GAME24 更に『分承者』
戦と虎神との顔合わせから数日が経った。
戦はこの数日、しつこい程に構ってきた。下心が普通に見えていた絡みだった為、すべて流した。面倒極まりない。
ただ純粋に強くなりたいという心持ちだったらまだ相手をする事も考えたのだが、何か違うモノがあったのだ。それに、龍谷に比べてまだ子供であり、虎神が手綱を握っているような状態だ。
出来る事なら、挫折を一度味わって欲しい。そうすれば変わるはずだ。
と、戦について考察していると、目的の場所に着いた。
現在、水落はとあるビルの地下に居た。曜日は日曜ではあるのだが、そのビルの内部は閑散としている。
とは言え、だからこのビルが寂れているのかというと、そうではない。
実はこのビル、現在は入場制限が掛けられている。
別に事件があった。事故が発生した。等といった事は一切無く、このビルの地下、水落の居る階より更に下の階で、とある大会が開かれる為だ。
大会で行われるのは、eスポーツだ。
eスポーツ。正式名称をエレクトロニック・スポーツというのだが、簡単に言えばゲームの大会である。手法は様々だが、今回の大会ではLAN上でのプレイだ。
それだけでは無く、今回の大会は公式ではあれど一般に公開されているモノでは無く、参加するだけでも相当の苦労を必要とする。
更に今回の大会では、基本的に大会に出てこないプロゲーマー等も多数参加している。
言ってしまえば『裏大会』である今回の大会は、賞金は即時払いとなり、現金か電子マネーかを選ぶ事も出来る。
参加する時はナンバーである為、プレイヤー名も本名も明かす必要は一切無い。
参加するのは自由だが、優勝出来るかどうかというのは本人次第というのが基本スタンスらしい。
これで成り立っているのは、一重にプレイヤー達の間に暗黙の了解が存在し、もし少しでもプレイヤー間の違反行為をした者が居れば、一瞬で本人特定が為される為である。
プライバシーもクソも無いが、プロゲーマーの中にはハッカーやクラッカーの様な者達も多い為、そんな状態になっているのだ。
因みに、上記の様なプレイヤーが多いのは裏大会だからであって、表大会では主催者側が対処する。というか、裏大会の方が悪質である為、正直違反行為をする者は唯の阿呆である。まだ子供の方が賢いだろう。
他にも様々な違いはあるが、今は置いておく。
水落は受付からナンバーの書かれたカードを受け取り、この受付のある階まで降りて来たエレベーターとは別の、受付の奥にあるエレベーターを使って更に地下へ。
滑らかに動くエレベーターは直ぐに目的の階に到着し、会場を水落へと見せる。
会場の構造は単純であり、円形の大きなフロアが一つ。そのフロアを中心に、幾つもの部屋へと繋がる廊下がある。
曰く、用意されている部屋は個室であり、合計四百の部屋が用意されているらしい。
部屋数が四百であるのは、現在水落のいる階に二百部屋。フロアの中央に存在する階段から行ける下の階に二百部屋と分けているからだそうだ。
因みに、水落のナンバーは『0290』だ。四桁の理由としては、同大会は別の地域で開かれる事も多くあり、その際に会場が広いと千人を超えるから、らしい。
表大会が万を超える事を鑑みると少ないが、裏大会なのだ。そもそも千人も集まる時点でかなりのものだ。
一応観戦部屋も用意されてはいる様だ。どうやら観戦目的でこの大会へ来る者もいるらしい。
とはいっても、この大会では大会後を含めて、プレイヤーを企業等が営業目的で勧誘する事は禁止されているので、純粋な娯楽だ。
正直、そんじょそこらのプレイ動画を見るより、この場所で観戦している方が楽しいという意見を持つ者も居る。当然、ここに来られる者だが。
(あいつは......)
と、そこで部屋へと向かおうとしていた水落の意識に、一人の少女が引っ掛かった。
身長は百六十程。スポーツ系のスレンダーな体格で、肌は健康的に日に焼けている。髪は黒混じりの茶髪で、肩口辺りまでの長さ。眼の色は茶色。
どこか幼さを感じさせる顔は全体的に整っており、パッチリと開かれた目は吊り上がり気味で、意志の強さを覗かせる強い光を湛えている。
年の頃は水落より下だろうと予測できる。
が、それだけなら水落の意識に引っ掛かりはしない。
その少女が似ていたのだ。誰に、と問われると、天寅戦と答えるしかない。
顔に似ている部分があるが、それだけでは確定させるには至らない。匂い(この場合で言う匂いとは、体臭では無い)も《超獣化》を使った時に覚えているので、それで判断する事が出来る。
しかし、この場所で《超獣化》は使えず、水落は獣並の嗅覚がある訳では無い。
勘も戦の血縁者と囁いては居るが、それ以上に確信させるモノが水落の眼には映っている。
発動させている〈霊視〉でその少女を視ると、その全身に、黄金色の靄を纏っているのが分かる。
あの時の戦とは違い、虎の耳や尾は視えない為虎神が憑依している訳では無いだろう。これはつまり、あの少女が虎神の『分承者』である事に他ならない。
水落が見ていた事に気付いたのか、その少女が振り返り、目が合った。
疑念を浮かべた少女から、一拍を置いて視線を外して、部屋へと向かう。
今、水落の方からどうこうするという思いは無い。
――――――――――
時刻は夕暮れ。大会が終了し、水落はビルから出て来ていた。
裏大会は一日で終わる為、もう既に終了している。
優勝者は当然の事ながら水落だ。裏大会は主催者側が賞金を出す為、それなりの賞金が貰える。表大会とは違うのだ。
因みに、賞金は現金で受け取った。そのまま奇術師の様に懐へ仕舞い込んだ為、周りからは何も持っていない様に見える。
「あの、少しいいですか?」
ヴィテスを喚び出して帰ろうと、人気の無い路地裏へと入ろうとした時、背後から声を掛けられた。
街中で知らない者に声を掛けられてもスルーするのが普通だが、誰が話しかけているのか知っている水落は振り返る。
そこにいたのは、案の定戦の妹(未だ推定。しかしほぼ確信している)だった。
水落は外向けの仮面を被りながら、その少女へ返事代わりの問いを返す。
「何か用か」
「失礼ですが、神影水落さん......ですか?」
質問に質問で返された上、本人確認を行われた。
何故名前を知っているのかという疑問は湧いて来ないが、それは水落だからであり、普通に考えると不審者以外の何者でもない。
だが、だからといって無言を返すことも否定することもない。
「そうだが、オマエは」
「あ、あたしは天寅戦の妹で、天寅叢華と言います」
叢華と言うらしい戦の妹は、ペコリと頭を下げた。
「オレの事も多少知っているようだな。立ち話も何だ。オマエさえ良ければどこか店に入ろうか」
「い、いえっ。そんな、聞かれて困る様な話でも無くてっ、その、時間もとらないので、大丈夫ですっ」
目を合わせると、何やら焦り始めた。
が、叢華が焦った様を見せる諸々の理由はスルーしておく。
「どちらにしろ、人の少ない場所に移動した方が良いだろう。ここでは少々目立つ」
「えっ? は、はいっ」
周りの目が集まり始めている事を教えると、少々恥ずかしそうにしながら、歩き始めた水落の後ろについて歩く。
「......」
叢華の様子に、僅かな懐かしさと、やはり違うという二つの感慨を戴き――
――やはり、未だに囚われているのかと、苦笑が浮かびそうになり、それを抑え、叢華の『頼み』を聞く為の場所へ歩を進めた。
景品表示法はあの『カジノ法』みたいな感じです(内容知らないけど)。
いやー、流石に政府も幾つもの大手企業に迫られたら、頷くしかありませんよね。
後、大会の内容を省いたのは書けなかった......のでは無く、趣旨が変わると思ったからです。
例え内容が薄くなったとしても、私は書きません。はい。書けません。




