GAME21 クエスト『強者を求める凶者』
《CR》内の話です。何となくこうやって書いてみたかったんです。
アイテムを集め終えた現在。装備の変更や強化も済み、後は『クエスト』を受けるのみとなった。
『クエスト』を受ける為に街の中央にある『ギルド』へ向かう。
この『ギルド』だが、他のMMORPGにもあるシステムと同じようなものである。『クエスト』の受注やBOXでの持ち物整理、食事にある程度のアイテムの売買。
どこぞの狩りゲーなら大抵の者が知っているだろう。それをイメージすると分かり易いかもしれない。
兎も角。
ギルド内で『クエスト』を受け、移動する。
受けたクエストは『強者を求める凶者』。
このクエストは、と言うより従者関係のクエストは特定の場所へ行き、イベントを発生させなければならない。今回の場合は『闘争都市 ストライル』の闘技場で行われる大会に出て、決勝戦まで行かなければならない。
現在中央都市からは各都市へ転移できるので、それを使って移動し、闘争都市の闘技場で受付、からのイベントスタート。
闘技場の外観はローマのコロッセオが壊れてない状態に近い。内部は選手控室に質の低いアイテム販売所、観客席があり、一応賭博も出来る。舞台はかなりの広さを誇り、例えSKILL《龍化》を使っても存分に動き回る事のできる広さがある。
因みに、《龍化》した場合の龍は最大で全長三十メートルだ。《竜化》の最大は十五メートルなので、単純に二倍の体格差が生まれる。
この闘技場で行われる大会には様々な種族が出ており、場合によってはかなり強い者も居るのだが、特筆すべき事無くエニグマは決勝戦まで来た。
しいて言うならば、エニグマは一切のダメージを受けず、アイテムの使用はおろかSKILLやMAGICすら使っていない(常時発動型SKILLを除く)。
いよいよ決勝戦開始前となり、エニグマは舞台に出て来る。その反対側からは対戦相手が出て来て、二人は舞台の中央で五メートル程の間を開け対峙する。
筈だった。
対戦相手は出てこない。そのままエニグマは舞台の中央まで歩を進める。
エニグマが舞台の中央で足を止めるのと同時、その対面に上空から影が降って来た。その影が着地するのと同時に砂埃が巻き起こり、視界を塞ぐ。
ゆっくりと砂埃は散っていく。エニグマの対面、本来なら対戦相手が立っている筈だった場所には一人の男が立っていた。
見た目は人間の若い男。身長は百八十後半程。実用的な引き締まった筋肉に身を包み、紅いメッシュの入った金髪を無造作に流し、肉食獣を彷彿とさせる鋭い視線をエニグマへと向けながら不敵な笑みを浮かべている。
「さっきのヤツは張り合いが無かったからなぁ。テメエは早々に潰れてくれるなよ?」
腕を組み、仁王立ちしたまま宣言する。それを合図に、戦闘が始まった。
先ず、エニグマはバックステップで距離を取った。相手の動きを見る為だ。しかし、男はそれを許さなかった。
一瞬で距離を詰めると、拳を突き出す。エニグマは様子見を兼ねて、防御した。
ダメージは、二回分の打撃プラス衝撃だった。ガードしてない状態で一撃を受けていたならば、一気にHPが削られただろう。ガードを貫通する衝撃も馬鹿には出来ないダメージだ。
そのままコンボを繋げようと、更に拳打を繰り出してくる。それを男の背後に回り込む様に動いて避け、十三連撃。全てクリティカルである。
しかし、僅かなコンボの隙間を縫って男は身を引き、即座に攻勢へ切り返す。が、エニグマは連続のバックステップで距離を離し、MAGICを打ち込む。当然の事ながらクリティカルヒット。
火、水、土、風、氷、雷、光、闇と、各種属性をブッ放す。複合属性のMAGIC、〈マッドバレット〉等の事だが、それらは控えた。
咄嗟にガードしていた男は、ガードしたままMAGICを抜けて来た。
大体の事が判った。
この男は物理的防御力・攻撃力がかなり高い。速度もある。更に通常攻撃は一発が二発になり、衝撃ダメージが一度入る。
対照に魔法的な攻撃を行う様子は無く、魔法的防御力も低い。替わりなのか、ガード中の移動可能、ノックバックの無効化。状態異常は麻痺以外試していないが、少なくとも行動制限系のデバフは効かないだろう。
得た情報を軽く整理しつつ、突っ込んで来る男を見て同じ様に間合いを詰める。近付き、攻撃態勢へ移行した男の背後へと瞬時に移動。
一瞬のタメを行い、一種の『強攻撃』によるコンボを決める。男のHPが三分の一まで減った。
「楽しくなって来たぜ!」
セリフが入る。男の速度が増した。いや、それだけでは無く防御力も上がっている事からステータス全般が上がったのだと予測される。
その後も、エニグマは探る様に時間を掛けて(と言っても十分も二十分も時間を使った訳では無い)男のHPを半分まで減らした。
「ハハハハハ! こんなに楽しめるのは久しぶりだ! こっからはオレも本気で戦ってやる! もっとオレを楽しませろ! ハハハハハハハ!」
男はどこからともなくその身長程はある巨大な槌を取り出し、大きく振りかぶると虚空を打った。
衝撃が凄まじい速度で迫ってくる。衝撃である以上ガードは不可能だ。指向性範囲型遠距離攻撃である為、男の正面方向扇状にダメージ判定が存在する。よって回避も困難。直撃など以ての外。
ならばと〈心眼〉を使った。これにより攻撃が外れる。
大体の戦闘方法は判ったので、一気に片をつける。
〈フェーディスロッド〉と言うMAGICのダメージを増加する武器を取り出し、《自然の力》、《人魚の歌声》、《神霊の戯れ》、〈魔の舞〉、〈マジックブースト〉、〈オーバーマジック〉、〈マジックソング〉、〈チャージ〉を《並列発動》する。
武器を構え、攻撃系MAGICの《並列発動》を行った。
ガードを行った男に対してMAGICが降り注ぐ。当たる度にゴリゴリとHPが削れていき、あっという間に僅か一割程まで減った。
残り後僅か。しかし男はその槌を地面へ叩きつけた。その瞬間、大地が陥没して男の周囲に衝撃の壁が出現した。その影響で残りの魔法は全て掻き消される。
男は直ぐ様エニグマへ向かって疾走し、その槌を振り上げる。ガードするにしろ避けるにしろ、衝撃ダメージが入る。
武器を剣に交換し、〈パワーブースト〉、〈オーバーパワー〉を発動。更に〈ターン〉を発動し、〈スラッシュ〉、〈ストライク〉、〈スマッシュ〉を《並列発動》する。
――条件達成! SKILL・〈瞬閃撃〉、SKILL・〈撫斬り〉を取得。
男の槌が地面に当たる前にエニグマの剣が男を斬った。残りのHPがゼロとなる。
槌を取り落とし、ドサッと本人も地に倒れ伏した。同時、バトル終了。イベントスタート。
男の体を淡く光が覆い、女体化した。ここが現実なら確実に空気が凍る場面だ。ついでにエニグマまで《性別転換》すればいい具合に皆が現実逃避行を全力ダッシュで行うだろう。
それは兎も角。
女となった......いや、俯せに倒れたままの少女の指がピクリと動いた。そのまま緩慢な動きで起き上がり、胡坐を組んで俯く。
スゥ......と少女は大きく息を吸い込んでから天を仰いだ。紅いメッシュの入った金髪が揺れる。
感傷に浸るような動作はしかし、長い沈黙を生み出すことは無かった。
「マジかよ......完膚なきまでにやられてんじゃん、オレ」
少女は独白する様な口調で、何処か呆然と呟いた。だが、天を仰いだまま、その口元に、楽し気でありながら獰猛な笑みが浮かんだ。
「ハハ八ッ、面白れぇ......」
バッと勢いよく立ち上がった少女はエニグマに向かって指を指し、宣言した。
「オマエに付いてってやる。そして絶対にオマエをブッ倒す!」
少女は地面に落ちていた槌を取り上げ、肩に担ぐようにして持った。
「オレの名はウィラ・ゼネトテラ。宜しくな。ハハッ、オマエといると面白い事がおおそうだ」
『『凶者』ウィラ・ゼネトテラが従者になりました』と表示された。最早イエスノー表示すらなくなっているが、そもそもYES以外を選ばせなかったので、肯否を問う必要性は無かったのだ。
次いで、『QUESTCLEAR!!』と表示される。そのまま、真っ白な光に包まれた。
光が消えた後には闘技場の外に居た。所謂強制転移である。こうなると大会も強制終了となる。エニグマ自身は大会の景品等には興味が無いので、一々このような事に反応しない。
エニグマは身を翻し、中央都市へ向けて移動を開始する。次のクエストを受ける為だ。
移動に時間を掛けるのもアレだと思い、素早く移動する。転移が使えたら楽だったのだが、同じ街の中では転移出来ないのだ。
まだまだ時間はあるが、クエストにはどれだけの時間を要するか、明確なモノは無いので移動時間を短縮する事を間違っているとは思わない。
エニグマは、街から街へと、流れ行く景色を横目にクエストをクリアする為走った。
『ウィラ・ゼネトテラ WOMAN(MAN) 種族:人間
大の戦闘狂であり、MAGICが使用できず物理SKILLのみしか発動できない。しかしそのハンデを覆す程の戦闘法を持つ。攻撃にはダメージ判定が二度生じ、更には衝撃ダメージまで与える。ガード中の動作や武器を使用した際の衝撃による範囲・遠距離攻撃、MAGICを打ち消す等といった出鱈目な戦闘を行う。尚、普段は存分に戦いを楽しむ為と称して性別を男にしている。その戦闘方法や強者と戦う為なら危険も死も厭わない性質により『凶者』の名を持つ』
因みに、エニグマは普段なら通常攻撃と回避と防御と受け流しの廃人仕様の戦闘を行います。更に言えば本気で戦闘する際は――その内描くと思うので、気長にお待ちください。




