あっちができてもこっちができるとは限らない
この時期はいろんなゲームでクリスマスイベだのなんだので忙しいですね。
ここ数年は年末年始を異世界で過ごしてるんで肝心なところをプレイできないんですけどね(怨)
『待ってたよ赤。ようこそ地獄へ、歓迎するよ親友』
『さあこっちだ。ともに行こうぜ兄弟 』
「お前らキャラ変わってない?」
サンダバに別れを告げ、六日目となった今日。どっちに行こうか悩んだ末に選んだナーガラージャ戦線で、俺は変わり果てた友を見た。
ナーガラージャはサンダバに比べて弾幕の密度は薄めらしいがその分一発の破壊力がすさまじく、ガチガチに固めた重量級レムナントでも当たる物によっては数発も耐えられないという。もちろんそんなワンパン即死弾ばかりではないが、もともと軽装甲が多い飛行タイプに限ってはよほど操縦に自信が無ければただの自殺行為に変わりないという。
まあ、サンダバで回避力を鍛えられた今なら集中している限りクリーンヒットはそうそう貰わない自信はある、とりあえず出撃が一回だけというのもアレなのでネクストゾーン・トラジエントに乗ってやって来た。なお、チーム戦では補助AIに喋られると通信がめんどくさいことになるので会話機能は切っている。すまんアトゥイ。
なお、きーちゃんは武御雷30000点を無事突破、今日はサンダバに行って最終日はこっちに合流する予定らしい。なので俺は青と茶菅の三人でチームを組んでの出撃だ。相手が無限戦機とは言え初チーム戦だから、ちょっとわくわくする。
二人の搭乗機体は跳躍力に優れた逆関節脚の人型レムナント【青春18号】と、バイク型の【凱旋】だ。名前を聞いただけでどっちがどっちの機体なのか分かるってすごいよな。
「で、ナーガラージャはどうやる感じなんだ?」
『しょうがない、僕が教えてあげるよ新入り。よーく聞くんだよ?』
一つ、正面に立ったら轢き殺されるからそれは無し
二つ、横に立ったらそれはそれで殺されるからそれも無し
三つ、上に陣取ると対空砲火が飛んできて死ぬからそれも無し
四つ、後ろから攻めるとなんやかんやで死ぬのでそれも無し
「いや戦えよアホンダラ!」
『えっ何か間違ってる!?』
右側の胸びれブースターで青春18号の頭をどつく。まさかこいつら、今日になるまでずっと逃げ回ってるだけだったのか……?確か昨日の時点で合計点が9000弱って言ってたもんな。ヤバい、十分あり得るぞ。
『おっと、俺らをチキン呼ばわりたぁ見過ごせねぇな。多少とは言え黄色い鬼軍曹の下で訓練してたんだぜ?ずっと逃げてたとはいえ腕は上がってんだよ、お前が来たならワンチャンあるぜ』
俺が来たならというからには、何か求められる役割があるということか。なんだろう、飛行型じゃないとできないことか?
『いいかい?ナーガの攻撃は、レーザーと機銃以外は基本的に放物線を描くタイプなんだよ。つまり、轢殺を除けばむしろ密着した方が安全なんだ。それは逆に言えば近づくことがめちゃくちゃ難しいってことなんだけど』
『攻撃が前からだけでなく上から飛んでくるってのが面倒でな。飛んできたミサイルを避けたら落ちてきた榴弾で木端微塵なんてのは、ここだと日常茶飯事なんだわ』
特に誘導弾でもなんでもない適当にばら撒かれた榴弾というのは、センサー類も反応せず目視でしか発見できないので鬱陶しいことこの上ないらしい。そしてこれがまた狙ったかのように隙を晒した瞬間に落ちてくるんだと。
「ふんふん。で、俺ができることは?」
『いや、だから弾除けだっつったろ?』
「え?」
『え?じゃなくて、その機体だと肉の壁くらいにしかならないんだよ。蛇さんは飛行型を目の敵みたいにしてるからね。サンダーバード相手にブイブイ言わせていた赤ならある程度はいけると思うんだけど』
そんなレベルなのか?鳥型より蛇型の方が飛行型キラーって……ああでも、本気で対空を固めた上で空中戦を強いてくるとかクソゲー以外の何物でもないか。それでもサンダバは大概だったと思うけど。
「つまり、俺は一機ムダにしたってことか。……適当に突っ込んで偵察して死んで来るかなぁ」
投げやりになったわけじゃないけど、向いていない機体で戦うにはキツイ相手だし、言い方は悪いが最初の一機なんて戦場に慣れるための捨て駒みたいなもんだ。やるだけやった後はちゃんと向いている機体で来た方がいいだろう。
『ゴメン、先に言えばよかったね』
「いいよ。サンダバとの違いってやつを味わってくる」
『待て待て待て、俺らも行くってーの。どうせ捨てた命だろ?俺らの上で傘になってくれや』
「臆面もなく外道なことを言うなぁ……」
『使えるもんならなんだって使うさ。ダチのでも自分のでも、命を消耗品にできるのがゲームの良いところだろうが。お前らはその辺、わかってんだろ?』
当然。どれだけゲームの技術が向上してリアルに近づいて来ていても、ゲームがゲームである以上それだけは変わらない。ゲームは現実とは違うということを、端的かつ究極的に表しているものがそれだ。
「ゲームにもよるけどな」
『それが最適解なら、躊躇する理由は無いよねー』
対戦ゲームにおける真理の一つ、『死ななければ安い』。そして死にゲーの大前提である『命は投げ捨てるもの』。この二つを芯から理解している限り、命の価値を見誤ることは無い。命というものは何が何でも死守すべきものであると同時に、必要な時には潔く差し出すべきものである。そして今、機体チョイスをミスっている俺の命はそこまで重くない。
「いいぞ、傘になるよ。でも、遅かったら置いてくからな」
『誰に向かって口きいてやがる。一週間前の俺らと同じにすんじゃねぇぞ、なあ青いの?』
『そうそう、今の僕らならハリウッドのカーチェイスも余裕でこなせるよ。まあ、回避と移動に集中しちゃって攻撃がおろそかになるけどね!』
つまりそれは遠くでコソコソ逃げてるか、近くで派手に逃げてるかの違いしかないのでは?……いや、何事も為さねば成らぬと言う。見ているだけで上達できるのなら、この世に知ったかぶりという言葉は無い。回避ができないプレイヤーが十全な攻撃をできるはずも無し、まずは生き残ってからだ。
そもそも俺は自分の心配をすべきだ。傘になることを了承したとはいえ、何も黙って死ぬのが仕事というわけじゃない。次の機体のために情報を集めないとならず、そのためにはできる限り長く生き延びなければ。
「よし、いこう」
『……オメェ、号令かけたりできるようになったんだな』
『たった一言だけで成長を感じられる成人男性って、ある意味希少だよねぇ……』
故意のフレンドリーファイアができる武装って何かなかったっけなぁ。ま、なんにせよタダでやられるつもりはない。サンダバで鍛えられた腕前、とくと御覧じろってな。
「はい、そういうわけでナーガラージャ反省会を始めまーす!特別アドバイザーにはきーちゃんさんが来てくれます。どうぞよろしくお願いします!」
リアル時間で午後三時(今日は土曜日)。俺のガレージのあるちょっとしたテーブルセットに、合流したきーちゃんを加えた俺たちは着席していた。
きーちゃんは今日サンダーバードに出撃すると言っていたが、無事午前中にサンダバは撃墜されたらしい。最後には『やはり人類は度し難い……。でも、もし次があるのなら……』と言い残して爆炎と共に墜ちていったそうだ。
「なんでブルさんこんなにテンション高いんですか?」
「赤いのが思ってた以上にボッコボコにされてたからじゃねーの?こう、自分を置いて先に行ってた友達が案外近くにいて嬉しい、みたいな」
「人を傘扱いしといてよく言うな」
「私も交友関係についてはどうこう言いませんけど、なんとも複雑な友情ですねぇ……」
「青も割と拗らせてる疑惑あるからね。きーちゃん以外にリアル女友達いないらしいし」
「あの面でか!?」
ゲームのアバターとしてなら全く問題ないらしいけど、実はリアルの女の子が苦手なんだそうだ。詳しくは聞くつもりもないが、きーちゃんが大丈夫な理由が『彼女はロボに恋してるから』なあたり、なんとなくわかる様な気がしないでもない。
それでも女の子そのものを毛嫌いするわけでもなく、公私をちゃんと分別しているところは一個人として尊敬する。女性が苦手なのにイケメンであることを売りにしたモデルやるって、結構な苦行だと思うんだけどな。
「先に言っておくけど恋愛対象は女性だからね。って、そんなのはいいんだよゲームについて話そうよ」
「反省会だろ?あれだ、赤いのがまともな陸戦機を持ってないことだな。ゲーム間違えてんじゃねーのか?」
「ウミウシが出てきた時にはさすがにびっくりしたよね。しかも火力だけは妙にあるっていう」
「もしかしてネイキッド・ギルズですか?確かに固定砲台としては優秀な方ですよね、見た目の割に」
「動き遅いところまで完全再現したせいで、ただの動く爆発物だったけどな」
まあ、この件については申し開きも出来ない。サンダバ用に調整していたとはいえ、登録しておいた機体のほとんどが飛行型だったのはさすがにダメだった。普段上を取られることが殆ど無いから、背部装甲が薄過ぎて落ちてきた榴弾にワンパンKOされちった。
「俺としては二人が予想以上に粘り強くて驚いた。ホントに避けてるだけだったけど」
「操縦だけなら何とかなるんだけどよぉ。武装を選んで照準合わせてトリガー引いて……って手順が増えると処理が追いつかねぇわ」
「僕はどっちかっていうと逆かな。ある程度はついて行けるようになったけど、やっぱり動き回るのは苦手だよ。腰を据えて狙撃とか待ち伏せとかの方が性に合ってるかも」
肩をすくめる茶菅と、狙撃銃のスコープを覗き込むようなゼスチャーをする青。
確かに、青はビュンビュン飛び回りながらアレしてコレしてって考えるの苦手かもしれない。そもそもゴテゴテのアクションゲーム自体が嫌いじゃないけど得意じゃない、って感じなんだよなぁ。
「練習につき合ってる時からブルさんはそんな感じでしたね。そしてちゃーさんは機動はできるけど機動戦ができない、と」
「……そのちゃーさんって呼び方、なんとかなんねぇのか?気が抜けるんだけど」
「まだマシでしょ、僕なんて最初の方ブーさんだったよ。さすがにブーはモデルとしての矜持が許さないよね」
「レムナントの名前はカッコいいのに、人間が相手だとテキトーなんだよなぁ……」
その後も実戦で起こったことを振り返りつつ、動き方の見直しや武装の変更案を出し合ったりしていると、ふときーちゃんが思い出したかのように口を開いた。
「私も明日はナーガラージャに出撃するんですけど、皆さんチーム組んで出撃しますか?」
「おう、俺ぁ特に予定はねーからいつでもいいぜ?」
「僕も大丈夫。赤は……学校以外の予定があるのは何年後?」
「も、もうすぐ面白そうなゲームが出るから……」
「声が震えてるよー」
うるせぇ!健全な大学生に学校とゲーム以外の予定があるわけないだろいい加減にしろ!予定は未定だ、俺のカレンダーには白紙という形で無限の可能性が刻まれてんだよ!
「あーさんの悲しいリアルは置いといて、ちょっとやりたいことがあるんですよね。皆さん、ちゃんとしたチーム戦をしたことは?」
「「「ない」」」
だってあれ5VS5だろ?根本的にフレンドが3人しかいないから傭兵を雇わないと無理じゃん。あ、でもアレか、無限戦機相手なら5人以下でも出れるな。
「でしたら知らないかもですけど、チーム戦にはこういうのがありまして……」
こちらに向けられる形で開示されたきーちゃんのインターフェース。その画面に映っている映像を見終えた瞬間、男三人の口元がニタリと歪んだ。なかなか面白いものを見せてくれるじゃないの、きーちゃんさんよぉ。
「確認しますけど、これ、ストーリークリアしないと手に入りませんよ。大丈夫ですか?」
「問題ねぇよ。で?ベースは俺か?それとも赤いのか?」
「4人でやるなら大出力機がいるんだろ、足は任せた」
「でしたら、せっかくなのでブルさんがメインやってくださいよ。一回こういうのやったことあるんでしょう?」
「僕がやったのは別世界線の話なんだよなぁ……。まあ、美味しいところをくれるのなら貰うよ」
役割分担をササッと決めてしまい、ある程度の擦り合わせをした後はやるべきことをやるために皆それぞれのガレージへと戻っていった。当然俺も与えられた役割を全うするべく、機体製作へと取り掛かる。
必要なスペックやパーツは聞いていたのでそれらをショップで購入し、自分が今持っている設計図の中で一番近そうなものを選んで呼び出す。さすがに一から作るのは時間の問題があるので出来る限り流用だ。
「要求スペックに一番近いのは……ネクストゾーンか。いや、むしろ雛型にするって意味だとレッドゾーンの方がいいかな」
それにきーちゃんを打倒するために作ったレッドゾーンが、生まれ変わってみんなと力を合わせる機体になるというのも面白いだろう。
「名前を何にするか、決めとかないとなぁ」
決戦は明日の午前九時。できるだけ早めに出撃しないと、機体をお披露目する前に向こうが沈んでいるかもしれない。休日に本気出す人もいるだろうし、サンダバが墜ちた分のプレイヤーが他二機に流れてくるしね。
何がどうなろうと明日が最終日。だったらせめて大きな花火を打ち上げましょうや。
合体ロボは難しくても、まあこれくらいならね……




