GAME16 従者
龍谷が自分の事を殆ど暴露してから、二週間程経った。変わった事と言えば、あまり龍谷に遠慮する事無く『邪闇の使徒』と関わる事だろうか。
未だに例年より早い梅雨は過ぎる気配を見せず、静かに雨を降らせている。
この日、やはり休日であるのだが、水落は掃除以外では滅多に上がらない二階の一室に居た。その部屋は大量の辞書や専門書が所狭しと並べてあり、全てに手入れが行き届いていて劣化が見られない。
日本やアメリカ、ドイツ、スペイン中国と言った国や、ナゴルノ・カラバフ、ピトケアン諸島やトケラウと言うようなマイナーな国が記された物もある。
そんな研究者やそういう方面でのオタクが涎を垂らしそうな物の前で、水落は手に取ってはペラペラと捲り、閉じて綺麗に戻した後他の本を取って同じ事をする。
特に目的がある訳ではないが、唯読み返したくなったと言えば、それが理由であり目的であるような気もする。まあ、無意味と言えば無意味なのがこの行為なのだが。
何故無意味なのか。それは水落がこの場所にある本を全て読み、記憶しているからだ。〈制御〉があれば記憶の想起も出来る為、読み返す意味はまるで無い。やろうと思えば一字一句間違えずに暗唱する事や、書く事も出来るからだ。
そんな無意味な行為を更に数回程繰り返して、水落はこの部屋から出て自室へと向かった。
ベッドに倒れ込み、《CR》を取り出す。あれから《CR》を進める以外にも色々と調べて、大体の事は分かった。
スマホ型の時は録画録音、《CR》の曲の再生や撮影が出来、電話やメールと言った連絡系が出来ない事や、ゲーム機型の時はゲームをする以外出来ない事等、機能面で分かった事が多い。
尤も、水落以外からすればだからどうしたと言われる様なものだが。
そんな事は兎も角、水落が今回やるのは『クエスト』である。今迄もやっては居たが、今回の『クエスト』は格が違う。
クエスト名は『歌姫の奇跡』と言い、戦闘系クエストだ。事前情報は殆どなく、水落の場合ぶっつけ本番で勝たなければならない。
一度でも死ぬ事は水落の、『エニグマ』としてのプライドが許さない。
「さて、準備完了。さっさとやるか」
『歌姫』との戦闘場所は『中心都市 サントブルス』内にある『光明の段場』と言う場所で、イメージとしては会場やステージが近いだろう。
直ぐにその場所まで移動して、イベントが起こる。『歌姫』と呼ばれるキャラクター、『メレ・ソニリート』との会話があり、ムービーも流れる。
戦闘までのその他諸々は水落自身が全て見た。ここまで造り込まれていると一つのアニメを見ている様な感覚だった。
そして戦闘へ移行する。
食料系を初めとしたバフ付与系アイテムを使い、更にSKILLによるバフ強化も行う。《並列発動》を使いながらMAGIC連打。更に敵に息も吐かせぬ連続攻撃で削りまくる。反撃を許さずに、速度と力で圧倒する。
『歌姫』の本来の戦いを見る事なく戦闘は終了した。
「......馬鹿か俺は......」
速攻で戦闘を終わらせてしまい、その後のイベントが始まってから軽く落ち込んだ。時間経過での戦闘中のイベントがあった可能性も無きにしも非ずなのだ。水落からするとかなり悔しい。
それは兎も角、若干気落ちしたままイベントを進めていくと、こんな表示が出て来た。
『『歌姫』メレ・ソニリートを従者にしますか? YES/NO』
『従者』とはPTメンバーの様なモノだ。ヘルプには書いてあったが今まで従者となるようなキャラがおらず、完全にお蔵入りになっていた設定だ。
当然YESを選択する。と言うより、選択せざるを得なかった。NOは表示されているのはいいものの、灰色になって選択出来ず、強制的にYESを選ぶ他なかった。
まあ、水落はあまり強制イベント等は気にしないので、そのまま進めていく。すると、イベントが終了しクエスト完了の表示が出た。
報酬を確認してからテロップを消し、HOMEとなる場所へ移動する。HOMEはその街ごとにある拠点の事で、『トイルス』の宿屋と同じだ。
さっさとHOMEまで移動し、『エニグマ』のステータスと『メレ』の情報を開く。今気になっているのは『メレ』の情報だ。水落の失敗で見られなかった戦闘方法等......を、纏めるとこうなる。
『メレ・ソニリート WOMAN 種族:人間
『歌姫』の名の通り、歌バフ系や踊りバフ系を使用して戦う。最大の特徴として前記と同系統のSKILLにクールタイムが存在せず、連続で使用出来る。但し、類似効果のSKILLが重複する事はあるが、全く同じSKILLは重複しない。また、MAGICを取得することが出来ない』
相変わらずブッ飛んだ性能だ。チートキャラと言っても過言ではないが、本来ならこんなに簡単に、こんなに早く従者に出来ないとするならば、納得できる......かもしれない。
そしてそれは『エニグマ』のステータスにも言える。
『NAME エニグマ MAN (∨ WOMAN)
LEVEL:161
STP:1150
体力:100
魔力:100
筋力:100
俊敏:100
耐久:100
賢慮:100
器用:100
魅力:100
運気:100
SKP:710
SKILL
《性別転換》《並列発動》《超獣化》《獣の闘志》《龍の咆哮》《獣王の威圧》
《自然の力》《人魚の歌声》《神霊の戯れ》《聖獣の癒し》
《ヴィテス召喚》《悪魔の誘惑》
〈体術lv10〉〈格闘術lv10〉〈剣術lv10〉〈索敵lv10〉
〈忍足lv10〉〈制御lv10〉〈料理lv10〉〈調理lv10〉
〈短剣術lv10〉〈収納lv10〉〈整理lv10〉〈整頓lv10〉
〈解体lv10〉〈隠密lv10〉〈隠形lv10〉〈霊視lv10〉
〈霊感知lv10〉〈挑発lv10〉〈採集lv10〉〈採取lv10〉
〈釣りlv10〉〈伐採lv10〉〈採掘lv10〉〈採石lv10〉
〈精錬lv10〉〈製錬lv10〉〈製作lv10〉〈加工lv10〉
〈鍛冶lv10〉〈木工lv10〉〈石工lv10〉〈革工lv10〉
〈裁縫lv10〉〈調合lv10〉〈錬金lv10〉〈錬成lv10〉
〈修理lv10〉〈修復lv10〉〈整備lv10〉〈測量lv10〉
〈観察lv10〉〈測定lv10〉〈空中跳びlv10〉〈壁走lv10〉
〈立体機動lv10〉〈浄化lv10〉〈清浄lv10〉〈自然回復lv10〉
〈威圧lv10〉〈威嚇lv10〉〈投擲lv10〉〈飛行lv10〉
〈回避lv10〉〈危機感知lv10〉〈見切りlv10〉〈連撃lv10〉
〈飛衝撃lv10〉〈夜目lv10〉〈暗視lv10〉〈解呪lv10〉
〈乾燥lv10〉〈跳躍lv10〉〈悪路移動lv10〉〈操縦lv10〉
〈操作lv10〉〈騎乗lv10〉〈照準lv10〉〈狙撃lv10〉
〈早撃ちlv10〉〈連射lv10〉〈横撃ちlv10〉〈曲撃ちlv10〉
〈精密射撃lv10〉〈心眼lv10〉〈歌唱lv10〉〈美声lv10〉
〈舞踏lv10〉〈舞踊lv10〉〈力の舞lv10〉〈速の舞lv10〉
〈魔の舞lv10〉〈魅の舞lv10〉〈知の舞lv10〉〈巧の舞lv10〉
〈硬の舞lv10〉〈復の舞lv10〉〈ダンスlv10〉〈パリィlv10〉
〈マップlv10〉〈スタブlv10〉〈オーバーパワーlv10〉
〈オーバーマジックlv10〉〈チェインlv10〉〈サークルアタックlv10〉
〈ガードlv10〉〈ブロックlv10〉〈ガードブレイクlv10〉
〈ブロックバーストlv10〉〈ターンlv10〉〈カウンターlv10〉
〈スピリタクトlv10〉〈スラッシュlv10〉〈パワーブーストlv10〉
〈ストライクlv10〉〈マジックブーストlv10〉〈チャージlv10〉
〈スマッシュlv10〉〈アップソングlv10〉〈ダウンソングlv10〉
〈ヒールソングlv10〉〈クールソングlv10〉〈イナマルソングlv10〉
〈パワーソングlv10〉〈マジックソングlv10〉〈スピードソングlv10〉
〈ガードソングlv10〉〈ノレッジソングlv10〉
〈プラフィシャントソングlv10〉
MAGIC
〈ファイアボール〉〈ウィンドボール〉〈ウォーターボール〉〈アースボール〉
〈キュア〉〈サンダーボール〉〈アイスボール〉〈ファイアバレット〉
〈ウィンドバレット〉〈ウォーターバレット〉〈アースバレット〉
〈サンダーバレット〉〈アイスバレット〉〈ハイキュア〉〈ヒール〉
〈ハイヒール〉〈ラヴァボール〉〈ミスト〉〈ウィンドショック〉
〈ヒールミスト〉〈ラヴァバレット〉〈ヒートボール〉〈ヒートショット〉
〈マッドボール〉〈マッドバレット〉〈スタン〉〈スタンショック〉
〈ライトボール〉〈ライトバレット〉〈フラッシュ〉〈ダークボール〉
〈ダークショット〉〈ライトヒール〉〈シールド〉〈ウィンドカッター〉
〈ファイアストーム〉〈ウォーターカッター〉〈プリズン〉〈アイスプリズン〉
〈ヒートプリズン〉〈アースプリズン〉〈ウォータープリズン〉
〈ウィンドプリズン〉〈サンダープリズン〉
ARMOR
〈ウェピアのイヤリング〉〈ウルアのネックレス〉〈アルミティアのトップス〉
〈アルミティアのボトムス〉〈アルミティアのインナー〉〈竜魔の腕輪〉
〈キュウラのグローブ〉〈ロロメルの籠手〉〈ロロメルの胸当て〉
〈ロロメルのブーツ〉〈ウィズメアの宝珠〉〈光闇の腰布〉
〈餓牙殱の長剣〉〈餓牙殱の短剣〉 』
未だにステータス限界を上げる方法が分からず、LEVERだけが上昇してSTPとSKPがとんでもない事になっている。
いや、ステータス限界を上げる為にする事は、ある程度目星がついている。と言うのも、『クエスト』が完全に怪しいのだ。水落は他の街は全て制覇してある為、『クエスト』以外に無いので、消極的に確定したと言っても過言ではない。
これで尚ステータス限界を上昇させる事が出来なければ、兎に角あらゆる事を試していかなければならない。まあ、それはあまり気にしていないが。
そんな事を考えつつ、更にSKILLを取得しようかと脳内のSKILL一覧を吟味しながら、おまけに従者について更に細かく調べていると、興味の惹かれる情報があった。
詳しく読んでしまったが、簡単に纏めると従者もARMORと同じく『召喚』する事ができる様だ。
あまりにも興味が惹かれ、試してみようかと葛藤する。失敗事は無いと思うが、そこではない。
『人』を呼び出すという事に抵抗があるのだ。情報を見る限り確実に水落と同じ『人』であり、感情も自己も確立している。
魔物や魔獣等といった『獣系』なら兎も角、『人系』だとどうしても戸惑ってしまう。主にどんな感情を向けられるのかと言う点で。
尤も、グダグダと悩んでいても仕方ないので、試す事にする。『召喚 メレ・ソニリート』、とARMORと同じ感覚で念じる。
すると、水落の目の前に虚空から一瞬で一人の少女が現れた。
「一応、始めましてかな? エニグマさん! わたしは『歌姫』メレ・ソニリートです!」
アイドル系の美少女はそう言って笑顔でポーズを決め、水落は小さく溜息を吐いた。




