9514列車 新幹線よねぇ
お昼を食べて戻ってくる。そういうことだけをして2時間30分はつぶれた。まさかあんなに歩くとも思っていなかった。さっき輝が言っていたこと。私はどこかで抱いていたのかもしれない。確かに、特急電車や新幹線があるところで相当歩かないとものがないというのは想像すらしたことがなかった。このことからでも私の住んでいる周辺が恵まれていると思う。
改札口できっぷを見せて、ホームへと入る。さっき山形新幹線が止まっていたところには綺麗な緑色の新幹線が止まっていた。さっきの新幹線が紫やオレンジ色などで結構カラフルだったのとは対照的だ。
「今度はこの特急に乗るよ。」
という。確かに、自分の持っているきっぷと電光掲示板を確認してみると、この新幹線に乗ると言うことが分かる。
「ご乗車ありがとうございます。」
ドアの前ではアテンダントさんが私達を出迎えてくれた。こういうことも今まで無かったのに・・・。
車内に入ると更に驚くことがあった。なんと有るものは座席じゃない。座席の代わりにテーブルの付いた赤いソファ?が並んでいる。4人で座れるものと、2人対面で座るものがある。私達は2人で座れる側の一角に腰掛ける。
「えっ。これ新幹線よねぇ。」
「ビックリした。」
「ビックリするよ。私の知ってる新幹線は座席5列だもん。これ座席じゃないし。何か色々と内装こってるし・・・。新幹線よねぇ。」
何度も確認したくなる。
「新幹線だよ。あさひ、ちょっと待ってて。」
「えっ。うん。」
そう言うと輝は15号車の方へと歩いて行った。しばらくして戻ってくると、1枚の券を差し出してきた。
「一人分しか取れなかったなぁ・・・。」
「足湯利用権・・・。はっ。」
「その時間にあっちの車両に行くと足湯には入れるんだよ。」
そう教えてくれる。
「新幹線よねぇ。」
「新幹線だよ。」
「足湯には入れるの。ていうか足湯があるの。」
「有るよ。面白いから入って来なよ。」
「ええ。でも。こう言うのってシンクンの方が楽しみにしてたんじゃないの。」
「うん。そうだけど、僕は3回くらい入ったことあるし。」
3回・・・。
だまされたと思っていって見るか。
確かに新幹線の中に足湯があった。入ってみるとかなり気持ちよく、さっき歩いた疲れも取れていった感じだ。その時間もあっという間に終わり、私は座席に戻る。
「良かったでしょ。新幹線の足湯。」
「うん。また乗りたい。今度はさぁ、シンクンも一緒に入ろうよ。」
「「リゾートもみじ」の時にね。」
「約束。」
福島駅までその「とれいゆつばさ」という新幹線で来て、福島からは在来線で郡山に行く。
「今日は楽しかった。」
電車に乗って楽しい。こんなにもそれを感じた日はなかった。




