第一回ブラウンフレンズ・メモリアルマッチ
エルデンリングで死ぬたびに5行執筆と決めたらエルデンリング全然進みません。どうしてくれるんですかツリーガード兄貴。
「でも意外、かな」
「それは私がこのゲームをやってることですかぁ?ダメですねぇお兄さん、人は見かけによらないものですよ。特に現実とは切り離された場所では、ねぇ」
それはまあ重々承知しているんだけども。俺が人の目に慣れるために女の子になってアイドル活動してるなんてそれこそ家族でも思いつかないだろうし。どこかのメチャクチャ頭のいいアイドルオタクの博士が作ったAIに適当なイメージを伝えるだけで作詞作曲に振り付けまでしてくれてなぁ、ゲーム内の自動生成楽曲とは思えないくらいクオリティ高いんだよな。
「お嬢は普通に強ぇぞ、メインはバトロワの方らしいが走りも上手い。レートも余裕で1000を超えてるし、今回呼んだ奴らの中でも上の方だ」
「兄貴さんにそう言ってもらえたら嬉しいですねぇ」
今日この時をもってたー子さんと、いえ、お嬢と呼ばせていただきやす。実は一瞬だけ900に踏み込んだけど速攻で叩き落された経験があるからこそ1000の壁を超えた先にいる人の凄さがよくわかる。年下とか妹の友達とか関係ねぇ、強い人上手い人にはただただ敬意を払うのみよ。
そんな感じで旧交?を温めているとどんどん人が集まってきて、茶管やサキさんがその人たちに俺を紹介したりしなかったり。そしたら来ました、噂のあの人。
「よーうブラザーブラウン!お前のたっての願いってことで二十一連勤明けの休暇だっつーのに実況しに来てやったぞー!」
「待ってたぜブラザーアッシュ!一ヶ月未満ってなぁ今回はちょっと短かったんじゃねーか?」
サングラスに逆向きに被ったキャップ、ネックレスだの指輪だのアクセサリーをジャラジャラつけたコッテコテなラッパースタイルの兄ちゃんが茶管と拳をぶつけ合った後にガシッとハグを交わした。
「喧しいやつでしょ?あいつ、アタシらと中坊のころからの付き合いでね。昔からバカだけどノリの良さと体力だけはあるからブラック企業でもなんとかやってんの」
「おいおいご挨拶じゃねぇのサキちゃん!で、この無表情ボーイが最近二人が可愛がってるってのか?俺はアッシュ、灰原篤人だ。君のことは二人から聞いてるから無理に喋ろうとしなくていいよ、よろしくな赤信号……いやブラザーレッド!」
ポンポンと軽く肩を叩いてくるアッシュさん。君の友達がどんな人か教えてくれ、君がどんな人かを当てるからと言った哲学者は誰だったか。交友関係を知ればその人がどういう人かがわかるというのなら、それはつまり茶管が胸を張って友達だというアッシュさんはいい人だということだ。
「よろしく、お願いします。ブラザーアッシュ……さん」
「おお、ブラザーと呼んでくれるか!いいな、いいぞブラザー!君のためのメモリアルマッチ、このブラザーがしっかりばっちり盛り上げてドッカンドッカン言わせてやるよ!よーしお兄さん張り切って実況しちゃうぞー!」
まあノリとテンションについていくのは難しそうだけど、悪い人ではない……と思うよ、うん。勢いそのままにフレンド登録までされたけど。ついでのようにSUMIDAとたー子も登録していったおかげで一気にフレンドが五人にまで膨れ上がったぞ。
「フレンドリストがこんなに埋まったの初めてかもしれない……!!」
「……なんか、カッちゃんとサキちゃんが目をかける理由がわかった気がする。この子……っていう歳でもないんだろうけど、この子ほっとけない。俺今ちょっと涙出そう」
「そういう意味で目ぇかけてるわけじゃねぇんだが、あのスッカスカのフレンドリストをあそこまで嬉しそうに抱えられちゃあなぁ……」
記念に写真とっとこ、そんで後で青やきーちゃんに見せよう。どうだろう、二人ともなんていうかな、喜んでくれるかな。そうだといいな。
「さぁて、締め切り時間にはまだあと五分あるが全員揃ったな。まずは主催者として一言挨拶申し上げるぜ、今日はよく来てくれたな野郎どもぉぉーーー!!」
「「「イェアァーー!!」」」
ライブ会場かな?正直素面だと一番つらい空気だわ。でもゲームの中ならついていけないこともない。雰囲気に流されてなんとなく右拳を天に突き上げてるだけだけど。
「絶対に楽しい戦いになると保証する!遠慮するこたぁねぇ、思う存分に飛んで走って咆え叫べ!準備はいいか?いくぞオラァァアアア!!」
「「「イイェアァアアーーー!!」」」
ライブ会場かと思ったら暴走族の決起集会だったようだ。そして茶管がホスト権限で開始したのか、待合所の真ん中に大きなホログラムウィンドウが現れコースの抽選が始まった。
「ここからはみんなのソウルブラザー、アッシュが実況を担当するぜー!運命の女神はどのコースでのレースをお望みかな?さあみんな祈れ祈れ、もう祈る時間はここしかないぞー!?」
ここで直線の多いロングコースが選ばれると俺の勝ち目はいよいよゼロに近づき、勝利のためには暗殺するしかなくなる。頼む、長さはともかくカーブやギミックの多いコースになってくれ!!
できることなら世界樹オッガーノがいい。あそこは最後の直線以外は入り組んでて直線特化のドレイクは真価を発揮できないし闇討ち不意打ちもやり易い。まあそうなったら茶管も小回りが利くドレイクに乗り換えてくるだけだろうが、それでもソードフィッシュで直線勝負するよりは勝算がある。
「選ばれたコースは……雷剣山リーチェ!剣のように鋭い雷が休みなく降りそそぐわ特殊な磁場が行く手をふさぐわ、全コース中でも一、二を争うくらいに派手で危険なミドルコースだ!雷鳴に搔き消されないようあらん限りに咆哮れ!痺れる戦いを期待してるぜー!!」
アッシュさんのウキウキ実況がひと段落着くと同時に周囲が暗転。使用機体と勝負服を選択するウィンドウをタップしてソードフィッシュを選び、勝負服は……まあいつもので。あんまりゲーム内ファッションにこだわらないのが赤信号流だ、ファッションセンスがないだけだが。
一瞬の浮遊感を覚えたときにはもうすでにドレイクに跨っている。リーチェはぱっと見は開けたコースのくせに、アッシュさんが言ってた通り強力な磁場がフェンスになって直進を阻むギミックがある。電磁フェンスは突っ切ることもできるけど、無理に通るとドレイクがイカれて性能がガタ落ちするペナルティが痛い。
直線も少ないし、おそらく多くのプレイヤーがファイター機体で来るはず。逆に少ない直線で一気に捲るためにレーサーを持ち出すプレイヤーもいるだろうが、それでも混戦になる予感がするな。
『よう赤いの。いよいよ始まるぜ、ワクワクするなぁ』
「茶管か。……これ、どの範囲の人まで聞こえてるんだ?」
『なんかスゲぇシステムがいい感じに話したい相手にだけ繋げてくれるんだと。まあそれはそれとしてよ、俺ぁずいぶん前からオメェとは真剣に戦ってみてぇと思ってたんだ。友達としてじゃなく、一人のゲーマーとしてだぜ?だからよ、改めて言うが今日はお互いに遠慮手加減一切なしだ』
「もちろんそのつもりで来た。チートもバグも使わないけど、それ以外は俺の持てるすべてを総動員させる。勝つためにどんなことをされても卑怯とは言わないし言わせない」
『そうだ。それでいい。そうじゃなきゃならねぇ。ああ、ついでに言っとくが設定でネームプレートが頭上に出るようにしてある。そっちの方が楽しいからなぁ?』
プツンと通信が切れたときには開始までのテンカウントが始まろうとしていた。茶管との会話に集中してたからアッシュさんの小粋なトークを聞き逃したかもしれない。
だけど開始前に軽く喋ることで程よい緊張感を得られた。友達と話すことで程よくリラックスするんじゃなくて緊張するあたりが情けなくも自分らしいが、まあ今回のは友達との仲良しトークじゃなくてライバルとの宣戦布告だ。
走り出すまで残り数秒。アクセルスロットルを握る右手に魂を、ブレーキと昇降ペダルを踏む両足には意地と根性を。そして頭は冷静に、心を熱く燃やせ。
『準備はいいか?覚悟はいいか?ハウるための喉の調子はOKか?雷鳴轟くリーチェの空に、負けじと響け炎の咆哮!!第一回ブラウンフレンズ・メモリアルマッチ……スタートぉ!!』
そろそろ次の章について考え始めないといけないですね。
とりあえず新ゲームなので写真のやつにするか、バレットアクションにするか、モンスター育成ものにするか……まあダイス振りましょか。




