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ダイブ・イントゥ・ゲームズ ~ぼっちなコミュ障、VRゲーム始めました~  作者: 赤鯨
妄想をリアルにするとどうなるの?~Choice For Survival & エスケープ・トゥ・イマジン~
85/300

全てを懸けるからこそ一瞬が輝く

今更ながらTwitter始めました。

『黒』や『闇』を表す言葉は多い。漆黒、墨、濡羽、玄、(まゆずみ)、暗闇、常闇、暗黒、晦冥(かいめい)、宵闇……和歌の枕詞には射干玉(ぬばたま)、なんてのもある。

一言『黒』『闇』と言ってもこれだけの表現があるように、黒に込められたイメージも様々だ。ゲーム的には死、悪、重力なんてのがポピュラーかな。人間は夜に寝るから、そこから回復属性が付くこともあったりする。


まあ、いろいろ並べてみたけど今の俺が抱く黒のイメージは至極簡単だ。


「……昔のゲームでな、特殊なスキルやアイテムを使わないと真っ暗で何も見えないダンジョンがあってさ」


「知ってるよそれ。近くの村や町のNPCの話を聞くの忘れて、何の準備もなしに突撃して右往左往するらしいね」


「そうそう。それでな、ガキの時にその手のダンジョンをなぜか勘で進んで、途中にあるワープギミックのせいで戻ることも進むこともできなくて詰んだことがあるんだよ」


「ははは、つまり赤はこう言いたいんだろう?」


「「今の俺たち詰んでね?」」


赤と青という色の代表みたいな名前を冠する俺たち二人の前に見えるのは、しかしてただひたすらの(絶望)だった。一切の光がない塗りつぶされたような闇の中では隣に青が座っていることすら疑わしい。


なんでこうなったんだろうなぁ、と若干の現実逃避を兼ねて数分前の出来事を思い出す。




「ほー、なかなか深そうな洞窟じゃねぇか。猛獣なんかはいねぇだろうが、はぐれたら面倒くせぇぞ。気ぃつけて行こうぜ」


「私が電池切れのないライトを持っていますけど、それ以外の灯りは少ないですからね」


「松明を作るの、なんか絶妙に手間がかかるからねぇ……」


洞窟探検をしようということで手分けして島を探索してみると、これが割とあっさり見つかった。拠点から島の中央へと向かったところにある、小山というかデカい丘というか微妙な地形に生成されていたのだ。


きーちゃんと青が言った通り、予想以上に早く見つかったおかげで準備が万端とは言えない状況だ。だけど目の前にある冒険の香りが匂い立つ洞窟に我慢できなかった俺たち一行は、命の危機に関わるような猛獣も毒虫もいないイージーモードということもあって様子見という名目でちょっとだけ立ち入ることにした。


今思えばそれがすべての間違いだった。サバイバルにおいて確かに猛獣や毒虫は危険極まりないが、なにも人間を殺すのは生き物だけじゃないということを失念していたんだな。


イージーでありながらエクストリームと根本的にはなにも変わらないその要素、それは地形だ。サバイバルとは危険生物との戦いを指すものではなく、安全が確保されていない場所で生き延びなければならない状況のことだ。

ではそんな歩道があるわけでもなく足元も満足に照らせないような洞窟を、どこか舐めた調子で鼻歌まじりで歩いているとどうなるか。


「すっごいねぇ、こんな崖から落ちたら戻ってこれないねぇ……って、うわわわわ!!」


「おいバカやめろ放せうわああぁぁぁぁ!!」


坂というよりは崖に近いような場所に至り、準備不足だしそろそろ帰ろうかと言った矢先に青は運悪く足元に生えていた苔を踏んで壮絶にすっ転ぶ。そして溺れる者は藁をも~とでも言うかのように前を歩いていた俺の服を掴んで巻き込みあそばされた。

結果、俺たちはもつれあいながらギャグマンガの様に地下への坂道を転がり落ち、見事に灯りを持っているきーちゃんとはぐれてしまったのだった。




「さて、どうする?あの二人が助けに来てくれることを祈って音でも立ててみる?」


「長いロープがないとあの崖は無理だろ。下手すると全員同じようなことになる」


「だよね。こうも真っ暗だとアイテムを出しても見えないのがつらいなぁ、下手にRPGとか撃ったらその先に赤がいましたとかありそう」


「この状況でロケランぶっぱするやつとか自殺志願者かよ……ああ、そうか。死ねばいいのか。なあ青、お前の手持ちで貴重品ってなんだ?」


なるほどね、と言いながら青と俺は同時にインターフェースを開いてインベントリを確認する。インターフェースはばっちり見えるのにそれ以外が全く見えないのはなんでなんだろうか。ゲームシステムって不思議だなぁ。


「見た感じ日本刀とRPGかな。でも日本刀は刃物としてみるなら石ナイフがごろごろあるし大丈夫だね。素材は基本的に置いて来てるし無問題かな」


「俺もスコップがあるけど、残り日数的に無くてもいい。三味線は拠点でしか使わないから持ってきてない」


失えば痛いと言えば痛いけど、無いと困るかと言えばそこまででもって感じ。多少不便になるだろうけど、代用品が全くないというわけではない。つまり、今の俺たちは死んでもそこまでの痛手じゃないということだ。


「それじゃあ派手に逝く?それともカッコよく切腹する?」


「死に戻りっつったら爆発と相場が決まってる」


「イエース、分かってるねぇ。ドカンと一発デカいのいこうか」


無人島で親友と無理心中というのもサバイバルらしいかな。そんなことをインベントリから取り出したロケットランチャーの向きや引き金の位置を確認する青の隣でふと思った。

ちょいとバッドエンドっぽいけど、まあ悪くはない。一回二回ミスして死ぬことになんの抵抗があるというのか。次からは足元に気をつければいいだけだ。


それでは次の俺と青が上手くやってくれることを祈って、グッバイ今生。低難易度でも舐めてたら死ぬってことを教えてもらったし、それなりに有意義な死であったと思おうか。


「あ、そうだ。次のキャラなんだけど…………で、どうかな?」


了解了解、だったらあっちの二人が遠ざかる前に早く死ななきゃな。





「おいバカやめろ放せうわああぁぁぁ……ぁぁぁ……ぁぁ……」


足を滑らせてコケた青いのに巻き込まれた赤いのの叫び声が崖の下に消えていった。あいつ結構デカい声だせるんだな、そっちの方にびっくりしたぞ俺は。


「またベタなハプニングを起こすやつらだぜ、まったく」


「っふふ、ふふふ……!あんなにキレイに転げ落ちるって……くふふ!」


こいつも笑う時には笑うよな。普段クールに見えるのとIRの腕前がアレだから誤解しそうだけど、俺たち四人の中で一人だけ未成年なんだよな。大人びて見えるっつーか、俺を含めた男連中の精神年齢が低めっつーか。だからこそいい感じの遊び仲間であれるんだけどよ。


「んで、どうする?助けに行くか?」


「いいえ。私たちも準備不足ですし、一度拠点に戻りましょう。それに諦めてリスポーンするかもしれませんしね」


アイツら妙に思い切りがいいところがあるもんな。帰るのめんどくせぇからサクッと死ぬか!くらいのことを考えててもおかしかねぇわ。むしろそうなる可能性の方が高いかもしれん。


「どっちにしろ一回帰るか」


「はい、足元には気をつけていきましょうね」


「ははは、違ぇねぇ」


来た道はそこまで複雑じゃなかったから迷うことはないだろ。分かれ道があったところには目印も置いて来てるしな。青いのの二の舞いを演じないように気をつけてりゃあ死ぬことはないさ。


「せっかくなんで聞きたいんですけど、ちゃーさんからみてあの二人ってどんな感じですか?」


「赤いのと青いのか?そぉだな……赤いのはパッと見何考えてんのかわかんねぇけど中身はなかなか面白れぇ。青いのはツラもいいし性格も悪くねぇな。二人ともいい奴だが、どちらかっつーと俺は赤いのを気に入ってる」


青いのもやることが派手で面白いが、飽きないのは赤い方だろうぜ。純粋にゲームを楽しんでるし、自分のやりたいことをやるガッツもある。現実の方だとどうかは知らねぇが、少なくとも好きなことに全力を尽くせるやつが俺は好きだ。


「私もあーさんのことは難が無いとは言いませんけど、尊敬できる人だと思ってます。ブルさんは並のアイドル顔負けのルックスなのに親しみやすいですよね、本人は女の子が苦手らしいですが」


「そんなことも言ってたな、確かリアルだとオメェくらいしかリラックスして話せる女の知り合いがいないんだろ?人は見かけによらねぇってやつかねぇ?」


あれで女好きのスケベ野郎だとそれはそれでクソ迷惑だろうが、それでも女の扱いにゃ慣れてそうなもんだがな。あのツラで色々あったって言やぁ、ストーカーにあったとか男からのやっかみだとか想像に易いがね。


「見かけによらないと言えば、あーさんがDestiny Bloodっていうゲームをしてるのは知ってますか?」


「聞いた聞いた、あいつが対戦メインのゲームを自分からやるって意外だよな。しかもそこそこ強いんだろ?」


「そこそこどころか、あーさんがいつも戦ってるフレンドってランキングトップですよ。しかもその人とかなりいい勝負をしてます。探せば割とすぐに対戦動画を見つけられますよ」


は?マジかよ、この間そんな話をした時にゃ『うーん、まあそこそこ?唯一のフレンドにはいつも負けてるし』とかしれっと言ってやがったぞあの野郎。そりゃそんなのが相手ならいつも負けるだろうよ。


「アイツそーゆーの言わねぇよな、普通に誇れることだろうに。IRでオメェに勝ったってのもそうだけどよ」


「私のは卑怯な手だったって自分でも思ってるみたいですけど……多分、自己完結しちゃうんでしょうね。自分が楽しいと思えるのならそれでいい、みたいな。ドラスレの時もあーさんしか知らない情報をあっさり私たちに教えて、しかもそれを私たちがバラす分には構わないと言ってましたし」


あーあーなるほど『強い人といい勝負ができた』『すごいアイテムを発見した』『()()()()()()()()』ってのが重要で、結果そのものはどうでもいいのか。だから自分だけの情報を他人にくれてやることになんの抵抗もないし、誇らしい戦績を自慢することもないんだな。


「実際のところは分かりませんけどね。ただ単にどんな形であれ知らない人とコミュニケーションをとるのが嫌だってだけかもしれません。私たち、特にブルさん相手だとちょっと自慢気に言ってくることもありますし」


「自分のやったことを見て欲しい、知って欲しいって相手がいるのは良いことだと思うぜ。俺も自分がスゲェ体験したりすると彼女に聞いてもらいたくなるからわかるわ」


「ちゃーさんって彼女さんがいるんですか?あっ、もしかして妙にリアルで出来のいいそのアバターって……!?」


「……そうだよ、無意識に世界で一番愛してる女の顔になっちまってな。アイツらにゃ黙っといてくれ、特に赤いのは薄々勘づいてるみたいだし」


そりゃまあ、女アバター使わなけりゃ済む話だ。でも俺はこれでなかなかコレクター気質っつーか、男だけ女だけでしか取得できないアイテムとかがあるとなんかモヤっとしちまう。それで男女両方作るわけだが、女アバターがサブだからっつってキャラクリに手を抜くのはなんか違うだろ?すると出来上がるのはこの顔なんだわ。


「私はちゃーさんの彼女さんがどんな人かは知りませんのであくまで個人的な意見ですけど、その顔でプレイしてるのはバレないようにした方がいいと思いますよ」


女からズバッと言われるのってキツイな結構……。でもさすがに彼女の顔でやってるのはキモいか。スマン咲希(さき)、リアルで謝ると絶対ぶっ飛ばされるから心の中で謝っとく。


ゴォォォン……ズズ……ズン……

洞窟の奥の方から、低く何かが崩壊するような音が微かに聞こえた。今までの俺の経験上、何の予兆もなしに勝手に地形が崩れるようなことは無かった。ってこたぁつまり、そういうことだ。


「ちゃーさん、これって」


「ああ、アイツらだろうな。多分青いののRPGで自爆したんだろ、早く海岸まで迎えに行って笑ってやろうぜ」





「ぶっふぉ!!な、なんだオメェらその頭!」


「……っ!……っ、っっ!!死ぬ、酸欠で死んじゃいます……!」


打ち合わせ通りに手早くキャラメイクを終えた俺たちは、リスポーン後の海岸で目が覚めたと同時に迎えに来てくれた二人と合流できた。すると思った通りのリアクションがもらえたので、少し調子に乗ってみることにする。


「彼らはなんで笑ってるんだろうね。なにか変なところはあるかい、赤?」


「さっぱりだ。俺にはわからないな、青」


「チリチリアフロでキメ顔は……卑怯ですよ……!」


うむ、やっぱり爆発オチの後はチリチリアフロだな。鉄板ネタというのはやってもやられても面白い。ところで、このゲームって髪の毛を自分で切ったりできる?あ、できないんですね……。


さ、残り数日をアフロでサバイバルするか。


学生時代にパーマがきつすぎてどう見てもアフロの友人がいました。あだ名はボーボボでしたけど鼻毛は伸びませんでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 爆発してチリチリアフロになるオチの元ネタは多分ドリフターズだと思いますが、元祖かと言われるとちょっと。 でも定番ネタの域まで持ってきたのは間違いなくドリフターズだと思います。 彼らは偉大…
[良い点] くっそwwwwww最後笑うたわwwどうしてくれるwwwwww(誉め言葉 [一言] 今までの戦績(?) ラオシャン:マニュアルで自由自在に操りし王者 スラクラ:核兵器を使わせた英雄 IR:ク…
[一言] く、悔しい…定番ネタなのに予想出来ずに笑ってしまった。
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