悩むからこそ楽しい、減らすために増やす
実はもう仕事期間なので更新頻度はガタ落ちです。
次のゲリラに向けて準備をするというカゲマルさんとマロンさんを見送った後、サイバー・アシガラでリクドーを習得。この先はゲリラ・オーダーの期間は十日間ということなのでタイミングが合えばゲリラを、合わなければリクドーのスキル上げをしようと思う。
解散する前に二人が比較的ドロップしやすいメンとキャハンの異形化パーツがでるオーダーを教えてくれたけど、リクドー強化とゲリラのおかげでそこまで時間はないと思う。あくまで余裕があれば、ということにしておこう。
ゲリラ・オーダーそのものは不規則かつ同時多発的に起こることもある。運が無ければ全然参加できない、ということもないが積極的に情報を集めてないと出遅れることは確実。でも俺はリクドーの強化もしたいわけで……このジレンマで悩む時間こそ、ゲームしてるって感じだよな!
「と、いうわけだ。……ケツを出せ」
「ニンジャ!?ぐ、ぐわーー!」
日が暮れかけてきたOH・EDOの一角で今日も哀れな悲鳴が上がる。元々縦に割れているところにマサカリを横向きに叩き込まれ、リアルなら四つに割れていたであろう尻を上向きにして突っ伏したNPCが息を引き取った。
「んんー、モブNPCはだいたい一撃で死んでくれるから楽でいい。サムライは固くてかなわないからな」
リクドーの中でも一番強化すべきはハカマが対象である畜生道。そのためには対応部位である腰から股への攻撃でキルしないといけないので、結果的にNPCの尻と股間を執拗に狙うことになるわけだ。なんか俺いっつもケツを狙ってんね。
ケツバットならぬケツマサカリをこなしつつ、時には腕をぶった切ったりしながら一般NPCへの虐殺を始めて数十分経った。始めたころは一抹の後味の悪さを感じていたもんだがもはや何も感じない。やっぱ人間って怖ぇわ。
ひとまず百人ほどのケツを十文字にしたあたりで畜生道がレベルアップ。ハカマでの攻撃力が上昇するという、尻尾か何かがあることが前提な異形化パーツじゃないと意味がないパッシブスキルだ。試しにわざと呼び出した弱めのサムライを尻尾と素手でそれぞれ死ぬまで殴ってみたら尻尾の方が明らかに強かった。いいね、いいスキルだよ。
「この感じだと全身異形化パーツにしたら結構な強化値になりそうだな。まんべんなく強化してる時間はないけど、イベントが終わって落ち着いたらやってみてもいいかも」
このイベントが終わったらセレスティアル・ラインに呼び出し来てるからもう少し先になるだろうがね。船もデカくなったしまた船員増やさなきゃなんだよなぁ、めんどくさい。さすがの副長も船員の雇用まではやってくれないのが痛すぎる。
とにかく今は辻斬りをし続けるのみ。もう経験値にしか見えなくなったNPCを稲の収穫が如き感覚で刈るのだ。まずは腰を優先しつつ、腕の強化も狙っていくぜ!
と、その前に辻斬りしながらの移動でたどり着いたクランハウスに入ろう。一般NPCを狩るとはいえ、何のかんのとサムライに追い回されたりするので回復薬やら目くらましの煙玉なんかが足りなくなってきた。
「物資の補充を」
「……アンタ、変わったねェ。そんな血の匂いがする人だったかね」
カウンターにいるFUMAの関係者に話しかけたら怪訝そうな目で見られてしまった。百超えてから人数を意識してなかったけど、さすがにカルマ値も下がったか。
「血濡れで当然。ニンジャなんだから」
「それも一理あるが……まあ、何事もやり過ぎないようにするのが一番だとあたしは思うよ。お節介かもしれんがね」
露骨な警告を受けてしまったが俺は止まらない、止まるつもりはない。リアルならともかくゲーム内ならやり過ぎるくらいが楽しいのさ、もちろん他人に迷惑をかけない範囲で。
実はパーツ集めでマラソンしまくったおかげで暖まりまくっている我が懐。ここらでいっちょ装備の強化もしていこうじゃないか。
攻略サイトのデータベースをパンクさせたいのかと疑うレベルのインフィニティ・レムナントよりはマシとは言え、ニンジャドーも武器やパーツの数は多種多様というか闇鍋状態になっている。異形化みたいな特殊な能力があったり重さやリーチの違いがあったりするので、基礎スペックの強い弱いはあっても直接的な上位下位互換の関係はあんまりない。ゆえに自分に合った装備を強化して使い込むのが定石だ。
「ジョーニンでも最初期で拾えるパーツを使ってる人いるもんな。レア度によって強化できる回数に差があるけど、それでも気に入ったパーツと長く付き合えるのはいいもんだ」
俺のマサカリシャミセンもビーム刃やリアル刃、諸刃や片刃なんかのバリエーションの違いで使い分けてんだよね。重さやリーチだけでなくとっさの時に盾にできたりとか、そこら辺の影響が大きくてさ。
今使ってる片刃のやつとは違ってリアル刃でかつ諸刃、尻尾で振り回すこと前提のマサカリを強化しておこう。これは三味線兼用の仕込み武器じゃないやつだ。普段はショートカットの中に入れといて、必要になったら取り出して尻尾で掴む感じ。
世界にはショートカットの中身を多種多様な武器で埋め尽くしてその場その場に適した武器を使い分けるニンジャもいるそうだが、意外と消耗品やらサポートアイテムやらを登録するとスロット足りないんだよな。どうやって回復とかのやりくりしてんだろ。
「ああ、この武器強化でステータスが上がっていくのと同時に金がなくなっていく感覚が最高に気持ちいい……」
チャリンチャリンチャリンチャリン、ガッシャンガッシャンガッシャンガッシャン
と音を立てて消えていくクレジットと強化されていく武器を見る目は、きっと恍惚の表情だっただろう。
仕上がった武器のスペックと素寒貧になった所持金残高、この極端な対比こそがゲームの醍醐味だぜ。溜め込んだリソースを一気に放出する瞬間にこそエクスタシーを感じるゲーマーは多いと思う。青もそんな感じらしいし。
「あとは辻斬り用に拳銃でも貰っていこうかな、別にマサカリじゃないとダメなわけでもなし。……でも俺『血鉞』だからなぁ、イメージ守っていかないとダメかね」
二つ名は積み重ねてきた行動履歴をもとに自動で名付けられる。そしてこの二つ名、なんと剥奪されることもあるという。例えば俺の場合どう考えてもマサカリを使っている名前なのに二丁拳銃メインでマサカリを全く使わなくなったりしたら、近いうちに『血鉞』を剥奪されてしまうというわけだ。
ちなみに同時に別の二つ名の条件を満たした場合はどっちにするか自分で決められるとか。そんな場面はそうそうないだろうけどな。
「特に遠距離武器が無くて困ったことはないし、まあいいか。イメージも大事だもんな」
今回はマサカリ一本の強化で抑えとこう、どっちにしろ金がないから良いものは買えないし。よし、ケツ狩りにいくぞー!!
そして一時間後、何人のケツを四つにしたのかわからなくなってきたころにそれは来た。ポロン、という軽い音と共に表示されるシステムメッセージだ。
<ゲリラ・オーダー発令。SHINJUKUステーションにてクローン・ハンゾー軍団の襲撃を受けている。付近のニンジャはスクランブル急行せよ!>
スクランブル急行って意味被ってないかな、英語はそこまで詳しくないけどさ。それにしてもSHINJUKUかぁ、ちょっと遠いな。目的地に行くまでの準ステルスチックなのも味の一つだからか、ファストトラベルとかないんだよ。バスや電車、タクシーも使えるからそこまで不便じゃないけど。
だけどSHINJUKUステーションは純粋に面倒くさくて行きたくねぇ。あそこ死ぬほど入り組んだクソダンジョンなんだよ、始めて行った時は出口が分からなくなって電車に乗って別の駅に逃げたもん。ニンジャ・スーツそのままで満員電車に乗ろうとしたらなんかメッチャ強い駅員にシバかれたけど間一髪乗り込めたんだっけ、嫌な思い出だ。
場所的には気が進まないし金眼のクローンに間に合うかどうかも微妙だけど、行くだけ行ってみるかな?残党処理でもそれなりにポイントは貰えそうだし。
「道すがら辻斬りしつつ行くか。五十ケツくらいはいけるかな」
なお、道中で特に確認もせずにすれ違いざまにケツマサカリした相手がどっかのジョーニンだったのでガチ逃げするハメになるとは、この時の俺は知る由も無いのであった……。
おかしいですね、こんなにケツを狙いに行くスタイルになる予定じゃなかったんですが……




