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ダイブ・イントゥ・ゲームズ ~ぼっちなコミュ障、VRゲーム始めました~  作者: 赤鯨
無限戦機、襲来 ~インフィニティ・レムナント~
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二連装超高速回転鎖刃(カニばさみ)

今回から第二回IR編が始まります。


「捕まえたぞ茶管。お前はもう檻の中だ、何の抵抗もできずに惨めったらしく潰れるんだな。プレス開始!!」


「クッソがぁぁああ!こんな機能があるなんて聞いてねぇぞ!!」


「誰が手の内を敵にご丁寧に教えるか、アホめ」


我が愛機が誇る何本もの脚部に囲われて身動きが取れない相手に、その上から巨体を持って押し潰さんとゆっくり下降を開始する。脚と脚の間にはレーザーフェンスが展開されているので、もはや茶管は鳥かごの中の鳥だ。

ゴウン!と自機と敵機が接触した衝撃が伝わるが、そんなもの知ったことかとばかりにプレスは続く。ゴキゴキバキバキと硬質の構造物がひしゃげていく音が心地いい。ここから続く一連の流れのためだけにこの機体を組み上げたんですよ僕ぁ。


「ちくしょうが、少しも動けやしねぇ!ああクソ、アラームがうるせぇ!!」


プレス限界が訪れ、敵機は全壊こそしなかったものの微動だにできなくなった。脚と胴とレーザーフェンスでがっちりとホールドされ抵抗らしい抵抗もできない相手に、ゆっくりと二本の死神の鎌が駆動音を響かせながら近づいていく。

はたから見れば、それは切腹のようにも見えたかもしれない。腹には逃げることも戦うこともできなくなった、哀れな存在が抱えられているということを除けば。


「ククク、いいざまだな茶管。さてお次は……解体ショーの始まりだ!」


「やめろぉぉおお!!」


二連装超高速回転鎖刃、平たくいうと両腕部に取り付けられたハサミ型チェーンソーが敵機の装甲に左右から喰らいつき、けたたましい高音を上げながら削り斬っていく。

心血注ぎ魂を込めて組み上げられたであろう茶管の二輪走行型レムナント『凱歌』が、見るも無残な細切れのスクラップへと作り変えられる様はある種の地獄絵図だ。やる側だから楽しいけど、やられる側にはなりたくないと切に思う。


「テメェ、動けない相手をミンチにして楽しいか!?それが人間のやることか!?」


「さすがに罪悪感を感じないでもないけど、そういうコンセプトなんで。つーかまだ生きてたの?コクピットどこだよ、ここかな?」


「ああああ!馬鹿馬鹿やめろやめろやめろ!!チェーンソーが!チェーンソーがっ…………」


あ、通信切れた。これは殺ったな、いえーい。


《You win》


茶管、貴様の敗因はただ1つ。色物レムナントだからと言って俺の『マクロチェイラ』を侮ったことだ……!これでお前はもう、タカアシガニを見て笑うことはできないなぁ?


もうちょっと具体的に言うのなら、地に足ついて走る二輪車タイプなのに対空武装が貧弱すぎる。俺が対空射撃対策に腹部装甲を厚くしていたとはいえ、ほぼノーダメージはいかんですよ。貧弱装甲のレッドゾーンなら何とかなったかもだけど。

あと実弾武装だけだと相手によってはその時点で詰みかねないのでNG。サブでもいいからエネルギー武装を積んでおこうな。いくら特化機を謳っていたとしても、最低限の対応力は持ちましょう。もしくはその一点だけで他全てをぶち抜けるくらいに特化しよう。中途半端、ダメ、絶対。




「死に腐れクソ海産物」


フレンド対戦を終えて茶管のガレージに戻ってくるや否や、こめかみに青筋を立てた我が友に人であることを否定されてしまった。悲しいなぁ。


「開口一番それとはご挨拶だな、次はカマボコになるまですり潰そうか?」


「俺を魚肉扱いすんなカニカマ。ちくしょう、何をどうしたらあんなレムナント作ろうって発想になるんだ。カニだぞ、カニ」


「知らんのか茶管、動物と言うのは何かしらの環境に適応した体の構造になっているんだ。骨格、肉付き、パーツの位置、すべての形に意味がある。つまり明確なコンセプトがあるのなら、そのコンセプトを体現している生き物の体構造を模倣すればいい。そして海の生物は陸の生物とは比べ物にならない過酷な環境にいる種類が多いからとても参考になる。特に甲殻類は天然の装甲を纏いつつも可動範囲を確保している素晴らしい造形だ、ロボットの元ネタとして最適だとは思わないか?」


「珍しく長々と喋ったと思ったらお前はよぉ……。青いのがお前の魂には背鰭が生えてるっつってた意味が分かった気がするぜ」


背鰭よりは尾鰭が欲しいなぁ。ラオシャンとデスブラやり過ぎて尻尾が無いとなんか落ちつかないんだよ。尻尾って便利だよな、背後と言う死角に対抗できる頼もしい存在だ。なぜ人間は尻尾をなくそうという進化ルートを選んだのか、これが分からない。


「つーかよ、黄色いのが言ってたマッハクジラはどうしたんだ?早く見せてくれや」


「あー……それなんだけど、きーちゃんはなんて?」


「あん?異常な推進力が特徴なやたらクオリティの高いクジラって聞いたけど?ああ、初見は目を疑うこと間違いなし、とも言ってたっけか」


うん、間違いじゃない。間違いじゃあないんだけどな。茶管よ、お前さんはヤベェしか感想が出てこなくなるような相手がいう『目を疑う』の意味を正しく理解できているのかな?まあただの初見殺しの一発芸なんだけど。


レッドゾーンって、正直あんまり使いたくないんだよな。なにせ怒髪天の心境で組み上げた対クチナシ及びデンジャーゾーン機体だからさぁ。拉致って場外勝ちして相手をポカーンさせるしかできないレムナントなんだよ、あれ。

確かに自信作ではあるんだけど、勝ち筋どころかできることが1つしかないから乗ってると飽きるんだよね。拉致できない程の超重量機や対抗できるだけの推力を持つレムナントとか、勝てない相手には絶対に勝てないし。拉致を封じられたら、最終的に機体そのものを質量兵器とした体当たりしかやることないんだよ。


「まあ、いいか。見たいって言ってるわけだし。茶管は?別のレムナントあるの?」


「いや、凱歌でいく。スピード狂を自認する俺にとっちゃあ、あの黄色いのにぶっ飛んでると言わせた超速機体と正面からやってみてぇんだ」


パシ!と拳を手のひらに当てて気合十分の茶管だが、結末がほぼ見えている俺からすれば何と言えばいいのだろうか。流れるプールを逆走する程度の気持ちかもしれないけど、君が今からやろうとしているのはジェット乱気流にハンググライダーで挑むようなもんだと思うよ。


「そっか、そっちがいいならいいけど……多分俺が勝つぞ」


「上等、それに対応しきってやりゃあ黄色の度肝も抜けるってもんだ。……あいつ、殆ど初期機体に毛が生えた程度の俺にランキング機体で瞬殺かましてきやがったんだぜ?俺ぁ一度だけでもこのゲームで吠え面かかせてやるって決めたんだ」


一回ぎゃふんと言わせる前に茶管が物言わぬ死体になっていると思うんだけど、人のモチベーションに水を差すような事はすまい。

きーちゃんは俺に負けてから回避の癖も直したし、一段と視野が広がった気がするんだよね。今の彼女の記憶をリセットしてレッドゾーンで戦っても、拉致場外押し出しを決めれる自信は無い。

性格も丸くなったのか以前みたいに他人を見下すような事もせず、請われれば初心者との対戦でも受け入れるようになったらしい。逆にいうとどんな相手でも油断せずに仕留めにかかってくるから、もう一発狙いが通用しないんだな。


「おう、フレンド対戦の申し込み送っといたぞ。ちゃんとクジラで来いよ」


「了解」


レッドゾーンを出すからには手加減しない。むしろ手を抜ける要素がない。だって体当たりか口に咥えるかしかやることないんだもん、申し訳程度のフラッシュガンはあるけど。

凱歌のだいたいの機体スペックはさっきの戦いで見たし問題ない。重量、速度、機体の大きさ。どれもレッドゾーンのキャパシティに入っている。茶管の操作技術もなんとなくわかった。


マッチングが終わり、レムナントの選択を要求されたので迷うことなくレッドゾーンを選択。数秒の暗転の後には空飛ぶ鯨の体内に座らされていた。軽く操縦桿の感触を確かめて感覚を思い出し、一つ頷いてレッドゾーンの管制OSに呼びかける。


「起きろ、レッドゾーン。お客様が空の旅をご所望だ」


音声認識システムによって各機器が起動。大小複数あるモニターも順番に電源が入り、『なんかすごそうな機械のセットアップ』的な英文と数字の羅列が映し出される。はたしてこの画面に意味はあるのだろうか。いや、ある。ロボットの起動っぽくてテンションがむやみに高まる。


『Completed set up…… Welcome back, my pilot!』


メインシステムの起動が確認されたメインモニターにはデフォルメされた真っ赤なハヤブサのキャラクターが現れ、大げさな身振りでキザッたらしい礼をとる。一発芸機体だからあんまり動かしてなかったもんで、こいつと会うのも久しぶりだ。


「ご搭乗をお待ちしておりました、赤信号様。なるほどなるほど、それはそれは精一杯おもてなししなければなりませんな!」


「ああ、サポート頼む。お前がいないと作った俺ですら振り回されるからな」


「ははははは!なれば総力を持って補佐させていただきましょうぞ。我が翼はあなたのために。征きましょう、我が主」


人によってはムカつくテンションかもしれないけど、俺はやっぱりこいつ好きだわ。ゲームの世界なんだ、これぐらいはっちゃけたAIの方が面白いってもんよ。まあ、ロボットもんのお約束ともいえる無感情なAIもいいけどね。ピンチの時やここぞという場面では感情が出るタイプならなお良し。無感情な相棒AIが自分でも気づかないうちに感情を得ていたってシチュエーション、いいよね……。


おっと、カウントダウンが始まったか。今回の戦場はだだっ広い荒野ね、本当は洋上プラントとかの方が得意なんだけど、まあ悪くもない。

さーて、それでは茶管よ、空の旅にご招待するぜ。




そして3分後。


「嘘、だろ……」


「言ったろ?初見だと目を疑うって」


あっという間に戦いは終わり、ガレージには床に膝をついて崩れ落ちた茶管とそれをドヤ顔で見下ろす俺。ちゃんと首を斜めにすることも忘れてはいない。首の角度は気持ちを伝えるのにとても重要なことなのだと青に教えてもらったんだ、さすがは表情でメシ食ってるモデルだ。

もちろん勝負は俺の勝ち。レッドゾーンの最高速に何もできない凱歌を咥えてそのまま場外までウイニングラン。バイク型の凱歌はデンジャーゾーンよりもだいぶ拉致しやすかったな。機体シルエットが咥えてくれと言わんばかりの形だもん。


「何がショックって、俺ぁリアル技師だってのにあのクジラを再現できる気がしねぇってことだ……。マジか、少なくともアレを超えなきゃスピードジャンキーは名乗れねぇのかよ……」


名乗るだけなら別に構わないと思うけど、そうしたらこれから先ずっとレッドゾーンの影が頭の隅っこにチラつくだろうな。ただ勝つための手段として作られた機体に己のポリシーが打ち砕かれる、悔しいでしょうねぇ。


「いいか茶管。お前に足りないのは知識経験情報覚悟、技術武装機体パーツ。そしてなによりも創造力が足りない。何のメカニックをしてるのかは知らんけど、そのリアル知識が機体組みの邪魔をしてることはわかる」


凱歌を見た瞬間にピンときたね、こいつはリアル知識をもとにして作られたレムナントだと。もう見てくれがただのデカいバイクなんだもん、そりゃ確実に動くだろうし操作もしやすいだろうさ。だけど相手側からしても動きは読みやすいし、どの方向から攻撃すればいいのかもすぐにわかる。

これがぱっと見バイクだけど実は変形して空を飛ぶ、くらいの物ならああも簡単にマクロチェイラに捕まることは無かっただろう。全身各所にジャッキやバーニアを仕込んで変則機動をしまくるとかでもいい。


「凱歌には『意外性』がなかった。武装バイクとしては素晴らしいけど、ハロウィン時期のテーマパークの如き個性の殴り合いをするIR環境でそれはダメだ」


変な機体が強いというわけではないし、ありきたりな機体でも強い人は強い。それこそきーちゃんのデンジャーゾーンのように。でも、それならそれでちゃんとした勝ち筋や立ち回りを考えるべきだし、隠し武器や奥の手の一つ二つくらいは誰でも仕込んでいるものだ。


「……そうだな。確かに凱歌にゃこれぞって強みが無ぇ。俺としたことがなんつーおさまりのいいありふれた機体を作っちまったんだ。そりゃあ黄色いのにボコされるわけだ」


あ、いや、きーちゃんは生半可に奇をてらった機体組んでもだめよ、普通に対応されるから。それこそレッドゾーンみたいに徹底的にきーちゃん個人をメタらなきゃ早々勝たせてもらえない。

それに凱歌は二輪走行としての完成度自体は高かったんだ。IR始めて数日で作れる機体じゃないと思う。ただ戦う機体としては物足りないというだけ。もっといろんなレムナントを見れば、すぐに俺なんて追い越すだろう。

機体云々もそうだけど、茶管の場合まずはこのゲームにもっと慣れなきゃ。一戦の経験は百の座学に勝るのだ。特にこういうプレイヤースキルが物を言うゲームはね。


「ロボゲーの基本はトライ&エラー。作って試して戦って、しっくりこなけりゃまた始めから。そうしてるうちに自分に合う機体が作れる」


「そうな、俺に足りないのは経験だ。ったく、リアルもゲームも一朝一夕にゃいかねぇな。だからこそ楽しいんだけどよ。オウ赤いの、とりあえず聞きてーことが山ほどあっから、ちょっくらつきあえや。まずはオススメのブースターとジェネレーターをだな」


「ん、空を飛ぶならアメンテック、あくまで陸上メインでやるなら天武重工かな。ジェネレーターは持久力ならアトランティック・テクニカ、ピーキーなのがいいならナインヘッド・インダストリ」


ナインヘッド・インダストリは全体的にカタログスペックは高水準なんだけど、実際に動かすとめっちゃ極端な動作をするから困る。メーカーパーツで一式揃えると見た目がキモくなるのもな……。あれはあれで熱狂的なファンがいるらしいけどね。

茶管がシナリオモードを全部終わらせてるのなら、隠しミッションでゾディアックス・ファクトリーのパーツを手に入れるのもいいんだけどな。若干デチューンされているとはいえ、ラスボス機体のパーツ群だけあって性能良い。全身ゾディアックスはにわかプレイヤーの証明扱いされてるけど。


「今使ってんのはハーヴェストのやつだけど、こいつはどうなんだ?使いやすいって評判なんだが」


「ハーヴェスト製のパーツは信頼性がいい。どんなパーツと組み合わせても大概動くし、装甲値も高い。俺もどれにしようか迷ったらまずハーヴェストで試す」


とにかく頑丈でどんな使い方をしてもとりあえず動くっていうのはこの手のゲームでは貴重だ。まずはハーヴェストで作ってテスト、それから適宜他メーカーのパーツに差し替えてスペックの調整、どうしても形や細かいところに手が届かない場合はハンドメイド。これでだいたいは何とかなる。


「なるほどねぇ……ああ、そういやお前らがリアルで使ってるグループチャットに招待してもらっていいか?ほれ、イベント始まったら情報交換とかしたいしよ。それにお前らみたいにしょっちゅうゲームしてるやつって俺の周りじゃ少なくてよ」


がりがりとドカ盛りリーゼントの後頭部を掻く茶管。まあ、言わんとしてることはなんとなくわかる。彼の近しい人たちはゲームよりリアル派が多いということだろう。


「ああ、じゃあ今日ログアウトしたら招待するよ。って、そもそも茶管の携帯端末の番号知らないんだけど……」


「ああ?今から言って覚えられるか?」


「ログアウト前でよろしくお願いします」


そんなこんなで今日は茶管に付き合って機体組み。青とレッドゾーンを組んでる時もそうだったけど、友達と相談しながらあーでもないこーでもないと試行錯誤するのは楽しいな。1人で黙々と機体設計するのもあれはあれでいいものだけど、他の人の発想と言うのは当然ながら1人では生まれないからね。


茶管の新機体の仮組みが終わってログアウト後。茶管に言われた番号でグループチャットに招待しようと検索していたら、ばっちり発見。

『茶畑 菅次郎』

それが彼の名前だった。なんていうか、こう……渋い名前ですね……。


マクロチェイラはタカアシガニの学名です。でも私はラテン語とか知らないのでスペルをそのまま読んだだけです。読み方間違えててもそれは私のミスではなく主人公のミスです。

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