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ダイブ・イントゥ・ゲームズ ~ぼっちなコミュ障、VRゲーム始めました~  作者: 赤鯨
YESニンジャ、NO忍者 ~ニンジャドー~
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※本人たちは真面目です

千年戦争アイギスが7周年を迎えたので更新です。

「んんっ!気を取り直して……いざ、勝負!」


チュートリアルを除けば初めての対ニンジャ戦、否応なく緊張するがこちらから距離を詰めさせてもらう!


なんせ金欠でシュリケンも買えてねぇんだ、手札が無さ過ぎてどうしようもない。敵がKOGAだから変に距離を与えるとめんどくさそうだし、接近戦に持ちこんでペースを握らなきゃな。


「フンッ!」


敵ニンジャが後ろに跳んで避け、縦に振り下ろしたビームマサカリが半円の残光を残す。わぁキレイ、なんて冗談飛ばしている暇はないのでそのまま追撃じゃぁ!


マサカリだからといっても刃はビーム、重量はそこまででもないから少し重心位置がおかしいバットくらいの気分で振り回せるのはいいね。


「予想以上に速いな……ならばこれだ」


大腿部に取り付けられたショートカット・ホルスターから敵が取り出したのは手のひら大のカプセル。俺の足元に向けて投げられたそれは、パシュッという軽い音と共に複数の小さな何かをばら撒いた。


「踏み出せばマキビシマインが起爆する、おとなしくしてもらおう」


ほんの数センチほどのショボい地雷と侮るなかれ、爆発するとけっこうな衝撃が来る上に装甲値が低いゲニンシリーズのニンジャ・スーツではそれなりのダメージを受けてしまう。


クソッ、これじゃあ距離を詰められない……なんて言うと思ったかバカめ!こんなもんでニンジャは止まらねぇからよぉ!


「踏み出せば爆発するというのなら、飛び越せばよか「それはジャンピングマインだ」ウボァー!?」


あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛飛び跳ねたマキビシマインがケツに!三発連続でケツに!!嘘だろ体力ゴリッと減ったぞクッソ痛ぇー!


ふ、ふざけるなよオマエぇ!ジャンピング・マキビシマインなんて高級品をタイマンでバラ撒くなんてこのナリキン・ニンジャが!シュリケン一枚も買えないベリープアーなビンボ・ニンジャである俺に対する当てつけかこの野郎!


爆発の勢いでゴロゴロと転がされ、起動しなかったマキビシマインの残りに怨嗟の一瞥(いちべつ)をくれながら立ち上がる。絶対に許さないぞ、KOGAクラン!と殺意を込めてマサカリから離した左手で印を結び、NP(ニンジャ・パワー)を消費して生成するのは腕ほどの太さと長さがある水塊の矢だ。


「これぞニンポー【オヒヤ・アロー】!」


「ゴハッ!?」


勢いよく放たれた水矢が敵にクリーンヒット。俺自身の総NPが低いため乱発はできないけど純粋に水が飛んでいくだけというのは使いやすい。ネーミングだけはどうにかならんかったのかと言いたくなるが初期ニンポーということで飲み込もう、お冷やだけに。


ふと思ったんだけど、さっきわざわざジャンプしなくてもオヒヤ・アロー撃ってたら良かったんじゃ……あーダメダメ、過ぎたことはウジウジ考えるな。時は巻き戻らないんだから今と未来だけを考えよう。ゆっくり反省できる場所ならともかく、戦場では一手前より一手先を考えるのだ!


「やるな、FUMAの」


「痛み分けだ、KOGAの」


片や大質量のお冷やを腹に受け吹っ飛ばされ、片や跳躍式地雷をケツに受けた二人のニンジャ。言葉にするとギャグでしかないが当人たちは至って真面目なんだ、本当の本当にやるかやられるかの戦いの最中なんだよ?


さてお互いの距離はおよそ十メートル、マサカリを振るうにはちと遠いな。さてどうやって接近しよう、ニンポーでいくか反撃覚悟で突っ込むか。切実にシュリケンが欲しくなる距離だ、やっぱ貧乏って辛ぇわ。


だが考える俺に対して相手の行動は速かった。


「シッ!」


振りかぶらないコンパクトな動きでビームコダチを投擲。緑の尾を引きながら俺の顔面へと飛んできたそれを反射的にビームマサカリで弾くと、視線の先ではKOGA野郎が印を結んでいた。


「ニンポー【サード・ハンド】!我がサイキックによる第三の手は、遠く離れた物を自在に操る。そら、動け!」


「は?……うおっ!?」


今まさに弾いたばかりのビームコダチが落ちた地面から猛烈な勢いで俺の顔面めがけて跳ね上がった。間一髪で回避できたけど、ご丁寧にビーム刃まで展開してんぞコイツ!


サイキック・ニンポーは念力だの洗脳だのと聞いていたけど、なるほどこれがその念力ってやつか。ビックリしたけど動かせるのはワンアクションだけみたいだな、多分敵に向かって飛ばせるとかそんなもんなんだろう。


……あれ?待てよ、落ちたアイテムを操れるってことは……もしかして。


「落ちているものはコダチだけではない。【サード・ハンド】!いけ、マキビシマイン!」


だよなぁ!ってだからケツに当てんじゃねーよケツによォ!なんだアンタは、俺のケツになんか恨みでもあんのか!そして連発するな、合わせてシュリケン投げてくんなぁ!


おのれ潤沢なアイテムリソースを元にした物量戦を仕掛けてきやがって、これが持つ者と持たざる者の差だとでも言いたいのか!


前から下から後ろから飛び交ってくる凶器を必死に避けながら、この攻撃に対して考えついた対処法は①敵NPが尽きるまでこのまま避け続ける②被弾覚悟で突っ込む③今回はご縁がありませんでしたということで諦めてすべてを受け入れる、の三つ。


とりあえず③は無しだな、これだけケツを責められて引き下がるなんざペラペラのプライドでもさすがに許せない。アイツのケツにビームマサカリをブチ込むまでは絶対に死なねぇという鉄の意志を俺は持っている。


相手を金欠沼に引き込むために①の持久戦を仕掛けるのもいいけど、こういう策を弄してドヤ顔かましてくるタイプのやつは鼻っ柱をへし折りたくなるってのが人情よ。幸いにも一番危険なマキビシマインのおかわりはないようだし、いっちょ突撃かましますか!


放つニンポーあれば纏い駆けるニンポーあり、ってな。千変万化の我が水遁、とくと御覧じろ!


「ニンポー【カセンジキ・リバーロード】!」


帯が伸ばされるように空中を蛇行し流れる、幅一メートルほどの一本の小川。そしてこれはただの水流じゃない、その名の通り『道』なのさ!


トプンと音を立てて川と同化、そのまま水流の中を猛スピードで移動できるというのがこのニンポーの効果。これそのものに攻撃力も無いし『水流の中にいる』ということはバレているので漫然と使うのはよろしくないニンポーだ。だが!


「クッ!どこだ、どこから出てくる……?」


お互いニンポーも揃ってなければ知識も浅いゲニン同士。であれば、そうそう対処法なんて思い浮かばないもんだ。死角を潰そうとキョロキョロ視点を動かす、その行為こそが死角を増やしていることに気づいていない。


あーそれにしても水の中ってやっぱり落ち着くなぁ、水遁系列のスキルツリーを進めていったらもっと大きくて自由に移動できる水塊を出したりできないかなぁ。巨大プールに引きずり込むニンポーとかあればいいのに。


よし、一瞬のリラックス終了。そんじゃいきますか!


「見えないものを見ようとするとは愚かなりぃ!」


アンタは『見つける』ことに集中してしまった、だから『見つけた後』へのアクションが遅れちまうんだよ!


「しょ、正面から!?ぐおあああ!!」


水音とともに川から飛び出し、勢いそのままに繰り出したマサカリによる唐竹割りが敵の左肩にめり込んだ。さすがはマサカリ、良いダメージだ惚れ惚れしちゃうね。


「のんびり(うめ)いてる暇はあるのか?」


縦に横にとマサカリ連撃が閃く。あちらが引けばこちらは踏み込み、吸いつく様に至近距離を保ちながら暴力の波濤(はとう)となり攻撃の手を緩めない。アイテムを撒き散らす時間も、第三の手を構築する時間も与えるつもりは皆無。


なぜなら俺はニンポーをさっきの二種類しか使えず、手の内を全て見せてしまった。対して敵はまだサード・ハンドしか使っておらず、あれだけバカスカとアイテムをバラ撒いていた以上ニンポーが一種しかないゲニンなり立てとは思えない。


だからここで圧倒するのだ!今、我が友の力を借りて!必殺のぉぉぉぉ!


「喰らえ、フランケンシュタイナー!」


「急にプロレス技ぁ!?ぐぼぁっ!」


ドロップキックのように正面からジャンプして相手の首を足で挟み、そのままバク宙の要領で回転。コンクリの地面に脳天から叩きつけられた敵の頭が素晴らしい音を奏でてくれる。


俺の格闘戦の師匠と言っていいアジサイさんから『それなりのジャンプ力があるなら両手が塞がっていても出せる派手な技』として伝授されたこのフランケンシュタイナー、ニンジャにも通用するとはさすがだぜ。水遁を使いたくてFUMAを選んだけど、あの御仁から受け継いだ技術があれば格闘戦もイケるな。


おっと、突然のプロレス技で呆気にとられたのか起き上がるのが遅いなアンタ。じゃあご厚意に甘えて背後取っちゃうよ?ああ~いいケツしてんねぇ……死ねやオラァ!


「お゛ふっ!?」


フルスイングのビームマサカリが綺麗な円の軌跡を描いてKOGA野郎のケツに突き刺さった。いくらニンジャ・スーツに身を包もうともケツから脳天に走る衝撃は辛かろう、俺もアンタに何回も味わわされたからよくわかるよ。わかるからこそやってんだ。


一発だけで終わると思うな、これはマキビシマインの分!これもマキビシマインの分!


「ちょっ、なんで執拗に尻ばっかりぃ!?」


「胸に……いや、ケツに手を当てて考えるんだな!」


そしてこれは……サード・ハンドで飛んできたマキビシマインの分だぁーーー!!


「お尻は大切にぃぃぃ!!ヤ、ヤラレターッ!!」


渾身の一撃が相手のケツに吸い込まれ、勝負は決した。この戦いから得られた教訓は一つ、ケツの恨みは深い。こんな闘い方したら現実世界なら痔になっちゃうぞ、まったく。


ショートカット・ホルスターは太ももに一つづつ取り付けられていて、シュリケンだのマキビシだのととっさに使いたい消耗品をここにセットすることで、使うたびにホルスターに自動で装填されるようになっています。これは普通のショートカットとは別枠で消耗品限定。大半のプレイヤーはシュリケンを設定しています。


みなさん痔には気をつけてくださいね。私は外と中に計6つの痔が一度にできたことがあり、仕事場の人に「リボルバー・パイルマン」と呼ばれたことがあります(痔、特にイボ痔のことをヘモロイズとかパイルとか言うそうです)。

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[良い点] ホントおもしろ戦闘描写うまいっすね…… というかまーた水に潜ってるよアイツ!! [一言] たまに胡散臭いテレビショッピングで売ってるハニカム構造のジェルクッション。 近くのジャンク品ショッ…
[一言] なるほど「シリアス」じゃなく文字通りの「尻アー♂」なんですねw 尻より腰を狙えばいいみたいなことどこかで読んだような・・・
[一言] >あーそれにしても水の中ってやっぱり落ち着くなぁ、 割と言葉通りに水を得た魚である。 >みなさん痔には気をつけてくださいね。 大丈夫だよ!毎月肛門科で便を柔らかくするお薬を貰ってるから!
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