GAME1 始まり
世界で開発が進むVR技術。その最先端技術を詰め込んだあるモノが、一つの付属品と共に、世界総人口約七十五億人という膨大な人口の内、僅かたった百人に贈られた。
それは、VRゲーム機《VCOMMANDER》。ベッド一体型のソレは、市販されているVRゲーム機とは違い、睡眠とゲームを同時に出来ると言う原理不明の超物体だ。
その《VCOMMANDER》、略して《VR》と共に差出人不明で送られたのはVRMMORPG《UTOPIATALE》、略して《UT》。
現実と殆ど変わらない完成度と、充実したアイテム、モンスター、ストーリー等、百人を魅了するには十分すぎた。
差出人も、送った基準も目的も分からないまま、五年が過ぎる。
その頃になって、百人で唯一このゲームを遊び尽した者が居た。ゲーム内での彼の名は《エニグマ》。単独プレイヤーであると同時に、ゲーム中最強のプレイヤーだ。
だが、全てのアイテム、称号、スキルを取得し、表ボス、裏ボスの全突破。更には隠しフィールド含む全マップ制覇と言う、破格の所業、最早神業と称しても差し支えない程の事をした時、《エニグマ》は、まるで追い出されるかの様にゲームにログインする事が出来なくなってしまった。
因みに、この時《エニグマ》は知らなかったが、全てをやり尽した後、《UT》のサーバーは停止し残りの九十九人も同時にログイン出来なくなっていた。
絶望感と虚無感に苛まれる中数日が経った頃、《エニグマ》の下に、再び一つのゲーム機とゲームが届いた。
差出人不明。目的も何もかも分からないが、《エニグマ》はソレを手に取った。
それがこれから起こる事の全ての始まり。これが正しく始まりとなるか、元凶となるか、その運命は定かではない。
――――――――――
「......それでは、コチラにサインをお願いします」
「......これで良いですか?」
「はい。有難う御座いました」
「いえ」
愛想笑いを浮かべながら配達品を受け取り、宅配者が戻ったのを確認しドアを閉める。
配達品を受け取った彼の名は神影水落。
男にしては長めの黒髪で黒目。身長は百七十センチ程、顔は上の下で勉強、運動はそこそこの十六歳だ。そこから分かると思うが、彼は今年から高校生である。
現在は一軒家に一人で住んでいる。家族は両親が居るが、完全に仕送りしてくるだけの存在となっていて、家族愛もクソも無い。
段ボールを持ちながら自分の部屋に入る。部屋の中には明日が学校の初登校日と言う事もあり、机の上には鞄が置かれてあり、壁には指定の制服が掛けられていた。
それ以外にはベッド......が一つ。そのベッドの頭の方にはコネクタがあり、ヘッドホンの様なモノが繋がっている。
水落は机と共に置かれている椅子ではなくベッドに腰を降ろした。一度、ベッドに哀し気な目を向けたが、直ぐに段ボールの開封に取り掛かった。
「差出人は......誰? 良く送る事出来たなコレ」
段ボールには何処を見ても差出人の名は見当たらなかった。どうやって送ったのだろうか。と言うか運送業の方々も何をしているのだろうか。
ブラックライトでも当てたらいいのかな? 等と考えつつガムテープを剥がす。
「あー......CGTか?」
水落は包装用発泡スチロールに包まれた黒と銀の金属光沢色のゲーム機を見て、そう呟いた。
CGTとはCOMPACTGAMETERMINALの略称で、世間では様々なゲームが出ている人気ゲーム機である。幾つかの拡張アダプター等も出ているのだが、それは関係のない話だ。
慎重に取り出して、ゲーム機を見る。
すると、既存のCGTと比べると明らかに違う点が幾つかあった。
先ず、充電用のコネクタが無い。ソレだけならまだしも(良くないけど)、それと同等と言える程の問題がある。それは即ち。
「......何処にカード入れるんだよ? どうやってゲームしろと......」
水落がハイライトの消えたジト目をしながら言った通り、ソレにカードスロットが無かったのだ。
取り敢えずベッドの上に丁寧にゲーム機を置いて、段ボールの中をあ探る。
「コレは......説明書......でいいよな」
表紙にも裏表紙にも何も書いていない説明書(仮)を片手に、段ボールの中をガサゴソと漁るが他には何も見つからなかった。
段ボールを閉じてから机の上に置き、説明書の様なモノを開き、目を通す。
「ハハ......まさか、冗談だろ? ......これが本当だったら、ご都合主義もイイトコロだぞ......」
何度も読み返しながらそう呟く水落の眼は、美しい光を放ち、その口元は乾いた笑いとは違い、楽し気に歪められていた。
今は丁度十二時を回ったトコロ。時間はまだまだある。
彼は神影水落。《UT》と言うゲーム中孤高にして最強のプレイヤー、《エニグマ》。
今日この日から、クソゲーだと思っていた現実に彩が戻った。
CGTは......まあ、PSVi◯aみたいなモノです。一応、イメージ補填の足しにしてくれればと。
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