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ダイブ・イントゥ・ゲームズ ~ぼっちなコミュ障、VRゲーム始めました~  作者: 赤鯨
正義、時々、悪。いざ……転身! ~Destiny Blood~
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魔人は戦う(自分の羞恥心と)

まさか拙作に感想が来ることがあるなんて……。感謝……!圧倒的、感謝……!!

予想もしていなかったので感想が来ていることにしばらく気づいていませんでした。感想をくださった方々、誠にありがとうございます。引き続き拙作をご愛読いただけたら、これ以上の幸せはありません。

と、いうことで今回からDestiny Blood編に入ります。いやぁ、こういうセリフ考えるの楽しいですね。

「遅かったではないか、JEABD(ジーブド)?貴様らが護るべき存在はこの通りよ……」


眼鏡をかけた知性的な美青年が、舞台の上から俺を見下す。その足元にはぐったりと倒れる数人の子ども達。

可哀想に、俺の到着が遅れてしまったせいで……!


犯人である青年は俺に背を向けると、まるで役者の様に優雅な歩き方で俺から離れるように舞台の奥へと数歩歩く。そしてまたクルリとこちらを向き、左手を自らの顔にかざし、誘うかの如く右手を軽くこちらへと差し出す。


「フッフッフ。お優しい正義の魔人が来たからには、真の姿を見せねばなるまいな……。“我に流るる闇の血潮が疼く。血に宿りし半身よ、今宵の贄が来たようだ……。ククク、混沌に沈め……【闇血(ダークブラッド・)転身(ターンオーバー)】”」


大仰に両手で自分を抱きしめるかのようにすると、身体から噴き出した血霧が青年を包んだ。赤黒い塊のようになったそれは、見る見るうちにその形が変貌していく。


「……”我が名はカリギュラリオ、漆黒の支配者!”この姿、その目に焼き付け慄くがいい!!」


バサッ!と大きく両腕と羽を広げ、堂々と名乗る。

現れたのは、大きく裂けた口に白黒逆転した瞳。蝙蝠の羽を背中から生やし、骨の様な血鎧を纏った『吸血鬼』とでも呼ぶべき魔人だった。



真昼間の遊園地で『今宵の贄』だと……!?イメージ優先で昼夜の存在を忘れて作った『最高にダーク』な転身口上を恥ずかしげもなく言いきるとは……。

しかも転身後に名乗りを上げてさらに一文追加だとぉ!?……このカリギュラリオ、間違いない、できる!


クッ!こいつはヤバい、強敵だ!俺も早く転身しなければ!


右腕に装着した転身装置を相手に見せつけるように、肘を立てて手の甲を向ける。そして腰に当てた左手を鞘に見立て、そこからワザとゆっくり、あたかも透明な刀を抜くようにしてその切っ先をカリギュラリオに向ける。


「“この身、一振りの剣。森羅万象、断てぬもの無し。【剣血(ソードブラッド・)転身(ターンオーバー)】”!」


同じく血霧を纏い、肘や膝から刃状の突起が伸びた、緋色に染まった細身の西洋甲冑の様な姿に転身。その異能で一振りの剣を創り、構える。


「何ィ……?シンプルでカッコいい……!あー、そういう方向性もアリかぁ、なるほどなぁ」


やめてぇ!そういう考えで作ったんじゃないの!長いのは言ってる途中で恥ずかしくなりそうだから短くしただけなんだ。森羅万象とか入れたらカッコいいかなとか、少しウキウキしたけどさぁ!つーかちょっと素に戻ってんじゃねぇよ!


これしきで恥ずかしがっているようではまだまだ未熟。

俺は赤石信吾ではない、正義の魔人剣士だ。だから転身口上をキメ顔で言おうが、必殺技を叫ぼうが恥ずかしくない。ヒーローだから恥ずかしくないもん!



「気を取り直して……ゆくぞ、JEABD!喰らえィ、『暗黒門』(ダークネスゲート)!そして来い、忠実なる我が僕よ『中位(サモン・)眷属(ミディアム)招来(ファミリア)』!」


カリギュラリオが作り出した闇そのものとでもいうべき漆黒の門。それはサモナースタイルの魔人が使うアーツの起点になるもの。放っておいては危険すぎる。


「『剣刃創造(クリエイト・ブレイド):ゲイルチャクラム』!」


彼我の距離はおよそ10メートル。剣の間合いには遠いので、俺が転身しているクリエイタータイプ・アタッカースタイルのアーツによって生みだした、幾つものチャクラムを飛ばして妨害する。

惜しくも暗黒門の設置は為されてしまったが、その後に続くアーツは防ぐことができた。サモナータイプと戦う時は常にアーツの出を潰し続けることが重要。数の暴力ほど怖いものは無いのだ。


「やるではないか、正義の狗めが。……名を名乗れ!」


「”コードネーム、カーネリアン。迷いを振り切り悪を断つ、赤き刃”!」





「……コードネームの前に後半言った方が、それっぽくないかなぁ?」


……それはちょっと俺も悩んだ。












「あー、負けた負けた。マジでカリギュラリオ強いでやんの。あそこで上位眷属呼ばれるとはなぁ。やっぱ始めに子どもたちをやられてたのが痛かったな、けっこうボーナス受けてたっぽいし。それになんやかんやでいいキャラしてたしな、くっそー」


アジトの個室に戻った俺は、悔しさを滲ませつつベッドに座った。



正義(JEABD)(デスパレード)の二陣営に分かれた魔人同士の異能力バトル、というのがDestiny Blood『デスブラ』を端的に表した言葉になる。

詳しく言えば『悪側はフィールドやNPCに被害を出すほど有利になる』とか『正義側はなるべく被害を抑える必要がある』など色々ある、割と複雑なゲームだったりするのだが、まあそんなものはどうでもいい。

重要なのは『キャラになり切りロールプレイをする』ということだ。


前述の通り、デスブラは善悪に分かれてバトルをする。その戦いの中で特定の言動をするとボーナスが貰える。このボーナスで戦闘を有利に進めましょうというものなのだが、その行動こそが『ロールプレイ』なのだ。

例えば魔人に変身……デスブラでは『転身』するときに予め決めておいた口上を述べるのはもはや基本。必殺技の名前を叫ぶ、カッコよく名乗りを上げる。決めポーズをとるのも素晴らしい。

あるいは『自分のヒーロー設定』を登録しておいて、戦闘時にそれに沿った行動をすれば高ポイントだ。悪役でも女の子NPCにだけは危害を加えないとかね。


この『ロールプレイ』を行うと、攻撃力や防御力が上がったりする。むしろこの能力上昇を前提に置いた調整がなされているので、ロールプレイ無しの戦闘はただの縛りプレイに他ならない。

だからだろうか、ランカー戦にもなるともはや特撮ヒーローの上映会状態になっていて、素面(しらふ)では到底言えないカッコいいセリフが飛び交い、隙を見ては決めポーズをとるというある種異様な光景となっている。

だが見ている分にはとても面白いし、やっている側もお互いに真剣なので本当のヒーローや怪人になったような気分になれると評判は上々である。



「名乗り、やっぱ前半後半変えた方がいいかなぁ。コードネーム、カーネリアン!で終わる方がしっくりくる……か?他のセリフは我ながらよく纏まってると思うんだけどな。……むしろ纏まり過ぎて他のタイプに手を伸ばせないんだけど……」


背景設定・決めポーズ・転身口上を決めておかなければならない都合上、基本的に転身先の魔人は一種類だけにするプレイヤーが殆どだ。

一応システム的にはいつでも転身先の種類は変えられるが、それぞれに応じたセリフや設定を考えることが面倒過ぎるしそもそも覚えきれない。口上を間違えて転身できないとか、もはやギャグだし相手側も居たたまれない気持ちになること請け合いだ。


とは言え、そこまで窮屈にも不便にも思わないのは、ひとえにタイプとスタイルのシステムのおかげだろう。


魔人にはタイプという属性を決める要素と、スタイルという戦い方を決める要素がある。

先ほどのカリギュラリオを例にすれば、闇や影を操るヴァンパイアタイプの魔人であり、自身の戦闘力は低いが眷属を呼び出し数で攻めるサモナースタイルだったということだ。

タイプとスタイルの組み合わせ次第で、使える技……アーツはもちろんのこと、転身後の見た目も若干変わるので、こだわりがある人はよく考えよう。

タイプを変えずにスタイルを変えることで、あまり見た目を変えることなく色んな戦い方を経験できる。そして設定を流用できる。


ちなみに俺は物質の創造を得意とするクリエイタータイプで、近接戦に特化したアタッカースタイルだ。この組み合わせだとアーツで生み出せるのは刀剣類にほぼ限定され、見た目も西洋甲冑を着た細身の騎士のようになる。まあ、これがデスパレード陣営だと骸骨騎士みたいになるらしいんだけど。


「なんにせよ、まだまだ練習練習。まずはセリフを忘れない、噛まないようにしないと」


まだこのゲームを始めて二日目。ようやく基本ルールを覚えた程度で連戦連勝できるはずもないし、とにかくバトルあるのみ、だな。


今回のゲームでは、転身する魔人ごとにコードネームを設定できます。なので、毎回『赤信号』を使っている主人公も違う名前をガンガン使います。転身前の人間としての名前が『赤信号』というわけですな。

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