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サムネの写真は全員で

今回でJourney's Nexus編は終了です。

レックスとの戦いが始まってからゲーム内で実に2時間が過ぎようとしていた。体感時間の延長により現実世界での1/5以下の遅さで時間が流れるフルダイブゲームにおいて、とくにエンドコンテンツとなるようなボス戦は長丁場になることも多いがそれでも長い。


カルデラメイカーが壊れ、スペアの斧が潰れ、アオハルに借りた剣が折れ、そこからさらにスペアの武器を4つ潰した。


ゲルプが踏み殺され、青太郎が噛み殺され、俺もキハゲもチャハゲもアオハルも、みんな普通の戦いならとうの昔に戦線から脱出しているような重傷を負っている。もはや無事と言えるのはアサナギだけだが、そのインベントリに満載していたはずの消耗品はほぼ底をついた。


だがそれでも。


「勝つのは、僕たちだ……!」


量産品であることを隠しもしないただの金属の板に刃をつけただけのような剣を握り、出血多量のデバフによりふらつく足でレックスを見据えるアオハル。少し距離を開けて立つチャハゲもキハゲも、その顔に諦めの色は一切ない。


レックスも全身を傷だらけにし、大きなアクションを取った後にはよろめいたり転倒することもあるほど疲労し追い詰められている。まさにあと少し、お互いに生きるか死ぬかの瀬戸際に立っているのだ。


「みんな、どれくらい武器は持つ?」


「2、3回攻撃を受け止めたら、あとは拾った石で殴るしかねぇな」


「私も似たようなものです。噛みついたりしたらダメージ入りますかね?」


「ダメージが1でも入るんなら倒せるって、古のゲーマーたちから伝わる魔法の言葉があってだな……」


次の攻勢が本当に最後になるだろう、体力も武器ももう限界だ。


「来い、アサナギ!」


もはやここに至ってアサナギを安全圏に置いておく理由もない。たとえ数発の攻撃を受けるだけであろうと、その数秒で勝負が決まるかもしれないからには参戦してもらうしかない。オウドに命をつないでもらった俺が、自分の相棒だけを出し惜しみするわけにはいかねぇ。


「……悪いな相棒、一緒に行こう」


「キュルルルル」


駆け寄ってきたアサナギの背に乗ってその長い首を撫で、最後に残った手斧をレックスに向けて宣言する。


「俺とアサナギでできる限りレックスを抑える!全力でいけ!」


「ありがとう、頼んだよ!」


正面からドタドタと走るアサナギにレックスの視線が固定されるのがわかる。この数秒後に可愛い相棒に起こることには思うものがある。フルダイブを始めて幾度となく人間の体を捨ててきた俺でも心は痛む。


しかし勝つためにできることはやらねばならぬ。そうじゃないとここまでに犠牲になったオウドとゲルプと青太郎、すっからかんになったアイテム、そしてレックスを見つけることから今この瞬間までの過ぎ去った時間が無駄になる。


「キュルァアア!!」


「ゴルァアアア!!」


激しく正面からぶつかるアサナギとレックス。ここまで疲労していなかったら簡単に迎撃されていただろうに、レックスもまた追い詰められている。


それでもマグヌスの名はダテではない。持ち前のパワーでアサナギを押し返し、そのまま首の根本へと牙を突き立てる。だがその隙にみんながレックスに剣や槍で猛攻を仕掛け始めた。無論俺もアサナギに噛みつくレックスの頭に手斧をこれでもかと振り下ろす。


「踏ん張れアサナギ!10秒でも1秒でも長く持ちこたえてくれ!」


「キュ……アアアア!!」


俺の言葉に応えるよう、アサナギもレックスの首に噛みついた。たとえ死に体の悪あがきだとしても、最後の瞬間まで持てる力の全てで抗う。それはゲームでもリアルでも変わらない。


アサナギの決死の抵抗は30秒にも満たなかっただろう。しかしその30秒弱は確実に勝敗の天秤を傾けた。


「ゴァァアアアアアアア!!」


命果て力尽きたアサナギから放した大顎を限界まで開いての大咆哮。まるで巨大なハンマーで正面から殴られたかのような衝撃が体を突き抜け、アサナギの遺体から引き剝がされるかの如く吹き飛ばされる。


地面を転がり顔を上げると、俺よりも5メートルほど前で衝撃により武器を手放してしまったアオハルがレックスの前で尻もちをついていた。チャハゲもキハゲもそのことに気づいたが、駆け付けるには距離が離れすぎている。


「ゴメンみんな!あとはよろしく!!」


「よろしくじゃない、お前が決めるんだよ!」


立ち上がるよりも先に持っていた手斧を全力で投擲。アオハルに凶牙を向けようとしていたレックスの鼻面にぶち当たり、ほんの一瞬だけの隙を作りだした。


その僅かな合間に立ち上がったアオハルが弾かれた手斧を拾い、渾身の力で振りかざす。


「うぅぉぉおおおおお!!」


「ゴ……ァアアアア!!」


振り下ろされた斧はレックスの左目へと吸い込まれ、深々と突き刺さった。身を捩じらせて上げる咆哮が決着を告げる宣言となって響く。


崩れ落ちそうになる足を踏みしめ血みどろになった顔でこちらを見据えたレックスは、ついに次の一歩を踏み出すことなく大地にその巨体を横たえた。


戦闘音が絶えなかった平原に静寂が戻る。遠くの方で聞こえる鳥の声が場違いなほどに長閑(のどか)で、それがゆえに戦いが終わったことを強く実感させた。


「勝った……勝ったんだね……」


「ナイスなラストヒットだったぜ。さすがはこのチャンネルの主役だな」


「死力を尽くした良い戦いでした。死んだ相棒たちも、よく頑張ってくれましたね」


「さすがに疲れたな……さあ、お楽しみの時間だ」


ボスに勝ったら待っているものは?そう、戦利品の詰まったアイテムボックスだ。この瞬間のためにボス戦をやっていると言っても過言ではない。


レックスの遺体の前にみんなで並び、表示されたウィンドウからレックスが遺したアイテムボックスを開封する。


「レックスの皮、骨、牙に爪……最高レア度の素材がザックザクだぁー!」


「機械部品も凄いですよ!見たこと無い容量のバッテリーや文字通りケタ違いの出力のレーザー発振器!何でレックスがこんな部品を持ってるんだなんて無粋なツッコミなんて銀河の彼方です!」


「ヤベェ、大遺跡でもそうそうお目にかかれねぇ鉱石がたんまり入ってらぁ!さすがのマグヌスだぜ、これで何が作れるのかワクワクが止まらねぇなぁ!」


目に映るすべてがとんでもない価値を持つ素材の山、山、山!戦闘系のエンドコンテンツであるマグヌスを討伐しただけあって報酬は質も量も種類もモリモリの盛りだくさんだ。


今までの若干しっとりした雰囲気はどこへやら、海賊や山賊のようにゲハハハハと笑いながら獲物の品定めを始める俺たち。


あれやこれやとそこにあるものを片っ端から確認してはインベントリに放り込む中で、少しだけ感じが違うアイテムに目が留まった。その詳細を確認した俺は、無言で3人の前にそのアイテムを乗せた手を突き出した。


「どしたのアカハゲ、このアイテムを見ろってこと?なにこれ……え、なにこれ!?」


「オイオイこんなの他のアイテムが霞んじまうぜ!?」


「これ多分確定ドロップじゃないですよ……ヤバい物引きましたね」


俺の手のひらに乗っているアイテムは簡単に言えば木製の板に半球のガラスがかぶせられたもの。その板には精緻な彫刻が刻まれ、その中央には方位磁石のような細長いひし形の針がつけられている。


その名は【天頂(てんちょう)羅針儀(らしんぎ)】。効果を要約すると『使用したらランダムなマグヌスモンスター1体の位置を指し示すようになる。使用後にそのマグヌスと会った時に壊れる』というものだった。


要するにマグヌス再戦チケットだと受け取っていい。比較的見つけやすいものでさえ運に見放されると現実時間で発見に5日もかかるマグヌスを、相手はランダムかつ一回限りとはいえその位置を実際に見つけるまで指し示し続けてくれるアイテムだ。


恐竜(レックス)(アクイラ)獅子(レオ)(キャンサー)(アングイス)の5体のマグヌスのうち、海上の島々を含む広大な範囲を飛び回るアクイラと鬱蒼とした樹海に潜みステルス性に長けたアングイスを狙っているプレイヤーにとっては喉から手が出るほど欲しいだろうアイテム。特にアングイスは攻略サイトの書き込みですらたった3件しか会敵記録が無いほどの存在だ。


「おいアオハル、これの扱いはどうすんだよ。やんのか?マグヌスおかわりすんのか?」


やるならやるでいいのだが、レックスの素材で装備を作り直したり完璧に空になった消耗品の補充などやるべきことはたくさんあり、それらにかかる時間もかなりのものになるだろう。なにせ今までのプレイでコツコツ積み上げてきた物資のほとんどを使い切ってしまったのだから。


3ハゲの視線を受けたアオハルは腕を組んでウンウンとうなり始めた。


「うーーーん……そうだなぁ、えーっと、そのぉ…………ハイ、青春チャンネルが送るJourney's Nexus、青春道中ハゲだらけは今回でおしまい!他のマグヌスは自分の目で確かめようね!」


「そういうことらしいので、皆さんもぜひマグヌスに挑戦してください。大丈夫です、4人いれば勝てます!」


「じゃあオレたちは復活してるだろう相棒たちを迎えに行ってくるからよ!」


「また別のゲームで会おう」


倒れたレックスの前でポーズをとり、これにてJourney's Nexusの配信は終了となった。欲を言えばアサナギたち相棒モンスターも一緒に映りたかったが、それは迎えに行った後で撮ろうか。




「やりとげたぞ……」


VRギアを外して軽く頭を振ると、激戦を終えた後の興奮と気だるさと充実感が混ざりあって心身を満たす。やっぱボス戦の後はこれだよな、一仕事終えた感って言うかさ。


少し感じる喉の渇きを潤すため、一階に降りてキッチンの冷蔵庫を開ける。水、麦茶、牛乳……今日は水の気分だな。


喉を通り抜ける水が体温を奪っていく感覚がまだ少し興奮が残った体に心地いい。ああ、いい一杯だ。


「そういえば最近、海の時間が減ってるな……特にここ数日はレックスの捜索でだいぶ時間かかってたし。しばらく他のゲームを優先してたから、ゆっくり海に浸かりに行くか」


そうだ、そうしよう。青春チャンネルも楽しいけど、やっぱ命ひとつで戦い生きていく海こそが俺の出発点なわけだしな。

次回からラオシャン二期です。

一本のストーリーでやるか、アレやったりコレやったりするか、両方用意してはいますがはどっちにするかはまだ決めてません。



現時点での全マグヌス討伐合計数を100%としての各マグヌスの比率

レックス(恐竜):37% 比較的見つけやすく、交戦記録が多く情報が揃っている

アクイラ(鷲):1.9% 戦闘中でも平気で飛んで逃げるため再発見が困難

キャンサー(蟹):34% 縄張りが狭いので場所がわかれば見つけやすい

レオ(獅子):27% 群れとの戦いになるのでこちらも大人数が必要。個としては一番弱い

アングイス(蛇):0.1% 見つけられない

結論:アクイラはカス、アングイスはクソカスのゴミクズ

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― 新着の感想 ―
つまり他のマグヌスを倒すと低確率で20%の確率でアングイス確定挑戦チケットが手に入るってこと? なお逃走した後の再発見には対応してない模様。アクイラだと悲惨だな。
サムネイルは3方向から迫るハゲ頭に抵抗しつつ潰されるアオハルてま
レックス撃破おめでとうございます!無事に勝利で一区切り、スッキリ! そして、やった〜ラオシャン2期だー! …え、2期?せめて3期でなく?と思いましたが章が見つかりませんね。。 ウミガメチャレンジした…
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