一人ではできなくても
先に言っておきますが、今回の話は7日あるイベントの初日です。
3……2……1……0!
カタパルトに射出されて、赤の体に青黄茶の三色があしらわれた機体が大空に飛び出す。胸鰭ブースターが大きいので鯨型として扱っているけど、頭部からのシルエット自体はどちらかと言うとシャチやイルカに近い。速度を出そうと思ったら、どうしてもそっち系の見た目になるんだなこれが。やっぱ食物連鎖における捕食者ってスピード体形だよね、すごく参考になる。
巡航速度に落ち着いてメインモニターを見やれば、相も変わらず遠くにはアホみたいな大きさのサンダーバードがその黒い巨体を浮かばせて、周囲を嵐の卵に守らせている。見とけよクソ鳥、そのスカした機体にワンパン入れてやっからな。
ちらりとレーダー画面に視線を落とすと、僚機を示す緑の光が4つ後方から飛び出してきた。左手側サブモニターに映るレムナントネームは……マジかこれ。
『【ネクストゾーン】、それが今のあなたの機体か。これは少しネーミングを外したかな』
『いんや。やっぱり真っ赤だ、間違っちゃいねーよ』
『ネクストゾーン、聞こえますか?こちら【ポッド・オブ・レッドウィル】です』
『全部同じ名前だから、イコールで後ろに付けた名称で呼んでね』
ポッド・オブ・レッドウィル=ヘッド
ポッド・オブ・レッドウィル=フィン
ポッド・オブ・レッドウィル=ボディ
ポッド・オブ・レッドウィル=テール
赤き意思の群れ。レッドゾーンを見て作ったと言っていた機体であろうその四機は、まさしく鯨の群れだ。魚型レムナントに革新を起こしたと言われたテールブースターも再現されていて、オリジナルを若干小型化したような見た目は最適化の賜物だろうか。
いやこれ本元より完成度高くね?無理くり推力を出すために必要だったファッティさが改良されていて、スタイルだけならあちらに軍配が上がるよこれ。
そう言えばチーム回線の設定は引き継がれるとか言ってたけど、特に設定しなくてよかったんだ。いやー助かる、補助AIもいないしその辺わかんないからね。
『どうだろうか赤信号さん。我らの機体は、あなたのフォロワーとして及第点を貰えるか?』
「満点に花丸を。本家としての立場が危ないな」
『魚っしゃあ!!って、今魚類じゃなかったわ』
『これは魂に鰓が出てますね』
『鯨らしい叫びを考えないといけないわ』
海生哺乳類らしい叫びってなんだ。というか、そろそろ戦闘空域に入るけど大丈夫かなこのテンションで。逆にこのテンションだからこそ行けるのかな?
ゆく手には雲霞の如き嵐の群れが待ち受ける。近すぎず、さりとて離れ過ぎない距離を保ちつつ俺たち5機は編隊飛行を続ける。そう言えば俺が中心の陣形だけどこれでいいのか?
『さあ、そろそろ嵐が来るぞ、気を引き締めよう。各機、やることはわかっているな?』
『基本的に完全無視』
『操縦に全精力を注いで』
『射撃は牽制だけ』
「目指すはStorm eggの格納庫」
『パーフェクト。ならば……いや、今の私はIR海洋生物部の部長ではなく、赤き群れの一員。今回のリーダーは赤信号さん、あなただ。この先を頼めるか?』
ええ……正直断りたい。俺、こういう注目された状態で喋るの苦手なんだよな。シチュエーションもクソも喋ることそのものが苦手なんだけど。でも断ったらあっちもこっちもモチベ下がるだろうし……ええい、ままよ!
「ならば、群れのリーダーとして号令しよう。……楽しもう、全力で!そして見せつけよう!この空に、我ら赤き意志持つ群れありと!!」
『『魚意!』』
いやだからあんたら今哺乳類だって。……なんで今俺ナチュラルに御意の文字が魚だと感じたんだ?俺、もしかして自分で思っている以上に海に浸されてる?
レーダーに反応あり、小さな嵐が群れをなしてこちらへと近づいてきている。ではでは、冗談はここまで。ここから先は気合を入れて操縦しないとな。
「ヘッド、そちらの機体はすべて同性能なのか?速度はどのくらい出る?」
『PORWはすべて同じ設計図から作られている。多少は個人個人のカスタムが加えられているがスペックそのものに大差はない。速度は本家レッドゾーンより若干遅い程度と思ってくれ』
「了解。こちらはレッドゾーンより速い。巡航速度はそちらに合わせる」
『ほう、あれより速いとは。やはり進化していたか』
ネクストゾーンはレッドゾーンと同じく特化型。あちらがレムナントを連れ去るための推力と噛みついて離さない咬合力に出力を回していたのに対し、こちらは推力と1つの武装にのみ全エネルギーを注いでいる。
普段は武装の方にエネルギーを回していないために純粋な速度は向上しているし、俺自身が操縦に慣れたからそれなりの曲芸飛行だってできる。さすがに旋回性能や小回りの利きはエコージャンパーの方が上だけどな。
そもそも初心者が怒りのエネルギーで作り上げたレッドゾーンは構造的に粗が多かったので、経験を積み他者のアドバイスを取り入れたネクストゾーンの方が性能がいいのは当たり前だ。
Storm eggの群れが目前に迫り、もはやレーダーではなく目視の方がいい距離になった。改めて操縦桿に込める力を増して、普段あまり使わない声帯を震わすために肺いっぱいに空気を送り込む。
「それでは……突撃開始ィィィイイ!!」
『『魚ッ!魚ッ!!魚ォォオオオ!!』』
俺もうそれにはツッコまねーからな!!
突然現れたそれらは真紅の軌跡を戦場に残し、駆け抜ける。
敵も味方も、飛び交う弾丸や光線も。それらすべて一切を無視し、ただひたすらに嵐へと身を躍らせ飛び込んだ。
信じられるのは己と僚機のみと言わんばかりのその五機は、驚くことに全て鯨をモチーフにした機体な上に、一機を除いて同型機。残る一機はやや大型で胸鰭に当たるブースターが大きいものの、基本のフォルムは他機と面影を同じくする。
「なんだなんだ!?あぶねーだろ!!……って、あれ?あの機体、もしかして……!」
あまりにも他を省みない突撃に広域回線からは一時非難の声さえ上がったが、それもすぐに静まり、また別の理由で盛り上がることになる。
根本的には対戦ゲームであるインフィニティ・レムナントにおいて、真面目に勝ちを考えるのならまずあり得ない鯨型のシルエット。だが、モニターに映るその五機の造形は、このゲームの対戦環境の推移を知る者であれば、すぐにとある機体を思い描く。
対戦環境に現れてたった1、2ヵ月で最上位ランカーの1人となった超新星クチナシ。アバターとはいえルックスの良さも相まって当時話題の中心だった彼女に挑戦状を叩きつけ、ロクな武装もなしに冗談のような見た目のレムナントで瞬殺してのけた正真正銘無名のプレイヤーがいた。
赤信号と言う名のそのプレイヤーがアリーナに残した戦闘記録はその一戦だけ。以降はどれだけ探しても現れることは無かったという、IR対戦界ではちょっとした話。
『今本体に特攻かけてる赤いあいつらの機体!あれ、あのクジラじゃねーの!?』
『まさかぁ。どうせ一時期増えてた見様見真似だろ』
『それにしちゃ操縦がマジだぜ』
『ああ、Storm eggに見向きもしねぇ。完全に本体狙いだ』
『しかもあのコース……もしかして右翼のStorm egg格納庫を破壊する気か?』
『確かに、仮に無限湧きだとしても格納庫が潰せるなら楽になるな』
『無理なら無理でそういう仕様だってことが分かるしね。どっちに転んでも情報は得られるってわけだ、いいんじゃないかな』
『なあおい、サンダバの弾幕がかなりあっちに集中してないか?もしかしてあれ、当たりなんじゃねーの?』
『おおマジか!がんばれクジラども!俺は弾幕掻い潜るの無理だったから応援するぜ!』
『本体から飛んでくる流れ弾は勘弁だけどな。でも、そのチャレンジ精神はIRプレイヤーの鑑だよ』
『どうせやるならやり抜けよ、ぶっ飛んでるのは見た目だけじゃないって証明しろよな!』
『自分のこれぞと思う機体で戦場を駆けてこそIRだ!行けよ行けよ、行っちまえ!今のお前ら、イカしてるぜ!!』
広域回線が沸き立つ。赤に染まった五頭の群れが目指す先が自分たちに利益をもたらすものであるということと、そしてなにより彼らが本気だということが伝わったから。
ならば、戦場を同じくする者として自分たちも全力でいこう。ここはインフィニティ・レムナント。無限の機体に魅せられた者たちが最強を目指し、知恵を絞り試行錯誤を繰り返す世界だから。魂を懸けて作った機体で本気の戦いに挑む姿を笑う者など、一人もいない。
『みんな、広域回線を聞いているか?どうしてなかなか、我らは目立っているようだぞ?』
『聞こえてるけどそれどころじゃねーよ!なんだこのクソ弾幕量は!?』
纏わりつく嵐の卵を振り払い、鉄と光の暴風を進む。進めば進むだけ密度が増す本体からの迎撃弾幕は、もはやたった五機に向けられるような規模の物ではなくなった。サンダバの守りの要はStorm eggだと思っていたが、あいつらは所詮オプションだということか。まさしく制圧砲撃とでも言うべき圧倒的な火力を前に、しかし俺たちはまだ生きている。
『殺意が可視化したらこんな感じでしょうかね……!』
『運営のやれるもんならやってみろボケが!って魂胆が透けて見えるわね』
『翼の模様だと思ってた羽の一枚一枚が開閉式の銃座たぁ恐れ入るぜ!!』
ここに至り、全員が装甲値半分を死守できているのはすごいことだと思う。サンダーバード本体まで目前に迫り、Storm eggはその大半を後方に置き去ってきた。親鳥との戦いを前に、なかなかのグッドコンディションと言っていい。
「それにしても圧が凄い……!」
破壊の奔流となって襲い来る本体からの攻撃は止まることなく、ただひたすらにこちらを圧壊せんと殴りつけてくる。少しでも操縦桿を動かす方向を間違えたら、即座に機体は大口径の光線砲に飲み込まれ大破は免れない。
肌がひりつく。喉が渇く。緩むことない緊張にフットペダルを動かす脚は強ばり、両の手は操縦桿をこれ以上なく固く握り締める。
それでも、それでもいける。もう一息で本体を射程圏に入れられる。
そう思った瞬間、すぐ近くで爆発音が聞こえた。
『すまねぇみんな、ドジ踏んだ!左半身の表面を鰭ブースターごと消し飛ばされちまった、俺はもう無理だ!』
僚機のステータスを映すサブモニターでは、PORW=フィンの装甲値が危険域の赤に点滅していた。が、それよりも深刻なのはブースターを失ったこと。
飛行型レムナントにおいて、敗北とは装甲値がゼロになることでも場外に押し出されることでもない。飛べなくなることが敗北なのだ。左鰭ブースターを失い弾幕を掻い潜ることのできなくなったフィンは、この時点でもう死んだも同義。
臨時とは言え同じ群れにいる身として、同胞が道半ばで落ちるのは非常に悔しい。だが、そうしてそちらに思考を大きく裂けば次に落ちるのは自分だ。
だから、俺が言うべきはただ一つだけ。
「フィン、こちらネクストゾーン。……楽しめたか!?」
『当然だ!最後まで行けねぇのは悔しいが、楽しかったぜ!先に逝く、あばよ!!』
回避行動をとれなくなったフィンは正面から迫るミサイルとまともにぶつかり、散った。
僚機の名前から消えた一機に思いを馳せるのは一瞬だけ。残された俺たちは先に進まなくてはならないから。空に散らばる仲間の残骸を振り返ることなく、ただ進め。
『こちらヘッド、サンダーバード本体を射程圏に捉えた。格納庫に向けて攻撃を開始する!』
『ボディ、同じく。ようやく攻撃できますね!』
『テールもいけるわ。ここまでいいようにやられた鬱憤、晴らさせてもらおうじゃない!』
「こちらはまだだ!ネクストゾーンは火力はあるが、射程が狭い上にチャージが要る。そして欲を言えば格納庫ハッチが開いた瞬間を狙いたい!」
並みのレムナントの耐久なら一発KOどころか死体蹴りでサッカーができるほどの火力がこのネクストゾーンにはある。アホみたいに使用条件が難しい冗談みたいな武装だが、それをきーちゃんが見せてくれた瞬間に『これしかない』と即決した武装だ。
『了解した。しかし、いよいよもって攻撃が濃密になったこの場でどれほど耐えられるか……』
『見てくれたらわかりますけど、私はもう装甲三割切ってますよ!レーザーワンパンどころかマシンキャノンのカス当りでもキツいんですが!?』
『格納庫のハッチが開く瞬間って時間式?それとも適宜補充式!?そろそろアドレナリンがエンプティになりそうなんだけど!』
ここまできてタイミングを計り過ぎて無駄死にしましたでは、先に逝ったフィンに申し訳がつかない。というかフィン、別の機体で再出撃してるけどフライング・エビフライとかこの状況で笑かしにくるのやめてマジで腕震えるから。
しかしここで判断に迷っていてはそう遠くないうちに俺たちは全員落ちる。すでに俺たちの回避は完璧に避けるのでは無く、被害を受ける場所をずらすことでブースター等を死守するダメージコントロールに移行している。
個々のパーツに耐久があるIRでは基礎とも言える有効な防御法だが、逆に言うと積極的にこの防御法を取らざるを得ない時点で相手の攻撃を避け切れませんという状況である。
「時間式か逐次投入式か……もう、ハッチが開くのを待つ暇は無い、か」
最高効率は諦めるしかないかと思った時、無線から意気揚々とした声が多数上がってくる。
『広域回線から失礼!クソ卵格納庫に特攻かけてるクジラたち、多分そのうち格納庫開くぞぉ!』
『そっちにヘイトが向いてる間に結構な数減らしたからな!感謝してくれてもいいんだぜ?俺はあんたらに感謝する!』
『時間式だったとしても、多分そろそろのはず!だからまだ持ち堪えてくれ!』
『楽しんでるじゃあないか。派手にやってくれよ、見てるからな!!』
情報と応援ありがとう、名前も知らないプレイヤーさんたち!広域回線で喋るための切り替え方が分からないから無言になるけど、応援に感謝を!
『ネクストゾーン、こちらヘッド。そちらの武装の火力はどれほどだ?』
「チャージに時間がかかるけど、普通の相手ならオーバーキルだと言っておこうか!」
『ならばその時間をこちらで稼ごう。我らの武装ではどうも火力が足りないようでな』
『もういい加減ダメージ喰らい過ぎて、何でまだ飛んでるのか自分でも不思議なくらいですからね!』
『やれることなんて囮か壁くらいだもの、存分にチャージしてよね!』
ああもうあんたら最高かよ!顔も見たことない今日初めて無線越しに話しただけの俺に、何でそこまでよくしてくれる?どうしてこうも信頼してくれる?そんなことされたら、俺だって信じたくなっちゃうだろ!
「わかった……みんな、任せるぞ!」
『『『魚ッス!!』』』
三機が俺の前に背を向けて立ちはだかって、各々がサンダーバードの注意を引くために動き回り、あるいはその身を盾として力を溜めるネクストゾーンの盾となる。メインモニターに映る同胞の被弾する姿を見つつ、俺はエネルギー系統の各スイッチを切り替えていく。
やるべきことは、たった一つ搭載した主砲へのエネルギー充填。群れの仲間が安全を保障してくれているため、憂いなく姿勢制御に必要な部分以外への供給を遮断し、それらを全て武装へと回す。
サブモニターに表示されている数字は10%。この分ではフルチャージまで1分はかかる。この武装はいつでも撃てるが、フルチャージでこそ意味がある。焦るな、仲間を信じて、今はただ集中しろ。
30%。まだだ、まだ。
50%。ボディが落ちた。俺の身代わりにレーザーキャノンを全身に喰らって消え去った。『まあ上出来です、後は任せましたよ』と、笑いながら散っていった。
70%。続いてテールが落ちた。マシンキャノンにハチの巣にされ、それでも注意を引いて見せると体当たりを仕掛けた彼女もまた『へこみ傷くらいは与えたかな?』と笑って逝った。
80%。驚異的な粘りを見せるヘッドに守られながら、格納庫のハッチが開く瞬間を待ちつつブースターへのエネルギー供給再開の準備を始める。
90%。ハッチが開き始めるが、まだフルチャージには早い。そう漏らすと、ヘッドがブースターを全開に吹かした。
95%。ヘッドが格納庫に特攻。Storm eggを格納庫から出すまいとその身で抑えつけた後、ただ一言『最高だ、この海は』と残してついに大破爆発した。メインブースターにエネルギー供給再開、チャンスは一度きりだ。
100%。口腔内にある主砲を見せつけるように大きく口を開き、格納庫へと接近。皆がその身を懸けて作り出したこの瞬間を逃すものか……!
最大までチャージされた主砲のトリガーに指をかける。弾丸に身を削られることも気にせずに、渾身の力を込めて引き金を引く。
これは俺だけの攻撃ではない。無念の途中脱落をしたフィン、俺の盾となり落ちたボディ、満身創痍で突撃したテール、その身を持って俺に万全の発射態勢をもたらしたヘッド。赤き意志持つ群れの総員による攻撃と知れ、サンダーバード!!
「数百キロもの彼方へ響く、俺たちの歌を聞け!主砲【Song of whale】発射!!」
放たれたのは弾丸でも光線でもなく、音という名の超振動。大気を震わし金属の装甲板に悲鳴を上げさせる音波の戦槌が、開かれた格納庫へと入り込み破砕の激流となって暴れまわる。
格納庫内に残っていたStorm eggは砕け散り、それでもなお足りぬと怒れる大鯨の咆哮は肺が空になるまで蹂躙を続ける。
大音響超振動破砕砲。パーツメーカー【アトランティック・テクニカ】の誇る、鯨の歌と名付けられた最大火力を持つ武装。チャージ時間に応じて劇的に変わるその威力は、フルチャージではオーバーキルしてなお余りある。しかし相手が尋常ならざる耐久力を持つ無限戦機であるというのなら、この火力はただ頼もしい。
破壊の権化たる無限戦機の右翼に響く大咆哮。散っていった同胞にささげる鎮魂の歌であり、強大無比なる存在へと改めて叩きつける宣戦布告。
目に見えて壊れていく格納庫と同じく目に見えて減っていくネクストゾーンの装甲値を見ながら、トリガーを握り潰さんばかりに力を込めて思い浮かべるのは友達と仲間の姿。
その身を盾にして俺を守り墜ちていった海洋生物部の皆。機体設計と武装に参考意見をくれたきーちゃん。リアル知識をもとに効率的なエネルギー供給と冷却系の配置を教えてくれた茶管。そして実験台となって何度も爆散した青。
「いけ、いけ、ネクストゾーン!俺とお前だけじゃない、お前を作りここまで連れてきてくれた皆の想いを乗せて!響け、轟け!!ぶっ飛ばせぇぇええ!!」
そして降り注ぐ弾丸と光線の暴風にこちらの装甲値がゼロになる寸前、吐き出しきった100%フルチャージ分の大音響が格納庫を破壊しつくした。装甲をめちゃくちゃにひしゃげさせて爆発炎上する格納庫をメインモニターに移しながら、俺は自分がやり抜いたことを知った。
「ああ……群れって、仲間って、友達って。やっぱいいなぁ。やったぞ、みんな……!」
直後。凶鳥の怒りを買った俺は極太の光線に機体を撃ち抜かれ、撃沈した。
書いてて思った、これ最終回かな?まだ無限戦機迎撃戦は6日あるんですけど。
運営側の状況
サンダバ班『どぼじで初日でぞんなごどずるのぉぉおおお!?』
武御雷班『メイン空のプレイヤー怖いなぁ、戸締りすとこ』
ナーガ班『サンダバのやられっぷりで焼き鳥が美味い』
主人公がいた描写フィールド以外でも多数のプレイヤーたちに総攻撃を受けた結果、サンダバは見事に格納庫を片方ぶっ壊されました。そりゃStorm eggなんてウザいオプション、誰だって供給源から潰そうとするよねって話です。運営は空を縄張りにするプレイヤーたちの操縦技術と特攻魂を計り間違えた。




