472列車 じじくさい貰い物
僕は引き出しの中からものを出していた。きっぷの収納ボックス。ノート。古い時刻表。いろんなものを出していた。しかし、目的のものはなかなか見つからない。それどころか発掘した古い時刻表を見ながら、「こんな名前の列車もあったんだなぁ」と思いながら、時刻表を眺めている。
今持っている時刻表は2009年のもので、東北新幹線は新青森までつながっていないし、夜行列車「きたぐに」の名前まである。
「ナガシィ・・・ってうわぁ・・・。ちょっと散らかしすぎよ。」
「ああ。うん・・・。片付けるよ。でも、見つかんないんだよねぇ。」
「何探してるの。」
「んっ。ほら。智萌から貰った肩たたき券。」
「じじくさいもらい物したわね。」
「作ったのは智萌なんだから。じじくさいって言わない・・・。あっ、でも自分の子供にそう言うもの作られたのはちょっとショックだったかなぁ・・・。ハハハ。」
「私、知ってるからね。ナガシィが「何がいい」って聞かれた時に「んっ、何でもいいよ」って言ってたの。」
返す言葉がないなぁ・・・。さて、それはどこにあったかなぁ・・・。時刻表をパラパラとめくって、挟まっていないかどうかも確認したが、出てこない。うーん、無くしたかなぁ。
「あっ・・・。あった。」
「良かったね。智萌が帰ってきたら、ちゃんと怒っといてよ。ナガシィ。甘やかしちゃダメだからね。」
「はいはい。」
時間をふと見ると17時をまわっている。もうすぐ帰ってくるかな・・・。僕も捜し物は見つかったし、1階へ降りるか。
「ただい・・・ひっ。」
帰ってきたみたいだ。玄関に萌が立ってたからビックリしたんだろうなぁ・・・。まぁ、怒られるようなことしかしてないけど・・・。
「智萌。学校サボって東京行くってどういうことかしら。いいわけがあるなら、聞いてあげるわよ。」
「えっ・・・、いや・・・。その・・・。」
「萌。あんまり。」
「ナガシィは黙ってて。」
「はい・・・。」
「学校にはちゃんと病欠するって。」
「サボりと病欠は違う。」
「はい・・・。」
「全く。子供の仕事は勉強なんだから、ちゃんと学校に行きなさい。今すぐにでも高校やめたいなら、別にいいわよ。ちゃんと働いてくれるならね。それにナガシィ。さっきも甘やかすなっていったわよね。私は智萌のこと思って言ってるんだから、「怒らないであげて」とか、「電話であれだけ叱ったんだから、もういいんじゃない」とか言わない。分かった。」
「・・・はぁい。」
「そんなに怒らなくても。」
「ナガシィ。返事は。」
「ああ・・・。うん。分かったよ。」
「本当に分かってる。ナガシィいっつもそうだから。」
「お父さんもお母さんのこと怖い。」
小さい声で智萌が話しかけてきた。
「んっ。怒った時はね。」
「二人とも。」
「はい。」
声がそろった。
萌はぶつぶつ言いながら、奥へと消えていった。
「あっ、智萌。これお願い。」
そう言うと僕はさっき見つけた券を智萌に渡した。
「えっ。お父さん。まだこれ持ってたの。もうとっくに使い切ったもんだと思ってた。」
「まだ持ってるよ。後残りは1枚だけだけどね。」
「次の誕生日の時、また作ってあげようか。」
「そ・・・そんなに歳じゃないから。まぁ、頼むよ。」
「オッケイ。・・・あっ、さすがにソファーに座ってよ。」
「あっ・・・。そうだね。」
ソファーに座りに行くとも萌がソファーに座っていた。
「んっ。まだ怒られ足りないかしら。」
「もう十分怒られたわ。お腹いっぱい・・・。」
智萌が言う。
「まぁまぁ。もういいじゃん。」
「・・・。智萌の代わりに私がしてあげようか。ナガシィ。」
「あっ、後でね。」
萌はそれを聞いてからソファーを離れ、僕が入れ替わりにソファーに座る。萌は智萌と何か話しているみたいだが、なんて言っているのかは分からない。
「さぁ手。今日はどこがこってますか。」
「んっ・・・。まぁ、適当にやっといて。」
「フフーン。」
「・・・光、元気だった。」
「うん。すごく元気だったよ。でも、いろいろと調べ物してたりして、お姉ちゃんのこと全然かまってくれなかったなぁ・・・。」
「光も忙しいんだよ。どこの会社もそうだけど、中途半端じゃいけないからね。」
「・・・私ねぇ、将来は接客業やってみたいと思うんだ。今バイトで行ってるコンビニとか結構向いてると思うんだよ。どうかな。」
「接客ねぇ・・・。まぁ、頑張りなよ。」
「あっ、でも卓球も続けたいなぁ。体育大学でも行っちゃおうかな。」
「・・・そうなるとまたレヴォちゃんで名神くだらないと行けないかぁ・・・。」
「えっ、何か言った。」
「なんでもない。・・・と将来どういう仕事に就きたいかっていうのはいいけど、ちゃんと学校行かないと信用すらしてもらえないよ。だいたい東京だって学校サボってまで行くところじゃないでしょ。」
「もうまたその話。やめて、お父さんまで。耳にタコができるくらい聞いたわ。」
「・・・懲りた。」
「懲りた。お母さんのあんなに怖いかお久しぶりに見たし・・・。」
そんな会話を少し続けて、僕の聞きたいことがだいたい終わると智萌に「ありがとう」と言った。
「もういいの。」
「後はお母さんがやっとくわ。」
「ふぅん。じゃあ、これは使用済みって事で捨てとくね。」
智萌はゴミ箱に券を放り込んでから自分の部屋へと向かっていった。
「どう。話したいこと話せた。」
「ああ。まぁね。そういえばさぁ、さっき智萌と何話してたの。」
「えっ。ああ、「ナガシィが肩たたき券使う時はいろいろと話したいことがあるのよ」って言っただけよ。」
「ああ。そうなの。」
「余計なことだった。」
「別に・・・。」