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GAME8 EX2 正体不明

続けて投稿。このEXかなり書くのが難しいです。主に雰囲気取りとか。

 翌日。今度は使徒が出現する事は無く、無事に学校へと登校する事が出来た。


 水落(みら)が来てないかと思ったが、居なかった。特にすることも無く、他の生徒が近付かない様に、拒絶の雰囲気を意識しながら外を見て時間を潰す。


 結局、水落が来たのはHR(ホームルーム)が始まる五分前だった。相変わらず抜き身の刃の様な雰囲気を纏っている。


 HRの開始を示す鐘が鳴り、席へと着く。同時に担任の康人が億劫そうに教室へ入って来た。先日と違って着ている服はヨレヨレで、見るからに面倒臭そうにしている。


「あー、これから、昨日やったテストを返す。あー、名前を呼ぶから、適当に来てくれ」


 何とも締りの無いテスト返却は順調に進み、生徒の喜ぶ声とおふざけ半分の嘆き声で喧騒となる中、龍谷(りゅうや)の名前が呼ばれた。


 呼ばれてすぐ、康人の前まで来る。


「あー、なんだ。九十六点だ」

「ありがとうございます」


 礼を言いながらプリントを受け取り、席へと戻る。


 『すっげぇ』だとか『カッコイイ......』だとか色々と聞こえるが、気にしているとアレなので、それらを無視してプリントの方を見る。


(二問間違えてる......)

『珍しいな。主殿がこの様な些細なミスを犯すところなど、久しく見ていなかった程だが』

(まぁ、うん。直しておこう......)


 確かめた結果は凡ミスで二問間違えただけだった。その事実に少しショックを受けながらも、しっかりと直し、二つ折りにした後鞄へと入れる。


「あー、神影(みかげ)......ミズオチ? スイラク?」

「先生、ミラだったと思います」

「そうそう。無茶苦茶カッコいいよな」


 水落の名前を覚えていなかったのだろう康人に、最前列の生徒が声を上げる。水落はそれら一切を無視して前へ出ると、康人の前で立ち止まる。


「あー、その......満点だ」


 水落は無言でプリントを受け取ると、席へ戻りながら綺麗にプリントを二つ折りにし、鞄に入れてから席に着いた。


 今更だが、今日の水落はスマホを(いじ)っていない。何かを考えるように外へと視線を飛ばしている。


 周りは水落の事をヒソヒソと話していたが、康人はさっさと仕事を終わらせたいのか、それとも注意する事すら面倒なのかは知らないが、今日の予定を話して、さっさと教室を出て行った。


 HR終了まで後二分程時間があるが、大丈夫なのだろうか。主に康人担任が。


 ざわつき始めた教室の中で、水落は一人音も立てずに立ち上がると、教室から出て行ってしまった。


 龍谷も水落を追いかけようと立ち上がりかけるが、HRが終わった後の休み時間にしようと思い直し、水落の気配を追っておく。


 程なくしてHR終了を示す鐘が鳴った。龍谷は鐘が鳴ると同時に立ち上がり、教室を出る。


 授業間の休み時間は十分であり、水落の気配を追ったところ屋上へ向かった事が分かっていた。十分もあれば屋上から教室へ戻れるだろうという判断だ。


『主殿。少し無用心ではないか? これが誘いであればどうするつもりだ?』

(確信は無いけど、誘いではないと思う。唯単に屋上へ行っただけなんじゃないかって思う)

『気は抜くな』

(勿論)


 少し歩く速度を速めながら屋上へ向かう。階段も少し急ぎ足で上った。


 屋上へと繋がる扉の前へ来て、少し警戒しながら開け放つ。が、視界に入る限りの場所には誰も居なかった。


 屋上へ出てから扉を閉め、少し歩いてみるが、何処にも誰も居なかった。一人かくれんぼ的な状態になっている。尤も、本来の一人かくれんぼは相当危険なので、興味本位で試したりしてはいけないのだが。


(誰も居ない......?)

『......主殿。出て来た場所の上だ』

(ああ、あの場所なんだ。完全に盲点だった)

『恐らく、それが狙いなのだろうな』


 守護神に指摘された場所を見て、納得すると同時に何となく負けた気がした。何に負けたのかは分からないが。


 それは兎も角、本来なら垂直跳びでも跳び越せる程の高さしかない屋上の出入り口の壁を、怪しまれない様に態々パルクールじみた動きで上る。


 果たしてそこには、龍谷の腰程の高さがある石の段差を背凭(せもた)れにして、CGTの様なゲームをしている水落が居た。


 ゲームをしている水落の視線が、龍谷へと向けられる。


「お前は、龍宿(きみすく)龍谷(りゅうや)だな」

「ああ。お前の方は神影(みかげ)水落(みら)で合ってるか?」

「合っている」


 龍谷は口調や態度にも気を付けながら水落と話す。全体的に観察している事には気付かれているかも知れないが、それは些細な問題だ。バレて困るのはもっと別の事だ。


「何の様だ?」

「いや、教室には戻らないのか? そろそろ授業が始まるぞ」


 先ずは他愛無い話をぶつけてみる。が、言葉にしてみて少し不自然だという事に気付いた。時既に遅しだが。


「......お前は一度この学校の校則を見直す事を進める」

「どういう意味だ?」


 水落の平坦な言葉に、本気で意味が解らず首を傾げる。対する水落はゲームから完全に視線を上げ、龍谷へと顔を向けた。


(......今まで気付かなかった)

『端正な顔立ちをしているな。上の中と言った所か。教室での拒絶の雰囲気から、自然と顔を認識する事を避けていたのだろうな』

(言われてみると、だね。目を合わせた事は覚えてるけど、顔の造りとか覚えてない)


 鋭い目は綺麗な二重で睫毛が長く、髪は男にしては長く綺麗な黒。肌も白く、日に焼けた様子がない。男にしているのが勿体ない程だ。実際どっちにもなれるが。


 そんな事は露程も知らない龍谷を見ながら、水落はこの学校の校則の説明を始めた。


「この学校の校則上、成績さえよければ授業には出なくてもいい。登校しない事は禁止だそうだが、週に二回の無断欠席は許すそうだ。学力至上主義と言った所か。昨日のテストも、オレ達の学力を測る為の行為だ。あのテストの点数で授業欠席や無断欠席を黙認するかどうかを決める。その点、オレは満点でお前は九十六点。例え授業が始まっても教師からとやかく言われることは無い。尤も、心証は悪くなるだろうが」


 水落の言葉を聞いて思い出した。始業式の時に聞いている事だ。唯、その時はこれほど分かり易くは無かったのだが。


 それきりCGTに視線を落とした水落を見て、完全に話題が無くなった事に気付いた。教室の様に拒絶の雰囲気は無いが、代わりに何を言っても模範的な回答をされそうだ。人工知能の様だ。


(どうしよう)

『直接使徒の事を聞いてはどうだ? 間違っても主殿が心配されるだけだろうからな』

(何で? 何で心配されるの!?)

『ククク。世間で言う中二病と誤解されるだけだからな』

(それは違うし! 嫌だよそんな誤解されるの!)


 内側で守護神に揶揄(からか)われている時、どうやら暗い表情をしていた様で、水落が呆れた様な声で言った。


「何かあるなら聞いてやるぞ。世間話でもいいが。取り敢えずそこに座ればいい。気を張り詰め過ぎるといざという時に死ぬぞ」


 気を張り詰め過ぎるとの(くだり)は冗談の様だが、水落の声はかなり平坦なので、冗談なのか本気なのか分からない。結果、勘違いというモノを引き起こす。


(気付かれてるっ)

『バレているのか? 主殿が『邪闇(やみ)の使徒』と戦っている事が。いやだが、オーラは感じ取れない』

(オーラを完璧に隠してるとか?)

『オーラを持つ者の後ろには等しく神が付いている。だがこの少年からは神の気配は感じない』

(じゃあなんで......)

『......すまぬ。ワレには分からぬ。だが、兎に角乗ってみるしか無かろう。座ってはどうだ、主殿』

(......分かった)


 当たらずとも遠からずな予想を立てながら、水落から少し離れて腰を下ろす。少し警戒しながら水落を見るが、変わらずCGTをやっているだけだ。


 暫し座っていると、眠気に襲われ、船を漕いでいた。始業の鐘で眠りそうになっていた事に気が付いた。


「眠りたければ寝るといい。此処なら誰にも邪魔はされない」

「今は朝だぞ? 流石にこの時間に眠りはしないさ」

「人にとって睡眠は大事だぞ。睡眠不足など頭が回らなくなるからな。思考が疎かになって困るのもお前だぞ」


 正論なのだが、龍谷が眠れないのはそう言う理由ではなく、使徒が現れたらすぐに倒しに行く為なのだ。


(......眠ったら、ダメだって......)

『主殿。眠ってはどうだ。あの少年の言う通り、休息を取る事もまた大事な事だぞ』

(......でも......)

『安心しろ。主殿が強くなったお陰で、ワレも僅かな時間ながら顕現できるようにはなっている』

(......じゃあ、お休み......)


 守護神にまで諭されては今の龍谷に抵抗できる筈も無く、すんなりと眠りに落ちた。


 水落はCGTから視線を上げると、龍谷がしっかりと寝ている事を確認し、口を開いた。


「おい、龍宿(きみすく)に憑いている奴。そいつを寝かしつけておけよ。直ぐに戻るから」

『っ! ワレが視えているのか? おい! 待て!』


 CGTをポケットに入れた水落は、それだけ言って屋上から飛び降りて行った。気配を追う事は出来ない。


『何者なのだ、あやつ。使徒を感知したと言うのか? ワレよりも早く......?』


 水落に言われた通り龍谷が起きない様に気を付けながら、水落について思考を巡らせる。


 だが、結局何も思い浮かばなかった。





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