GAME3 実感
今、水落の持つ《CR》の画面には二体のキャラクター――いや、この場合はアバターと言った方が正しいだろうか――が表示されていた。
特典によって取得したSKILL・《性別転換》によってWOMANのアバターまで作成しなければならなかったのは幸か不幸か。
視界に入る窓からは茜色が見える事から、既に夕方である。どれだけ時間を使ったのかは、既に時間感覚が麻痺していた水落は知らないが、それでも胸の内は達成感で満たされており、その目は強烈な光を灯らせている。
先ず画面左側に映るのはMANのアバターだ。黒髪金眼に百八十センチ程の身長、吊り上がった鋭い目つきは鷹が如く。白く細身に見える体は初期装備に包まれている。
そして左側に映るのはWOMANのアバター。毛先が紫色の黒髪にスノーブルーの眼、百七十センチ程の身長、MANの方と同じ目つきにスレンダーな白い体は、こちらもまた初期装備に包まれている。
完全に水落の憧れとか、卒業しきれていない厨二心とか色々入ってしまっているが、それはそれ。細かい容姿設定が出来た為、他にもロリとかショタとかジジイとかババアとか、ブスとかデブとか色々と造ることが出来そうだった。
余談だが、その設定の中に『種族』というものがあったが、それは灰色になり選択できなかった。
『NEXT』を選択すると画面が変わり、ステータスと二体のアバターが表示された。どうやら最終確認序でにステータスのSTP・SKPを割り振ることが出来る様だ。
『NAME エニグマ MAN ∨ WOMAN
LEVEL:1
STP:230
体力:20
魔力:7
筋力:10
俊敏:20
耐久:30
賢慮:20
器用:1
魅力:1
運気:100
SKP:230
SKILL
《性別転換》《並列発動》
〈体術lv10〉〈格闘術lv10〉〈剣術lv10〉〈索敵lv7〉〈忍足lv1〉〈チャージlv10〉
〈スマッシュlv10〉〈ストライクlv10〉
MAGIC
〈ファイアボール〉〈ウィンドボール〉〈ウォーターボール〉〈アースボール〉〈キュア〉
〈サンダーボール〉〈アイスボール〉
ARMOR
〈革の籠手〉〈革の脛当〉〈革の胸甲〉〈銅の長剣〉』
ポイントがとんでもない事になっている。これだけ見るとチュートリアルでLEVELを23まで上げた場合と一緒である。
ポイントを振り分けること自体は後からでも可能な為、再び『NEXT』を選択する。
『それでは、ゲームを開始します。宜しいですか? YES/NO』
コマンドが表示され、迷いなくYESを選択する。
画面が、BGMが変わり、チュートリアルと同じ様に『トイルス』の宿屋へと変わる。その宿屋の中心で佇むMANのアバターがあり、操作出来るようになった。
メニューを開いてセーブする。ゲーム自体は充電が切れる事は無いようなのでスリープモードにする。そのままベッドの上に置き、伸びをしながら外を見る。
「ぁ......夕方かぁ。意外と時間かけてたんだな」
のんびりと呟いて、ベッドから立ち上がる。徐に手を持ち上げ二三度開閉する。
別段力が強くなった感覚は無い為、手っ取り早く確認する為にSKILLを使う。と言ってももしもの場合を考え、使用するSKILLは〈索敵〉だ。別に《性別転換》でもいいのだが、生憎と女物の服は持っていない為、これは後回しにする。
「確か念じるだけで良かった筈」
言いながら『〈索敵〉』と念じると頭の裏側にマップが展開され、半径二百八十メートルの範囲内に居る生物が表示された。
「いや、虫とか表示しなくていいから。あ、出来るか?」
マップの殆どを埋め尽くす勢いで虫が表示されたため、設定を変更できるかと思い念じてみるとアッサリと変更できた。変更後に表示されたのは人間と獣と魚。まあ、唯単に虫を非表示にしただけなのだが。
「SKILLは使用可能っと。じゃあ、力の方はどうだ? 試してみるか」
下手に何かを壊しても嫌なので、出来る限り慎重に行動しながらリビングまで行く。そのまま冷蔵庫を開け、何故か中に入っていた空っぽのスチール缶を取り出した。
「俺、珈琲飲んだか? っていうか飲んだなら捨てろよ。俺」
自分の事に呆れながら、先ずはと思いスチール缶を握る右手に軽く力を籠める。
――バキッ!
「は?」
軽く力を込めただけで握り潰されてしまったブラックコーヒーのスチール缶を見て、間抜けな声が漏れる。無残にも潰れてしまった缶の蓋と底の両方から僅かに力を籠める。
――メシャッ!
独特な音を響かせながら円盤の様な形になり、更に真っ二つに折り曲げる事にも成功した。当然の事ながら何度か折り曲げていると、バキッ! と音を響かせて割れてしまった。
「......うん。うん。よくわかった。俺の握力は軽く八十キロを超えている......」
呆然としたままネタに走ってしまう。こうでもしないと叫び出しそうだった。主に嬉しすぎて。歓天喜地や欣喜雀躍となるのはゲーム内だけにしておきたい。まあ、先程は有頂天外となっていたが。
それは兎も角、頭を振って整理する。ゲーム内アイテムの召喚は行っていないが、出来ると確信している。SKILLが使えた事からMAGICも使えるだろうし、しっかりとステータスが影響している事も確認した。
他に確認すべき事は、全力全開の際の力だが、今はそれを確かめる術も無ければ場所もない。それに、身体の制御が不安である。力加減を少しでもミスれば物(又は者)を壊しかねない。
「あ、そういうSKILLあるか? 探してみるか」
思い立ったが吉日。慎重に、しかし急いで部屋へと向かい《CR》を点ける。直ぐにメニューを開いてSKILLを確認する。
「見つけた」
〈制御〉のSKILLを取り、一気にlv10まで上げる。序でに〈索敵〉と〈忍足〉のlvも10まで上げておく。SKPが208まで減ったが、大して気にならない。
流れでセーブし、再びスリープモードにしてベッドの上に置く。瞬間、一瞬体に違和感が走り、一気に馴染んでいく不思議な感覚を体験した。
「......凄いな。アクティブとパッシブに分かれているのは何となく想像ついてたけど、こんなに違うのか。〈制御〉。便利なSKILLだ。自分の体に関しては殆ど自由自在じゃないか」
掌を眺めながら関心を微塵も隠さずに言う。身長や体の毛を伸縮出来ないだけで、その他の事は出来ると感覚どころか頭で理解している。
やろうと思えば並列思考も完全記憶も瞬間記憶も可能であり、逆に出来ない事の方が少ない。内臓を動かしたり身長や体毛の伸縮が出来ない事が良い例だ。
(ゲームをする為にどうにかこうにか出来る様になった三時間睡眠をより短くできるな)
口には出さなかったが相当凄い事を考えている水落。一日三時間の睡眠で事足りるのが水落なのだが、象か何かだろうか。
再び光が灯った世界を生気溢れる輝いた眼で見ながら、取り敢えず晩飯とする為に再びリビングへ行く。
電気を点け、冷蔵庫の中から食材を取り出しながら笑う。
明日から学校であるのだが、それすらも楽しみの一つとなる程今の水落はテンションが上がっていた。
「さて、飯を食ったら《CR》の続きだ」
切り方が可笑しいですが、終わらせ方が分からなかったのでこうなりました。




