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ダイブ・イントゥ・ゲームズ ~ぼっちなコミュ障、VRゲーム始めました~  作者: 赤鯨
フレンドと共に龍を狩れ!(フレンドは付属しておりません) ~Dragon×SlayerX~
30/280

独断専行 あるいは未来への水先案内人

100人もの方がブックマークしてくださっているそうで、作者は若干ビビりながらも喜びに打ち震えている次第です。

超個人的なことですけど、ノッブイベ終了前に景虎ちゃんを滑り込みでレベルマにできました。ギリギリまで無心でクエ回してたので経験値倍に気付か無かった……危ない危ない。


「押せ押せ押せぇぇ!!」

「遠距離型は無理に狙わず乱れ撃て!こんだけいるんだ、どれかに当たる!」

「ちょっ!こっち圧が強いよ!?援軍回して!」

「ドラグアーツ撃つ前は周りに知らせろ、無駄撃ちはご法度だぞ!でも抱え落ちもすんな!」

「炎よりも氷の方が通りがいいよ!猟技で氷属性撃てる人は積極的に使って!!」

「誰かぁぁぁ!回復薬プリィィィィィズ!?アイテムセット間違えて持ってきちまったぁぁぁ!」

「いっそ死んでろバカ!ほらよ!」


戦線を張る各パーティが一直線に横並びになって、一直線に猛ラッシュをかけてくる木々と正面からぶつかる。

何という怒号と悲鳴と雄叫びの坩堝。これがレイドバトルか、ははは、帰りたい。

すげぇよみんな。何でこんなにクソ忙しい中で他人を気遣ったり情報を共有したりできるんだ。俺はもう目の前の敵をぶった切るだけでいっぱいいっぱいだよ、隣のやつの体力を見てる暇なんてねぇよ。

ほらまた蔓の鞭ならぬ枝の鞭が飛んできた。相棒を半回転させて下から弾き、攻撃を逸らすと同時に連撃状態を維持する。


「よいしょぉ!」


遠心力を込めた振り下ろしがマングローブを真っ二つ。うんうん、連続攻撃を続けるほど強くなる相棒は絶好調だな。

うちのチームは俺・青・茶菅が戦線を張り、きーちゃんが討ち漏らし担当。きーちゃんはその武器の都合上、大勢を一度に相手するのに向いてないからな。その分当たればほぼ一撃だけど。

他のチームも戦線崩壊することなく安定しているが、さて。これから先どうなるのかね?人生初レイドなんでなんやかんやと楽しみなんだけど。






☆(ゲーム内時間で)一時間後☆


「これが夜明けまで続くのか……」


うんざりだ。堪え性がないとか言われようが、もううんざりしてきた。

忙しいし油断する暇もありゃしないけど、それ以上にひたすら突っ込んでくる木をしばき続ける作業は代わり映えの無い光景と相まって思いの外飽きる。

だってなぁ……、表情もない吠えることもない怯む様子もないときたら、これただの超スピードのベルトコンベアに乗って流れてくる木を伐採するだけのお仕事だからな。

確かに殲滅力がないと押し切られるし時間切れもあるけどさ。なんつーのかな、最高速度のテトリスを5時間耐久したうえでハイスコアが出なければやり直し、みたいな。


「ブルさん、このレイドってホントにひたすらこれを続ける感じなんですか!?」


極太の杭をぶち込んで敵に風穴を開けながら、ややうんざりした顔できーちゃんが青に聞く。俺だけじゃなくてやっぱみんなそう思ってるんだな。


「正直よくわからない、僕も初参加だからね。少なくとも、捌き切らないと押しつぶされることは確かだけど、っと!」


「死ぬまで殺せばいつかは勝てるってか!?喰らえやボケが、【バニッシュバッシュ】だオラァ!」


勢いよく振り抜かれた金棒がバッコーン!といい音を立てて目前に迫っていたマングローブを吹っ飛ばすと、空いたスペースにすかさず飛び込んだ茶管が大盾を振るってなおも押し寄せる木々を跳ね除けた。


何のかんのと捌き切ってはいるが、どうも気になる。レイドってこんなもんなのか?

確かに忙しいしちょっとミスったら死ぬけど、そんなの普段と何も変わんないだろ。俺が知識として知っている他のゲームのレイドボスって、もっとこう、面倒くささ極まるタイプのものなんだけどな。

大量の分身の中から本体だけを狙い撃ちにしなければならないとか、バトルフィールドそのものを破壊してくるとか、アホみたいな量の状態異常を重ね掛けしてくるとか、尋常でない再生力で火力チェックしてくるとか、決められた部位を順番通りに攻撃しないと壊滅レベルの反撃を即座にはなってくるとか、そういうのがレイドボスじゃないのか?


「……前回は時間切れっつってたし、本当にこのザコたちが尋常でない量いるとか?でも、なんか引っかかるんだよなぁ」


聞きかじった知識しかないからか、この違和感の正体がわからない。わからない以上は目の前の敵を処理するしかない。

振り下ろし、カチ上げ、一回転させて真っ二つ。

まだ始まって一時間も経っていないが、同じ敵ばかりと戦えばどんな攻撃をどれだけ当てれば仕留められるのか自然とわかってくる。すっかりパターン化されてしまった一連の攻撃だが、量をこなすにはルーチンを作るのが一番だ。


「主催の連中はこれが三回目だろ?俺ぁ勝っても負けても二度目はやりたくねぇな。手応えも何もねぇ同じ敵を倒し続けるなんて賽の河原だぜ!?」


「これで手に入った素材で武器の強化ルートが開ければいいんだけどね!」


「そういうのに限って、何かが一つ足りなかったりするんですよ……!まずは勝たないと素材も貰えませんけどね」


何はともあれ生き残るには武器を振るい続けるしかない。

今回で失敗したら次参加する気はないけど、せめて今回くらいはやりきろう。


絶え間なく襲いかかってくる無尽蔵の敵に俺の相棒は相性抜群。上下それぞれの斧刃で交互に攻撃することさえ守っていれば、とっくに上限ストップした追加ダメージがマングローブを切り刻む。

俺たちの中ではきーちゃんが一撃特化型なので若干やりにくそうにしているが、茶管の盾の影に入りながらうまいことやり過ごしている。反対にとりあえず振り回していれば大体何とかなる青は当たるを幸いにどんどこ薙ぎ倒す。

回復薬の使用スピードもまあ順当なので、このままなら夜明けまでは持つだろう。他のパーティの方も安定していて戦線崩壊はなさそうだ。


制限時間の夜明けまで、まだ四時間はある。耐久戦ではないのでそれまでにどうにかしなければならないのだけど……。





☆さらに(ゲーム内時間で)二時間後☆


「なあ。ちょっと思ったんだけど、このレイドクソゲーすぎない?」


レイドが始まってすでに三時間。制限時間の過半数を超えたわけだけど、相手の強さも襲撃方法もミソもクソもなーーーーーんにも変わりなし。ただただ三時間森林伐採してるだけ。


「ですよね。あまりにも退屈過ぎて逆にランナーズハイみたいになりそうです」


せめて。せめて、ある程度の数を減らすとより大きいマングローブが出てくるとか、竜の体の一部が現れるとか、そういうのがあればまだモチベーションを保てる。

でもほんとに何も変わらないんだ。茶管が賽の河原とか言ってたけどまさにそれ、今やっていることが本当に勝利につながるのかいっそう疑問が湧いてきた。


「これ絶対やり方間違ってるよー!」

「なんかギミック見落としてんじゃねーの!?」

「他より大きい木があるとか、一本だけ動いてないのがあるとかそういうのか!?」

「でも勝手に動いたらそれこそ戦線崩壊するわ!!」


他の場所でも似たような感じになっている。

そりゃそうだ、一度の全滅と一度の時間切れを経験してきた初期からの参加者たちからすれば、ちゃんと考えて殲滅力を整えてきたというのに全く手応えも何もないのだからそうも言いたくなる。

それでもきちんと戦線の維持だけはしているあたり、今のところ指揮系統に乱れはない。


「RPGの鉄則として、ギミックを解くにはまず敵を知ることからだけど……」


外様の俺たちはサウザンドグローブをどういった経緯で見つけたのかも、この龍に関するどんな情報があるのかも詳しくはわからないので背景設定からアタリをつけることも難しい

俺が知っているのなんて、それこそこのマングローブどもがサウザンドグローブの一部ってことくらいだ。いや、それにしてもこんなに多くの木が体の一部って本体どれくらい大きいんだろ。


……本体。本体、ね。

いやまさかね。まさかとは思うけど、これ隠れている本体を直接どつかなきゃいけないとか、そんなこたないよな?

まったまた、そんな単純な。それくらい誰か試してるっしょ?

……いや、初回は何の情報もないまま数の暴力で押しつぶされ、二回目は時間切れだろ?もしかして試してない?

そう言えばこのマングローブども、愚直なまでに一方向から真っ直ぐ突っ込んでくるだけだけだ。っつーことは、本体は俺らの前方?そんでこんだけの木々を体の一部にしてるってことは相当な巨体のはず。なら………やっぱり潜ってるのか、俺らの足元に。


……………………。

……………。

………。


やるか。

思い切った行動をするには誰かの犠牲がいるだろう。なら、俺がやろう。

いや、別にこのレイドが面倒くさくなったとかじゃなくてね。『もし間違ってたら』『自分のせいで戦線崩壊したら』って思っちゃうと、多分こうなんだろうなーという考えがあっても一歩出れないわけじゃん?

そこで俺だ。

俺は仮に失敗して全メンバーから恨みを買ってもヤマトに引き籠れる。青たちに関しても、同じ猟団でもないんだから俺に責任おっ被せてシラ切ればいいだけのこと。独り者って身分はこういう時使い勝手がいいよな。


そうと決まればパーティリーダー殿に出立のあいさつでもしときますか。


「青」


「なに?回復薬尽きたの?下級ポーションなら余りが……」


「行ってくる。後はいいようにしてくれ」


「え?」


じゃ、そういう事で。渾身の~~~ハイジャンプ!か~ら~の~二段ジャンプ!三段ジャンプ!四段ジャンプ!以下略!スキル飛天、その効果をとくと見よってな。


およそ30メートルほど(これが飛天の限界高度)まで飛び上がり、戦場を俯瞰する。おーおー、アホ面下げて俺を見上げるより目の前の木をどついた方がいいんじゃないか?

……やっぱりか。こうやって上から見下すとだいぶ不自然だな。多少角度はあるものの、襲ってくる木々は全部前方から。そしてばっちり動いている木と動いていない木の境界線が浮き彫りになっている。範囲は……大体縦250メートル、横50メートルか?デケェ。

現時点で境界内の木はおそらく4割ほど残っている。制限時間も半分をとっくに過ぎた今、殲滅しきれるかどうかは微妙なところ。


「それに、殲滅しきったところでそれが正解なのかどうかわかんねーしな」


ここに見える樹木はサウザンドグローブの『一部』だ。だが、どの部分なのかははっきりしていない。これが腕や足、胴に位置する部分なら刈り取ることもダメージになるだろう。だが、例えばたてがみのような『体毛』に位置するものなら?

髪の毛を切られて痛がる人間が(メンタル的なものは除いて)いない様に、サウザンドグローブにとっても大した痛手ではないんじゃないのか?


「だとしたら、本体を引き摺りださなきゃダメだろ」


その場で浮かぶように小刻みに宙を蹴っていた足を、今度は前に進むために大きく蹴りだす。垂直跳びで5メートルを叩き出す飛天の脚力は、一歩蹴るたびに10m単位で俺を前方へと運んでくれる。

そしてほどなくして到着したのは、木が動いている範囲内でも最も奥にあたる不自然なまでにぽっかりと開いた場所。おそらく、ここに本体の頭があるはずだ。今までやってきた幾多のゲーム達がそういう『お約束』を教えてくれる。

背に担いでいた相棒を取り出し、ぐるんと一回転。だいぶ時間が経ってしまったので連撃ボーナスは消えてしまっているけど、それはもう仕方ない。完全な不意打ちは攻撃し続けることでバフを得る俺には向いてないんだ。


さぁて、一世一代の大勝負ってわけでもないが気合入れていこうか!やるなら派手に、どうせなら最強の一撃で、だ。

俺が出せる最強の技、それはもちろんドラグアーツだ。一日一回しか使えない大技、ここで使わずしていつ使う。


しっかりと相棒を両手で握り、最後に大きくハイジャンプ。そして俺がとる構えは、大上段でもなんでもない。土下座だ。


「見ろ!これが(多分)バグ技、超超高速土下座だぁぁぁああああ!!」


おそらくスキル兵進低頭の効果が予想外の部分で発揮されているんだろう、空中で身を低くする類のポーズをとると超スピードで落下するのだ。

そしてドラスレでは運動エネルギーなどの物理演算は割と真面目に行われている。要するに、技にもよるが立ち止まった状態でぶん殴るよりも助走をつけてぶん殴った方がダメージが出る。


視界が霞むような落下スピードの中、無理やり土下座を解いて武器を構える。一度速度が乗ればポーズを解いても遅くなるようなことはない。後は必殺の一撃がスカらないように、祈りながら落ちていくのみだ。

身体を限界まで捻じり、全ての力を相棒に込める。もはや水面まで一メートルも無い、撃つのなら今!


「喰らえや!【ドラグアーツ:爆崩】!!どおりゃぁぁああああ!!!」


ドラグアーツ:爆崩。それは山をも崩すと言われるド級のブレスを得意とする爆崩竜ファークライからラーニングした必殺技。

本物には遠く及ばないが、全身の全ての力を一点に込めて解き放つその攻撃は、まるで爆撃の様な轟音を轟かせ広範囲を打ち砕く。


振り下ろした相棒の斧刃が水中に沈み、その底である地面にぶつかった瞬間、俺を中心として破壊の嵐が巻き起こる。

半径15メートルほどの範囲にあった木々を根こそぎにし、膝までの深さがあった水面もあまりの衝撃に吹き飛んでしまい地面が露わになる。

そして、その露わになった地面は、明らかに土や砂ではない。一つ一つが大きすぎて実感がわかないが、それは明らかに硬質の鱗だ。そして、先ほどまで俺たちに押し寄せていたマングローブどもの根っこがその鱗の隙間からびっしり生えているではないか。

あれだけ動いていたからなんとなく分かっていたけど、根っこめっちゃ長いな……。


「予感は的中、本体は地中だったな。さて、ここからどうなる……?」


みんなが「これなんかちがうよな……」って思っていても、なかなか行動に移れないものですよね。移したところで成功ならヒーローですけど失敗なら戦犯ですし。

そんなこと考えずに「違うものは違う」と突き進めるファーストペンギンが世界を変えてきたんですけどね。そんなこと言いつつ、私は安全が確保されたサードペンギンぐらいがいいです

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