GAME22 新しい『従者』
描き方、変わってませんよね......?
あれから三つのクエストを終わらせた。その頃には部屋の窓から覗く空は既に暗い。
「............」
外を眺めて、ふと思い出した。
投げやりになりながらも《UT》を始めてプレイした時、こっちへ戻った時にも同じような事があった。
あの時も、プレイし始めたのは前日の夕方。プレイし終わったのは翌日の夜だった。
丸一日ゲームで潰すくらい普通なのだが、何故思い出したのだろうか。
それは兎も角、頭を切り替えて部屋を出る。リビングへ出て電気を点けた。
そこで、念じる。すると、あたかも最初から存在していたかの様に五人の少女と一人の男が現れた。
まず一人目が『歌姫』メレ・ソニリート。青系統の色を中心としたアイドル風の衣装を身に纏う、青髪のツインテールに水色の目を持つ少女。
二人目が『凶者』ヴィラ・ゼネトテラ。赤と金を主とした身軽な服に、一見して分かる引き締められた肉体。紅のメッシュが入った金髪と、燃える炎の様な赤い目を持つ男。
三人目が『極星騎士』フィーニス・エルトワル。白髪をリボンで結い、白銀の軽鎧と白銀の鞘に収まった剣を装備した蒼い目を持つ少女。
四人目と五人目は、二人で一人の存在。片や、『煌陽天龍』リフィル。金の髪に金の目を持った少女。片や、『煌陰天龍』シャル。リフィルと同じ顔つきであり、銀の髪と銀の目を持つ少女。同じ白い装束を身に纏っている。
最後に、六人目。『魔王の娘』......ではなく、『魔導姫』リセラ・N・ヴァルガルン。赤と黒を主とした配色に、嫌味にならない程度の程良い装飾のなされたローブに、クリムゾンカラーの髪と紫の目、そして黒い魔導書を持った少女。
因みに、『魔王の娘』とは出生であり、二つ名ではないので(以下略)。
「まずは、メレ以外は初めまして。と言ったところか?」
それぞれの姿を目に収め、恐らくメレ同様に此方の事を知っているだろうと当たりを付け、しかし自分は知らない、と意図を込めて言う。
「んー、エニグ、じゃなかった。えっと、水落さんはみんなの事知らなんだよね。じゃあみんなで自己紹介しよっか!」
元気良くメレが宣言し、しかし『異議あり!』とばかりの勢い(当然の事ながら比喩)でヴィラがメレを向き、言う。
「なんでオマエが仕切ってんだよ。そーいうのはエニグマがやるべきじゃねぇのか?」
「えー、わたしが一番最初にエニ、水落さんの従者になったんだから、ちょっとくらい仕切ってみてもいいじゃん。こういう事も一回くらいはやってみたかったんだもん」
「じゃんでももんでもねぇんだよ。つか、誰がいつエニグマの従者になろうが関係ねぇだろーが。やってみたかったか何だか知らねぇが、そーいうのは別でやれよ」
何かよく分からない口論を始めたメレとヴィラを、仲は良さそうだと思いながら見ていると、フィーニス、リフィル、シャル、リセラの四名が水落の方へ近付いて来た。
「先の問いより、貴方は私達の事を知らないと仮定して言おう。初めまして。私はリセラ・ネア・ヴァルガルン。『魔導姫』の二つ名を持っている」
知的、という印象を与えるリセラは、後ろで言い争う二人を気に留める事無く名乗り、次は貴女だと言わんばかりにフィーニスへ顔を向けた。
「私は『極星騎士』フィーニス・エルトワルと申します」
スッと頭を下げたフィーニスを見た後、リセラは似通った、というか完全に同一としか思えない顔立ちをした二人を見る。
「「水落さんは初めまして?」」
「わたしは『煌陽天龍』リフィル!」
「わたしは『煌陰天龍』シャル!」
「「よろしく!」」
共通の文言は二人で言うらしく、互いに違う言葉を言っていても直後に寸分のズレも無く合わせられる辺り、その息の合い様は以心伝心が如く。
それぞれで違う手を挙げてニコニコとしているその動作すら、まるで合わせ鏡。
「後は......」
リフィルとシャルの名乗りを確認した後、リセラはメレとヴィラの方を向く。良く分からない口論はタイミング良く終わった様で、此方に気付いた二人はバツの悪そうな顔をした。
「悪ぃ。オレは『凶者』、ヴィラ・ゼネトテラ。よろしくな」
名乗り上げ、不敵な笑みを見せる。と、そこでメレがポツリと呟いた。
「わたしも自己紹介した方が良いのかな......」
「さて、それぞれの自己紹介が終わったけど、次は何をしようか」
「あれ? わたしはしなくていいの?」
メレの事を思いっ切りスルーして話を進めようとするリセラに、寂しそうな顔をするメレ。そんなメレを更にスルーして、リセラは水落へと顔を向ける。
「聞きたい事もあるしな。まずは飯を食おう」
水落までもメレの事をスルーして調理の準備を始めた。その様を見て、『手伝おう』と言ったリセラと、『手伝いましょう』と装備を変えたフィーニスの後ろで、ヴィラは席に座り、メレは何故かリフィルとシャルに慰められていた。
――――――――――
食事を食べ終えた頃には夜中を優に過ぎた時間となっていた。
食後の片付けを終え、水落以下六人は街の外れにある山まで来ていた。何をしているのかと突っ込みが入りそうではあるが、この場には突っ込む者も、又突っ込まれたところで気にする様な者もいない。
今現在水落一行の居る山は街の外れ、とは言ったものの、街の中心部からはかなり離れており、山の三分の一は一応別の街に区分けされる。が、実際二千メートル近くあるこの山は、どうやったのかは不明だが個人所有の山である。
誰の所有かは不明だが、標高二千メートル近くはあるこの山を個人所有している時点で只者ではないだろう。
というかそもそもの話しだが、何故この山は国有になっていないかは不要として、水落はどうやってこの情報を得たのか。水落は知っていてこの山へ来ている為、情報の出どころが気に掛かる。
まあどちらにしろ、国有だろうが個人所有だろうが山へ入る事自体は容易であり、その点を鑑みれば情報の出どころなど些末な事である。不法侵入も何もバレなきゃ犯罪じゃないのだ。
では何故この場所に来ているのかと言うと、リセラ曰く人気のない場所へ行き話がしたいとの事だった為、殆ど人が立ち入らず、又警戒のしやすい開けた場所があるこの山へと赴いたのだ。
因みに、ここには水落一人で来た後に他六人を召喚している。
「貴方は確か、明日は学校があるのだったか。だとすれば、簡潔に要点だけ纏めて話そう」
リセラはそう言って話を切り出した。しかし、その後ろではリフィルとシャルとメレが走り回っているのだが。真面目な話をしようとしているにも拘らず、随分と楽しそうだ。
リフィルとシャルが逃げ、メレが追いかけている、所謂追い掛けっこや鬼ごっこ的な事をしているようだが、敢えて突っ込む事も無い。水落自身もそこまで気にしていない為、特に何も言わず話の続きを意識する。
「とは言っても、私が話すとどうしても長くなる。しかしそれは不本意だ。と言う事で、貴方が聞きたい事を質問し、私達が返答する形式をとろう」
水落個人としてはその方法を取ったところで長くなりそうだと思うが、まあリセラが一から十まで説明するより時間は掛からないだろうと、聞きたい事を頭の中で整理しつつ口を開く。
「そうだな。まず聞いておきたい。前にメレに聞いた時は答えられないと言っていた。何でも『今バレたら危ない』からと。だが今は聞けば答えると言う。何故だ? 感付かれたのか?」
口調がキツくなったが、意図しての事ではない。元々優しい話し方というモノができない上、現在は真面目な話をしている最中。心構えや意識を変えると自然とこうなるだけなのだ。
その辺りはリセラ達も承知している様で、特に気にした様子は無い。
「......やべぇ。この雰囲気を直に味わったせいで疼いてきやがった」
「ヴィラ殿、場を弁えて下さい。この場所で暴れては水落殿の迷惑になります」
「わぁーってるよ」
............特に気にした様子は無い。
因みに、この面々には水落と呼ぶように頼んである為、メレでも無ければ『エニグマ』とは呼ばないだろう。
「感付かれた、というのも間違いじゃない。現に、少数ではあるけれど探りを入れて来る者も居る。教えられる様になったのはこの件に加え、私達、『従者』の人数が増えたからだ。メレだけの場合だともしもの場合対応できない可能性があってね」
「そういう事か。つまり俺を守り切れないと言う事だな? 神と聞くとどっかの守護神を思い出すからな。認識が甘くなっていたのかもしれない」
実際《CR》及び《VR》を実例として知っているだけあり、水落にとって神は逆立ちしても届かない場所に居る存在だったのだ。
それが今では日常に絡んで来る。認識が甘くなっていても仕方ない......と言えなくもない。言い訳でしかないが。
「次だ。お前等は何なんだ? 俺の認識ではあのゲーム、《CRAFTRAPTOR》のキャラはお前等をゲームのキャラとしてプログラムしたモノ、あくまで『意思なき存在』だと思っている。だがお前等には意思も心も存在している。《UTOPIATALE》のNPCとも似ても似つかない」
では、お前達は何だ? と目で問いかける。あのゲームの中が別の世界とか言うなら分からないでもないが、その場合『従者』以外のキャラは定型文しかない為、辻褄が合わない。
この疑問に答えたのは、フィーニスだった。
「私たちは別の世界の存在です。水落殿に《CR》を渡した神より、水落殿をお守りする様に仰せつかっています。水落殿を守る為に神自ら私たちを探し出し、水落殿がどういう存在であるのかを教えられました。そして、守ってくれと頭を下げられ、私たち『従者』はその頼みを了承した者です」
「あぁ、補足しとくとだな。オレらは自分の意思で『従者』になったんだぜ。後数人くれぇ『従者』の奴が居るが、そいつら含めて神に無理やりやらされてるわけじゃねぇ。だからオマエが気に病む事はねぇ。全員、元居た世界での全てを捨ててもいいってくれぇオマエに――ッ!」
話していたヴィラは、後ろから突然『えいっ!』っといった様子で飛びついたリフィルとシャルに口を塞がれ、止められる。
「「それは言わないようにって言われてたよー? 言うならヴィラだけの時にしてね!」」
元気にそう言った二人は、しかし尚も口を塞いだままだ。後ろでは二人と一緒に追いかけっこしていたメレが、なんとも言えない表情で立っている。
「――――ッオマエら! いきなり何しやがる!」
「「ヴィラが言ったらダメな事言っちゃいそうだったから? 口を塞いでた!」」
「塞いでたじゃねぇんだよ! 止めたんなら直ぐに放しやがれ!」
「「ヴィラが怒ったー? 逃げろ逃げろー!」」
「待ちやがれぇ!」
『あはは! あはは!』と実に楽しそうに、背中に龍の翼を出現させて三次元機動で逃げ回る二人。ヴィラは笑みを浮かべながらも『待ちやがれぇー!』と空中を蹴り、同じく三次元機動で追いかけまわす。やってることは兎も角、仲はかなり良い様だ。
リフィルとシャルがヴィラと遊び始めて手持ち無沙汰になったのか、入れ替わりでメレが来た。
ヴィラ達三人を見ていた水落は、メレが来た事で若干遅くなっていた思考を再び回転させる。
「......まあ、お前等の事は大体分かった。というよりそもそも、《CR》に関して最初に聞くべきだったな」
言いながら、懐から《CR》を取り出す。
「これは一体何なんだ?」
「......それについて話すとなるとかなりの時間が必要になる。それでも話そうか?」
そこに並々ならぬ『何か』を感じ取り、ゆっくりと首を横に振って、《CR》を収める。
「そろそろ時間も厳しい。これで最後だ。ステータス限界値は、どうすれば上がる」
「今ならそれぞれ150までなら上がるはずだよ。もちろん運気は除いてだけど」
「このステータスがどういったモノなのかは、またいずれ」
答えではないが、つまりはそういう事なのだろう。
「ああ、そうだ。貴方の《性別転換》だけど、二度以上使った事はあるのか?」
水落が『帰るか』と言い出す前に、リセラが言ってきた。
「いや、一度だけだ。それがどうかしたのか?」
「使用してくれないか?」
「......まあいいが」
言うと同時に《性別転換》を発動させる。
すると、前の様に視点が低く............は、ならなかった。体型の問題で服が少し緩いが、それだけである。いや、胸の方もこちらの方が大きい。現状ではどうでもいい事ではあるが。
「どういう事だ、姿が違う......」
ついでに声も違う。更にはメレが何処からか取り出した手鏡を見ると、顔の造りすら違っていた。
前とは違い、水落自身と似た様な鋭い目に紺色の瞳が収まっており、顔立ちはクール系。白い肌に色素の薄い唇と、白寄りの青色をした長い髪が儚さを際立てている。
「一度目はどんな姿だった?」
「煌空、妹に似た姿だった。背も今より低かった上、髪や目の色は元より、顔の造りそのものが違った」
リセラは水落の言葉を聞いて、考えるように俯いた。けれども直ぐに顔を上げ、水落へと聞く。
「やはり貴方は妹の......神影煌空に対して、思う所があるのか?」
水落はリセラの目を見る。心の奥底まで見透かそうと覗き込む。
そして一度目を閉じ、そして見開き、リセラ以外の者の目も同じように覗き込む。
フィーニスとメレは当然の事ながら、ヴィラ、リフィル、シャルも水落が《性別転換》を発動した時には戻って来ており、今は皆と揃って真摯に水落の目を見つめ返している。
そしてふと、水落は気付く。
「......そうか、お前等は......」
思わず呟いた台詞は、しかし水落の口の中で留められた。
「煌空については、既に割り切っている。だが、俺がした唯一の後悔として、また戒めとしてある。今更みっともなく縋り付くことは無い」
その目に強烈なまでの光を宿し、声に僅かに熱の籠った水落を見て、リセラ達はしっかりと頷く。
その様を見た水落は再び《性別転換》を発動させ、思考を切り替える。
「さて、そろそろ本当に時間が無い。空も白み始めているしな」
「そうだね。ではまた」
「いつでもお呼びください」
「またね~!」
「じゃあな」
「「ばいばーい!」」
水落は笑みを浮かべながら、『送還』と念じる。
そのままヴィテスを呼び出し、急いで家へと向かった。
更新が遅いのには色々と訳がありまして......!!(大嘘)
いえ、ゴホン。それよりも水落の設定についてですが(焦)。
大きい所から細かい所までしっかりと決めてはいるのですが、後々に矛盾点が出てくる可能性が高いです。なるべく気を付けますが、そこはご理解とご了承よろしくお願いしたく............もし見つけても優しくスルーして頂ければとっ。
..................激遅更新のくせして何をと言われそうなので、この辺りにしておきます。
あ、ここは開き直りますが、これからも激遅更新です。はい。




