9515列車 「SLばんえつ物語号」
7月29日。行程4日目。
「これが鶴ヶ城かぁ・・・。初めて見た。」
朝早く出て、今日は観光からスタートだ。今までは電車に乗りながらの観光がメインだったが、こうして実際に降りて訪れるというのは初めてだ。
「シンクン。こっち、こっち。」
「あさひってこういうの興味あったんだ・・・。」
そう言いながらも輝は付いてくる。私はいわゆる歴女って訳じゃない。ただこういうものが見たかっただけでもある。
「シンクン。」
「はい、はい。」
「自撮りしよう。」
「・・・。」
何も言わずに私に隣に来る。
「シンクン。顔引きつってる。」
「・・・そうかな・・・。」
「電車の話してるときのシンクンの方がいい笑顔だよ。ほら。その時の顔してってば。」
「そう簡単に切り替えられないって・・・。」
写真を撮ってから鶴ヶ城を見学。お昼ご飯を食べてから会津若松駅に戻った。
会津若松駅からはSLに乗るという。ホームには茶色の客車が並んでおり、その先頭には白い煙を吐くSLが停まっている。客車には「SLばんえつ物語」という名前が付いていた。
「SLって今でも走ってるんだね。」
「C57形蒸気機関車180号機。通称「貴婦人」。」
「デゴイチじゃないんだ。これ。私蒸気機関車ってデゴイチしかないと思ってた。ほら、山口県の方にも蒸気機関車って走ってなかったっけ。」
「走ってるね。「SLやまぐち号」。今回の旅行じゃそれにも乗るつもりだよ。」
「そうなんだ。」
「今回は日本を走ってる蒸気牽引の客レを隔日で2つはしごするから。列車ごとに牽引機が違うから面白いはずだよ。」
「楽しみにしてるね。」
15時25分。
「ボオォォォォォォォォォォォオッ・・・。」
ドンという鈍い衝撃とともにゆっくりと動き出す。「シュッ、シュッ、シュッ」という蒸気機関車特有のサウンドが客車の方にまで聞こえてくる。
「皆様、こんにちは。」
「こんにちは。」
輝がアナウンスに答える。
「本日も「SLばんえつ物語号」にご乗車くださいまして、ありがとうございます。この先、「SLばんえつ物語号」の旅をお楽しみいただくため、お客様にはお手持ちの指定席券をよくご確認いただきますよう、乗務員一同よりお願い申し上げます。それでは途中の停車駅と到着時刻をご案内いたします。」
車掌はすらすらと停車駅を告げていく。
「次は喜多方、喜多方です。それでは皆様、「ばんえつ物語号」の旅をどうぞお楽しみください。」
と結んだ。
私もこの「ばんえつ物語」に載っている間は車窓を楽しんだりする。左には阿賀野川が流れ、山の緑が映える。その中を白い煙を吐いて、走っていく蒸気機関車と7両の客車。とても和だ・・・。
隣の輝は列車に揺れに合わせて、体を揺らす。「ガタン、ゴトン」の音でリズムを取っているようだ。
SLは時折休憩を挟む。そのとき乗っている多くの人がしばしの休息をする貴婦人を見に行く。休息が終わると貴婦人は再び動き出し、この先に横たわっている上り坂に挑んでいく。
山の中を走って、走り続けて3時間。「SLばんえつ物語号」は終点の新津駅に到着。新津駅からは大半が新潟駅に向かっていく電車に乗り込んだ。一方、私達は長岡行きの電車に乗り長岡へ向かう。長岡からは新幹線に乗って東京駅まで行った。
「これから、「サンライズエクスプレス」に乗るよ。」
今日の移動はまだ終わりそうにない。




