るためにはそれなりの危険を冒さなければならない、という意味だ。
今回のケースでは『現状の打破』と『攻略時間の短縮』というリターンに対して俺たちが賭けなければならないのは『ゲームオーバーになるリスクの増加』になる訳だが、このゲームのシステムと四人それぞれの超能力を加味すると、そこまでのリスクではないと判断した。
「わかった、じゃあやろうか。作戦名は【フォーリン・ダウン】だ。詳しい内容は……そこに行ってからってことで」
ごめん青、もうやりたいこと分かったわ俺。うん、きーちゃんと茶管も『はいはいそういう作戦ね』って感じに苦笑いしてるし。
もったいぶるんならネーミングセンスを磨かないと、そんなド直球じゃモロバレだぞ……。
「こーゆー場所に立ってると、サテライトキャノンをぶっ放した時のことを思い出すねぇ。ではお客様、地面への旅に逝ってらっしゃいませ。グッドラック!」
「こんなにギャラリーはいなかったけどな。お一人様追加でーす」
十階建てビルの屋上で、俺たちはひたすらに迫りくる黒服に一撃入れては紐なしバンジーを強要するという作業を行っていた。
ただの落下死ではプレイヤー側にスコアは加算されないが、攻撃によって落下死させた場合はスコアが入るという仕様になっているらしい。なのでビルの縁から一、二歩のところで黒服の攻撃をいなしてはワンパン入れて重力の素晴らしさを体験させているのだ。当然ながらプレイヤーが落ちても即死なので要注意。
「しかしこれ、さっきまで逃げ回ってたのが嘘みてぇに楽だな。最初っからこれでよかったんじゃねぇのか?」
「敵人数がある程度多くなった上でやらないと逆に非効率的なんじゃないですか?やっぱり私たちが突き落とされる可能性も十分ありますし、対処が間に合うのならこの方法に頼らずチマチマ倒す方が安全ではあるでしょうね」
さらに言えば、こういう楽に稼ぐテクニックには『正攻法で戦うプレイヤースキルが育たない』というデメリットがつき纏う。どれだけ攻略サイトで知識を仕入れようとも、実際にプレイして動き方を覚えなければプレイヤースキルは育たない。だからこそ青も自分からは言い出さなかったんだろうな。
俺がいくつかのフルダイブVRゲームをやってきて思うのは、ジャンルにもよるがプレイヤー個人の『慣れと経験』が大きくでるということだ。
例えばデスブラのような対戦アクションゲーム。
モニター越しという神の視点で操作していたころは、必殺技は複数のボタンの組み合わせで行われていたし、回避は回避ボタン、防御はガードボタンを押すだけだった。
しかしそれがフルダイブだと、同じパンチ攻撃でも『どこを狙うのか』が重要になるし、防御も的確に相手の狙いに合わせなくては意味がない。回避一つとっても跳ぶのか、しゃがむのか、のけぞるのか、バックステップするのかと非常に選択肢が多く、慣れたプレイヤーなら紙一重で避けることができても、初心者なら思わず無駄に大きく避けてしまうこともある。
フルダイブゲームはやたらと自由度が高いものが多く、プレイヤーの発想ひとつで思いもよらないことができる。キャラクターとしてのレベル差をプレイヤーの実力で覆すこともよくある話だろう。
だが、それはプレイヤーが処理しなければならない情報量が段違いに増えているということでもある。だからこそ多くを経験して早く慣れなければ、いつまでたっても呼吸するだけで必死なままだ。
まあ、自分の思うように身体を動かせるというシステム上、才能があるプレイヤーは初心者であってもとんでもない成果を叩き出す可能性はある。
まあ、うだうだ言ってもやるもんはやるんだけどな!
だって早く強い武器欲しいし?正直同じような敵しか出ないから、もういい加減戦いにも慣れてきてますし?だったら時短だよ時短。大丈夫大丈夫、俺たちみんなそれなりのゲーマーだし何とかなるなる。
「リスクとリターンの話もあるんだけどね、外に階段があるビルじゃないと屋上まで来れないっていうのもけっこう面倒なんだよ。ドアが閉まってる建物には基本的に入れないからさ」
そんな仕様の中でここみたいにちゃんと登れるビルがあるのなら、おそらく開発もわかってやってる半公認の裏技ということでいいのかな。いずれエネミーのタフネスが落下ダメージを上回るあたりが実にそれっぽい。
とりあえずこのラウンドは安定して終われそうでよかった。階段が狭いから敵は一度に来れないし、予想以上に溢れたらきーちゃんのスタンで痺れてるうちに突き落とすなり茶管に無敵モードで暴れてもらうなりすればいい。バイクに乗っていたライダーエネミーもビルに登る前に見つけて仕留めてきたから、俺たちはこのラウンドにおいてここから降りる必要はない。もしかしたら見つけれていない敵もいるかもしれないけど、いたとしても一体二体程度だろう。
「10ラウンド目には敵のミュータントが出てくるから、9ラウンド目が終わる前に個々の強化と歴史資料館を解放するって感じでよろしく!」
へいよー、と返事をしつつ、殴りかかってきたエネミーにカウンターのラリアットを食らわせてダウンをとる。すかさず転んでがら空きになった体をサッカーボールよろしく蹴り飛ばしてフリーフォールへとご招待。
一人のエネミーを地面にキスさせるたびに歴史資料館解放が近づくとなれば、赤信号君はハッスルしちゃうぞ!ん?なんだ、お前も地面の味が知りたいのか?だったらここから大きく踏み出すといいぞ、でもその前にナイフで一刺しさせてくれよな!
あと2、3話でこの章を終わらせるつもりなんですけど終わるのかなコレ。




