マナー、大事、絶対(洗脳済み)
MTGアリーナが楽しいので更新です。
OH・EDO湾で三味線を弾きながらケンカを売ってくるニンジャをケツマサカリしたり予想外の上位ニンジャにボコボコにされたりしているうちに、気づけばレベルもそれなりに上がっていた。
レベルが上がればやることは一つ。そう、ニンポーの獲得だ。
ニンポーを獲得したりチューニンやジョーニンといった上位カーストへと昇格したりするにはFUMAの本拠地であるASHIGARAマウンテンに行かなくてはならない。が、最前線であるOH・EDOで動いているニンジャたちがいちいち本拠地まで戻るのは非効率的であるといわざるを得ない。
そこで開発されましたるは『電脳本拠地サイバー・アシガラ』。文字通りASHIGARAマウンテンをそっくりそのまま電脳空間に作り上げたというもので、どこにいようがここにアクセスすることでニンポーの習得等ができるようになる。
そういうことで俺は現在サイバー・アシガラ内のドージョーに来ており、チュートリアルの人とはまた別のシハンに教えを乞うているところだ。そういう世界観とはいえ板張りの道場に全身パワードスーツのニンジャが二人で向かい合っているというのも中々シュールだな。
「新たなニンポーを得たいと申すか。ならばまずはゼンじゃ、ゼンを組めぃ!そして内なる己とのセルフ・ミーティングを経て心を高めよ!」
「オス、ありがとうございます、オス」
ニンジャの世界では目上の人と話すときには言葉の前と後ろにオスをつけなければならないらしい。ゴリゴリのサイバー空間なのにそういうところは体育会系なのが間違えた日本観なような、あっていると言えるような……。
ちなみに座禅は体がオートで組んでくれるから大丈夫。だけどフルダイブ上がりに現実世界でやったら両足攣って死にかけたわ。悶える俺の声に心配して部屋に入ってきた優芽が一転してゴミを見るような目をしてたから風呂上りには柔軟体操をしようと思う。タコやイカの俺なら座禅くらい楽勝なのになぁ。
スッと禅を組めば、閉じた目に二つのスキルツリー……形的には円盤系なのでスキルボードかな?まあいいや、それらが浮かび上がった。一つが【FUMAニンジャドー】のスキルツリー、そしてもう一つがチューニンになれば解放されるというまだ触ることができないツリーだ。
このゲームにおけるスキルツリーとは『その道をいかに究めたか』というものであり、それがそのまま忍者道としてゲームタイトルにもなっているんだな。また、新しいニンポーを習得するだけでなく、既に覚えたニンポーを強化することもできる。このせいでニンポービルドを考えるのが難しいんだよ、どう考えてもスキルポイントが足りない。
さてエレメント・ニンポーが得意なFUMAニンジャドーはざっくりとカトン、スイトン、フートン、ライトン、ドトンに加えてフィジカル、サイキックの七分野となっている。当然ながらフィジカル、サイキックはそれぞれ本家本元であるIGA、KOGAに比べたらしょっぱいものしかない。
当然伸ばしていくのは水遁のライン。マサカリと併用できるような近距離ニンポーか、とりあえずで撃てるような軽い遠距離ニンポーがあれば欲しいんだけど、さてどうかな?
カセンジキ・リバーロードから繋がるのは突撃技の【テッポーミズ・チャージ】、オヒヤ・アローからはショットガン的な【サザナミ・バレット】。まあこれは両方取るよな、取らない理由がない。願ったり叶ったりとはこのことか。
レベル的にもう一つ取れるけど、せっかくだから俺はこのテッポーミズ・チャージの強化を選ぶぜ!突進技って便利なんだよホント。強化すると威力と疾走距離が延びるらしいし、こんなの強化するしかないじゃない!
実際、遠距離攻撃のオヒヤ・アローに強襲用のカセンジキ・リバーロード、面制圧のサザナミ・バレットと高速接近&強行突破のテッポーミズ・チャージの四つでとりあえずの対応力はあるわけだし、いっぺんにドバっと新しいニンポーを覚えても扱い切れる自信ないしな。ゆっくりでいいんだ、まずは基礎を固めていこう。
「内なる己とのミーティングは終わったか?」
「オス、終わりました、オス」
スキルの習得が終わったので目を開き立ち上がり、仁王立ちしていたシハンにオジギをする。オジギを忘れると死ぬほど強いシハンにボッコボコにシバかれるから気をつけような。オス忘れとオジギ忘れはおそらくプレイヤーの大半がチュートリアルでやらかしたと思う。
マナーにうるさい上司というのはいつの世も面倒、というワケなのでニンジャらしくドロンするぜー!
「待つがよい」
「……オス、なんでしょうか、オス」
マナー狩りの恐怖に震えながら立ち止まり振り返ると、鬼瓦みたいな面(フルフェイスヘルメット)をしたシハンがゆっくりと頷いた。
「うむ。そなたのオーダー・レコード、まことアッパレ。その実力、もはや一介のゲニンには納まるまい。ゲニン・リーダーへの昇格試練を受けるがよい。試練はサイバー・アシガラ・セントラルにて受領できるからのぅ」
「!?オス、ありがとうございます!オス!」
やったぜ!こうしちゃいられねぇ、さっそく試練を受けに行くぞぉ!よーし、セントラルまでダッシュだワハハハハ!!…………ん?
「貴様、去る前のオジギを忘れるとはなんたるシツレイ!そこに直れぃ、ワシがレイギを叩き込んでやる!」
「……やっちまったぁ!クソが、こうなったらやってやろうじゃねぇか!来いよシハン、ニンポーも武器もなんならニンジャ・スーツも捨ててかかって来ぶげらぁっ!?」
あり得ないほど強い踏み込みで姿を消したシハンが一瞬で目の前に現れ、ロクな抵抗もできないままオシオキ・ロッド『レイギ』が眉間にぶち込まれた。そして手を緩めることなく二度三度と礼儀を叩き込まれる(物理)とあっという間に装甲値はゼロとなり俺の体力は尽きた。
シハンもシツレイなことをしなければいい人だから、要するにマナーを守って楽しくニンジャ!ってことだな。じゃ、リスポーンしてきます……。
「オーダー内容は『製薬会社ダイジョーブ・ファーマシー』が開発した新薬データの奪取、そんで敵ニンジャが現れる可能性もアリ、と。……なんか人体改造をよく失敗する博士がいそうな名前の製薬会社だな」
アシガラ・セントラルで受領したプロモート・オーダーを巻物端末で再確認しつつ、やってきたぜSHIBUYAステーション。今回のオーダー・ロケーションはここの近くにある別の場所だから、実際には横目で見ながら通り過ぎるだけだけど。
ニンジャドーのダンジョンとはそれすなわち『そこら辺の施設』だ。しかし侮るなかれ、ニンジャドー世界では空間を弄る技術が発達しているおかげで中は外見よりもよっぽど広く、ものによっては大迷宮と言っても過言ではない。
さすがに全部が全部そんな感じでダンジョン化しているというわけじゃないが、例えば学校や病院、駅やタワービルといったある程度以上の敷地がある施設はだいたいダンジョンだと思っていい。
基本的にオーダー中のダンジョンと通常時のダンジョンは別空間であり、オーダー中に別のプレイヤーが乱入してきて任務の邪魔をされるということは特殊なオーダーでもない限りはない。ただしオーダー中のダンジョンはそれ専用のアイテム配置がなされているから、オタカラと呼ばれるダンジョン産のアイテムを得るには通常時に潜る必要がある。
NPCについては巻き込もうが巻き込むまいがどっちでもよく、極端な話をすると無双ゲーばりに見える全てを蹴散らし屍山血河を築こうとも直接的なペナルティはなし。ド派手にやり過ぎるとサムライ・ポリスたちが大挙して押し寄せてくるが、ある程度ゲームに慣れたニンジャなら逃げられる可能性は十分にあるという。
「まあ、一番怖いのはサムライじゃなくて同業者だけどな。お祭り騒ぎに誘われたニンジャが大勢きたら大戦争待ったなし、だ」
たくさんのNPCが出入りしているSHIBUYAステーションも、あの中のどこかでは今もニンジャ同士が熾烈なニンポー合戦を繰り広げながらオタカラ争奪戦をしているのだろう。ニンジャではない一般人であるNPCたちの命の安全を心の隅で祈るばかりだ。
俺もオーダー前に他のニンジャに目をつけられると面倒だし、とっととダイジョーブ・ファーマシーに行きますかね。えーっとマップ的には……お、この道路を超えたところじゃん。案外近かったな。
それにしても一般人に交じっててくてく歩くのはニンジャらしいというからしからぬというか。夜ならともかく昼間はニンジャパワー全開で走ったり跳んだりしてNPCをうっかり殺害しようものならサムライ・ポリスがやってくるからしかたないんだけど。
まだプレイしだしてほんの数日だけどゲーム内の昼はオーダーをこなして夜は対人戦に勤しむというニンジャ・ライフサイクルはバッチリ学んだぞ。なんせ夜にカッコつけて三味線をしっとり弾いてたら灯りに集まる蛾みたいな頻度でニンジャに絡まれたからな!
「この街に潜むニンジャたちよ!拙者のメロディを聴けぇぇえええ!!」
宙を浮いて走るバスの上で思いっきりニンジャ姿でギターをかき鳴らしているアホが目の前の道路を通り過ぎていった。……まあ、何事にも例外というものは存在するもんだ。
今のニンジャほどではないにせよ昼夜の別なんぞナンボのもんじゃい!って考えで全力全開なプレイヤーもそれなりにいるので、注意してみると案外カモフラをしていないニンジャも結構いたりするんだ。そういう人は同好の士とやり合いたいだけみたいで、こっちが知らんぷりして通り過ぎても絡んできたりはしないんだよな。
そんなふうに白昼堂々と大騒ぎするニンジャを見るというプチイベントもあったけど、目的地である『ダイジョーブ・ファーマシー』に無事到着。うむ、見た目は四角形よりも三角形を多用したかなり前衛的な企業の本社って感じ?こう、新進気鋭の設計士に任せました的な?ヤバい、俺の芸術センスが無さ過ぎて表現する言葉がない。
「素材を集めて建築しよう!みたいなゲーム苦手だったからな……。まあいいや、そんじゃあサクッとオーダーこなしてゲニン・リーダーを拝命しましょうかね」
NPCを殺害すると現れるサムライ・ポリスですがぶっちゃけチューニン・リーダーくらいになったら捕まる様な相手ではありません(そもそもニンジャの方がサムライより機動力に優れている)。もちろんサムライを倒すことでドロップするオタカラもありますし。
でもOH・EDOキャッスルの中にいるサムライたちは鬼のように強いので舐めてるとジョーニンでもバッサリ逝きます。




