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ダイブ・イントゥ・ゲームズ ~ぼっちなコミュ障、VRゲーム始めました~  作者: 赤鯨
無限戦機、襲来 ~インフィニティ・レムナント~
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遊びは終わりだ

そろそろ異世界から戻れる目途が立ってきました。

「さすがにキツい!……けど、戦える!!」


前から横から後ろから襲い来るStorm eggの五機小隊。それに対しいまだ致命傷は受けず、地味な反撃も積もり積もって一機落としたぞ!端から見れば出来損ないのダンスを踊っているようにも見えるだろうが俺だって必死です。


今までに比べてこちらの攻撃が当たりやすくなっているのは一重に二本の腕のおかげだ。特にネクストゾーンのように口腔内に主砲がある機体だと一々相手を正面に捉えなければならないが、腕があればそんなお悩みも解決。悔しいがこればっかりは純粋な海洋生物型ではどうにもならない差と言えるだろう。


「まあ腕だけ動かすってのも難しいけどね。っと、『ライトロール』!」


接近してくる嵐卵から放たれたレーザーを躱すため、右手元のコンソールを叩きプリセット・マニューバを起動。それはただ全力で右にステップしながら回転するという超単純な動き。だがこれをワンアクションで即座にできるというのは回避動作として重宝する。


「さらにおまけだ、喰らっときな」


ワイヤーテールがある機体で高速回転したらどうなる?そうだね、先端のブレードも相まって鞭のようになるね。つまり攻防一体、回避と同時に攻撃ができる単純にして強力なマニューバ。


ガキュイン!と激しくも甲高い音が教えてくれるのは、高速で振られた剣鞭尾がまた一つの小鳥を叩き斬ったという事実。ふっ、またつまらぬものを斬ってしまった……あごめん待って残った三機で同時にレーザーはダメだって!


実際このブレード付きワイヤーテールの攻撃力は結構高く、物にもよるけど普通に手で持つブレードよりかなり上だ。

しかしこれがまた使いにくいんだな。先端のブレードだけでなくワイヤーの部分でもダメージは入るけどしょっぱい。早く振れば振るだけ長く伸びるってのもまた、慣れるまでは距離を見誤るんだよなぁ。


「ん?数を減らしたら撤退していきやがった。ほかのStorm eggと合流するのかな?」


戦略的撤退というやつだろうか。なんにせよこちらとしても一息つけるのはありがたい。無闇に追撃して返り討ちにされるのも嫌だし、取り敢えずは見送ろうか。


しかし、さすがは超優等生万能機であるデンジャーゾーンを元にして作っただけはあり、バテンカイトスは一部を除けば素直で使いやすい。本家に若干足りなかった火力と、もはや無いと落ち着かない尻尾を追加したことでやや重量は増えたけど、それでも操縦性能は良好だ。


「なんとか戦えないこともないってことはわかったけど、さてここからどうしようか」


Storm eggと戦うことは出来ても本体まで近づくことは難しい。それが現状の感触なんだけど、昨日の戦いを鑑みるに本体に大きな損傷を与えることで特別な貢献度が出るということが分かった。でなければ小競り合いをしただけのエコージャンパーとSong of whaleしか撃っていないネクストゾーンの二機だけであれほどの貢献度を稼げた意味が分からない。


そうなると手っ取り早く貢献度を稼ぐには、本体に凸し破壊できそうな部分を攻撃続けるのが一番なんだけど……それができれば苦労しねえよと話が戻ってしまうわけで。


広域回線的には左翼側格納庫に凸して破壊が主なようだ。だけどAIが強化された小鳥と殺意五割増しの親鳥の弾幕で味方側の被撃墜数ばかりが伸びているといった状況。

一部の猛者達はそんな猛攻を掻い潜り本体に攻撃をしているようだけど、機動性のために火力を犠牲にしているのか致命の一撃はでていない。


「要するにどうしようもない、と。出来ることはと言えばStorm eggを潰して少しでも敵側の防御を薄くすることだけかな」


大きな一歩が踏み出せないというのなら、小さな歩みを重ねていくだけ。片方の格納庫を潰したお陰で供給量自体は減っているんだから、小鳥を駆逐して本体に集中するというのもアリだろう。


そうと決まればちょいと釣るか。手頃そうな相手にちょっかいかけて戦いやすいところまで出てきてもらおうかな。さすがに囲まれ続けたら落ちちゃうし、ゆっくり慎重に行こう。




途中に離脱補給を挟みつつ、そんな感じで戦うことしばらく。行動方針が功を奏したのか、バテンカイトスはまだ落ちずにいた。キルスコアはちょうど十機、多少時間をかけながらとはいえなかなかの戦績と言えよう。

戦域全体としてみれば、Storm eggの数は大分減ってきた。本体近くの守護をしているものはまだそれなりにいるけど、プレイヤーに攻撃を仕掛けてくる役目の機体は目に見えて少なくなっている。プレイヤー側もちゃんと対応できているという証左だろう。


「それにしても、人型ってこんなに戦いやすいものなのか……さすがは二十年も共にしてきた体と同じ作りなだけはあるということなのかなぁ」


しかし俺が海から離れた場合何が残るのだろうか。魂が磯臭いだの背鰭が生えてるだの言われるほどなのに、その要素を取ったらどうなる?


母なる海の包容力は素晴らしい。ロマン、不思議、興奮、恐怖。ごく当たり前だがそれ故に人間世界では忘れそうになるものを悠然と示してくれる。

海は全てを受け入れ包み込むと同時に、あらゆるものを授けてくれる。束の間の癒し、己の存在を懸けた戦い、生きることの難しさ、挫折の苦悩と成長の喜び、そして命の重さ。あるいは人間のそれよりもシビアで、かつおおらかだ。

断言するが海に浸り続けるのは心地良い。だけどそれは与えられるもの以上にはなれないということではと思わないでもない。海の一部であり続けるのではなく、取り込み、昇華し、己の一部としなければならないのではないか?

いずれ子は親を超えるもの。『海の一部である俺』ではなく『俺の一部が海である』と言えてこそ本物なのでは?いや、むしろ『俺は海であり、海は俺である』と言えなければ嘘なのでは?


結論:一は全、全は一。すなわち全部海。


「つまり空も海、人も海。だったら人型ロボットも海!よし気合入ってきた。赤信号、いっきまーす!!」


気分が乗ると調子が出るよね。暗い気分でやってるとゲームでも凡ミスするから、テンションは上がっているに越したことは無い。病は気からというし、気持ちが大きければ自然と力も大きくなるのだ。今の俺の気持ちは太平洋くらいの大きさだ、つまり無敵である。


操縦桿を傾けていざ戦いへ。そう意気込んだ時、不意に無線用スピーカーにノイズが走った。



『ハロゥ、ヒューマン。聞こえていますか?私はTHUNDER BIRD。雷の化身たる霊鳥であれと、そうあなた方に名付けられた者です』



えっ?なんだこれ、広域回線でサンダーバードが喋ってるだと?

……いや、それだけじゃない。広域回線からプレイヤーの声が消えた。回線を完全にジャックされたんだ!


『あなた方はまた、そうするのですね。私を作った手で私を壊そうとする。私に人類の殲滅を命じておきながら、人を守ろうとする。その矛盾、不合理さ、私には理解できない。あの時私にAIが暴走したとおっしゃっていたが、仮にそうならば私を暴走させたのは間違いなくあなた達だ』


淡々と言葉を並べるその声は、冷静な女性のもの。そして、その抑揚から感じ取れるのは呆れと侮蔑。機械であるが故に人間の感情を理解しきれないという、王道と言えば王道な理由。


『破壊せよと命じておきながら、殺すなという。殲滅せよと言いながら、やり過ぎるなという。ならば、なぜこのような身体を私に与えたのです?なぜ、全てを破壊するに足る力を私に持たせたのです?なぜ、あなた方は自身の手に収まる範囲で満足しなかったのですか?』


人類の歴史を学校で学んできた者としては、耳が痛いと言わざるを得ない。人間の技術の進歩発展は目覚ましいものだけど、こと武力についてはもはや何がしたいのかわからないレベルにまでなっているのも事実。撃つことはおろか、それを持っていること自体が戦争の理由になりかねない武器だってあるのだから。


『私は兵器として創られた。私の存在意義とは人類根絶。だから私はあなた方を破壊します。徹底的に、あなた方が消え去れと願った人類を殲滅します』


兵器として生まれたのだから人類を殺戮しますというAI、いやぁロボゲーの鉄板だなぁ。

テンプレともいえる理由だけど、テンプレというのは多くの人に求められ認められているからこそのテンプレ。つまり何が言いたいかというと俺は燃える。

本格的な戦いの前に人類に説教をかましてくる暴走した人工知能。うーん、俺的にはグッドだね!


『これより本機は戦闘モードへ移行します。では、さようなら人類の皆様方』


ほっほっほ、貴様今までは戦闘ですらなかったと申すか。これまではただ降りかかる火の粉を適当に払っていただけだと。格納庫一つぶっ壊されておきながら、余裕ぶっこいてくれるねぇ。

ジャックした広域回線までご丁寧に返してくれたのか、スピーカーからはサンダーバードからの宣戦布告に対するプレイヤーの声が溢れかえっていてちょっとうるさい。


「んー、でもこういうのって……何かあるよな」


そして本体表面の黄色の割合が増えてませんかね?具体的にはポツポツとだった黄点が、いつの間にかサンダーバードを縦断するギザギザの雷マークみたいになってるぞぉ?


「これは嫌な予感。いつでも緊急回避できる準備を……ん?」


ガコン、とサンダバの翼下部から出てきたのは追加の大型推進器。わぁ、レッドゾーンみたいだぁ。ってちょい待ち、推進器を追加してお前何するつもりだ?

分かるよ加速するんだよね?うんうん、思いっきりエネルギーチャージしてるもんね分かる分かる。いやそうじゃなくて加速した先で何がしたいのかなんですけどって、速ぁああい!!


全推進器をフルスロットルにしたサンダーバードは、爆発的な加速を持ってその巨体を超スピードで飛翔させた。いくら何でも速すぎる、あんなもん全速力のネクストゾーンでも追いつけねぇぞ!


そしてレーダーに示される戦闘空域からさらに外に出た先で、あろうことか巨鳥はその身を捻りながら上昇、直立してこちらに腹を向ける形で静止。なんだかんだでこいつの腹部って初めて見るなぁ。遠くてよく見えないけど、何か光ってる……?



ここで一つ、おさらいをしよう。サンダーバードは『爆撃機』だそうだ。つまり本命とは上空から下方への攻撃であり、弾幕を形成していたマシンキャノンやレーザーの類はあくまで迎撃用の武装と言える。

要するに、爆撃機なら本命の武装は撃ち下ろしやすいように腹部にあるというのが基本だよね。誰だってそうする、俺だってそうする。

そして、その腹部が今まさに見えてるということは……


「……回避ぃぃいい!!」


放たれたのは特大というのも憚られるような、規格外のプラズマキャノン。こちらからサンダーバードが見えなくなるほどの、空気を焼く圧倒的かつ莫大量の轟雷が戦場を白光で埋め尽くす。


「うぉぉおおお!?」


間一髪直撃は免れたが、体勢を崩したバテンカイトスが大気の爆ぜる余波に振り回される。これほどの攻撃、本流に巻き込まれたら即死以外の何があるというのか。


両脚と背部のブースターを吹かして何とか立て直したら、回避に集中するあまりに意識から外れていた広域回線の声が聞こえるようになってくる。そして、その声に我が耳を疑った。


『拠点が……母艦が落とされた!!』


急ぎ機体を回して出撃ポイントの方を見ると、黒煙と炎の塊となって墜ちていく母艦の姿がモニターに映った。

凶鳥が水平方向に落とした霹靂は、この空域における補給を貫いたのだった。


Storm eggたちはクソデカプラズマキャノンに巻き込まれないようにちゃんと回避しています。つまり卵の近くなら確実にプラズマキャノンに当たらないということです。その場合は卵が襲いかかってきますけど。

賛否両論あるかと思いますけど、私は喋るロボットが大好きです。バグった思考しているくせに妙な正論を吐くAIも大好きです。

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