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ダイブ・イントゥ・ゲームズ ~ぼっちなコミュ障、VRゲーム始めました~  作者: 赤鯨
空とコミュ障と金儲け ~セレスティアル・ライン~
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空は蒼く、気分は高く

とうとうネットの繋がらない世界へと続く門が召喚されてしまいました。この更新をした次の日あたりから、向こうの世界に行っている間は完全に更新が途絶えます。

旅立つ期間はおそらく一ヶ月ちょいくらいかなーと思いますので、その時にはまた拙作を読んで頂けたら幸いです。


『ようこそ、新しい飛行船乗りさん!あなたの名前を教えてください』


真っ暗な空間に声が聞こえる。ここが今回のキャラクリをする場所かな。

名前は……まあいつも通りでいいか。


「赤信号」


こういう時は名前だけを伝えるのが一番確実。VRゲームのAIはそりゃあもう賢いけど、それでもAIであることに変わりない。こういう間違えると面倒なところでは最低限だけを伝えるに限る。


『【赤信号】さんですね。それではあなたがどんな人なのかを教えてください』


外見ね。はい、髪だけ赤に変えた安定のデフォルト。

デスブラやってロールプレイに慣れたとはいえ、それでも普段からキャラ作って話したりするのはしんどいし。ネカマとかやる人は純粋にすごいと思うわ。


お。俺の体が見えるようになった。前世代機のゲームをやっていた時は三人称視点ばっかりだったけど、すっかり一人称のこの感じに慣れたもんだな。


『次にこちらをご覧ください』


デン、と暗闇の中に現れたのは大きさ60センチくらいありそうなでっかい卵。見たところ真っ白で模様もない。


『こちらは赤信号さんのパートナーとなる【風乗りの獣(ウィンズ)】の卵です。今からいくつかの質問をしますので、【はい】【いいえ】【場合による】でお答えください。その答えによってどんな見た目・性格になるかが決まります』


ほほう。そういうゲームけっこうあるよな。主人公の種族や初期ステが変わったりとか初期職業が決まったりとか。俺はこの手のやつは正直に答えると決めてるんだ。


『では……集合時間などはきっちり守るタイプ?』

「はい」


『困っている人は助けるべき?』

「場合による」


『思ったことはどんどん口に出す?』

「いいえ」


『興奮するといつもよりよく喋る?』

「……はい」


『あなたは雰囲気を明るくさせるムードメーカー?』

「いいえ」


『他人に見せない自分がある?』

「場合による」


『肉より野菜が好き?』

「はい」


『でも魚の方が好き?』

「はい!」


『子どもは親に甘える権利があると思う?』

「場合による」


『青色と桃色なら青色が好き?』

「はい」


『割とテンションに任せた行動をとる?』

「……はい」


『公園で遊んでいる子どもがいます、男女どちらでしょうか。男の子なら【はい】、女の子なら【いいえ】、よくわからないなら【場合による】で答えてください』

「場合による」




『ありがとうございました。質問は以上です。さて、それではあなたのパートナーに姿を見せてもらいましょう』


教えてくれ、俺の食の好みで選ばれるパートナーってなんだ?他のはともかく、それだけがよくわからん。


そんな俺の疑問をよそに、真っ白だった卵にだんだんと模様と色が入っていく。緩やかに波打つ、少し緑がかった青色のラインが何本かぐるっと横に一周していて、所々に飛沫のような水玉模様。

中から揺さぶるようにして卵が動き出し、ピシッ!と亀裂が入る。そして亀裂はどんどん大きくなり……


「きゅー!」


現れたのは…………カワウソ?

つぶらな瞳とちょっと短い四肢に長細い胴。体長の半分くらいある尻尾に、艶のある手触りが良さそうな体毛の色は深い藍色。

うん、カワウソが一番近い。体長は尾まで含めて50センチちょいくらい。卵の大きさがアレだからそんなもんだろうけど、生まれたばかりの赤ちゃんにしてはデカいな。


俺がカワウソもどきをじっくり眺めていると、きょろきょろと辺りを見回していた向こうもこちらに気付いたようで、俺をじっと見つめてくる。

まるで何かを待っているような態度。ふむ、まあこの流れなら……


『おめでとうございます。それでは生まれたウィンズに名前をつけてあげてください』


ですよねー。

しっかしカワウソ、カワウソか……。海から離れようかと空に来たらまさか川の動物が出てくるとは。

名前どうすっかなぁ、いちおう風に乗る獣なんだろ?だったら風関係の名前にしようか。


「……しなと。うん、お前の名前は【シナト】だ」


確か、風が吹くところ、みたいな意味だったと思う。なんかのゲームでそんな名前の土地だかキャラだかがいたんだ。俺の選択肢的にこいつ性別不明っぽいし、シナトならオスでもメスでも変じゃないよな?


「…!きゅい!」


名付けられたことが分かったのか、嬉しそうに鳴き声を上げたシナトがぴょんとジャンプした。すると被膜や翼もないのに、すいーっと空中を滑るようにして俺のもとへとやってくる。なるほど、『風乗り』の獣ってのはこういう意味か。

大した衝撃もなく腰のあたりに着地したシナトはそのままするすると体を登り、肩まで来ると俺の首に巻きつくようにしながらすりすりと頬を寄せてきた。


なんだこの生き物、超かわいい。

今までゲームの中で出会った生き物って、俺を餌にするか俺の餌になるかみたいな関係ばっかりだったから超癒される……。つやつやの毛が気持ちよくて、ずっと撫でていたい……。



『ウィンズはあなたとともに成長し、やがて姿を変える時もくるでしょう。大切にしてあげてください。最後になりますが、こちらをどうぞ。あなたの飛行船です』


何もない空間に現れる、一隻の飛行船。魚の尾鰭のような舵がケツについた船を、デカいラグビーボール状のバルーンにロープやワイヤーで繋げただけのシンプルな物。一応多層構造になっているのか、船の中腹辺りにも窓が見える。

船自体の大きさは……縦30メートル、横6メートル、高さは5メートルくらいか?のんびり旅をするにはともかく、交易をメインにするには小さい。どっちにしろ最初はさっさと金を稼いで大きくするのが急務だな。


『詳しい説明はおいおい行われますが、飛行船はウィンズが読んだ風の航路を走るものです。よほどの暴風でもない限りウィンズはあなたの望む方向へと進む航路を見つけ、そして飛行船はあなたと交易品を目的地まで運びます』


ほうほう。シナト、お前は可愛いだけでなくて優秀な力を持った存在なんだな。よしよし、すごいぞえらいぞー。

頭を軽く撫でてやると、もっともっとというように頭をすり寄せてくる。はーマジ可愛い。隙を見せた瞬間に襲いかかってくる海産物や電柱でぶん殴ってくるティラノサウルスとは違うのだよ。


『この通り、小さい飛行船では多くの交易品を積めません。どのように空の世界を旅するかは赤信号さん次第ですが、ある程度は拡張することをお勧めします』


交易ってのは基本的に大量の品物を一度にどれだけ運べるかだもんな。同じ島を往復して商売するのなら、デカい船の方が効率よく稼げるに決まってる。

現実なら少量の希少品を速度重視で運ぶという手もあるけど、あれは採算とりにくいしこの手のゲームでそれはないだろう。


『以上で、この場で行うすべてのことが終了しました。赤信号さん、ウィンズとともに飛行船へ乗船してください』


船体の真ん中あたりから梯子のような取り外し式の階段が降ろされているので、それを使って乗船。シナトは俺の肩に乗ったままだ。

飛行船をぐるっと眺めれば、木製の甲板にはまー何もない。後部は居住区かなんかのためだろうか、左右に階段があって2メートルちょっと高くなっていて、その上にこれぞ始まりのデフォルト船よといわんばかりに舵輪がぶっ刺さっているだけという、シンプル過ぎるスタイル。


実際に俺が操舵をするわけじゃないだろうが、とりあえず舵輪の前に立ってみる。そんなことをしても舵輪越しに見える船首の先には真っ暗な空間が広がっているだけなのだが。


『乗船を確認しました。これから最初の島までは飛行船が自動で進みます。赤信号さん、どうか心ゆくまで遥か蒼い世界の旅をお楽しみください。それでは、いってらっしゃいませ!』



勢いよく風が吹いたかと思うと、黒一色だった世界が鮮やかに変わる。


上を見ても横を見ても、視界は一面澄み渡る蒼。ともするとまた海に来たのかと思いそうになるが、飛行船の下にも白い雲が浮かんでいることからここが空の真っただ中ということがよくわかる。

頬を撫でる風が気持ちいい。肩に乗るシナトを見てみれば、どことなくワクワクしているようにふすふす鼻を鳴らしている。


バルーンと船を繋ぐロープがギシギシ鳴る。船尾の舵が風を切ってヒューと小気味よい音を上げる。そして船首の向こうにはうっすらと空に浮かぶ島の影。どうやらあそこが始まりの島のようだ。

何もしなくても船は進むが、大空を進む高揚感が自然と舵輪を握らせる。目指す島までは一直線。舵輪を回す必要はないけれど、こういうのは気分だ気分!



「よーし!準備はいいか、シナト?俺とお前、2人でいく空の旅の始まりだぁ!!」


「きゅぁー!!」


左手で舵輪を握ったまま、右手を高く天に突き上げる。左肩の小さな相棒もそれに倣ってか、短い前脚の片方をちょんと掲げた。




さぁて、この先にはどんな旅が待っているんだろうか。どうやって金を儲けてやろうか。

順風満帆、意気揚々。どんなゲームでも、旅の始まりってのはワクワクするなぁ!!


と、いうわけで主人公の相棒はカワウソっぽい生き物のシナトです。

書き上げる最後の最後まで空飛ぶイルカもどきが潮の匂いとともに作者の頭の中で主張していましたけどね。


最後の方を少年マンガの打ち切りエンド風にしてみました。が、当然ながら拙作はまだまだ続きますのでご安心ください。

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