469列車 岩槻での生活1ヶ月目
授業が終わると、教科書やノートを鞄の中に入れた。
「永島。」
そう声をかけてきたのは香西映樹。東京で初めてできた友達だ。
「今日はどっかで遊んでくるか。」
「ああ・・・。」
「遊ぶ必要は無いんじゃない。」
ウチと香西の会話に亜美が入ってくる。
「香西さんもあんまり光ちゃんを遊びに連れ回さないでくれる。」
「亜美・・・。ウチは別に連れ回されているわけじゃないけど。」
ウチはそう言うと亜美が顔を近づけてきて「あんまり東京で夜遊びするんじゃないわよ。」と言った。確かに、亜美の言うとおりだな・・・。ウチもちょっと東京に来て浮かれているのかもしれない。ウチが本来しなきゃいけないのは就職のための勉強なのだからな。
亜美は鞄を持って、クラスを出て行った。すると今度は香西が、
「あの女・・・。一生に一度の高校生活だぞ。もっと楽しめばいいのになぁ・・・。」
「ハハハ・・・。」
亜美には無理な要求だろうなぁ・・・。
「ウチらも行こうか。亜美待たせたら悪いし。」
ウチも鞄を持って、香西とともにクラスを出た。クラスを出ると外で待っていた亜美と合流し、上野駅に向かった。学校の近くにある上野駅にはひっきりなしに電車がやってくる。見える車両は京浜東北線のE233系1000番台。すっかり見慣れたな・・・。
改札でICカードをタッチしラッチ内に入る。京浜東北線と山手線のホームに行くと学校帰りの沼垂もいた。
「はやて。」
「ああ。皆。授業以来だね。」
「そうだね。」
「まもなく、1番線に京浜東北線、快速大宮行きが参ります。黄色い線の内側まで下がってお待ちください。」
まだ17時まわっていないというのに、このホームは人でたくさんいる。
「東京は本当に人がたくさんだよね。人の波に酔いそうだよ。北海道に住んでたらこんなに人がいるのは札幌ぐらいだからね。」
沼垂は北海道北斗市出身だからな。こんな人数を見ることはないだろうからな。
「札幌ぐらいか・・・。」
「開拓使の拠点だったんだもんね。」
「・・・。」
入線するE233系に乗り込んだ。ウチらは全員金町にある寮に住んでいるから、全行程が同じである。
「皆、岩槻に来て1ヶ月ぐらいになるけど、どう。」
亜美が聞いてきた。
「ああ。鉄道関係の勉強はかなり幅広くしてくれるから、僕はかなり助かってるよ。」
沼垂が言う。
「それはそうだな。」
香西も続けた。岩槻でできる勉強についてはウチも助かっているのは確かだ。だが、亜美の言うとおり就活をする上で学校の勉強だけでは足りないのは確かである。そう足りない・・・。
JR金町駅について、ウチは自分の部屋への道を急ぎ、家に着いたらパソコンを立ち上げた。
(ヨシッ・・・。プレスリリース見てみるか。)