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ダイブ・イントゥ・ゲームズ ~ぼっちなコミュ障、VRゲーム始めました~  作者: 赤鯨
正義、時々、悪。いざ……転身! ~Destiny Blood~
39/281

背伸びする初心者は微笑ましいが、大概敗因になるのも事実

予約投稿した気になっていたら日付間違えてました。

そして文字数もいつもの倍以上あります。書いちゃったから……ほら……実際もっと書きたかったし……でも他の魔人も出したいし……。

魔人のアイデア募集についてですが、仮にデスブラ編が終わった後でも投稿してくださっても全然問題ありません。書きたくなったら書いて主人公に戦ってもらいます。



立派ないで立ちの当世具足姿の鎧武者。重厚な鎧と大盾を持つ氷の騎士。禍々しい衣装が施されたフードジャケットを着た、鬼火の様に目だけが灯る骸骨。爛れた肌にボロ布を纏い、ガスマスクを被ったマッドサイエンティスト。あといつもの俺。

それぞれの陣営ごとに横並びになった5人の魔人が向かい合った。



3対2。数の有利はこちらにあり、見た目的にも相手はクリエイター・トリックスターとアルケミスト・トリックスターもしくはサモナーという2人とも後衛の組み合わせ。……アルケミストは元から軽装だからトリックスターとサモナーの見分けがムズイんだよなぁ。


しかし殴り合いではこちらに分があるとはいえ、油断してはいけない。向こうは今に至るまで破壊工作でボーナスとBPを稼いでいるはずだし、何より俺たちは目の前でNPCを爆殺された。

NPCを助けるというポリシーを持つ俺とグリードさんはペナルティでステータスがダウン(グリードさんは縛り的に俺よりも重いペナが来ている)しているし、何より味方2人はちょっと、いやかなりキレている。一応口上を述べるあたり完全にこれがゲームだということを忘れてはいないみたいだけど、(ボーナスがもらえるか的な意味で)ロールプレイできるかは少し微妙なところ。



まあやってみなくちゃ分からないっていうか、もうすでに10代目さんは走り出してるんですけど。やっぱあなた、だいぶキてますね?


「我が手に参ぜよ双刃。『刀剣創造(クリエイト・ソード)二葉葵(ふたばあおい)』!外道め、貴様だけは許さぬ!」


当世具足に日本刀の二刀流?ほわぁ、カッコいいぞ10代目さん!そして和風のスキンはかなりのポイントが必要だったと思うけど、結構やりこんでる感じの人ですか?

あーやっぱデフォルトスキン変えようかなぁ。いまいちカーネリアンになり切れてないし、いっそここらで違うタイプに手を伸ばすのも……ってそれはこの戦いが終わってからだな。


「おや、狙いは私ですか。すいませんが、斬った張ったは苦手なのでお付き合いできません。お詫びにこれをどうぞ。『刑具(クリエイト・)創造(トーチャーズ):ホワイトランプ』」


鋭い踏み込みで斬りかかる10代目さんに対し、ホープ・エクスキューショナーは軽い身のこなしで距離を取りつつ、手のひらサイズの物体を創造。

ひょい、と軽く放られたそれは1つの前時代的電球。クルクルと回転しながら地に落ちた瞬間、猛烈な閃光を放つ。

周囲一帯が白一色になる。が、体力ダメージはほとんど動いていない。見た目的にも殴り合いに不向きなトリックスタースタイルで間違いないし、距離を取るための目潰しだろう。



「俺たちゃこれでも非力でなぁ、それなりの戦い方をさせてもらうぜ?『毒気錬金アルケマイズ・ポイズン:HC・H2S』」


真っ白になった視界の中から声が聞こえると、ぷぅーんと変な臭いが辺りに広がった。


「ぐっ!この酷い臭いは……!?」

「うう、鼻がもげそうだ……!」

「くっせぇぇぇぇ!!」


う゛ぉええええ……なにこれ、3日間濃縮したすかしっ屁を鼻先にぶち込まれたような、腐った卵を天日干しして焼いたような、ゲロ以下の匂いがするぅ……。あまりの臭さに俺だけ素で悲鳴あげちった……。

あまりの臭さに鼻と呼吸がやられて動きが鈍る。これは機動力低下のデバフ?どうも向こうはとにかく距離を取りたいようで。俺たちの前に出てきたのは、名乗りと転身口上のボーナスを取りに来ただけか、あの2つのボーナスはデカいからな……。


あまりの臭さに思わず膝をついてしまう俺たち。そして俺の視界に映る《ペナルティ》の文字。

まずいな……こっちは全タイプ・スタイルでぶっちぎりの鈍亀である氷盾がいる上に、向こうは少なくとも一人が逃げ足の速いトリックスター。取り逃がしたら面倒なことになる。

それと、ちょっと冷静になって考えたんだけど、激烈な腐卵臭のする毒ガスって、もしかして……。


「おやおや、そんなにこの臭いがきついのですか?ならば助けて差し上げましょう。『爆弾創造(クリエイト・ボンバ):パーティー・クラッカー』」


ようやく目がまともに見えてきたころ、遠くから放り投げられたであろうそれは、握り拳ほどの手榴弾。それが地面に触れた瞬間、周囲が手榴弾のそれを大きく上回る大爆発を起こす。

ああ……腐卵臭の毒ガスって、硫化水素(H2S)……。



「みんな危ない!『アイス・シェルター』!!」



ガギン!!と音を立てて俺たちがその周囲丸ごと氷漬けになる。

もちろんこれは敵の攻撃なんかじゃない。防御に特化したアイスロードの守りの氷だ。現に指一本動かせないほど綺麗に氷漬けになっているものの、ダメージは全くない。そして危機を凌いだと判断したグリードさんがすぐに氷を消す。


「みんな無事ですか?よかった、何とかやり過ごせましたね。……ですがすいません、力を使い過ぎました。当分大技は無理です」


当然だ。あれだけの大爆発から全員をノーダメージで守るほどのアーツを、ほとんどBPもたまっていないうちに放ったんだ。転身口上と名乗りを完璧に行えばBPは5割回復するが、グリードさんはその殆どを吐き出してしまったはず。


「グリード殿、見事な護り感謝いたす。心配なさるな、戦闘は我らに任せよ。しかし、敵はどこまで逃げた?わかるか、カーネリアン殿?」


黙って首を振る。

視界を潰され、毒ガスにのたうち爆破されてるうちにすっかり見失った。起爆用の爆弾を投げ込める程度には近くにいると思うんだけど……。


そういえば、完全に存在を忘れられていた肉人形たちはさっきの爆発で吹き飛んだのか、それともタイムリミットで消滅したのか、いつの間にか消えている。やっぱアルケミストのボースト・ヒポクリトはサモナーなのかな?もしそうだとしたら、時間を与えて眷属召喚で頭数を増やされるのは非常にマズイ。

何故なら今、俺はグリードさん以上に戦力になれないからだ。このままでは10代目さんに全て押し付けることになってしまう。


正直ですね、今、俺ペナルティ喰らいまくってるんですよ。この戦いの前に盛り込んで来たいくつものポリシーがすでに牙を剥いてきているんだな、これが。

『目の前のNPCを助ける』『敵を見失わない』『戦闘中に膝をつかない』『悲鳴を上げない』。これぐらいなら大丈夫かなと思って盛ったこれらが開幕でやられましたなぁ。

攻撃力×2と防御力とBP上昇率にペナルティが入っちゃって、もはやただのカカシですな。マジで要らんことをした、初心者が調子乗るとこうなる典型。反省しているし後悔もしている。できれば今すぐ土下座して謝ったうえでリタイアしたい。



「た、たすけてくださぁーい!!」



虱潰しに周囲を調べるしかないかと思っていると、爆破でだいぶボロボロになった駅の方から声が聞こえた。

もしかして、まだ逃げきれてなかったNPCがいたのか?


「参るぞ!」


言うが早いか走り出す10代目さん、すっかりリーダーですね。会議室での頼りなさはどこへやら。非常に助かっております、どこまでもついて行きますぜ大将。








声のする場所に到着すると、そこにはデスパレードに捕まった少し背の低い眼鏡の青年が震えていた。


「チッ、もう気づかれちまったか。……まあいい。予定とは違うが、お優しい正義の味方は人質を見捨てないんだろぉ?」


「そこで立ち止まってください。そしてどうか我が大願のためにご協力を」


「お、お願いします。助けてください……」


要するに、人質を殺されたくなければ死ねってことね。うーん、分かりやすい!

捕まっている眼鏡のにいちゃんには出来れば即刻自害していただきたいのだが、さすがにそれは無理か。少なくともカーネリアンはダークヒーローではないし、そもそもそんな発言したら味方の武士と騎士にぶっ殺される。そしてこれ以上ペナルティ喰らいたくない。


「お前たち……どこまで卑怯な……!!」


大きな体を怒りに震わすグリードさん。あの、震えるのはいいんですけど、めっちゃ鎧ガチャガチャいってて、ちょっと締まらない。こういうところで空気読むシステムとかないのかなー。フルダイブVR、リアルすぎるのも問題だな。


「……下手な芝居はやめるがいい。拙者の目はごまかされんぞ、貴様も悪に連なるものだろう」


ずい、と躊躇なく一歩踏み出す我らが大将。え、その人NPCじゃないの?


「悪に虐げられ助けを求める民の目を、拙者は数え切れぬほど見て参った。貴様の目は恐怖や悲嘆に染まっておらん。その目は……心の底で嘲笑している外道のそれだ!正体を見せろ!!」


持っていた二刀うち、右の方を全力で人質に向かってぶん投げた。

すごい……モーションアシストが入るアーツじゃなくて、純粋な技術で刀を真っ直ぐ投擲してる。この人、やっぱ相当このゲームやりこんでるな。初心者の俺にはできない芸当だ。


一直線に飛んでいった刀は、人質に刺さる直前でにこやかジェノサイドおじさんに叩き落された。おお、ということは本当に3人目のデスパレードか。


「あややや、バレちゃった。JEABDにもやり手はいるんだねぇ。“コードネーム、ヴルシュトール。人魔を解体し、真理に血肉を与える、業深き肉塊”。外にいたモルモットたちは見てくれたかな?多分もう限界が来ちゃってるだろうけど。“君たちなら、もっといい実験ができるよね?”」


ニチャァ……と気持ち悪い笑顔を浮かべるブルシュトールに背中がぞわっと粟立った。

やっぱデスパレードは総じてロールプレイの質が良い。こんなにも生理的嫌悪感を相手に覚えさせる笑顔を演じれるのだから、その辺の下手なタレント俳優よりずっといい役者だ。


「さっさと転身しろよ変態野郎ォ。そのままでやるつもりかよ?」


「おっと失敬な言い方だな、ヒポクリト。ついつい研究のことを考えてしまっていただけさ。では、“天に背く悪逆の実験を始めよう。可愛い子たちなんだ、たっぷり遊んでやってくれ。【肉血(フレッシュブラッド)転身(・ターンオーバー)】”」


外科医の様なマスクで顔の半分を覆い、ブヨブヨの剥き出しの肉にところどころ金属パーツが埋まった小柄な体。セリフと見た目的に、こっちがアルケミスト・サモナーだ。

トリックスター×2にサモナー。正面切っての殴り合いならこちらに分があるが、相手は絶対にそんなことしてこないだろう。俺ならトラップ撒き散らしながらガン逃げする。


おっと、ここで最初に食らったペナルティがようやく消えたか。これでカカシから肉盾くらいには戻れたかな?とにかく相手を逃がさないことに全力を向けなければ。


「じゃあ任せたよ、2人とも。せいぜい僕がモルモットを呼び出す時間を稼いでね?」


言うなりダッシュで逃げ出すヴルシュトール。

アルケミストのサモナーなんて放置したらどれだけ悪さをしでかすか分かったものじゃない。眷属おしくらまんじゅうの中で毒のスリップダメージを食らい続けてKOされた恨みは忘れんぞ。


「『剣刃創造(クリエイト・ブレイド):ゲイルチャクラム』!」


攻撃力がガタ落ちしている俺でも、足止めやけん制くらいはできる。

創り出した4つのチャクラムでヴルシュトールの逃げる先に偏差攻撃。風切り音と共に飛翔した飛刃、ヒットしたのは2つだけだったがとりあえず足を止めさせたのでよしとする。


「よい働きだ、決して悪を逃がすな!『刀剣創造(クリエイト・ソード)三界草(さんがいぐさ)』!」


左手に持っていた刀をその場に突き刺し、新たに創った一振りの太刀を抜き放ちながら敵陣に躍りかかる10代目さん。そこにトラップが仕掛けられている可能性があろうとも、安全策をとる余裕はない。

次に相手を見失えば、待っているのは眷属の大量召喚と無数のトラップ。乱戦に持ち込んで仕留めなければ俺たちに勝ちは無いだろう。


「当然、罠は仕掛けさせてもらっています。『刑罰執行(エクスキューション):串刺しの刑』」


爆破の影響で散らばっている瓦礫。その中に隠してあったのだろうトラップが起動し、10代目さんの足元から先端が尖った杭が形成される。

射出と言ってもいいほどの勢いで突き立った杭だが、鎧に掠っただけでクリーンヒットには至らない。


「まさか、これを避けますか。見誤りましたね」


「“臨兵闘者 皆陣列在前。戦に臨む兵、己の意志で闘う者。皆、陣列にて前に在り”。我が心が平静である限り、この程度の罠は効かぬと知れ。『一輪草(いちりんそう)』!」


ホープに肉薄し、勢いそのまま回転斬りを放つ。綺麗に入った一撃は、体力の2割ほどを削った。

カッケー!!最初の閃光弾で思いっきり不意打ち喰らってましたよねっていう野暮なツッコミは置いといて、この人マジで強ぇぇぇ!!こんな人がチーム戦初ってマジかよ、どんだけシングルに籠ってたんだ。


「いいじゃねぇか、面白れぇ!!怪我したおっさんはひっこんでな!ヴルシュトール、門はどうだぁ!?」


「はいはい、『肉血門(フレッシュゲート)』は設置したよぉ。『下位(サモン・)眷属招来(レッサーファミリア):フレッシュドールズ』」


オーマイガ!10代目さんの動きに見惚れてて完全にヴルシュトール忘れてた!せっかく足止めしたのにアホか俺は!

ドクドクと脈動する肉肉しいというか肉そのものでできた門から、駅の外でうろついていた小さめの肉人形が3体現れた。この状態で頭数増やすのやめて欲しいんですけど!


「下位眷属なら僕に任せてください。カーネリアンさんは彼の援護を!」


ペナルティ的に俺が眷属に行きたいんだけど仕方ない。どうせもうすぐペナルティ消えるし、そもそもあれ呼ばれたの俺のせいだし。チビゾンビ(下位眷属)はグリードさんにまかせて、魔人の方をやったろうじゃねえかよオラァァン!?

10代目さんの足を引っ張らない様に、けん制を基本に茶々入れていってやるぜ!はーはっはっは!

ああああああ!!シューターで来ればよかったぁぁぁ!!








劣勢。劣勢である。

俺が10代目さんの動きについていけていないとか、俺がちょいちょい膝をついてペナルティ喰らってるとか、想像以上に火力が無いグリードさんが敵眷属の処理にもたついている間にさらに増えてるとか、催涙ガス喰らった俺がぐえええと言ったら悲鳴扱いでペナ喰らったりとか色々あって絶賛劣勢。とりあえずポリシーでガチガチ作戦は無理だということは悟った。


つーかね、デスパレード側のチームワークが良すぎるんだよ!

互いが互いを常に気にかけていて、絶妙なタイミングでデバフケミカルぶん投げて来たり、的確な罠起動でこっちの動きを潰して来たり、無茶苦茶やりづらい!あとサモナーが眷属増やすのと回復薬の錬金に専念しているせいで、向こうの耐久力が格段に上昇しているのも辛い。

こういう時に範囲爆撃できるフレイムマスターか、一撃の重さで無理やり肉壁を突破できるビーストが欲しい。クリエイター・アタッカーはどちらかというと手数で勝負型だから、相手の回復役がちゃんと機能していると微妙な攻撃力の足りなさがだんだんと響いてくる。



そして10代目さんは確かに強い。中位までならともかく上位眷属(グレーターファミリア)まで出てきた今、総数が15を超える肉塊どもの処理に俺も駆り出されている。その間、罠とデバフが乱れ飛ぶ中1対2で互角に立ち回っている彼は紛れもない強者だ。

創り出した刀をその辺りに突き刺して、とっかえひっかえしながら止まることなく戦い続ける戦闘法は、なんのかんのと創造にタイムラグがあるクリエイターの隙をなくすいい発想だと思う。クリエイターの創造物は耐久限界か術者が消すまで基本的に消えないからな。


だが、それも時と場合による。


「貴様ら……拙者の刀を!」


「素晴らしい切れ味ですね、いったいどれほどの力が込められているのでしょう」


「侍の魂を適当に突き刺すテメェが悪いんだよぉ!恨むならオツムの足りねぇ自分を恨みなぁ!!代わりにこれをプレゼントォ!『毒気錬金アルケマイズ・ポイズン:TMA!』」


そう、クリエイターの創造物は誰でも手に取れる。武器を作り出して味方に渡すことも、逆に敵に奪われることだってある。多くのBPを使用した武器を奪われると、その頼もしい攻撃力は途端にこちらに牙を剥く。そこが毒ガスや薬品など触れられないものを作り出すアルケミストとの大きな違い。


じゃあとっとと消せばいいといえば、まあその通りだ。だけど、創造物は一つ一つ消せるわけじゃない。その時点で存在している創造物が一斉に消える。

だから10代目さんは敵に刀を奪われても軽々と消すことができない。周囲に展開した刀があるからこそ、現状持ちこたえられているのもまた事実だからだ。




このままでは磨り潰される。10代目さんと俺たち、どっちかが崩れた時点で負けが確定する。あまつさえサモナーであるヴルシュトールが、上位眷属を呼び出してから眷属を増やしていない。

BP切れなら希望があるんだけど、もしこれが特位眷属召喚のための準備をしているのだとしたら、早く手を打たないとすべてが終わる。特位眷属のスペックは、魔人のそれに匹敵する。


「カーネリアンさん、僕が援護しますから、どうにか眷属を抜けられませんか!?このままでは……」


殺到するデカい肉の塊を大盾で弾きながらグリードさんが言うが、それができれば苦労はしない。


「抜けたとしてもそちらがやられるだけだ」


足元にへばりつこうとするチビゾンビ(下位眷属)に剣を叩き込みつつ答える。

いかにデスブラ最高の耐久力を誇るアイスロード・ディフェンダーであれ、上位まで混じった眷属の群れに袋叩きにされては持たないだろう。それに突破できたとしても俺がヴルシュトールを仕留めるまでにどれだけかかるか。

むしろペナルティとボーナスの差で返り討ちにあってもおかしくない。現状上位眷属は倒すのではなく、グリードさんに受けてもらわないといけない程度には俺は弱体を食らっている。ほぼ自業自得だが。


もし、本格的に戦闘が始まった時にグリードさんのBPが十全だったら、魔人の方を受けてもらっているうちに10代目さんと俺で眷属とサモナーを倒せたかもしれない。壁として特化しているこの眷属を倒すには、俺とグリードさんでは火力が足らん。


「……賭けに出なきゃならないか」


「何か考えが!?」


大したことじゃない。なんだかんだで多量の眷属どもと殴り合ったおかげでBPはフルになっているし、幸いペナルティも攻撃力の方にはあまりかかっていない。フルゲージを使う超必殺技なら、上位眷属でもギリギリ葬れると思う。


「10秒、お願いします」


クリエイターの超必殺技は、専用の超性能武器を創造して攻撃するまでがワンセット。威力と範囲どちらも文句ないものだが、10秒という対戦アクションゲームにおいて致命的なまでの隙を晒さなくてはならない。当然、その間に被弾すればただゲージを消費するだけだ。


俺の言葉の意味を理解したグリードさんは、盾を持っていない方の手を握り、ドンと自分の胸を叩いた。


「その大任、このグリード・フォン・シュバルツにお任せを!“この盾に誓って、あなたには指一本触れさせはしない”!来るがいい、悪の手先ども。この氷の騎士が相手だ!!」


気合を入れなおし、改めて盾を構えるグリードさんに頼もしさを感じる。

俺がいなくなった分の肉人形の攻撃を盾で弾き、間に合わない時には身を挺して攻撃を受ける。反撃すらも投げ捨てて、起死回生の一撃を用意する俺を全力で守る。




「緊張するなぁ……よし、やるか。“吹き荒れろ嵐の刃!刻まれし名は、戦いに答えをもたらす者!『魔剣(クリエイト・)創造(スペリオルソード):フラガラッハ』!……悪に知らしめろ、正義の答えを!!”」


超必殺技用の口上を無事に終え、手に握られるのは一振りの両刃の剣。長すぎず短すぎない、いっそシンプルに過ぎるその剣が、俺の全てのBPを吸い上げ眩く輝く。

カッ!と一際強く輝くと、同じように輝く剣がいくつも俺の周囲に現れ、ただ静かに浮かぶ。そしてふよふよと浮かんでいた剣群は、やがてその全ての切っ先を敵へと向ける。

10代目さんと戦っている魔人たちはすぐに気付き、即座に範囲外へと距離を取ったが、まあ、あっちは今どうでもいい。狙いは肉人形の奥に隠れているヴルシュトール、そこはギリギリ範囲内だ。


全ての剣を従えて、俺の身体が動き出す。タイミングよく道を譲ってくれたグリードさんの横を通り抜け、猛烈な勢いで直進。その間に愚直に俺に攻撃を試みようとする敵眷属を従剣が突き刺し、切り刻む。

ぶっちゃけモーションアシストなんでムービーを見ている感じに近いけど、それでもやっぱり自分がこういうカッコいい技を振るっているのは気持ちいいなぁ!



ついに門の横から動かなかったヴルシュトールに、大剣ほどに巨大化したフラガラッハを振りかぶる。まともに入れば体力の大半を持って行ける超必殺技、ここで当てねば男が廃る!!


「覚悟しろ、ヴルシュトール!!」


「すごいよ君、素晴らしいよぉ!!……でも、ちょぉ~~っと遅かったかな?『特位眷属(サモン・スペリオル)招来(ファミリア):ウォール・オブ・フレッシュ』!」


フラガラッハが振り下ろされようとした瞬間。門そのものが裏返るようにして現れた、巨大なそれに俺の一撃は止められた。

幾人もの人間を無理やり壁の形に固めたもの。そうとしか形容のできないそれは、サモナースタイルの『特位眷属(超必殺技)』。俺の一撃を食らってなお消えない、魔人に勝るとも劣らぬ怪物。


後ろの方で、グリードさんが膝をついた音がした。彼も俺も、既にBPは吐き出し切った。

もう、()()をどうにかする術はない。


「“実・験・完・了☆うーん?想定内だったねぇ”」


その姿は肉壁の後ろに隠れて見えないが、きっとイイ顔してんだろうな。


この瞬間、俺たちの負けが決定した。







みんな、ポリシーでコミュ力をごまかそう作戦はやめようね。お兄さんとの約束だぞ!


今回で初のチーム戦は終わりです。もうちょっとデスパレのトリックスターコンビを詳しく書きたかったんですけど、やっぱりトラップ系の技を本人以外からの視点で書くの難しいですね。もっと精進します。


ちなみにボースト・ヒポクリトさんの使っている技名は全部めっちゃ臭い可燃性ガスです。濃度の高い硫化水素はマジで人が死ぬので危ないですよ。臭いですんでいるのは魔人だからです。

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