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GAME19 訓練の始まり

 予想は出来ていた。その為別段驚く事も無く返す事が出来た。


「何人程居るんだ?」

「......驚かないのだな」

「予想は出来ていたからな」


 驚いていない様子の水落(みら)に逆に驚いている『守護神』。水落はそんな『守護神』の様子に頓着せず、話の先を促した。


「『継承者』は主殿を含めて三人。『守護神』も同様に三人居る」

「リューヤは残りの二人に会った事は? それと、『守護神』についてはお前と同じ認識で良いのか?」

「『守護神』は皆、ワレの様に『継承者』を依代としている。力は違うが、認識としてはワレと同じで良いだろう。主殿が会った事のある『継承者』は一人だ。二人は現在この街には居ないが、後少しでこの街に戻る筈だ」


 簡単にではあるが、必要最低限の情報を伝えるつもりだったのなら充分だろう。水落としてもこの情報を聞く事が出来ただけで満足だ。


「情報を流してくれるだけでも助かるが、何かあったのか?」

「いや、水落殿は主殿に戦い方を教えてくれるのだろう? ワレからの今出来る些細な感謝と思っておいてほしい」

「感謝と言うなら、俺の事はリューヤに話さないでほしかったがな」


 ジトッとした目を向けるとサッと目を逸らされた。やはり一発殴るべきだろうかと思案していると、『守護神』は取り繕う様に一度咳払いして他に聞きたい事は無いかと問うてきた。


「質問の前に一度だけ殴らせろ」

「何故そうなるのだ」


 スッと立ち上がった水落と、サッと立ち上がって身を引く『守護神』。室内に妙な緊張感が生まれる。


「特に隠すつもりは無かったとはいえ人の秘密を勝手にアイツへ教えたんだ。罰としては妥当だろう?」

「確かにワレも勝手に教えたが、隠すつもりは無かったのであろう? ならば良いのではないか?」

「開き直るな。隠すつもりがなかった事と勝手に教えられる事では話が変わるだろう」

「正直に言えば水落殿の動きは確実に人体を破壊しに掛かっている。そんなモノを受けられる筈が無かろう」

「安心しろ。お前は神だ。人の体を壊す事が出来ても神の体を壊す事は出来ないだろう」

「屁理屈では無いか」

「お前は開き直ったんだ。対等(ドロー)の為問題無い」


 言い合いは平行線となり、二人は無駄だと悟ったのか無言で睨み合う。暫く睨み合って、どちらからともなく溜息を吐いて席に座った。


「......『守護神』はそれぞれに特徴はあるのか?」


 何事もなかったように話を再開する水落。それに合わせて、『守護神』も何事もなかったように答える。


「......まあ、良いか。先ず、ワレ等は本来の姿が存在する。ワレの場合は龍、龍神だ。他二人はそれぞれ虎の虎神(とらがみ)、麒麟の霊神。戦闘時の特徴を分かり易く表すならば、ワレは万能型、虎神は前衛型、霊神は後衛型と言ったところか。あくまで目安ではあるがな」


 これで良いかと目で問いかけて来る『守護神』、元い龍神に頷いてから水を飲む。あくまで目安だと言うが、これだけ情報があれば充分だろう。どこぞの敵は事前情報皆無なのだ。それに比べると全く以て良心的と言える。


 水落は他に聞きたい事も無く、龍神の方も何か伝えたい事がある訳でも無い為暫し無言となる。


「......む、時間だな」


 静かな空間というのも良かったが、それでは来た意味が無いと明日の龍谷(りゅうや)の訓練について話していると、突然龍神が呟いた。


 そのまま立ち上がり玄関まで向かったので、水落もその後を追って玄関まで来る。


「では水落殿。ワレはこの辺りで」

「ああ」


 外に出た後一瞬にしてその場から居なくなった龍神を〈マップ〉を使って確認した後、鍵を閉めてリビングへ行き、コップを片付け電気を消した。


 そのまま自室へと戻り、ベッドへ倒れ込む。


(あぁ、そう言えば。『眷属』について聞いておけばよかったか? 明日リューヤと共に説明すると言われたが......まあいいか)


 時計を見ると、既に三時である事を示していた。登校する準備を始めるまでに後三時間。睡眠時間が一時間なので、実質二時間はある。


 今から眠るとして、起きたら四時頃だろう。それから六時までの二時間でどの『クエスト』をやろうかと優先順位を決めてリストアップしておく。


 優先順位を決めてから、水落は目を瞑り意識を薄く広げた。




――――――――――




「......デカイな」

「ははは。まあほら、入ってくれ」


 学校が終わり、そのまま龍谷の家へ向かった。そして龍谷の家を見て最初の一言が本心からの『デカイな』だ。


 敷地を取り囲む様に巨大な塀があり、その入り口は門となっている。門を潜れば屋敷と称しても間違いはないだろう程大きな家が見え、その玄関部までしっかりと整備された道がある。更には奥までは見えないが、屋敷の隣には道場らしき建物まであった。


 〈マップ〉で確認し事前に知っていたとはいえ、実物を目にするとやはり驚かされる。


 驚きは一瞬で、龍谷に先導して貰いながら武道場まで移動する。中に入るが、一見すると一般的な道場その物だ。だが、よく見れば使用されている木材も装飾品も一級品だと分かる。


「ミラ、始める前に紹介したい人......って言っていいのか分からないけど、紹介したい奴が居るんだ。先にそっちを済ませてもいいか?」

「ああ、いいぞ」


 鞄を隅に置いて、水落が先に声を掛ける前に龍谷が言った。紹介したい奴というのは十中八九龍谷の『守護神』、龍神の事だろうが、知らぬ存ぜぬを貫き通しておく。


 目を閉じた龍谷の傍に光が集まり、人一人は余裕で入れる程の塊となる。ハッキリ言って無駄な演出だ。こんな事しなくても顕現出来るのは既に知っている。


 光が散り、その中から見慣れた美丈夫こと龍神が現れた。


「......ワレは主殿の『守護神』、龍神だ。宜しく頼む」


 簡潔な挨拶を聞き流し、一瞬の動揺と若干の驚きを示す。そして、事前に決めておいた台詞を口にする。


「......お前、あの時の......」

「え? 会った事あるのか? ミラ」

「ああ、一度だけだが」

「うむ。ワレも覚えている」


 昨日に決めておいた筋書を龍谷に説明する。龍谷は時々訓練として龍神を顕現させ別行動する事があり、その際に出会ったと言う事が出来るのだ。


 辻褄合わせも意外と簡単だった事に加え、既に色々と話している為今更初対面を装うのが面倒臭いと言うのもある。因みに、後者の方が本音だ。尤も、筋書き通りだと一度会って話をした程度の間柄でしか無いが。


 軽く説明を終わらせ、龍神が話を変える。


「すまぬが、もう少し時間を貰ってもよいか?」

「良いけど、何かあるのか?」

「うむ。先日の『眷属』について簡単に説明しようと思ってな」


 先ず、『使徒』との違いとして邪神の力に大きく影響を受けているらしく、最低でも『使徒』の最高位と二倍は力差が開いているという。それを考え過去の戦闘を見ると、龍谷が『使徒』相手に苦戦し『眷属』相手に圧勝したのには少し違和感を感じる。


 その点を問うと、どうやら龍神が意図的に力を抑えていたらしい。龍谷の成長に合わせて最大出力(?)を上げていた様だが、予想以上に龍谷の成長率が凄まじかった様だ。


 次、『眷属』が出て来たと言う事は邪神の力が強まった事に他ならない。これからは『使徒』も『眷属』も出現する数が増えるだろうと言う事。今までよりも『使徒』の数が増え、『眷属』も追加されるとなると龍谷一人では手に負えないだろう。


 その点は残りの二人や『分承者』が居る為問題無いと言う。『分承者』の強さが分からない為なんとも言えないが、鍛えていれば『眷属』の中位程となら互角で戦えるらしい。


「簡潔ではあるが、このような所か」


 そう言って締め括った龍神は龍谷と水落の二人に礼を言い、龍谷の中に戻ろうとする。だが、その前に思い出したように言った。


「主殿、訓練の最中は力を落として貰うので心しておれ」

「え? 力を落とすってどうやるんだ?」

「弱体化させる能力を主殿に使わせて貰う。だが、恐らくは一般人の最高峰までしか落とせぬだろう。その点は水落殿には申し訳ないがな」

「問題無い。一般人の最高峰なら『使徒』よりは弱いだろう?」

「弱体化させている以上能力も使えぬ。故に歴史上稀に見る逸物より弱い」

「なら尚更だな」


 微塵も心配を感じさせない水落の態度に龍神は一つ頷き、その場から姿を消した。恐らく龍谷の中に戻ったのだろうと思い本人を見てみると、若干不服そうな、不満そうな表情をしていた。


 恐らく水落が言外に龍谷に勝てると言った事が不満なのだろう。今まで人外と戦ってきた事から持つ矜持と、水落の彼我の実力差の分からない愚者の様な発言が原因だろう。が、この場合で言う愚者とは果たしてどちらであるか。


「さて、始めるか」

「分かった」


 短い遣り取りの後、道場の中央で適当な間隔を開けて対峙した。少し体を解して、構える。


「先ずは準備運動としようか。お前も今の体を把握しないといけないからな。序でにお前がどの程度の技術を持っているかも見せて貰う。そうだな、攻撃が先で良いだろう」


 見た事の無い構えをする水落に眉を顰めていた龍谷は、水落の言葉に目を細めた。挑発されたからか戦意が瞳に灯る。


「お前の好きなタイミングで掛かって来い」

「......分かった」


 水落の構えを見て何かを感じ取ったのか、はたまた水落の言葉に触発されたのかは分からないが、龍谷のその眼には不信の色は微塵も無く、戦意の灯った眼を鋭く細め全身に力を籠める。


「行くぞ!」

「......」


 静かに佇み眼で来いと伝える水落に、龍谷は全力で間合いを詰め、拳を振った。





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