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ダイブ・イントゥ・ゲームズ ~ぼっちなコミュ障、VRゲーム始めました~  作者: 赤鯨
正義、時々、悪。いざ……転身! ~Destiny Blood~
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祭りの終わりと……?

夏休み、夏休みか……へへへ、そんなもん……忘れちまったな……。

網戸にセミが突撃かましてびっくりして朝跳ね起きました。

「みんな自分のことばかり。だから私だけは世界に味方するの。そして、“世界は私に味方する……『特位(サモン・)眷属(スペリオル)招来(ファミリア):ユグドラシル』”」


「そうは言われても困るんじゃがの。そも、何をもって世界と定義するのやら……。“甘き毒のさえずり。別れを告げる羽。死の体現たる鳥よ、どうか安らかに彼の者を運びたまえ。『終毒(アルケマイズ・)錬金(エンドポイズン):ピトフーイ』」


見上げんばかりの人型の大樹を従える少女と、触れるだけで魔人の外皮すらたやすく溶かす劇毒を鳥の形にして宙に浮かせる老人。


正義の毒か、破壊の樹か。


決定力を自分自身に求めず、生み出す毒と眷属に勝ち筋を見出す2人の魔人。そもそも、お互いにばら撒いたそれぞれの薬と毒で、双方ともに体力は尽き欠けている。今なら軽い毒薬一つで削り殺せる。

ならば、なぜそうしないのか。なぜ、わざわざリスクを負って最強の技を見せるのか。


答えは簡単。それが一番、カッコいいからだ!


多くの英雄悪人が見てるその前で、最強を名乗ろうとしてるやつらがチマチマ狡い手で戦うわきゃねーだろーが!だからこそ、ベルデの特位眷属にプロフェッサー・Eも超必殺技を被せてきたんだよ!

ただ単に強いだけのやつなんてここにはいない。自分のキャラになり切って、その「キャラ」こそが最強だと知らしめるために戦っているんだ。


だから、一位のやつらがダサいことなんてしない。お前たちの上に立つのはこれだけカッコいいキャラ(自分)なんだと思わせるために、最強の手を見せていくんだ。



ベルデが呼び出した樹人を相手に、プロフェッサー・Eが作り出した毒の鳥が飛翔する。

双方の超必殺技、大きさは全く違えど秘めた力は変わらない。羽の先が掠りでもすれば超速のスリップダメージで回復も間に合わない劇毒が体を蝕む。


「……相性が悪いわね。生命を殺す毒は樹の天敵。緑のことを何も考えていない愚かな人間そのものだわ」


あなたもバリバリ毒使ってますぜベルデさん。アルケミストが毒を否定するとか、アーツの7割くらい泣いてるぞ。

大概の毒は生命から生まれるしなぁ。フグ毒とかトリカブトとか、有名どころ盛りだくさんだよな。個人的にはキノコ系がヤバいと思う。何であんな化学兵器みたいな毒キノコ多いんだ。


哀れ呼び出された樹人は毒の鳥に侵され、見る見るうちに青黒く変色していく。もだえ苦しむように暴れていたが、しばらくして音を立てて倒れたのちに静かに消えていった。



「うーむ、ワシも奥の手を使っちまったしの、お互いすっからかんじゃ。どうだね、1つ拳で語り合うかね?」


「動物が行う、最も原始的で純粋で野蛮な戦いね。……それしかないのなら、そうするしかない、か……」



毒を、薬を、命を。

あらゆるものを駆使して行われた錬金術師の戦いは、人類史上最もシンプルな方法をもって終焉を告げることになった。






「っかー!負けた負けた!強キャラ臭漂わせといてさっくり負けたわ、ぬはははは!!」


「すっごい負ける気満々のセリフ吐いたら勝っちゃった……。相手がトリックスターとは言え、まさかサモナーで殴り勝てるなんて……」


「あーそれな、超必殺技で勝負を決められなかったらクソ弱体化するポリシーつけとったんよ。そん代わり、超必の威力上がっとったやろ?感染毒やったんやけど、やっぱ読まれとるよな!やっちまったけど、ええ勝負やったよ!」


「どおりでユグドラシルがあっさり削り殺されたのね。……ええ、いい勝負だったわ」



WINNER……ベルデ!! CONGRATULATION CHAMPION!!!



アルケミストの最強を殴り合いで決めるとは、この赤信号の目をもってしても……。

そもそもがチーム戦向きなサポートタイプだもんな、ある意味では仕方ないのかもしれない。


どうしてもアルケミスト苦手なんだよなー、使うのも使われるのも。

使う側だとどのタイミングでどの効果を持つ錬金を行うかでゲームの流れが全然変わるし、常に相手を弱体漬けにし続けるには高度なBP管理能力が求められる。

使われるのは、まあ単純にデバフがめんどい。単純なダメージ毒以外に麻痺毒に煙幕に防御・攻撃弱体……積もっていくとシャレにならん。割と高性能な回復技も持っているから妙に耐久高かったりするし。





いよいよ次で最終戦。エンジェル対ヴァンパイアだ。

俺が基本シングル戦に籠ってるせいか、エンジェルほとんど見ないんだよなぁ。ビーストに捕まったら秒殺もあり得るくらいのペラペラ装甲だから当然と言えば当然なんだけど。












「“天使リエルは楽園のために”。主の導きにより、あなたを断罪いたします。“悪には地獄を、正義には楽園を【聖血(セイントブラッド)転身(・ターンオーバー)】!”」



素晴らしい(хорошо)!天使に我が名を刻めれば、私はどれほど輝けるだろうか!!“我が手の愛撫は恐怖を刻む【刻血(ブリードゥブラッド)転身(・ターンオーバー)】”。“魂に刻め、イングレイヴの名を。その身に刻め、イングレイヴの恐怖を!!”」






宙を舞う燕が妖精の放つレーザーを掻い潜りながらも刃の翼で周囲のオブジェクトに大きな切り傷を入れていけば、地上では角が突撃槍になった大きな牛が障害物を倒壊させながら、立ちはだかる天使に吶喊。しかし白く輝く翼を持った天使はひらりと余裕を持ってこれを回避する。

光の玉が天使や妖精に治癒の光を放つ一方で、鼻がドリルになったモグラが暴れ牛を隠れ蓑に地中にこっそりとトンネルを掘り巡らせる。



なにこれ、マジで一対一の戦い?俺の目には別のゲームに見えるんだけど。

本体の魔人である2人、イングレイヴは眷属が倒壊させた建物やトンネルの影に潜んで無敵移動していてステルスゲームみたいになってるし、リエルはリエルで紙装甲のくせに燕を空中戦で叩き落としながら、上位眷属の天使とともに槍角の牛にレーザーを撃っていてシューティングゲームみたいになってるし。

さすがはトップクラスのサモナー同士の戦い。画面が賑やかで楽しいんだけど、どこ見ていいのか分かんねぇなこれ。


影移動のためにフィールドの破壊に特化した眷属を持つイングレイヴと、支援攻撃に秀でた眷属と共に戦うリエル。ペラッペラのエンジェルほどではないとはいえ、ヴァンパイアだって打たれ強いわけじゃない。

それに影移動は本体が潜んでいる場所を照らされると実体化してしまう。炎で広範囲を照らし出してくるフレイムマスターには劣るが、エンジェルだって光の能力持ちだ。それにいつまでも影に潜める訳じゃない、確か最長で10秒ほどだったはず。時間が来たら一度は実体化しなくてはならない。


「そこです!『セイント・スマイト』!」


「ぬぅっ!さすがだ、私の居場所を的確に撃ち抜くとは!だが、それだけではなぁ!」


イングレイヴの潜伏先を予測し放たれた一条の光が、影に溶ける吸血鬼の実態を暴く。しかしそれはあくまで引きずり出しただけ。ダメージはほとんど入っていない。


眷属同士の戦いは今のところリエルに軍配が上がっている。その理由はサモナーの攻撃の要たる上位眷属。飛行能力を有するリエルの『エクスシア』に対してイングレイヴの『峭刻(Жестокая)猛牛( корова)』は攻撃力こそ高いものの、飛び回る天使に有効打をなかなか当てられないでいるからだ。

……今回出場する魔人、いちおう全部事前に調べてきてたんだけどさ。攻略サイトですらイングレイヴだけアーツの読みが全部ロシア語なんだよな。読めねーんだよ、ルビにルビ振って欲しい。


さて、事前に調べた感じだと2人とも特位眷属を積極的に狙っていくスタイルらしいんだけど……。






「この瓦礫となった街の中に、あの子たちの様な人がどれほどいると……!!“善なる者は天の国へ。邪なる者は地の底へ。天の門より来たりし熾天使よ、偉大なりし主の命を受け——今、断罪の時!『特位眷属招来:リエル・セラフィム』”!イングレイヴ、この戦いに決着を!」


「“その身を包むは刃の鎧。その身が纏うは刻薄なる王の威風!幾重にも体に刻め、心に刻め!そしてゆめ忘れるな、イングレイヴの名を!『特位眷属招来:(Жестокий)(император)』”!決着?違うな、今から始まるのだ!!」


2対4翼の純白の羽を広げた、大きさは倍ほどあるがリエルそのものと言うべき輝きの天使。盾と剣を左右に構え、仮面に隠された顔で敵対者を睨みつける。

4メートルはある鎧騎士は、鎧のあちこちから刃状の突起が出ていて触れただけでも切り刻まれそうだ。身の丈ほどある大剣を手に、兜の奥に灯る赤い光を揺らめかせる。


己自身も天使と並び立つリエルに対し、イングレイヴは騎士鎧の突起や隙間が生み出す影に沈み隠れる。

光と影。対極に位置する者たちの戦いが今、終わりの始まりを告げる。





「すでにその騎士の影に私はいないぞ、輝きの天使。『(Добавить)( тень)』!」


「ぐぅっ!!いつの間にここまで移動を!」


鎧騎士に隠れていたはずのイングレイヴが、かろうじて形を保っていた建物の屋上から宙に浮かぶリエルの背後に飛びかかった。さらにダメ押しとばかりに闇の刃がリエルに突き刺さり、そのまま両者は地上へと落ちていく。



鎧騎士が熾天使を抑え、邪魔の入らないその場所で、吸血鬼が天使の首を持ち上げていた。

仮面に隠された目を覗き込む様に、少しでも動けば眼球が仮面にあたるという所まで顔を近づけ、イングレイヴが恍惚の表情を浮かべる。



わかる(понимаю)わかるぞ(понимаю)。仮面でいくら隠そうと、私にはわかるとも。“いい目をしている、骨の髄まで遍く恐怖が刻み込まれた目だ”。そしてそのまま逝くがいい。我が名イングレイヴを魂に刻んで、な」


「ああ……申し訳ありません、主よ……ごめんなさい……みん、な……」


ドス!と抜き手が天使の腹に差し込まれ、今度こそリエルの体力はゼロとなった。



光を失った天使は地に堕ちた。主の戦いが終わったことを理解したのか、刃の騎士は剣を収め闇へと消え、純白の天使は光粒となって天に還った。








「イングレイヴさん、質問が2つあります」


聞こう(Услышьте)。言ってみてくれ」


「最後どうやって建物の上に移動したんです?鎧騎士と建物の影は繋がってませんよね?」


「剣の影の先に潜み、振られた剣先が建物に影を落とした時に移った。それだけだ(Этовыше)


「なるほど。ではもう1つ、よくわからないのですがアーツ名は全部ロシア語ですよね?……なんでイングレイヴだけ英語なんですか?」


「……Sorry. (すまない.)I can’t (日本語は) understand(さっぱり) Japanese(なんだ).」


「やっぱり英語じゃないですか!なんでそんな大切なところだけポカしてるんですか!?」


「うるさい!そんなこと言うならセラフィム(熾天使)だって羽は3対6翼だろう!人の揚げ足ばかり取るんじゃない!」



WINNER……イングレイヴ!! CONGRATULATION CHAMPION!!!




最後の建物の屋上から飛び降りつつリエルに一撃入れる所、サイコーにヴァンパイアって感じだったぜ!

リエルもリエルで金魚すくいのポイくらいの厚さしかない装甲で眷属と一緒に空中戦しちゃってさぁ。そんなん惚れるに決まってんだろ!どんな神経と技術があったらそんなことできるんだ。


それにしても、イングレイヴって英語だったんだ……。ノリでロシア語だと思ってた。でもその辺をあんまり突っ込まないであげて。外人キャラロールしてる人の多くがビクゥッ!ってなったと思うよ。








「ふぅ、全部終わったか……。さすがは陣営1位になった人たち、みんな強いしカッコよかったなぁ。それに結構な魅せプレイまでしてくれてさ。実際にやってたらあんなに超必殺技の撃ち合いになんてならないもんな。でもあの舞台でそこまでできるからこその『最強』なんだよなぁ」


いや、いいものが見れた。当然全部リプレイマイリストに入れたし、ミスって消さない様にロックもかけた。永久保存版ですよ、こいつぁ。


それにしても、あんなプレイヤーたちと戦ってみたいもんだ。ボッコボコのコテンパンなボロ雑巾みたいにされるのが関の山だろうけど、それでも一回手合わせ願いたい。

見てるだけでも十分以上に興奮したが、いいものを経験したら『それ以上』を手にしたくなるのが人間ってもんだ。こればっかりは仕方ない、実力云々じゃなくて本能によるものだからな。


「つっても、山ほどいるプレイヤーの中から実力もかけ離れたあの人たちと、そう簡単にマッチングするわけもないしな……うん?」


ポン!


軽快な音が、新着のお知らせが来たことを俺に伝えてくれる。

何だろう?何か続きでもあるのか?それとも次のイベントがもう決まったのかな?


それにしてもこのタイミングでくるとは何なんだろう?

そう思いながら新着メッセージを開封してみると……




《GTレクスへの挑戦権が送られています。この誘いに乗りますか?『YES』『NO』》




……なんだ、これ……?


作者の計画性のなさのツケか、今まで登場した魔人を見返すとクリエイター多すぎ問題に気付きました。

そんなわけで、ここ三話のあいだ主人公に観客になってもらったのは、いろんなタイプ・いろんな設定の魔人の戦いを見てもらいたいと思ったからです。

主人公に戦わせろや!と思う方もいらっしゃったでしょうが、それだとある程度の数を出すためにめっちゃ時間かかりますのでこのような形を取りました。ご了承いただけると幸いです。

それにそろそろ次のゲーム始めるし……


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