470列車 姉突撃訪問
4月28日。ヨシッ、上野まで行って光のこと驚かしてやろう。フフフ。私は高速バスに乗り込んだ。えっ、学校。そんなのどうだっていいじゃない。
ウチは学校が終わると鞄に教科書とノートを詰め込んだ。
「永島、一緒に帰ろうぜ。」
「帰ろう、永島君。」
香西と沼垂に誘われ、ウチは学校を出た。亜美は黙って僕たちについてくる。学校を出るとすぐに上野駅である。相変わらず、このアクセスのよさは本当に助かる。ICカードを改札口でタッチし、ラッチ内に入る。その時、誰かのスマホがなった。「「ひたち」チャイム」があたりに響く。
「やぁっぱり、ムー○―マン.おむつを買うならムー○―マン。」
香西が口ずさむ。
「ああ。そうお前のせいで「「ひたち」チャイム」がムー○―マンにしか聞こえなくなるだろうが。」
「ムー○―マンねぇ・・・。誰よ。最初に考えた人は・・・。」
「ハハハ。」
ていうか、よくよく考えたらこれはウチのスマホじゃん。一体誰がならしているんだろう。画面を見てみると「智萌」と表示されている。
(何の用だろう・・・。)
「なぁに。智萌。」
「あっ、光。ねぇねぇ。今私どこにいると思う。」
「はっ・・・。どこって・・・。」
ウチの耳には智萌のバックで流れるアナウンスが聞こえてくる。聞き慣れた列車の接近音・・・。関西で聞いていた「最澄、空海」の列車接近音じゃない。これって東京の・・・。
「まもなく2番線に山手線内回り、池袋、新宿方面行きが到着いたします。危険ですから、黄色い線の内側までお下がりください。」
「智萌・・・。もしかして、今上野にいる・・・。」
ウチはそう聞いてみた。
「そうよ。ねぇねぇ、光。今どこにいるの。さっきから探してるんだけど見つからないんだけど。」
「あのねぇ・・・。上野で闇雲に人捜しするって、どんな馬鹿でも見つからないって事は分かるでしょ。」
「だって・・・。光は今住んでるところに帰る時銀色の電車に乗ってるんでしょ。」
(銀色の電車・・・。)
上野駅にはほぼ銀色の電車しか来ないんだけど・・・。智萌。ラインカラーで行き先が分かれてるなんて思ってないんだろうなぁ。
「智萌。今からそっち行くから、今いる場所から一番近い階段の所にいろ。絶対動くなよ。」
ウチはそう言うと電話を切った。
「何だ。ガールフレンド。」
香西が聞く。
「違うって。お姉ちゃんだよ。全く、学校サボって何しに東京に来てるんだか。」
ウチは近くの階段から1・2番線ホームに降りた。ウチが降りた階段の近くにと百恵の姿はなかった。御徒町方面にある階段を順番に見ていくと次の階段で智萌が待っていた。
「光。会いたかったよ。」
そう言いながら、智萌はウチに抱きついてきた。
「久しぶり・・・。何しに東京に来たんだよ。」
「えっ、来ちゃダメ。」
「いや、ダメじゃないけど・・・。ゴールデンウィークなんだし、ウチもそっちに帰ろうかと思ってたんだけどなぁ・・・。」
「あんまりお金無いでしょ。だから、私が会いに来たの。」
「・・・学校はどうしたんだよ。」
「・・・私の学校、今日は創設記念日で・・・。」
「白々しい嘘つくな。」
「ごめんなさい。」
「全く。お母さんに怒られてもウチ、知らないよ。」
「お母さんとお父さんには怒られる覚悟できたから大丈夫よ。」
「普通は怒られるようなこと自分からするもんじゃないだろ・・・。呆れた・・・。」
「・・・。」
そう言うウチらのやりとりを後ろで香西、沼垂がポカンとした顔で。亜美はあきれ果てており、他人の不利と言わんばかりに別の方向を見ている。
「ところで、後ろのイケメンは光の友達。」
それを聞かれると香西がウチの左肩に手を置き、
「そうだぜ。」
「うん。そうだよ。イケメンかどうかは知らないけどね・・・。」
「それに、亜美ちゃん久しぶり。」
「・・・ええ。久しぶりね。・・・私には学校サボってまで自分の弟に会いに来る神経が分からないわ。将来のためにもサボりは推奨しないわ。」
「・・・堅いこと言わないの。」
「・・・。」
「とにかく、立ち話するのも何だし、スタ○でも行くか。」
香西が言うと、
「おっ。いいね。いいね。行こう、行こう。」
智萌は早速香西と意気投合してるみたいだ。
「あなたのお姉さん。全然違うわね。真面目なところは全部光ちゃんに持ってかれちゃったのかしら。」
亜美が耳打ちした。
「さぁ。根は真面目だと思うよ。ただ、ウチのことが心配で仕方ないんだよ。ウチは智萌のたった一人の弟だしね。」
「・・・光ちゃんも大変ね。そう思ってくれる弟がいるんだから、お姉さんは幸せよね。」
その後、ウチらはすたまるに行き、話をしながら盛り上がったのだが・・・。
「ところで、智萌。明日昭和のひだからいいけど、今日ホテルとか取ってあるの。」
と聞いた。
「泊まるところ・・・。光が住んでるところにでも泊まろうかな。」
「・・・。」
「ええ。弟の所に泊まらずに俺の所に来いよ。」
香西はそう言ったが、
「いや。私まだ処女取られたくないもん。」
「・・・。」
「えっと・・・。」
「処女は取られたくないんだって。まぁ、会ってその日に自分の部屋に招くって言うのも考え物ね。」
「じょ・・・冗談に決まってるじゃねぇか。真に受けるなよ。」
「・・・。」
仕方ない。ウチの部屋に泊まらせるか。